【泰国】山中大障害飛翔
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/12/25 20:12



■オープニング本文

──事件の冒頭
 大勢の人々で賑わう街。
 ここ泰国中央にある『桃華(とうか)』は、ここ最近になって一つこまった出来事が起きはじめていた。
 風龍八十八聖の『赤流星の斜亜』が姿を見せなくなった直後、この街にはとある事件が起こっている。
『怪人赤マント』と呼ばれている奇妙な盗賊が町の中に出没し、富豪や豪商の宝物庫などを荒し回っている。
 しかも、予告状を堂々と送り付け、狙った得物は必ず奪っていくという徹底ぶり。
 人殺しはしないものの、ぶっちやけていうと犯罪者には変わりはない。
 ということで、其の日も、とある商人の屋敷に予告状が届けられていた。

 まあ、そんなことは関係無いのだが、其の日、開拓者ギルドでは、様様な打ち合わせと懐疑が行なわれていた。
 その中でも議題となったのが『龍』の訓練についてである。
 これから様々な局面が考えられる中、龍と乗り手の訓練はかなり必要になってくる。
 ということで、後日、急遽飛行訓練を行う事となった。
 以下が訓練情況である。

・桃華から昇竜までを龍にのって高速移動。
・昇竜の開拓者ギルドで、まず『龍の割り符』を得る。
・昇竜から近くの山脈へと移動、そこの中腹にある『高さ8m、幅15mの自然洞』へと突入、その中で待機している案内(もふら様)から『虎の割り符』を得、反対側からでる。
・自然洞を越えた後、深く多い繁った森の中に突入。森の内部を低空飛行で移動、その途中で待機している案内から『鳳凰の割り符』を入手。
・そのまま桃華の開拓者ギルドへ帰還。

 これらを8人の開拓者で同時に行ない、より早く、より正確に桃華まで誰が戻ってくるかを競うというかたちの訓練である。
 さて、命知らずの開拓者諸君、この過酷な訓練に参加するかね?


■参加者一覧
小伝良 虎太郎(ia0375
18歳・男・泰
皇 輝夜(ia0506
16歳・女・志
雷華 愛弓(ia1901
20歳・女・巫
黎乃壬弥(ia3249
38歳・男・志
赤マント(ia3521
14歳・女・泰
ペケ(ia5365
18歳・女・シ
トゥエンティ(ia7971
12歳・女・サ
久我・御言(ia8629
24歳・男・砂


■リプレイ本文

●さあ、はじまりますよっ!!
 桃華開拓者ギルド駐騎場
──中山大障害戦
 初めての飛龍競走。
 大勢の観客が飛龍をひと目観ようと集まっている。
 今回は、初戦のためのレース。
 まあ、今まで自分と朋友のふたりで築き上げた絆があれぱなんとかなる。
 一体どんなレースを見せてくれるか、今から愉しみである。

 ザワ‥‥ザワザワ‥‥

 大勢の人で賑わっている桃華開拓者ギルド・駐騎場。
 そこには今回選抜された8人の龍が並び、出発の時間をじっと待っている。
 そして駐騎場の近くには、併設された官客用のスタンドや露店、はては『飛龍賭札』なる札の販売所とそれを換金する為の換金所などが併設されていた。
「ず、随分と見学者がおおいですねぇ」
 小伝良 虎太郎(ia0375)がそう告げつつ、パートナーである龍太郎に鞍を装着している。
「そこのにーちゃん、調子はどうだい?」
 そう観客から声を掛けられて、虎太郎は一言。
「最高だよっ!!」
 と手を振る。
「まあ、その余裕もどこまで続くか‥‥」
 とクールに告げているのは皇 輝夜(ia0506)。
 パートナーである誇鉄に振れつつ、何かを話し掛けている。
「そっちのにーちゃんも調子どんな感じだい?」
「まあまあですね‥‥で、さっきから私達に色々と話し掛けてきますけれど、何かあったのですか?」
 そう観客に問い掛ける皇。
「何って‥‥レースだよレース。『飛龍競走』っていうやつでね。ここに一番と二番で戻ってくる飛龍を当てるって言うギャンブルだよ」
 その言葉ののち、パートナーである『ぷち太』に跨がっている雷華 愛弓(ia1901)がやはり観客をみる。
「みなさんー。今の所の掛け率は一体どうなっているのでしょうか?」
 と問い掛けると。
「まあまあ、最終はでていないけれど、殆ど互角じゃないかな? あのちっこい奴いがいは‥‥」
 と返事を返す。
 ちなみにちっこいやつと言われたのはトゥエンティ(ia7971) の事である。
「そうですか。互角なのですね」
 とちょっと嬉しそうに呟く雷華。
 ちなみに雷華、誰も始めていないのであれば掛け札を自分で作って販売しようと思っていたらしい。
 もっとも、現時点ですでに賭けの胴元が決まっているようだから、ちょっと出遅れた感じであろう。
「まあ、どの龍が勝つかなんて、もう答えはでているんじゃねーの?」
 と大きい声で呟いているのは黎乃壬弥(ia3249)。
 そう告げつつパートナーである定國(さだくに)に跨がり、手綱や鞍の壱などの最終調整を行なっている模様。
「‥‥賭けの対象になっているのはちょっと問題があるよう気がするのだが‥‥」
 と告げつつも、赤マント(ia3521)は地図を広げてルートの確認を行なっている。
 今回の飛龍による競走訓練、事前にルートの下見をすることは禁じられている。
 その為、洞窟ルートの中の迷宮が一体どうなっているのか、それを知って居るのものは誰もいない
 オープンフィールドの地図だけは用意してあったので、赤マントはそれを観ながら細かい地形を頭の中に叩き込んでいる最中であった。
「まあ、私達は出来る限りのことを全力でするだけですよね?
 とパートナーである『桃竜』に話ていペケ(ia5365)。
 すでに桃も殺る気‥‥いやいや。やる気十分の模様。
 さらにその隣では、
  トゥエンティが炎龍のコロッサスの上に鞍を安置しているところであった。
「へいへいお嬢ちゃん、しっかりとしがみついていないと振りとおされるんじゃないのかい?」
 と野次馬が冷やかす声を上げるが。
「不粋な。我が輩にかって欲しかったら、野次ではなくエールの一つでも送ったほうがいいのである。そんな事も判らず、他の竜に賭ける者など知らないのであーる」
 ときっぱりと言い切った。
 これには観客もエキサイティング。
「おいおい。この競走は大金が掛かっているんだ。子供が洒落で参加していいものじゃないんだぞ!」
 とさらに言い返しているのだが。
──ビシィッ
 腰に左手をあて、ギャラリー向かって右手人差し指を向けると一言。
「その言葉。公開するなである!! もし我が輩の言葉を信じているものがいるのなら、有り金全て私に賭けろである!!」
 と叫ぶトゥエンティ。
「はいはい。今からそんなに興奮してどうするんだぁ?」
 とトゥエンティに告げているのは久我・御言(ia8629)。
「し、しかし、あの者たちが無礼な言葉を」
「ああ判った判った。だからその怒りはぐっと握っておきな。その余った力は競走にぶつけるんだ。そしてさっき自分で言っていた見たいニ、勝利で見返してやればいい‥‥もっとも」
「もっとも?」
「この私に勝てればの話だがな」
 とトゥエンティにも勝るエラそうな口調。

──カツーンカツーン

 やがて、開拓者ギルドより責任者が姿を表わす。
「開拓者のみなさん御苦労さまです。それでは出発前にもう一度競走の説明をさせていただきます‥‥」
 と半刻ほど説明が行なわれ、いよいよ出発の時間を待つばかりとなってしまった。
 その間にも、次々と賭け金を持った人々が賭けの胴元のもとに向かう。
 そこで一着と二着(簡単に告げると単勝複式)を申請し、所定の支払い手続きを行なった後『飛龍賭札』を受け取った。
 

●レース当日〜ミスター満州の『俺に乗れっっっっっ』
──スタート地点
 まもなくスタート時間。
 今回は初めてのレースと在って大盛況。
 スタート地点には大勢の人が集っていた。
「はい、今回からレースの解説をさせて頂く笹木です」
「はい、同じく笹木さんの解説と予想に激しく突っ込みを入れさせて頂く陰山です」
 とまあ、特設ステージでは、二人の司会がレースを盛り上げていた。
「それでですね陰山さん。現在の所一番人気はどの飛龍でしょうか・」
「そうですねぇ。どの飛龍も一長一短、とぜこまで飛龍とコミュニケーションが取れているかが師腰部の分かれ目となります」
「では今回の本命は?」
「ずばり『桃竜』でしょう。これを軸に流せばまあ、あまり損はないかと思われますが」
 とまあ、色々と話が進む中、いよいよレースが開始される。

 各飛龍一斉にスタートラインに到着。
 そして今回のレースの主催者である開拓者ギルドの責任者が代表として前に出て挨拶。
 そしてそれが終ると、各馬一斉にスタートラインにつく。
「それではっ。よーーーい、すたーーーとっ!!」

「いくよっ!!」
「いけェぇぇぇぇ」
 いきなりスタート直後に全力でそう叫んでいるのは赤マントと虎太郎のふたり。
 虎太郎の『龍太郎』と赤マントの『レッドキャップ』が共に並び、ほぼ同速度で第一ポイントの昇竜へと目指す。
 その後方に炎龍のチームと甲龍のチームがほぼ同一かやや遅い速度で追跡中。
「ちょ、ちょっと待つのじゃ!! いきなりの直線では駿龍に勝つことなどできぬのじゃ!! コロッサス、限界まで頑張るのじゃ」
 とトゥエンティが愛騎のコロッサスに激を飛ばす。
「ちっ‥‥同じ全速移動でも、駿龍と炎龍では元々のポテンシャルが違うから止むをえずというところか‥‥」
 と皇も呟きつつ誇鉄に激を入れる。
 それに呼応するかのように加速を繰り返す誇鉄だが、すでに先頭のふたりは昇竜の開拓者ギルドまで到着。
「‥‥速すぎ‥‥甲龍の速度じゃ、どこで距離を稼げばいいのだか‥‥」
 と今回の競走唯一の『甲龍』である黎乃 の定國。
 実際、甲龍ではかなりきついレースであることに間違いはない。
 第二、第三チェックポイントまでの洞窟、森林でどこまであらがうことができるか、それが勝負の分かれ目となるのであろう。
「今は無理をしないで下さいね‥‥」
「ミャー」
 と愛騎の桃竜に話しかけているのはペケである。
 駿龍であるにもかかわらず、まだ上位には食い込んでいない。
 まだ桃竜は競走などに使用する為の調整は終っていないのである。
 それを知って居るペケ自身も、完走できれば御の字と思っているのであろう。
「まあ、直線ではどうにもならんな‥‥」
 と呟く久我。
 どうしても種族的な差は技術では埋めようがないと悟っている模様。
 だが、焦っている訳でもなく、長いレース、どこかで確実にポイントを取り返すという感じなのであろう。
 
 さて、まずはトップと二番手に昇竜開拓者ギルドに飛びこんでいったのは虎太郎と赤マント。
 そのままふたりは『竜の割り符』を手に入れて洞窟へと向かっていった。
「流石は駿龍というところですね。でも、ここからが本当の戦いになります!!」
 そう告げるのは雷華。
 すかさず割り符を受け取ると、そのまま洞窟へと移動。
 その直後は団子状態で次々と割り符を受け取り、そのまま第二チェックポイントのある洞窟に次々と突入していった。

──ピチョーーーーン
 
 薄暗い洞窟。
 松明の明かりがかすかに洞窟内部を照らす。
 そんな内部に次々と突入し、何処かにいる筈の第二チェックポイントのもふら様を探す。
「‥‥以外と狭くないな‥‥」
 と告げつつ皇が低空でもふら様を探す。
 だが、今の所誰も発見できていない。
「全く。こうまで道が曲がりくねっていると、なかなか急ぐということはできないのか‥‥」 と黎乃が呟きつつもふら様を探す。
 だが、一体どこにいるのか、全くわからなかった。
「ここは自己に巻き込まれないよう、慎重に安全に‥‥」
 とペケが付けつつもふら様をさがす。
 だが、今の所誰にも見つかっていない。
 これは一体どういうことだ?
「見える。我が輩には全てがみえているぞ!! こっちだ、こったなのである」
 トゥエンティがそう叫びつつ、目的であったもふら様を発見。
 そのまま近くまで降りていくと、のんびりとしているモフラ様の近くで酒を飲んでいる拳士
も確認。
「割り符を頂に参った」
「ああ、だってさ」
 と告げると、泰拳士はもふら様から『虎の割り符』を取り、トゥエンティに投げてよこす。
「うむ、かたじけない‥‥そうじゃ?」
 とゆっくりと跳びはじめると、トゥエンティは大声で叫んだ。
「ここにもふら様がいるぞなっ!!!!」
 その声は洞窟全体に乱反射する。
 あくまでもフェアに。
 正面から正正堂堂と戦って勝利する。
 それがトゥエンティの生きざまなのであろう。
 だが‥‥。
「何っ。そっちかよっ!!」
 と逸早く声のした方角に跳びはじめた久我。
「よし、この空間ならまだこっちの方に分がある」
 黎乃 も声のした方角に中速移動。
 これがこのような空間でもっとも効率がよいのであろう。
 周囲の細い道や突然低くなった天井などをスルリスルリと抜けつつ、久我と黎乃 は第二の割り符を受け取る。
 そして、ここからが悲劇の始まり。
 やがて赤マントや虎太郎、雷華、ペケ、皇らが団子状態でもふり様の元に向かう。
 そして広い空間の中央で待機していたモフラ様を確認すると、だれかれ構わず逸早く割り符を手に入れる為にもふら様に向かって飛んでいった。
「!!!!!!!」
 大量の飛龍が一斉にもふら様に飛んでくる。
 それを見たもふら様は流石に脅えたのか、さらに洞窟の奥へと走り出した!!
「いや、ちょ!!」
「ちょっとっまって下さいっっっっっっ」
「あーーーっはっはっはっ。逃げるって言うのは計算外たなぁっ」
 虎太郎、雷華、そして赤マントが叫ぶ。
 そんなこともお構いなしに皇、ペケの2名は黙々ともふら様を追跡する。
──プラーン
 と、赤マントが着地して懐からニンジンを取出すと一言。
「甘いニンジンだよもふら様」
──もふふっ!!
 と、突然止まったもふら様が、急いでターン、赤マントの方へと走っていった。
 それを眼下に眺めつつ、Uターンできそうな空間を探すペケと黎乃 、皇の3名。
「赤マントっつっっっっ。そんな技ありですか」
 皇が叫ぶが聞く耳もたず。
 そのまま次々と割り符を手に入れて、最後にペケが割り符を握ると、そのまま急いで洞窟から脱出していた。

──そしていよいよ第三チェックポイント
「すべては頭脳戦なのである!!」
 ご機嫌のトゥエンティ。
 地図にマークされている場所に向かっている。
 その後ろから次々と低空飛行に切替えて森林の中に飛込んできたほかの開拓者の姿もある。
「ここが正念場だよっ!!」
 そう叫びつつ虎太郎の龍太郎がトゥエンティの『コロッサス』に追い付いた!!
「随分と素早いのである。けれと、この私達に‥‥」
──ヒュンッ!!
 そのトゥエンティ達の横を掠めて、黎乃の『定國』が飛んでいった。
──バチバチバパチッ!!
 低い枝もなんのその。
 兎に角突進力のみで戦いを仕掛けてきたにも関らず、一行に加速が衰えないというのもかなりの脅威であろう。
「甲龍ならではというところですか‥‥」
 雷華がやれやれといった表情を見せる。
 だか、まだ諦めた訳ではない。
 そのまま『鳳凰の割り符』を手に入れると、次々と森林を突破。
 その入り口当たりから一気に加速を仕掛けてきた黎乃 。
 自分の装備を次々と外し、袋に詰めて眼下の街道に放り投げる。
 少しでも荷物を軽くし、加速しようというのだろうが。
「その程度では加速に価せぬ‥‥我が輩をみよ」
 と、限界まで身体を伸ばし、空気抵抗をなくしているトゥエンティの姿もあった。
 あとは後続の駿龍たちがどこまで追い付いてくるか。
 そしてゴールまで誰が一番早くたどり着くことができるか‥‥。
「あったのじや!!」
 と、ぺんこ‥‥もとい鞍の上でひらぺったい姿のトゥエンティが、ついに第三チェックポイントの主を確認。
「ささ、はよう『鳳凰の割り符』ほよこすのぢゃ」
 と告げつつ割り符をキャッチ。
 そこからはトゥエンティの独壇場。
 そのまま限界ぎりぎりまで加速を続けていく。
「そんな‥‥まだまにあうってか!!」
「このまま後続が追い付く前に!!」
 黎乃と久我のふたりがトゥエンティを追いかける。
 すかさず割り符を受け取り、ついにゴールへと一直線‥‥なのだが。
 森が思ったよりも深く、これをなんとかしないとゴールが見えてこないというのも事実。
「くっ‥‥高速回避が仕えるけど、使うと加速が消えていく‥‥」
 苦悩しつつ、虎太郎も急いで割り符を受け取っている。
──ズバァァァァァァッ
 皇の愛騎である誇鉄もまた、装備されている爪鋼を駆使して下枝を次々と大切断。
「ちっ‥‥やっかいだな。いくら切ってもきりがない‥‥」
 と呟く皇。
 まったくその通りで、後続の殆どが同じ悩みに晒されているのである。
「ここはじっと我慢です‥‥あと少し先、そこから加速すればかなりず‥‥」
 雷華もまた、徐々に加速を開始。
 駿龍の持つ速度をぎりぎりまで高め。現在先頭を飛んでいるトゥエンティを有効射程に捉える。
「まだ、あと少し、もうほんの少しなんだ‥‥」
 そう呟きつつ、『心眼』を駆使して先にすすむ久我。
 まもなく最終コーナ。
 目の前にはトゥエンティ、そして後ろからはいつのまにか追い付いてきた雷華の姿があった。
「秋葉よ、私がお前の目となろう!」
 久我も先頭を射程に捕らえた。
「今、ここにおいて我らは人龍一体! 私と秋葉の前など誰にも走らせはせん!今こそ駆け抜ける時!」
 その言葉が、秋葉に気力をもたらす。
 疲れきっていた肉体が活性化し、その瞳に精気が戻ってくる。
 それでも、トゥエンティのコロッサスまではまだ距離がある。
「さあ行くぞコロッサス! 巨像の名に恥じぬ働きを、皆にみせつけてやるのである!」
 そのトゥエンティの笑顔に答える為に、コロッサスも最後の気力を振り絞る。
 そしてゴールラインをトゥエンティのコロッサスがまず一位で通過。
 二位には久我の秋葉と雷華のぷち太がほぼ同時に通過。
 ゴールで待機していた審判に全てが委ねられることとなった‥‥。


●そして全ては終った模様
──桃華・開拓者ギルド外駐騎場

 ワーーーーワーーーーーーワーーーーーーワーーーーーーーーーー

 大勢の人々が集まって、勝者にエールを送る。
 それを身体全体で感じつつ、トゥエンティが手を振る。
「ほれみた事か。これで我が輩の理屈は正しかったことにななるぞ」
 と呟くトゥエンティ。
 そのすぐ下の段では、二位であった雷華が立って笑っていた。
「トゥエンティさん、次は負けませんからね」
「我が輩に勝とうとすること自体笑止である‥‥が、また愉しい競走をしようぞ!!」
 そんなふたりのやりとりを聞きつつ、柵の外では負けた『飛龍賭札』を空に放り投げているものの姿があった。
 トゥエンティに賭けていた者たちはかなり少なく、倍率ではなんと1024倍というかなりの高倍率になってしまっていた。
「わっはぁ‥‥圧勝圧勝!!」
 と楽しそうに笑いつつ、併設された換金所に『飛龍賭札』を持っていく諸葛先生。
 ってまたしてもあんたかよ!!

──そして
「ペケ&桃竜只今帰還しました〜!! って、あの皆さん変な顔してどうしたのですかか???」
 最後尾で飛んでいたペケがようやく帰還。
 そのまま桃竜を着地させてヒラリと按上から飛び降りた。
 と、そのペケを見る視線が微妙に痛い。
「あれれ? いったいどうしたのですか?」
 そう問い掛けたのも束の間。
「下‥‥下っ!!」
 と観客の一人がペケの股間を指差す。
 そこにはペケの下ばきだけの姿があった。
 途中の森林地域で、ペケの袴は枝に引っ掛かって吹き飛ばされたらしい。
はうぅ。完走したのに恥じかいてしまいました‥‥」
 どっとわらい。
 さて、賭けの成立をじっと見ていた雷華。
 今回の賭けの主催者と話を行ない、次回以降も賭けを行う事を約束。
 そして開拓者ギルドでも、今回のこの異様な盛上りを有効活用しない手は無いと判断、競走を定期的に行う事を観客の皆さんに約束していた。
 
──Fin