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■オープニング本文 ──事件の冒頭 さて。 今年の凰凱擂台賽は荒れ模様の状態です。 1月の擂台賽での紅道場の活躍により、凰凱の青少年たちの一部が、紅道場へと足を運ぶようになりました‥‥。 2月の擂台賽では、始めて異国のチームが参戦、かなり上位に食い込むという事態が発生しています。 凰凱の武術連盟では、異国のものに『龍王』の称号を渡して鳴るものかと、さらなる訓練にはげむ道場が多数でているようですが‥‥。 「‥‥これよりこの擂台賽は我々『グレートもふら連盟』のモノとスル!!」 もふらの顔を模した覆面を身につけた男性武闘家。 その前には、おおよそ40名ほどの、おなじくちょっと貧相なもふらのマスクを付けた老若男女の武道家が集まっている。 「ええっと‥‥では、今回の擂台賽の参加ということでよろしいのですね?」 と擂台賽実行委員会受け付けの女性が、代表者である『グレートもふら一世』にそう問い掛けた。 「え、あ、はい。団体戦と個人戦の参加申込みでお願いします‥‥登録費用は、はい、ええっと、道場としてはまだ場所が定まっていませんので‥‥全て個人扱いでお願いします」 と突然腰を低くしてつげる『グレートもふら一世』。 そして受け付けが終ると、外で待機していた同志達の前に出て、大きな越えで演説を開 始した。 「諸君。この戦いこそが、我々『グレートもふら同盟』の輝かしい一歩である。我々は今後、この擂台賽にて全ての称号を奪取し、わが流派の偉大さを俗世間に知らしめなくてはならない!!〜中略〜」 そんな騒ぎをよそに、次々と擂台賽の申込みは始まれました。 そして‥‥。 「ふぉっふぉっふぉっ」 中庭の武舞台を眺めつつ、紅老師が静かに『てぃーたいむ』を楽しんでいる。 「紅師父、何か楽しそうですね」 と師範代が茶菓子を手に老師の前に座る。 「うむ。なにかこう、面白いことがおこりそうでのう‥‥『グレートもふら一世』よ、今更表の世界に台頭しようとは‥‥」 と呟く紅老師。 「まあ、私にはあいかわらず老師が何をおっしゃっているのか理解できませんが」 「うむ。『闇武武会』の長が表に出ようとしているのぢゃ」 「闇武武会ですか? あれはもう20年以上も前に全滅したのでは?」 「うむ。じゃが、どうやら生き残っていたものがおったようぢゃ‥‥」 と告げつつ、焼き栗をパキッと割りつつ口の中に放り込む。 ということで話は纏まったようですが。 では、擂台賽でお会いしましょう。 |
■参加者一覧
恵皇(ia0150)
25歳・男・泰
三笠 三四郎(ia0163)
20歳・男・サ
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
秋霜夜(ia0979)
14歳・女・泰
斉藤晃(ia3071)
40歳・男・サ
赤マント(ia3521)
14歳・女・泰
真珠朗(ia3553)
27歳・男・泰
日御碕・神楽(ia9518)
21歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●いつもの日常 ──泰国・凰凱・ 「‥‥ずいぶんと広い道場ですねぇ‥‥」 そこは紅道場の一角にある『修練の間』。 そり中を。恵皇(ia0150)は丁寧に拭き掃除わしていた。 ここ御穿ての紅道場にゃってきてから、恵皇は毎日掃除を行なっていた。 この広い道場内部、そこそこに金目のものは揃っていたらしいが、今現在のその建物は、まさに阿鼻叫喚の事態が起こりやすい。 「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 と絶叫を上げているのは水鏡 絵梨乃(ia0191)。 道場内にある武舞台の上で、絵梨乃は静かに構えを取っている。 一つの構えにつき一刻む、その場からじっと動かないこと。 そしてその周りでは、紅老師が直に構えをとり、寸止めで絵梨乃に打ちこんでいく。 まさに紙一重ギリギリの攻防。といっても、絵梨乃は全く動く事が出来なかった。 「では休憩に入りましょう‥‥」 と老師がつげると、絵梨乃はようやく構えを解除した。 そして胴部と上腕、脚部に付けられていた『重り付きの枷』を外し、ようやく一安心。 「老師、この訓練はかなり辛いです」 と、ようやく絵梨乃がそうつげる。 「まあそうぢゃな。取り合えずは、ここにいるあいだはこの訓練は続けるように、午後からは組み手をはじめるとするか‥‥」 と老師がつげたとき、絵梨乃はゆっくりと屈伸して身体を温めはじめた。 ──その頃 「‥‥えぇっと、つまりここの擂台賽は『桃華』のものとは違い、この都市の擂台賽にかんする実行委員会が権限を持っていることになりますね」 と戻ってきた老師に連げるのは秋霜夜(ia0979)。 「ふむ。そうぢゃが?」 「桃華では、現在風龍八十八聖の臥天人・碓一がその全ての実験を握っていました。結果として、桃華、昇竜などの地区は今でも風龍八十八聖の支配下に置かれています。ここでその実力を発揮してみれば、いずれはあちらから声が掛かるのではないでしょうか?」 つまり、実力を認めさせて内部に潜入、そのまま調査を行うというものらしいが。 「まあ、それは危険ぢゃて。潜入した結果、人として帰ってこれなくなるということも十分にありえるからのう」 とつげると、昼間から酒を飲みはじめる。 「まあ、それでも実力をつけたいのは事実ですし‥‥出稽古にいってきます」 と告げて、霜夜は道場を飛び出していった。 「若いのはいいことぢゃのう‥‥」 そう呟くと、老師は静かに空を見上げていた。 ──そして 「九龍門が失われた流派なら、僕がそれを開拓していきたいのです!!」 そう熱く語るのは赤マント(ia3521)。 先日の大会にて、彼女の流派の正体がなんとなく掴めてきたのである。 そして今回、赤マントは自身で流派の再興を行なおうとしているらしい。 「なら、諸葛先生に訪ねるのがよろしいぢゃろう。あの人はこの泰国でも数少ない賢人、その知識にはそこがないとまで言われている御方ぢゃ」 「質問いいですか? 諸葛先生ですが、本物ですか? エセ諸葛せんせいですか?」 「本物ぢゃよ。呑む打つ買うのほうぢゃない、まさに賢人のほうぢゃ。この凰凱にも解きおり遊びに来ているらしいから、見掛けたら話をつけておいてやろう」 とつげられて、なんとなく赤マントも一安心の模様。 ●がんばれば‥‥こんどは伝説 ──4月定例擂台賽 「それではっ。定例大会を開始するんだワンッ!!」 武道大会会場で、司会進行でもある昨年度『大覇王』のわんドシ君が大声で叫ぶ。 その言葉に会場に集まった観客が盛り上がる、まさに会場は興奮の坩堝となってしまった。 やがて個人戦と団体戦それぞれの対戦表が張り出されると、いよいよ一回戦が開始された。 前回、かなりいいところまでがんばった紅道場はなんと決勝まで到達。 いよいよ本格的にマークされはじめていたさ中のこの成績、あと一勝で『小龍王』の称号を得る事も出来る。 そしてなにより、決勝まで到達したため、次回5月の擂台賽はシード権が確定している。 今回の対戦相手はこの凰凱の道場の一つ、『七星形意拳道場』。 さて、決勝の結果を簡単に説明すると、1勝3敗で敗北。 ここにきて実力差がはっきりとでてしまったという結果に終ってしまいました。 ─先鋒・敗者・日御碕・神楽(ia9518) 対戦相手は七星形意拳の『甲乙人』。 『紅鳳院流』の優雅な動きと、最近に名ツテ憶えつつある『剛体術』を用いての戦いになった。 対戦相手はその動きに翻弄されつつも、徐々に神楽の動きを捉えていく。 最後は『七星乱舞』なる打拳の乱打で決着が付けられてしまった。 ──次峰・敗者・秋霜夜 対戦相手は七星形意拳の客人拳士『伝説のヤマシタ』。 怪しい狐のマスクを付けた拳士が相手であったことと、先鋒が負けた事による流れを替えようと必死に戦っていた模様。 旋風脚と旋風脚、気功掌を組み合わせた乱打をモットーとしていたのだけあって、前半はかなり追い詰められていた模様。 だが、広範に入ってから相手の動きが一点。 柔拳から剛拳に切替えてきた相手の攻撃の重みに耐えきれず、止む無く敗退となってしまった。 ──副将・勝者・真珠朗(ia3553) 「さあ、それではいきましょうか‥‥」 気合十分の真珠朗の相手は、七星道場の中でも実力トップの拳士『翠仁』。 常に間合を詰めてきて『内勁』を仕掛けてこようとする相手に対して、真珠朗は得意の武器である『七節棍』を駆使して間合に近寄らせないという作戦に出た。 「ぐっ‥‥こんな筈では」 「まあ、相手が悪かっただけですよ‥‥」 と冷静に告げつつ攻撃を続ける真珠朗。 そのまま相手の攻撃を受け流しつつの圧勝で幕を閉じた。 ──決勝・水鏡 絵梨乃 このままの勢いでどうにか同点まで持っていこうとする紅老師道場。 大将戦は水鏡 絵梨乃(ia0191)に任せられていた。 「それでは‥‥」 と、擂台の下で十分に『古酒』を飲んでいた絵梨乃。 そのまま最後の一杯を一気に飲み干すと、フラフラとした動きで擂台に登る。 「‥‥これはまた、随分と‥‥」 と呟くのは対戦相手の拳士『隆狼』。 「それでは始めッ!!」 の掛け声と同時に、隆狼は一気にまあ愛を詰めていく。 が、そのまま攻撃を受けることなく、絵梨乃は流水のご解く攻撃を躱わしていく。 と、しばらくの間それが続いたかと思うと、突然、隆狼が攻撃から防御へと転身した。 「若いというのは実にいいですね‥‥」 そう告げると、隆狼と絵梨乃はお互いに膠着状態に入る。 軽い牽制を仕掛けていっても、お互いにそれを受け流していく。 そんなことがしばらく続き、やがて絵梨乃の酔いも覚めていく‥‥。 「き、危険‥‥これは危険ね‥‥」 すっかり酔いの覚めてしまった絵梨乃。 そうなると、酔拳使いにとってはかなりきつい。 酔拳からの転反攻や乱酔拳も前半とは違いそれほど激しく相手を傷つけるものではなくなっていた。 加えて、相手の油断から放とうとした絶破昇竜脚ですら、それを打ち出すまでのタイミングが全く掴めていない。 その結果、絵梨乃は後半までで酔いとスタミナを維持する事が出来ず、あえなく敗退‥‥。 ●個人戦の光と影 一方、もう一つの舞台では個人戦が始まっていた。 参加者が増えつつある凰凱擂台賽、個人戦で優勝する為には、最低でも9回戦勝ち抜けなくてはならない。 紅道場の登録選手は4名。 それぞれが様々な組に分かれ、対戦表に名を連ねていくのであったが。 ここではやはり大番狂わせが発生していた。 それではその大番狂わせをダイジェストでお伝えしましょう。 ──五回戦・恵皇 順当に勝ち進んできた恵皇(ia0150)の対戦相手は、『グレートもふら一世』。 「この、この緊張が崩れていくような仮面をして‥‥」 と笑いつつ告げる恵皇。 「マアマア、それも作戦の一つなのですから」 と対戦相手に宥められてどうにか冷静さを取り戻す。 そのまま試合が開始されると、恵皇はいものように気功破を使った戦いを繰り返す。 ここまでの試合全て、止めは新技の極神点穴で勝利を使えで来た。 そのため、ここでも大事に戦って勝利を勝ちとりたかったのだが、逆に気功破を使った攻撃を叩き込まれていく。 「こ、この攻撃パターンは俺の?」 「その通りだっ!!」 と一気に形勢逆転された恵皇、止めは極神点穴を叩き困れで意識不明。 ──6回戦・赤マント おなじく順当に戦ってきた赤マント。 だが、ここにきて最大の相手との戦いが待っていた。 「さて、それじゃあ久しぶりに本気で行くワン」 ということで、対戦相手はわんドシ君。 「九龍門‥‥肆龍っ」 自らの流派の奥義を駆使しつつ戦う赤マント。 ここまで壱龍、弐龍、参龍までを使ってきたものの、まったくの互角の戦いである。 そのまま牙狼拳を繋ぎつつ戦いを繰り広げているものの、一一進一退の攻防となってしまった。 と、わんドシ君も今まで赤マントが見た事のない構えを取ると、そのまま一言呟く。 「肆龍なら、もっと早くだワン。歩法がいまひとつ、赤マントの名前が泣いているワン‥‥」 と呟くと、一気にわんドシ君の姿が消えた。 その刹那、赤マントの腹部に痛烈な一撃が叩き込まれ、そのまま敗北を喫した。 (肆龍の歩法‥‥見えた‥‥が‥‥駄目だ‥‥) 負ける刹那、赤マントの中の肆龍はどうやら完成に近づいていったらしい‥‥。 ──準決勝・三笠 三四郎VS斉藤晃 こちらは一つ早い準決勝。 同門対決となった三笠 三四郎(ia0163)と斉藤晃(ia3071)の二人である。 「‥‥まさかこういう展開でくるとは、思っていませんでした」 「全くだ‥‥が、これもまた運命、掛かってこいやぁ!!」 と気合の入った両者の戦い。 「僕の二天一流がここまで通用するとは思っていませんでしたけれど‥‥」 と呟く刹那、三笠は素早く間合を詰め、すれ違い様に二天での連撃を叩き込んでいった。 「ふんっ!!」 その攻撃をもろに受けることなく、微妙に間合いや立ち位置をずらして相手の攻撃を打点をずらしていく斉藤晃(ia3071)。 そのまま一瞬だけ出来た隙を目掛けて、斉藤は両断剣を叩き込む。 その一撃は躱わしたものの、引き続き繰り返される連撃を躱わしきれず、三笠はそのまま受てしまう。 だが、それですむ筈もなく、今度は三笠の反撃。 二天と両断剣の激しい打ち合いはやがて両者の肉体を極限までけずっていき、最後は両者意識不明の敗北という結果に終ってしまった。 それほどまでに力が均衡していたのであろう。 ●そして 全てが終った。 団体戦では準優勝、そして個人戦では三笠と斉藤の準優勝を始め、各々が上位まで食い込み、じつにいい戦歴であった。 次回の団体戦ではシード権を虜とも出来、結果としては上々の模様。 ちなみに今回優勝した道場は『七星形意拳道場』。 そして個人戦優勝はまたしても大武王の称号を持つ『白蝋』の連続優勝であった。 「見えた。九龍門の技。けれど、わんドシ君も何かを知っていた‥‥どうして?」 その疑問が脳裏を駆け巡る。 が、今は大会が終ってのセレモニーパーティー。 愉しい一時を一行は過ごすこととなった。 ──Fin |