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■オープニング本文 ──事件の冒頭 「‥‥遺跡探索用人足兼護衛の方ですかぁ」 開拓者ギルドカウンターでは、一人のギルド員が依頼主に向かってそう呟いていた。 依頼人はジルベリア考古学者のウェンリー・Y・ジョーンズ。 そこそこにいいオッサンの考古学者で、最近になって古い遺跡を発見したため、そこの調査を行ないたいらしい。 だが、いざ遺跡の内部に入ろうとしたら、トラップが仕掛けてあったり、遺跡の守護者らしきアヤカシが徘徊していたりと、兎に角、危険な情況であったらしい。 「そうさのう。6人ほどでよいのじゃよ。見たところ、骸骨や腐った死体の類が徘徊しているだけじゃろうから、荷物の運搬がてらにそいつらを処分してくれればよいよい。あとは、罠があちこちに張り巡らされているようじゃから、それの解除ができる人間も欲しいところじゃな」 そう考古学者が呟いた時、ギルド員の瞳がキラーンと輝いた。 「‥‥その遺跡‥‥まさか、伝説級の代物じゃあないでしょうね? もしそうであれば正式な手続き等も必要になってきますが?」 その言葉にドキッとしながらも、考古学者は手にしていた古いネックレスをじっと見る。 それには、小さい宝珠が填められており、ゆっくりと何かを語るかのように点滅していた。 「いやいや、そんなだいそれたものではないようじゃよ。まあ、その奥に、それらに関しての何かが眠っている可能性はあるがのう。とにもかくにも、まずは調査じゃて」 そう告げると、考古学者は依頼金の詰まった袋をカウンターに預けていった。 「遺跡調査ねぇ‥‥そんな物好きな人、来るのかしら?」 ギルド員はそう呟きながら。、掲示板に依頼書を張付けた。 |
■参加者一覧
柊沢 霞澄(ia0067)
17歳・女・巫
朝比奈 空(ia0086)
21歳・女・魔
巴 渓(ia1334)
25歳・女・泰
バロン(ia6062)
45歳・男・弓
劫光(ia9510)
22歳・男・陰
ラシュディア(ib0112)
23歳・男・騎
壬護 蒼樹(ib0423)
29歳・男・志
将門(ib1770)
25歳・男・サ |
■リプレイ本文 ●扉の向うに真実が ──とある遺跡、第一階層 「ふぅーーーーーーーーむ。これはなかなか」 羊皮紙で作られた地図を睨みつけつつ、ウェンリー・Y・ジョーンズ博士がそう呟いている。 ここはとある遺跡の第一階層、今回のジョーンズ博士の依頼によってやってきた場所である。 依頼内容は遺跡内部の調査ということもあり、腕に自慢のメンバーが勢揃い。 「‥‥ここまでの地図では、確かにここから通路なのですよね?」 とジョーンズ博士に問い掛けているのは、現在マッパーを担当している柊沢 霞澄(ia0067)。 「うむ。確かにここの先には通路があるのぢゃが‥‥」 と呟きつつ壁を指差す。 「‥‥はぁー。成る程ねぇ」 と壁を眺めつつ呟くのは朝比奈 空(ia0086)。 「ふむ。何か判ったのかね?」 「ええ。ここに来る前に、付近の村で事前調査を行なったのですけれど。ここに入った事のある人たちの話によりますと‥‥」 と告げてメモを取出す。 そこには幾つかの地図が書き記されている。 「この通り、村の人たちから聞き出した地図と、現在の地図が全く違うのです。それに、この階層の地図だけでも、形状が4種類確認されています」 と告げる。 「ほう‥‥ということは」 と告げて、ジョーンズ博士がやはりスクロールを取り出し、じっと眺める。 「壁と壁の距離‥‥天井までの高さから察するに‥‥結構大型のアヤカシでも徘徊できそうだな‥‥」 と呟いているのは巴 渓(ia1334)。 実際、この通路の大きさだと二人で並んでも真面に剣戟を行なえそうなほど大きい。 ツーハンドソード思いっきり振りかぶっても、天井には届きそうにない。 つまり、そのような戦いを前提とした造りであるとも、巴は考えた。 ──ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン 静かにバロン(ia6062)が弓の弦を弾く。 鏡弦と呼ばれる技術らしく、反響王からアヤカシの存在、方角などを察知するらしい。 「‥‥この付近にはおらぬと‥‥」 と一行に告げる。 「で、この遺跡ってのはどんな場所なんだ?」 と依頼主のジョーンズ博士に問い掛けているのは劫光(ia9510)。 「うむ。ここはな。『光道』と呼ばれる‥‥うーむ、なんというかその、アヤカシのやってくる道とはまたちがう‥‥空間の歪みを発生させていた場所らしくてのう。その影響故、この遺跡は『帰らずの魔門』とも呼ばれている。この秘密を解き明かし‥‥まあそれからはおいおいということぢゃよ」 と告げる。 「壁にはトラップはなし‥‥と。力ずくで行ってみるか?」 と告げるのはラシュディア(ib0112)。 「いや、このまま迂回することにしよう‥‥」 「よっし、なら隊列を戻してと‥‥」 前衛に壬護 蒼樹(ib0423)が入り、その後ろに将門(ib1770)がつく。 そのままここまでの地図と朝比奈の地図を照らし合わせつつ、一行はさらに探索範囲を広げていった。 その途中、道に迷わないようにと朝比奈と劫光が一定距離毎に印を付けていた事は言うまでもない。 ●行き止まり ──第一階層かなり奥 一行は一つ一つの区画をしらみつぶしに調査していった。 途中の部屋では奇妙な形の彫像や雑魚と呼べる程度のアヤカシとの遭遇など、まさに遺跡調査という言葉に相応しい調査となっていた。 そしていよいよ最終通路を辿っていたとき、一行の正面には巨大な鉄の扉が立ちふさがった。 「さて、それじゅあ‥‥」 とラシュディアが前に出てトラップなどの仕掛けを調べる。 だが、それらしいものはなにも見当たらない。 「ふむ。なら扉を開ける事にしよう」 と告げたとき、蒼樹が静かに肯いて扉の取っ手に手をかける。 ──ゴトッ‥‥ 一瞬だけ扉が動いたものの、それ以上はびくりともしない。 「‥‥これは参った‥‥」 「どれ、俺も手を貸そう」 と将門と二人がかりで取っ手を引く。 だが、それでも扉はびくりともしない。 「‥‥出番なのか?」 と巴が前に出ると、ゴキゴキッと拳を鳴らす。 「開かないのなら、物理的破壊というのは?」 「ふむ。それも道理ぢゃが、拳では危ないのでは?」 と告げるジョーンズ博士の言葉に、入れ変わりに六尺棍を構えた蒼樹がでる。 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」 ──ドッゴォォォォォォォォォォォォッ 激しい一撃を叩き込む蒼樹。 その刹那、蒼樹の身体が後方に吹き飛ばされた!! 「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」 喀血しその場に崩れる蒼樹。 「い、一体なにごとぢゃ」 「この扉か!!」 と将門が『珠刀・阿見』を引き抜いてゆっくりと構える。 「あー、ちょっとまった。それで一撃叩き込むと、あんた死ぬぞ?」 と巴が止める。 「どういうことだ?」 「蒼樹すまんな‥‥と」 ゆっくりと立上がる蒼樹の身体には、六尺棍でなぐられた跡が残っている。 「‥‥つまり、この扉には受けたダメージをそのまま返す力があるということですか?」 と霞澄が問い掛ける。 「そのようだな‥‥となると、破壊は不可能と」 バロンもそう告げると、再び弦を鳴らす。 依然として、この付近ではアヤカシの反応がない‥‥。 「‥‥なあ、ちょっと聞きたいんだが‥‥ここ、行き止まりだったよな?」 とラシュディアが問い掛ける。 「ええ。ここまでの地図でしたらここに‥‥」 と朝比奈が地図を開いて周囲を確認する。 と今まで後ろに在った筈の通路が消滅しており、自分たちの立っているこの場所は四方を囲まれた小部屋になっていた。 「ち、ちょっと待て。どういうことだ?」 と劫光が慌てる。 「ふーむ。どう思う?」 と再度劫光に問い掛けると、静かに深呼吸したのち、何かを考える。 「ムーヴメントウォール。移動する壁と‥‥」 「殴りかえす壁‥‥さしずめ『攻勢防壁』という所ですかねぇ」 とラシュディアが呟く。 「じゃのう。ここで問題じゃが‥‥この部屋となった中心に現われたこの印‥‥」 とジョーンズ博士が部屋の中心を指差す。 そこには奇妙な魔法陣が描かれていた。 「‥‥なんだ? これは?」 と巴が問い掛ける。 ──ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン と、その刹那、魔法陣の上、中空に突然キラキラと輝く球体が生まれた。 それは自身が光を放ちつつ、ゆっくりと回転している。 「これぢゃよ‥‥この遺跡最大の秘密‥‥」 と嬉しそうに告げるジョーンズ博士。 「これが‥‥ですか?」 「うむ。この遺跡の最下層に位置する『鋼玉の魔法陣』。どこか見知らぬ世界に通じている出入口。ここから伝承級のアヤカシが生まれたという記述もとある古文書に残っておってのう‥‥」 ──グゥォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ そうジョーンズ博士が呟いた時、その『鋼玉の魔法陣』の向うから何かが叫ぶ声が聞こえてきた。 その声を効いた一行は魂が凍り付くかのような錯覚に陥り、その場に次々と崩れはじめる。 「‥‥ちっ‥‥バインディング(呪縛の咆哮)かよ‥‥」 とラシュディアが呟く。 「みんな意識をしっかりと保て!! 呪縛されたら肉体から魂が引き剥がされるぞ!!」 と巴も叫ぶ。 そして意識を失いかけた朝比奈と霞澄を抱えて、一行はそのままいつのまにか生まれていた通路に向かって飛び出した。 そこから先は、一体どこをどう通ってきたのか理解していない。 少なくとも、大量のアヤカシと戦い、己の練力の殆どを消耗しつつも辛うじて遺跡から脱出したということは皆理解していた。 外はすでに暗く日が落ちている。 このような場所での野営は極めて危険な為、一行は安全な場所まで向かうとそこで一夜を過ごし、翌日街へと戻っていった。 ●後日談 遺跡の調査報告をおえて皆で酒場で食事を取っていた。 そこにはジョーンズ博士も同席し、色々と話をしてくれていた。 その中で出てきた、ジョーンズ博士の調べている古代超文明の残した遺産について、一行は瞳を輝かせていた。 遥かな刻の向うに存在する超文明。 そこへと向かう道をしるす3つのオリジナルアーマー。 巨人ギガンテス、飛龍ウロボロス、戦士ディシール。 この3つのアーマーを探し出し、その超文明へと向かうのがジョーンズ博士の目的だという。 「ということで、今後も色々と手伝ってもらうぞい‥‥」 ということで全員巻き添え確定。 よかったな。 いとあわれなりけり。 ──Fin |