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■オープニング本文 ──事件の冒頭 さて。 今年の凰凱擂台賽は荒れ模様の状態です。 1月の擂台賽での紅道場の活躍により、凰凱の青少年たちの一部が、紅道場へと足を運ぶようになりました‥‥。 2月の擂台賽では、始めて異国のチームが参戦、かなり上位に食い込むという事態が発生しています。 凰凱の武術連盟では、異国のものに『龍王』の称号を渡して鳴るものかと、さらなる訓練にはげむ道場が多数でているようですが‥‥。 「ふぉっふぉっふぉっ」 中庭の武舞台を眺めつつ、紅老師が静かに『てぃーたいむ』を楽しんでいる。 「紅師父、何か楽しそうですね」 と師範代が茶菓子を手に老師の前に座る。 「うむ。ここ最近の、我が道場の目まぐるしい活躍によって、門下生が増えるかと思ったのぢゃがのう‥‥」 と呟く紅老師。 「まあ、あいかわらずさっぱりですが」 「では、この名札を白龍、お主に授けよう」 「名札って、木の板そのままですね。で、道場生の名前がありませんが」 「うむ。当局のお達しにより、道場門下生の少ない所の参加は見あわせて欲しいという通達が」 「はあ、また開拓者さんたちに参加してもらったらどうですか?」 「そこぢゃよ。依頼として頼んでもらった開拓者の参加は認めないと。どうにかして、うちの道場の門下生というかたちで登録しなくてはならぬのぢゃよ」 と告げつつ、焼き栗をパキッと割りつつ口の中に放り込む。 「では、今回来て頂いた方に、うちの道場の門下生になって貰いましょう」 ということで話は纏まったようですが。 では、擂台賽でお会いしましょう。 |
■参加者一覧
恵皇(ia0150)
25歳・男・泰
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
静雪・奏(ia1042)
20歳・男・泰
剣桜花(ia1851)
18歳・女・泰
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
斉藤晃(ia3071)
40歳・男・サ
赤マント(ia3521)
14歳・女・泰
日御碕・神楽(ia9518)
21歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●門下生として ──泰国・凰凱・紅道場 「ほっほっほっ。ようこそ我が道場へ」 そこは道場の中に在る武舞台。 その中央で、紅老師は並んでいる開拓者達に抱拳礼で丁寧に挨拶を行った。 「今日からお世話になります」 「よろしく頼むぜ」 「出来る限り頑張らせて頂きます」 「何も出来ませんけれど、よろしくお願いします」 「そげん格式張らんと、気楽に行こうやな?」 「色々と学びたい事がありますから‥‥」 「むしろ、門下生になったからには責任を持って指導してもらいますよ、師父」 とまあ、みんなで挨拶を行なった後、それぞれが師範代の元で訓練にはげんだり、ここで色々なことを始めていた。 今回の大会でこそ、優勝を攫いたいという気持ちがあるのであろう。 武舞台では、恵皇(ia0150)と静雪・奏(ia1042)、ルオウ(ia2445)、斉藤晃(ia3071)、赤マント(ia3521)、日御碕・神楽(ia9518)といった面々が、紅老師の教えを受けている所である。 「手の内が判らない相手との戦いとな?」 「ああ。そんなものがあるのなら助かるんだが」 と告げる恵皇に、紅師父は静かに告げつつ構えを取る。 「それはぢゃな。『剛体術』を応用すればよいのぢゃが‥‥まあ見ていなさい」 と告げて、紅老師が構えを取る。 それはどう見ても隙だらけの構え。 もっとも、見る人が見たなら、わざと隙を作りあげて、相手の出方を伺っている攻防一体の構えである。 「なら。一切手加減抜きということか」 そう告げつつ、寸止めできるようにパワーを押さえた一撃が叩き込まれた。 ──スカッ あっさりと躱わしつつ、紅老師は静かに話を始める。 「初手は護りに準じて、相手の量はを観察することぢゃよ。相手を知り、己の技に繋げる。それ位貪欲でも十分ぢゃよ」 「師父、気の修練と精神の修練とは?」 そう問い掛ける静雪。 「己の体内に流れる気をまずは感じなさい。その後、それらをコントロールする方法を身につけるのぢゃよ」 「はい、判りました」 と叫んで、静雪もまた体内の気を感じ取ろうと始めた。 が。どうにも巧く流れを掴む事はできない 「心の中に迷いがあるのぢゃよ。そろそろ、気を掴むことを心掛けるようにするのぢゃ」 「その気のコントロールが出来れば、どんな事が出来るんだ?」 そう問い掛けるルオウ。 「そうぢゃのう」 と告げて、紅老師は近くに置いてあった燭台をじっと眺める。 ──フワッ と突然軽くジャンプしたかと思うと、その燭台の上に立っている。 「ほう!! それは信じられないが。でも事実なのは理解できた」 と斉藤が告げる。 「ねえ老師、ぶっちゃけ質問なんだけれど、わんドシ君の流派はなんなんだ?」 と赤マントが問い掛ける。 「北方の流派ぢゃな。五行八卦掌に近い動きをしているのう」 「それはどんな流派なんだ?」 「森羅万象から気を集め、己の中で増幅するというものぢゃ」 「それはまた‥‥」 と呟く斉藤。 ちなみにこの時点で、斉藤は訓練では泣く炊き出しなに言っていたらしく、大量のおにぎりを手に戻ってきたようである。 「ふぅん。僕の技とはまたかなり違う流派なんだね?」 「うむ。赤マントの流派は『瞑越』で身につけたものぢゃろう? 恐らくは『九龍門』ぢゃろう。今は伝えるもののない、滅んだ流派ぢゃよ」 そう告げられて。赤マントは静かに懐く。 「では斉藤さん、組み手をお願いします」 と告げる日御碕。 「ああ、構わんぞ。いつでも掛かってきなさい」 ということで、あちこちで訓練が開始された模様。 「で、紅老師老師は、風龍八十八聖ついてどれだけ知って居るんだい?」 とルオウが問い掛ける。 「色々な地区の腕っ節のいいのが集まっているということは。まあ、ここにいる皆ならば、そのうち抜くことができるかも知れぬ」 「と告げると、それ以上は深く語らなかった。」 ──その頃の泰拳士道場 「どうしてもズレる‥‥」 水鏡 絵梨乃(ia0191)は静かに猿歩法を身につける為静かに、足を進めていた。 大会までの僅かな時間で、歩法は何とか終えたものの、肝心の体裁きまではまだ間に合わなかったらしいが‥‥。 ●がんばれば‥‥こんどは真実 ──3月定例擂台賽 「それではっ。定例大会を開始するんだワンッ!!」 武道大会会場で、司会進行でもある昨年度『大覇王』のわんドシ君が大声で叫ぶ。 その言葉に会場に集まった観客が盛り上がる、まさに会場は興奮の坩堝となってしまった。 やがて個人戦と団体戦それぞれの対戦表が張り出されると、いよいよ一回戦が開始された。 前回、かなりいいところまでがんばった紅道場は無事に三回戦まで勝ち抜く事が出来た。 そして今回は、準決勝まで駒を進める事が出来たのである。 対戦相手はジルベリア代表のチーム・テラー。 さて、準決勝の結果を簡単に説明すると、全敗で敗北。 チーム・テラーはというとこのあとの決勝で敗退。それでもかなりの上位まで食い込めたので結果としてはよしという所であろう。 ─先鋒・敗者・恵皇 対戦相手はチーム・テラーの『もふもふ仮面』。 気功波から繋いだ空気撃とタックルで前半は巧く戦っていたのだが、後半に入ってから一気に形勢は逆転。 そのまま成す術もなく敗北を喫してしまった。 ──次峰・敗者・静雪・奏 対戦相手はチーム・テラーの『ニコニコ仮面』。 静雪にとっては、あらかじめ酒場で情報を集めていた人物であるが、その情報網で知りえた特徴や戦術が、まったくといって良いほど噛み合っていなかった。 「そ、そんなばかな‥‥これほどの腕だったなんて‥‥」 『骨法起承拳』で攻撃を行いつつ、ここぞという時には『泰練気法・壱』を使用していた静雪。その泰練気法使用中で気が充実している間に全力の『気功掌』を放って相手を倒す事を心がけていたのだが、その流れを相手が読み切り、気が解放された時に逆転された。 と言うことで、静雪もあえなく敗北であった。 「紙一重の戦いでしたよ‥‥」 ということであった。 ──副将・敗者・ルオウ 「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 気合十分のルオウの相手は、『嘆きの仮面』。 トリッキーな動きで相手を翻弄してくる『嘆きの仮面』にたいして、ルオウは最初から木刀を手に戦っていた。 敵の攻撃は木刀と交差させた手を使った『十字組受』でいなしつつ、隙を見ての連撃。 さらに手加減無用出し惜しみ無しで『不動』も発動させていたものの、それでも相手の一撃が重過ぎた。 手にした木刀が交差法によって粉砕されると、そのまま一気に超連撃で対抗してくる『嘆きの仮面』であったとさ。 ──決勝・絵梨乃・敗北 最後に一勝だけでもということで、絵梨乃は 対戦相手である『タヌタヌ仮面』。 酔拳による歩法と隊裁きを観光しつつ、蹴り技で仕掛けていった絵梨乃。 その動きを前半は相手が見きれず、ただひたすらに絵梨乃がポイントを大量にゲット。 だが、それも束の間まだ完全ではない隊酔拳が見切られてしまった為、やむなく敗北となった‥‥。 ●個人戦の光と影 一方、もう一つの舞台では個人戦が始まっていた。 参加者が増えつつある凰凱擂台賽、個人戦で優勝する為には、最低でも9回戦勝ち抜けなくてはならない。 紅道場の登録選手は4名。 それぞれが様々な組に分かれ、対戦表に名を連ねていくのであったが。 ここではやはり大番狂わせが発生していた。 それではその大番狂わせをダイジェストでお伝えしましょう。 ──1回戦・剣桜花(ia1851) 対戦相手は泰拳士の『趙彩龍』。 「私は、この試合で痩せなくてはならないのですぅ」 と心にちかって参加した剣桜花であっだか。 試合開始直後、相手のニ段づきの直撃を受けて、そのまま後方に激しくぶっとば剣桜花。 ──ドグシャァァ! という小気味よい音を立てつつ。カウントアウトで対戦相手である『荏田島冬哉』とかいうサムライに対して敗北。 何事もなかったように立ち上がって握手をかわしたのち、そのまま剣桜花は会場をあとにした。 ──7回戦・斉藤晃 今回は木斧で参加した斉藤。 「いつものよりは軽いがなじみある武器がええからな」 ということで、一撃必殺の両断剣で正面から仕掛けていった斉藤。 ちなみに対戦相手は泰国の器械使いの女性拳士。 お互いに一撃を躱わしつつ、隙をみての激しい打ち込みあいが始まっていた。 途中、二人の木刀が何度か破壊されるという事態も起こったものの、武器を新品に交換しての再戦なった。 結果としては斉藤が僅差で敗北したのだが、それでも斉藤はすがすがしい汗をかけて満足の模様。 「ふう。このあと、紅道場で残念かいのパーティーがあるのだが、よかったら参加せぬか?」 と対戦相手にも気を使う斉藤。 「暇でしたら‥‥」 という約束をもらい、とりあえずは丸く収まった模様。 ──7回戦目・日御碕 対戦相手はチーム・テラーのマスクマン『『太陽のカーニバル仮面(略して太陽仮面)』。 使用する武術は『喧嘩殺法』。 「ハァァァァァァイ。ベッピンナオジョウサンデスネェェェェェ」 楽しそうに腰を振りつつ踊りまくる太陽仮面。 「日御碕・神楽‥‥行くよっ!!」 と挨拶を行ない、ゆっくりと構えを取る日御碕。 そして開始の合図と同時に、高速戦闘が始まった。 『泰練気法・壱』、『空気撃』、『骨法起承拳』と順に使って攻撃を決めにはいるが、それらを全て受止められ、その全てにたいして交差法を叩き込んでくる太陽仮面。 「そ、そんな‥‥」 「モウ、メチャクチャツヨスギデェェェェス」 と叫びつつ、止めのいち家気を叩き込んでいく太陽仮面であった。 ──決勝・赤マント 対戦相手は白蝋という名の泰拳士。 「よろしくお願いします」 「こちらこそ」 と丁寧に挨拶を交わす白蝋。 その落ち着いているものごしに、赤マントはゾクゾクとしていいた。 事前情報によると、この白蝋、昨年度は大会に1度も出ていなかったらしい。 そして2年前の大会で、この白蝋は『大武王』の称号を受けている。 そして開始の合図と同時に、両者全力で仕掛けていった。 速度重視の赤マントの動きに怯むことなく、交差法を用いて仕掛ける白蝋。 その動きを見て、赤マントはいつもの戦闘域よりやや長い射程を持つ骨法起承拳を駆使し間合いをズラしつつ相手の関節を的確に狙い始めた。 その攻撃を受てから、白蝋もまた直に戦闘パターンを変更。 交差法ではなく、追撃の形に切替えていく。 ここにきて均衡していた両者の攻撃がついに決着。 最後の一撃で放った二人の攻撃はそれぞれが致命傷となり、二人とも擂台の上でダウン。 そのままカウントが取られて生名か、白蝋がわずかに早く立ちあがり、赤マントはノックアウトとなってしまった。 「‥‥あと一歩。その一歩が掴めない‥‥」 青空を眺めつつ、そう告げる赤マントであった。 ●そして 全てが終った。 団体戦では準決勝、そして個人戦では赤マントの準優勝を始め、各々が上位まで食い込み、じつにいい戦歴であった。 斉藤と他の門下生達により料理が作られ、道場では盛大なパーティーが行なわれている。 ちなみに今回優勝した道場は前回に引き続き、『チーム・ジルベリアのティターニア』。 そして個人戦優勝はだいぶ王の称号を持つ『白蝋』という泰拳士であった。 ──Fin |