【泰国】空路防衛
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: 難しい
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/02/27 16:52



■オープニング本文

──事件の冒頭
 さて。
 泰国東方に位置する凰凱。
 ここには飛空船の発着場があり、時折本国や他国からの定期連絡船が行き交っています。
 ですがここ最近、泰国王都からの直結ルートが飛んでこないという事件が多々発生しています。
 その理由が、王都と凰凱ほ繋ぐ航路上に最近になって現われた『雲状あやかし(仮称・幻入道雲)』の存在です。
 空路に突然漂っては、突入してきた対処ゥを捕食するという類のものらしく、飛空船で突入しても窓や扉の隙間から船内に侵入し、乗客や乗員を捕食してしまうらしいのです。
 その為、目視で航路上に幻入道雲が発生していた場合、危険を避けるために1度出発地かもよりの飛空場へと避難する様になってしまいました。
 幸いなことに、凰凱は衣食住は全て自給自足でまかなっているのですが、旅商人などはやはり生活が掛かっている為途方に暮れているそうです。
 そして、この件については『開拓者ギルド』にも連絡が入ったそうです‥‥。


■参加者一覧
天津疾也(ia0019
20歳・男・志
朝比奈 空(ia0086
21歳・女・魔
八重・桜(ia0656
21歳・女・巫
斉藤晃(ia3071
40歳・男・サ
赤マント(ia3521
14歳・女・泰
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰


■リプレイ本文

●空を制するもの
──凰凱・飛空船発着場
「やれやれ、航路に出てくる正体も知れぬアヤカシかいな。まったく厄介なものやな。航路をふさがれたら商売が成り立たなくなるわ」
 飛空船の横で駿騎に跨がり、そう呟いているのは天津疾也(ia0019)。
 今回の護衛任務で、天津は愛騎と共に作戦に参加していた。
「それで、教えて欲しいんだけれど、その『幻入道雲』っていうのは、いったいどんな須賀たかたちをしているんだい?」
 と、整備員に問い掛ける天津。
「大きさはとにかく巨大で、色合いはやや灰色がかった雲という感じです。外見は本当に雲そっくりなので、まちがって飛込んでいった飛空船や駿騎もいるっていう報告も受けています」
 と整備員が告げると。
「それは、どのようにして攻撃してくるのですか?」
 と朝比奈 空(ia0086)が問い掛ける。
「まあ、目標となるものを見つけたら、ゆっくりとそちらにたなびいてくるという感じですね。雲一つ無い日に幻入道雲だけならすぐにきがつくのですが、普通の雲の中にそいつがいた場合は、ほぼつかまっちまいます」
「まあ、それだけ大きいのなら、目視でなんとか発見して躱わすというのが一番の方法だね?」
 と八重・桜(ia0656)が告げると、整備員は頭を楯に振る。
「ええ。そうなんですけれど、意外と気付きにくい事が多くて」
 と一言。
「まあ、そんだけの情報があるなら、あとは兎に角船の周辺に気を配るしかないわ。ほら、道中寒くなることは必然やて、これを来ておくとええわ」
 と斉藤晃(ia3071)が大量の防寒着を持ってきた。
 その中には帽子やゴーグル、ミトンなどもあった。
「まあ、今回はそれでいいとして、出来るなら相手の弱点を見つけ、撃退したいところだよね」
 と告げるのは着替えの中から赤い服を見つけて着替えている赤マント(ia3521)。
「以前、腕に自身のある開拓者さんが同行して、その幻入道雲と戦ったことがあったのですが」
「ふぅん。その刻の様子でなにか判ったことは?」
 と赤マントが問い掛けると、整備員はしばし思考。
「入道雲の中に飛込んでいった人はその直後に溶けて骨だけになっていました‥‥あとは、そうですねぇ‥‥」
 と告げてから。
「逃げていた駿騎を追いかけていたこともあっふそうですが、その速度はかなり早かったそうです‥‥」
「その刻の生存者さんはいらっしゃいますか?」
 と鈴木 透子(ia5664)が問い掛ける。
「いや、殆ど捕まって溶かされたか、騎龍から堕ちて死んじまったな‥‥」
「そうですか」
 と告げると、透子はふとなにかに気が付いたかのように話を続けた。
「それでは、その雲の発生する条件とか、発生時刻、もしくは場所になにか特徴らしきものはありませんか?」
「ああ、そういうことか。場所については漂っているからどうともいいがたい。発生する時間も同じくだね。まあ、夜は飛空船もほとんどとんでいないから発見されていないと思うし、早朝は見掛けたという報告はないねぇ‥‥。ああ、そういえば特徴というか、雨の日は見掛けないねぇ」
 と告げる。
「雨天では幻入道雲は発見しない‥‥いや、発生できないとか、存在できない可能性があるっていうことだね」
 と赤マントが告げると、整備員が頭を捻る。
「そうなんじゃないかなぁ‥‥」
「まあ、そろそろ出発の時間だし、全員持ち場についたほうがいい」
 と斉藤が告げると、全員が騎龍に飛び乗り、出発の準備を続けることにした。


●静かなる空
──凰凱〜王都
 飛空船がゆっくりと空に飛び立つ。
 その周囲は開拓使や達の騎龍によってしっかりと護られ、全員が周囲に対して細心の注意を払っている。
 とくに怪しい霧や濃霧、入道雲なとが見つかった場合、それをすみやかに操縦席に伝達し、航路を若干変更して貰っていた。
「しかし、ええ天気やな。まさに絶好の飛空日よりや」
 とご機嫌の斉藤。
「今の所、瘴索結界には反応がないですねー」
 と八重が全員に告げる。
「そうか、なら、何か判ったら直に頼む」
 と赤マントも上空で告げると、そのままさらに周囲を見渡す。
「あ、あれ‥‥そうですよね?」
 と朝比奈が前方を指差す。
 そこには純白の入道雲に紛れて、灰色の入道雲が発生していた。
「‥‥範囲入りました!! アヤカシです!!」
 と、八重の結界にも反応が出た。
「飛空船ブリッジに伝言を。正面は危険ですので迂回にまわってください」
 と赤マントが告げる。
「では、作戦通りに」
 と告げると、天津が愛騎疾風と友に幻入道雲へと飛んでいく。
──フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
 と、その疾風目掛けて、幻入道雲がゆっくりと棚引いていく。
「遅いで。そんな速度では、俺の疾風は捕まえられへんて」
 と楽しげに告げつつ、間合を取り始める天津。
「そのまま右にそってくれ。実験する!!」
 と叫ぶ赤マント。
「応、頼むで!!」
 と、そのまま囮を続行している所に、愛騎のレッドキャップと共に幻入道雲へと飛んでいく赤マント。
「一人じゃ行かせられないで」
 と斉藤も併走するよに飛んでいくと、幻入道雲の目の前でターン。
「それじゃあさっそく」
 と火の付いた松明を放り投げる赤マント。
 と、幻入道雲はその火の付いた松明を避けるように丸くポッカリと穴をあけた。
 そこから松明は真っ直ぐに地上へと落下していく。
「ふぅん‥‥なら次は」
 と告げた時、斉藤が手にしていた鳴子を振る。
──カランカラン‥‥
 と小気味よい音が響くと、幻入道雲が少しずつそっちに向かって棚引き始めた他。
「音に反応するタイプで、火に弱いと!!」
 その天津の叫びに、一同が肯く。
「それなら、全て燃やしつくすまでや!!」
「本気で行かせて貰いますよ」
 と二人は騎龍で上昇する。
 そして幻入道雲の真上に出ると、そこでレッドキャップと熱かい悩む火種が同時に炎のブレスを吐き出した!!
──ゴウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
 その炎に焼かれて、幻入道雲の姿が半分溶けてなくなった。
──ヒュヒュンッ!!
 と、幻入道雲の中心様々な場所目掛けて、天津が理穴弓で大量の矢を打つ。
──ヒュンヒュンヒュンッ‥‥
 一発も何にもかすりもしなかった。
「これで実体が無いことは理解した。では次の段階へと進んでいくしかあるまい」
 と機関長に叫ぶ斉藤。
「炎のブレスをとにかく叩きつける」
 その叫びに、天津の疾風、朝比奈の禍火、八重の染井吉野がまず一斉にブレスを吐き出す!!
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
「効いてます!!」
「では、さらに追い撃ちで‥‥」
 と、朝比奈が浄炎を発動。
 それは幻入道雲の表面全てを覆い尽くし、チラチラと焼き尽くしはじめた。
 やがて散り散りになった幻入道雲に向かって、さらに斉藤の『熱かい悩む火種』と赤マントのレッドキャップが止めを差しにまわりこむ。
「素直に燃えちまえや」
「これで終りにしましょう」
 と同時にブレスを吐き出す騎龍達。
 さらに周囲を大きく旋回しつつ、透子が残った幻入道雲がいないかどうか確認している。
「周囲の確認完了です。左舷下方に棚引きつつ逃げていく幻入道雲があります」
 と透子が周囲を見渡してのこった一部を確認。
 そこにさらに天津の疾風がブレスを吐き出して、全てを消滅させた。



●そして帰路
 無事に行きの務めを果たした一行。
 王都で一泊し、あとは出発時間を待つばかりという情況になったのだが。
「出発が送れるって? なんやそれ?」
 素っ頓狂な声を張り上げている天津。
 帰路の護衛に付いての打ち合わせを行なおうと皆で飛空船発着場までやってきたのだが、整備員にそう告げられて困り果てている状態。
「で、どうしてスケジュールが変更になったのですか?」
 と透子が訪ねると、後ろから船長が一行に声を掛ける。
「船体の一部が損傷してしまっていたらしい。これは先日の幻入道雲の件ではなく、純粋に劣化という話だ。で、また幻入道雲に遭遇した場合、全速力で逃亡することがかなり難しいらしいから、その補強も兼ねてということだ」
「そうですか。では、出発する具体的な時間はどれぐらいなのでしょうか?」
 と朝比奈が問い掛けると、船長は静かに作業員たちの動きを見る。
「3刻ほどだな。それまでは自由時間にして構わないから」
「では、依頼主さんからのご厚意を受けさせて頂きます‥‥」
 と八重がペコリと頭を下げる。
 そして一行は、束の間の自由時間を手に入れた訳であるが。

──王都・朱春城下街
「そ、それにしても‥‥」
 右も左も大勢の人人また人ととにかく活気に溢れた城下街の一角。
 飛空船発着場からも近いという事で、一行はこの辺りで時間を潰そうと考えていた。
「ふぅん。ここにも不思議な食べ物がぎょうさんあるなぁ‥‥」
 と天津が露店を見ながらそう告げる。
 この泰国では、とにかく食文化が他の島に比べて進んでいるのが特徴。
 地域や風土によって、その調理方法や食べかた、食材など千差万別である。
「ああ、そこのにーちゃん朱春は始めてかい? だったらこれを喰わなきゃ!!」
「いやいや、この焼き栗はどうだい? 味付けから焼きあがりまで、一流の焼栗師が手掛けた逸品だぜ」
「喉は渇いていないかい? どうだいお茶でも一杯。この朱春の近くで取れた『鉄儒仙茶』だよ」
 とまあ、色々な呼び込みが一杯。
「そ、それじゃあこれとこれを‥‥」
「あ、私はこっちを下さい」
「色々とありすぎて迷ってしまいますね‥‥これを下さい」
「わ、私は‥‥ここの全部!!」
 と女性陣は次々と買い物三昧に明け暮れている模様。
 といっても、露店で美味しそうな食べ物をチョイスしているだけであるが、実に楽しそうである。
「しかし、どうしてこんなに食べ物が豊富なんやろ?」
 と斉藤も饅頭片手にそう呟く。
「国が豊かだからじゃないかね。国が豊かで、人が豊かだからこそ、心も豊かになるっていう感じやないか?」
 と天津が返答する。
「ガブッ‥‥ふむ。はふほほのふ。ほうひうほほならは、ははひははかふ」
「さ、斉藤。食べてからしゃべってくださいよ」
 と赤マントに突っ込まれる斉藤。
「ゴクッ‥‥ふう。それは失礼。しかし、この平和も中央だけで、地方ではいまだ小さな争いが耐えないという話も聞くが‥‥」
 と再び飲み物を買いつつ、斉藤が露店の店主に問い掛ける。
「地方では小競合いだって? そんな話はきかないねぇ」
「しかし、桃華や昇竜などは、風龍八十八聖に占拠されてしまっているという話だが‥‥」
 と斉藤もまた聞きつけた話を告げるが。
「風龍八十八聖? それはいったいなんなんだい? 桃華や昇竜といった地方の街は、その地方を納める御偉いさんが治安を維持しているしゃないか。そんないくつもの街を占拠するような組織なんて聞いた事も無いねぇ」
「そうそう。俺はこの街で随分と長く仕事をしているんだけれど。やっぱりその風龍なとんかっていうのは聞いたことないねぇ」
 と、地方の事件についてはここでは余り広まっていないらしい。
「そ、そうですか‥‥」
 と驚いた様子の赤マント。
 と、その赤マントの後ろから声を駆けてくる奇妙な生命体が一人。
「ややや、こんなところで久しぶりだワン」
 と赤マントに声をかけたのは御存知『大覇王・ワンドシ君』である。
「おや? こんなところでわんドシ君とは。どうしてここに?」
「この人たちを連れて観光だワン」
 そう告げてわんドシ君が紹介してくれた人物は、先日擂台賽で戦ったシスター・ヘルメスとそのご一行様であった。
「初めまして。私は‥‥」
 と次々と挨拶を躱わすと、そのまま一行は近くの飯店に入り、そこで飲茶をすることにした。
 そこでは色々と情報交換をする事が出来たのだが、地方で起こっている事件については、まだこの中央までは届いていないということが判った。
 凰凱を始めとする地方都市で開催されている擂台賽については中央でも承認されており、わんドシ君もここではそこそこの知名度であるらしいという事も判った。
 しかし、風龍八十八聖の活動についてはこの辺りでは知られておらず、まるでその情報が巧く隠蔽されているようにも感じ取れた。
「そんなことをしてどこの誰に利があるのか‥‥それが判らないからこまるんやわ」
 と天津も頭を捻る。
「まあ、今はそんなことを考えていても始まらないでしょう? もう少しで飛空船も出発します。そろそろ戻って護衛の準備をしたほうが宜しいのでは」
 とつげる朝比奈の言葉に同意し、いよいよ全員が帰路の為の準備を開始した。


●そして危険へと
──王都〜凰凱
 束の間の観光を楽しんだのち、凰凱へと戻る準備をしていた一行。
 帰路でも幻入道雲の姿は確認され、再び戦闘に入った一行。
 だが、今度の幻入道雲には炎や火の類は全く通用しなかった。
「す、少し色が違います。来るときに見たのは薄暗い色でしたが、今度のはやや赤みがかった雲です!!」
 と叫ぶ透子。
「まあ、冷静に考えて‥‥来たときのものとは別種と考えた方がいいんやろ?」
 斉藤がそう告げると、大斧『塵風』を構えてしばし幻入道雲の動きを観察する。
「‥‥あれは炎が効かないわ。なんとか急ぎ迂回した方が‥‥」
 という一行の意見で、飛空船は大きく進路を代えて凰凱へと戻っていった。

 取り敢えず護衛任務は無事に務めた。
 なお、依頼が終ってから、凰凱を飛びたつ飛空船全てに対して、プレスを吐ける騎龍の同行が盛んになったとか。

──Fin