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■オープニング本文 ──事件の冒頭 この世界を作りし神々。 様々な国で信仰されている神々の存在。 だが、それらは全て、3つの神の眷族に過ぎないということを知って居るものは、ごく僅か。 阿修羅(あしゅら) 迦無羅(かむら) 斗摩邪(とまや) これら『創造』『破壊』『混沌』の名を冠する三柱の神々の存在と、それらに連なる従属神たち。 。 そして、彼等と敵対し戦いつづけている存在『妖魔』。 そのはて無き戦いは時間を越え、空間を越え、そして今の時代に受け継がれていた。 時は現代。 古の存在である『妖魔』が『妖魔界』より人間世界に侵攻を開始。 それに伴い、彼等『妖魔』と戦う力を持つものが、少しずつ目覚めはじめていた。 日本国政府直轄の『対妖魔組織』の長としてひそかに活動を続けていた『勇希サエラ』という女性の提唱により、日本各地に『対妖魔迎撃組織』を配備。 但し、その存在は一般の人々に知られる事のないよう、一般企業や個人経営店としてカモフラージュし、一般の人々に妖魔の魔の手が伸びる事のないよう、影で戦い続けていた。 ●時は2010年 ポーーーン‥‥ポーーーーン 夜。 札幌の中心、大通り公園でボールがはずんでいる。 その近くでは、仕事帰りのOLが一人、ベンチに腰掛けて酒に酔ってほてった身体を醒ましている所であった。 「ボールがはずんで‥‥誰が投げたのかしら?」 そう呟きつつ、OLは自分の目の前まで転がってきたボールに手を伸ばす。 「誰のですか? ボールが転がってますよ‥‥」 と周囲に叫ぶが、反応がない。 「まったく‥‥気味が悪いわ」 とボールを再び転がす。 「これはこれはご親切なお嬢さん。それは私のボールでございます」 そう告げて姿をア笑わしたのは、一人の導化師。 「あ、ああ‥‥そうなの‥‥導化師さん‥‥ひょっとして、この前から駅前に来ているサーカスの方?」 そう問い掛けるOLに、導化師はニコリと微笑む。 「ええ。それは私の大切な仕事道具。ここで練習をしていたのでございます‥‥」 と告げたとき、OLはふと睡魔に襲われてしまった‥‥。 「あら‥‥どうして‥‥わた‥‥」 「ほっほっほっ。これはいけない。こんなところで眠っては風邪を引きますよ‥‥」 と呟くと、導化師はOLにそっとマントを被せる‥‥。 ──北海道・札幌・宇童探偵事務所 「で、今回の仕事は魂を奪われた女性達の魂を取り返せというのかよ‥‥随分と判りやすい事件じゃないかよ」 頭をボリボリとかきむしりつつ、所長である宇童がそう依頼人である北海道警察の本部長に告げる。 「ああ、今回は目撃者もある。被害者である女性は4名、全て大通り公園で導化師と遭遇、その直後にベンチで魂を抜き取られている」 「そこまで判って居るのなら。警察の権限で逮捕はいおしまい‥‥じゃあないのか?」 「まあ、本部から資料が届いているんだが、これは俺達の装備じゃ無理だ」 と告げて宇童所長に手渡した封筒。 その中の書類に目を通した時、宇童は絶句した。 「じ、十二魔将じゃねーか。『導化師のグレイ』って、こんなの相手にどうやって戦うっていうんだよっ!!」 「そっちの本部からの通達だからな。こちらとしては周辺の封鎖などのお膳立ては全て行う。上位空門師が一人派遣されてくるから、そいつが空間結界も施す。人目を気にすることなく全力でいけと『御前様』からの勅名だが」 と種に染まった封書を宇童に手渡す本部長。 「御前様かよ‥‥俺達対妖魔組織設立の長。あーー、わかりましたわかりましたはいはい。こちらも全力でいかせていただきますよ」 と呟くと、宇童は静かに立ち上がり、自分の机の中から鍵束を一つ取出す。 「美和君、メンバーに招集連絡を。事件内容は『十二魔将・導化師のグレイの封印浄化及び奪われた魂の奪回。特務なので『C1ロッカー装備』の使用許可も出たと通達してくれ‥‥」 そう告げられて、美和とよばれた助手が登録メンバーに連絡を開始した。 ※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。 |
■参加者一覧
桐(ia1102)
14歳・男・巫
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
荒屋敷(ia3801)
17歳・男・サ
劫光(ia9510)
22歳・男・陰
今川誠親(ib1091)
23歳・男・弓 |
■リプレイ本文 ●ザ・サーカス ──札幌市駅前広場・ボンジュールサーカス 大勢の人々で賑わっているサーカス。 順番待ちをしている大勢の客。 そんな風景をよそに、今川誠親(ib1091)はこっそりと関係者以外立ち入り禁止と書かれている通路の奥へと向かっていく。 (今の時間は、フィナーレのちょっと前。すぐあとの大パレードの準備で、殆どのキャストは舞台袖の筈‥‥) パンフレットのタイムスケジュールを確認しつつ、今川はそのまま奥へと向かう。 出演者の名前の入った控え室と譜代装置のある大部屋などを通り抜け、何か怪しいものはないかと歩き回る。 そして団長控え室の手前までたどり着いたとキ、今川はその一種異様な雰囲気に後ずさりしてしまう‥‥。 部屋の前には一人の男性。 おそらくは警備員であろうが、その瞳からは生気は感じられない。 (き、気持ち悪い‥‥) その警備員もさらことながら、控え室からにじみ出る『瘴気』に今川は当てられてしまっていた。 普通の人間にとって、瘴気はすなわち毒に等しい。 妖魔界に漂う瘴気を人間が吸収した場合、殆どの確率で死亡または意識不明。 妖魔達がこの人間界にやってくるとき、魔門と呼ばれるゲートが開く。 そこから溢れる瘴気もまた、人間界の大気と混ざりあって濃度はうすれるものの、やはり人体には影響がでる。 そして今、控え室から溢れている瘴気の濃度は魔門付近のものに等しい。 それだけ強力な『何か』が、控え室にはあるのだろう。 ──カツーーーンカツーーーン と、廊下を歩いてくる音が聞こえる。 (来た) 隠れつつ靴音の主を確認する。 と、パンフレットに載っている団長その人である。 そして静かに控え室に入っていくのを確認すると、今川は早速行動を開始した。 ──その頃の外 内部で今川が行動を起こしている最中、大通公園付近で調査を行なっていた桐(ia1102)もサーカスのテント近くまでたどり着くと、他の仲間たちと合流した。 「ハアハアハアハア‥‥遅くなってしまって申し訳ありません」 「ああ、気にすることはない。この手の事件に調査は付き物だからな。なにも竹刀よりは下ほうがいい」 と告げる荒屋敷(ia3801)。 「さて、中に潜入した今川からの連絡まちか。腕が鳴るぜ」 パシイィィィィンと拳を鳴らすルオウ(ia2445)。 その横では、劫光(ia9510)もまた静かに瞑想を行なっている。 「作戦内容はいったとおりだ。退魔師二人でグレイの相手を、他の術師はサポート。荒屋敷は犠牲者の魂の回収を」 てきぱきと指示を飛ばす荒屋敷。 「了解しました」 「ああ、なんとかなるだろうさ」 「まかせておけ」 ということで、しばし連絡を待っていた時。 ──ピィィィィン 荒屋敷の携帯が鳴る。 今川からの合図の着信音である。 「お願いします」 と荒屋敷が近くで待機していた『結界術師』に合図を送る。 と、サーカスを取り囲んでいたテントの周辺に配置された結界術師が、一斉に時空結界を発動。 「これで結界の内部には妖魔と術師以外は入る事が出来ませんので」 という連絡。 されならばと、全員が同時にテントの内部に突入していった。 ●死地と墓の境界線 ──札幌市駅前広場・ボンジュールサーカス テントの中に突入した一行。 そのまま今川の待機していたポイントまでたどりつくと、桐の合図で一斉に部屋の中に銃弾を叩き込む。 ──ドドドドドドドドドドドドドドドドッ 桐と今川の手に在った『退魔銃・44口径火炎弾装備型』が室内に叩き込まれていく。 そして全弾撃ち尽くすと、そのまま室内に突入。 広い空間に、アンティークドールの置物。 そして部屋の中央で、結界に護られて傷一つない団長の姿が会った。 「‥‥突然の空間結界‥‥術師ですか」 と団長が静かに呟く。 「悪いな。被害者たちの魂を返してもらいにきたぜ」 とルオウが叫ぶと同時に、一気に走りこんでいく。 「無駄な‥‥」 と団長‥‥グレイがスッと手を上げる。 その刹那、グレイの正面に見えない力場の壁が発生する。 「あの技は‥‥さっき銃弾を止めた奴!!」 と叫ぶと、ルオウが殴りかかるよりも早く、高速詠唱でルオウの周囲に風の結界を発生させた。 「風よ、我が声届くならば、我が意志に答えよ」 そののち、ルオウが一撃を叩き込む。 命中する直前、ルオウは夢想師野術により全身を赤い硬質なスーツで包みこむ。 さらにその手には、霊布ナックルが装備されていた。 ──ガッシャァァァァァァァァァァァァァァァァァン 一撃で力場を破壊するルオウ。 「ほう。それは凄い」 と関心するグレイに向かって、今川が『退魔銃・44口径火炎弾装備型』を打ち込む。 ──ドムドムドムドム マガジンが殻になるまで連射する今川。 弾丸のうち数発はグレイに直撃し、奴の身体にヒビが入る。 「そのまま一気にいかせて貰うっ!!」 素早く印を組み韻を紡ぐ劫光。 「普賢三昧耶大金剛輪・外獅子内獅子・外縛内縛・智拳日輪・隠形っ!! 行くぜ」 退魔行が完成し、劫光の右手の周囲で発動を待っている。 そして劫光はそれを右手で握ると、腰溜めに構えた。 「博嗣っ!!」 荒屋敷がさう叫ぶと同時に、空間から『猫又の博嗣』が姿を表わす。 そして瞬時に白虎に転身すると、そのままグレイに向かって走り出す!! 「発動!! ごーーーーーーーーーーーーーーっつい退魔バズーカーーーーーーーだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」 退魔師である劫光オリジナル術、『退魔バズーカ─』が発動。 そしてその直撃を交わすようにグレイが動くが、白虎がそれを阻止した。 ──ゴウッ!! それはグレイの左腕にカスった。 かすっただけで、グレイは左腕を浄化されてしまったのである。 「上位‥‥いや、禁呪に近い力ですねぇ‥‥」 と呟くと、グレイは素早く走り出し、近くに置いてあったアタッシュケースに手を伸ばす。 ──シユシュシュシュンッ その刹那、荒屋敷が手にした結界針をアタッシュケースの周囲に投げる。 「発!!」 ──ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン その荒屋敷の叫びと同時に、アタッシュケースが結界によって保護された。 ──バジッ!! そうなると、妖魔であるグレイはアタッシュケースを触れる事が出来ない。 「おとなしくかんねんしなっ!!」 荒屋敷がそう叫ぶと、グレイの表情にフッと笑みが浮ぶ。 「ここまでされて、黙っているわたしではありませんからねぇ‥‥」 と呟くと、グレイはパチィィィッと指を鳴らす。 と、近くの河辺に黒い球形の魔法陣が発生する。 そしてそこからは、おびただしいほどの瘴気が発生していた。 「魔門だと? 妖魔であれを自在に開ける奴がいるのかよ」 ルオウが叫ぶ。 そしてグレイまで間合を詰めるが、グレイは転移し、その場から逃亡。 やがて魔門からは一匹の巨大な龍が姿を現わした‥‥。 「ガルルルルルルルルルルルルルルルルルルッ」 喉を鳴らしつつ、警戒の色を見せる龍。 「逃げるよ。あれは『術食らいの龍』だから、あんたたちの術は効かないよっ」 と『猫又の博嗣』が呟く。 「なら‥‥」 と劫光がスッと退魔刀『断空剣』を構えた。 「これを食らえるとは思えないからな、サポート頼む」 と叫ぶと、そのまま一気に龍へと間合を詰めていった‥‥。 ●後日談 無事に被害者たちの魂は回収。 そして魔門から出てきた龍の排除も終えたものの、龍を退治するのに実に8時間も戦闘が続いていたらしい。 グレイは逃げてしまったが、それでも全員が生きているのがなによりだと、依頼主からのねぎらいの言葉があった。 またいつか、グレイと戦う時がくるであろう。 それまでに、さらに自の腕に磨きを掛ける必要があると、一行は心の中で誓いを立てた。 ──ポーンポーン 再び、どこかの街でグレイが現われる。 「さあ、愉しいサーカスが始まりますよ‥‥」 と、新しい犠牲者を求めて‥‥。 ──Fin |