【泰国】怪人赤マント
マスター名:久条巧
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/12/22 04:39



■オープニング本文

──事件の冒頭
 ザワザワザワザワ
 大勢の人々で賑わう街。
 ここ泰国中央にある『桃華(とうか)』は、ここ最近になって一つこまった出来事が起きはじめていた。
 風龍八十八聖の『赤流星の斜亜』が姿を見せなくなった直後、この待ちにはとある事件が起こっている。
『怪人赤マント』と呼ばれている奇妙な盗賊が町の中に出没し、富豪や豪商の宝物庫などを荒し回っている。
 しかも、予告状を堂々と送り付け、狙った得物は必ず奪っていくという徹底ぶり。
 人殺しはしないものの、ぶっちやけていうと犯罪者には変わりはない。
 ということで、其の日も、とある商人の屋敷に予告状が届けられていた。


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         予告状
 
 武具商人『サー・モンテクリスト』殿に告げる。
 貴殿の大切にしている『蒼龍の碧玉』を戴きに伺います。
 予告時間は7日後の深夜。
 それでは当日を楽しみに待っていてください。


             怪人赤マント

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 この予告状を送られたサー・モンテクリスト卿とは、ジルベリアからこの泰国へと渡ってきた武器商人。
 様様な武器をジルベリアから泰国へと輸入し、その販売を行なっていた。
 その彼が若き時代、とある森の中で発見したのがこの『蒼龍の碧玉』である。
 丸い球形の碧玉に透かし彫りで蒼龍ほ形取ったもので、その中央には宝珠が一つ入っているという。
 
「ということで、私はこの碧玉を手に入れてからというもの、次々と仕事が成功してね。どうしてもこれは奪われたくないのだよ‥‥頼むから、これを怪人赤マントから護ってほしい」
 ということで。
 開拓者一行は、旅の道中通りかかったのか、この街の酒場で飲んだ暮れていたのか知らないが、腕の立つ開拓者ということで屋敷へと招かれてしまったわけだ。

 はたして、『蒼龍の碧玉』の運命は?

 





■参加者一覧
三笠 三四郎(ia0163
20歳・男・サ
朱璃阿(ia0464
24歳・女・陰
ロウザ(ia1065
16歳・女・サ
アルティア・L・ナイン(ia1273
28歳・男・ジ
嵩山 薫(ia1747
33歳・女・泰
御凪 祥(ia5285
23歳・男・志
神鷹 弦一郎(ia5349
24歳・男・弓
春金(ia8595
18歳・女・陰


■リプレイ本文

●それでも泰拳士かっ!!
──桃華・モンテクリスト卿宅
「ふぅ‥‥」
 溜め息を付きつつ、室内をうろうろとしているのは今回の依頼人であるモンテクリスト卿。
「まあ落ち着いてください。私達におまかせ頂いた以上、確実に護りとおしてみせます」
 にこやかにそう告げているのは三笠 三四郎(ia0163)。
 今回の依頼人の本を訪れた開拓者一行は、まず挨拶を行ったのちに現地の調査と情況を把握する為、1度『目的の物』の安置してある部屋へと赴いた。
 そこは大きな宝物庫。
 建物の離れではなく、大胆にも屋敷のほぼ中央に作られた特別室にそれは安置されていた。
 といっても、他になにか仕掛けなどがある訳では無い為、そこへと向かう回廊や小部屋などを巧く利用し、怪人赤マントを捉えようということになったのである。
「まあ、信用していない訳ではない。ただ、今までに狙った得物は逃していないという赤マント、それでもやはり心配なのだよ‥‥」
 と告げて、時折窓の外を眺めては、椅子に座って煙草を負荷したり、また立上がってうろうろとする。
「まあ、あとはおまかせするしかないか‥‥よろしく頼むよ」
 と言うことで、間もなく犯行予告時刻に鳴ろうということで‥‥。


●敵も天晴れな
──桃華・モンテクリスト卿宅
 既に時間は深夜。
 モンテクリスト卿は警護を開拓者たちに頼むと、一人自室へと戻っていった。

──回廊手前の居間
 ここからがいよいよ正念場。
 アルティア・L・ナイン(ia1273)が行なっていたらしい昼間の情報収集では、赤マントがみかけよりもかなり動きのいい、そしてノリのいい存在である事は判ったらしい。
「そろそろ時間だな‥‥気を付けた方がいいか」
 そう呟いているのは御凪 祥(ia5285)。
 その近くでは、春金(ia8595)も静かに、周囲に対して細心の注意を払っている。
「‥‥きたようじゃな」
 そう春金が呟くと同時に、居間の入り口がギィィィィィィィィィィィィィィィィィッと開く。
「お待たせしました。私が噂の怪人赤マントぉぉぉぉぉぉっ」
 丁寧に挨拶しつつ、そう呟く赤マント。
「ここから先には一歩も進ませないっ!!」
 そう告げて、御凪が前にでる。
 そのまま赤マントと退治する御凪とアルティア。
──ヒュヒュンッ!!
 そこからは神速の攻防が始まった。
 左右のステップを巧みに使いこなす赤マントと、それにどうにか合わせているものの、速度で負けはじめている二人。
 その情況はとにかく危険であろう。
「力ずくでも通してもらいましょかーーー」
──ドコドコチドコドコドゴドゴッ
 激しい連撃。
 それらをつぎつぎと繰り出しつつも、赤マントは先へと進もうとする。
 その攻撃を必死に避けるアルティアと、とにかく身体で受止める御凪。
「この程度の攻撃など、躱わす必要すらありません‥‥」
 そう告げる御凪と、さらに背後で呪符を用意する春金。
「そろそろおちつくのじゃ」
──ドゴォォォォォォォォォン
 春金の手にしていた呪符が発動。
 大龍符と呼ばれる呪符より、一匹の巨大な龍が呪符より生み出される。
「ほほーーーう。そんな子供だまし
に引っ掛かる私とでも思っているのですか」
 そう呟くと、赤マントはパーーーンと両手を叩く。
 その刹那、その場に居合わせた全員の目の前から赤マントの姿が消えた。
「消えた?」
「一体どこにいるのでしょうか‥‥」
「これはまいったのじゃ‥‥」
 と周囲を見渡すものの、どこにも赤マントの姿は見つからない。
「ほう‥‥流石は怪盗じゃな、このわずかの時間にここを突破していくとは‥‥」
 そう春金が告げたとき、ふと御凪が回廊へと続く扉が少し開いている事に気が付いた、
「しまった!! いつのまに?」
 慌てて回廊へと向かうアルティアと御凪。
 だが、すでに赤マントの気配は消え去ってしまっていた。


──最深部・宝物庫前回廊
 朱璃阿(ia0464)と嵩山 薫(ia1747)、神鷹 弦一郎(ia5349)の三名は、静かに正面の回廊をじっと見つめている。
 既に回廊向うにある居間ではなにかが始まっているらしい。
「まあ、何かあってもこの先には、糸で作ったトラップが仕掛けてあるからねぇ‥‥」
 と楽しげに尽ける朱璃阿。
「でも、神出鬼没の怪盗が、そんなに簡単にトラップに引っ掛かるとは思えませんけれど‥‥」
 と告げる嵩山。
「全くだ。怪盗というのは、いかなるワナでもくぐりぬけ、目標である宝までヤってくるものだ。我々としても、仕掛けをどりように越えてくるのか、それをどのように阻止するのかが問題であろう?」
 と神鷹が告げたとき。

──ドタバタドタバタ
「うわぁ、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 と、回廊の向うで叫ぶ声が聞こえる。
「よしっ!!」
 パチィィンと指を鳴らして楽しそうに走り出す朱璃阿と、あんぐりと口を開いて茫然とする嵩山と神鷹。
「そ、そんなぁ‥‥」
「何処が怪盗だよ‥‥全く」
 とブツブツ呟きつつも、ふたりもまたトラップへと向かっていった。

──そしてトラップ
「どーも。どもどもどもぉぉぉぉ」
と笑いつつトラップの糸の中でもがいている赤マント。
「随分とドジな怪盗だねぃ。そんな調子じゃあ、今までに狙った得物は見逃さないっていうのもガセじゃないのかい?」
 と呟く朱璃阿だが。
「いーえいえいえ。それがまた、実際に狙った得物は逃さないのが怪人赤マントでして‥‥」
 と呟く赤マント。
──ポロッ
 と、そのマントの影から、いくつもの白い球が零れ落ちる。
「‥‥これは一体?」
 慌てて後ろに下がる朱璃阿。
 その近くまで嵩山と神鷹のふたりも近づいている。
「細工は隆々、仕掛けを御覧じろって言いましてねぇぇぇぇぇ」
 と呟くと、複雑に絡まっていた糸の隙間からスルッと抜け出す赤マント。
「では、通させていただきましょかー」
 と呟きつつ、落とした球を拾う赤マント。
「そうはいかないわょ。通りたかったら、この歩と勝負死なさい‥‥」
 と朱璃阿が啖呵を斬る。
「勝負でっか? まあいいでっせ‥‥」
 と言うことで、朱璃阿と赤マントの一騎打ちが始まった。
「私の出す問題に全て答えられたら、ここを通って鎌和ないわよ‥‥それじゃあ第一問。朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足、この動物は何?」
 そう問い掛ける朱璃阿に、赤マントは自信満々に一言。
「泰国東方の魔の森に生息するという、伝説の大アヤカシ『摩訶士風象(まかしふうぞう)』でんな。それはもう、あの姿の変わりようといったらもう‥‥で、次の問題は?」
「ち、ちょっと待ちなさいよ、そんな大アヤカシなんて、私は聞いたことないわよ?」
 と力説する朱璃阿だが。
 その耳元まで近づいて一言。
「仮にも開拓者が自信満々に知らないといったらあきません。それは周囲で聞いている者たちに不安を与えるだけでっせ‥‥」
 と呟く。
「そ、そうね‥‥まあそれは正解ということで勘弁してあげるわ‥‥」
 動揺しつつもそう告げる朱璃阿。
「そ、そんなものがいるとは‥‥流石朱璃阿さん。物知りですね」
 と瞳をキラキラとさせつつ告げる嵩山。
 その横では、神鷹が腕を組んで頭を捻っている。
「それじゃあ気を取り直して第二問。太陽、月、星が並んで徒競走して一番になったのは?」
「どれもちゃいます。太陽は月を、付きは太陽を追いかけゴールできまへん。星は空にでてぐるぐるとまわる抱けやさかい、これもまたゴールできません。もしドレかがゴールしてもたら、ずっと昼間か、ずっと夜になにってしまいますわ」
 ときっぱりと自信満々に言い切る赤マント。
 実際、これの答えは『月』が正解なのだが、そこまで理路整然と自信を持って答えられたら何もいえなくなってしまう。
「そうね‥‥それじゃあ最後の問題よっ。4分の1の饅頭と8分の1の饅頭、7分の1の饅頭を一皿に乗せました」
 そう告げてから、朱璃阿は一拍おいてまた話を続ける。
「饅頭一個を一分で食べられる汝が全部食べると残っている饅頭はいくつか?」
 この問題に、赤マントはしばし熟考。
「ええっと‥‥ワシ、食いしん坊やさかい、全部たべてまうとなにものこりませんが‥‥」
──ガクッ
 止む無く力尽きてひざまづく朱璃阿。
 その横を通り過ぎ、回廊の奥へと走り出す赤マント。
「か、完敗‥‥こうなったら、実力で‥‥」
 と開き直ると同時に、嵩山と神鷹が一斉に攻撃を開始。
「ち、ちょいとまってや。勝負に勝ったら通してくれるいうたやないですか?」
「通すとはいったけれど、追いかけないとはいってないわよっ!!」
 と叫ぶ朱璃阿。
「なら問題や!!」
 と立ち止まって赤マントが問題を出す!!
「大桃華飯店に、あんたたち3人が食事にいったんや。でな、予算は一人1000文、合計で3000文で食事を頼むといったんや」
 ふむふむと話を聞いている3名。
「でな、腹一杯食べて、お会計払ったんやけど。店主が500文まけてくれたらしいんや。でな、従業員がアンタ達にお釣りを持っていったとき、500文やと3人で割り切れへんからと200文を自分の懐にこっそりとしまってもたんや」
 指を折りつつ考える3人。
「ではここで問題や。300文おつりということは、ひとり900文支払ったことになるで。3人やと2700文やな。で、従業員が懐にいれてしまったのは200文。これとあわせると2900文やな?」
 その言葉に肯く3名。
「最初払ったのは3000文や。100文どこいったんや?」
 その言葉の刹那、一気に走り出す赤マント。
 3人の一瞬の思考の隙を読んでのダッシュである。
──ヒュンッ!!
 すかさず神鷹が矢を放つが、それをうまく躱わして回廊奥の最後の扉を突破する赤マントであった。
「ちっ‥‥かすり傷は追わせられたようだが‥‥」
 と告げる神鷹。
 その後ろでは、嵩山と朱璃阿のふたりが指を折ってまだ思考している所であったとさ。

──最深部・宝物庫内
 三笠とロウザ(ia1065)は静かにその刻をじっと待っていた。
 赤マントがここまでの難関全てをかい潜って来る事を。
──ギィィィィィッ
 と静かに扉が開く。
「怪人赤マ・・・・」
「わはは!! よくきたな! どろぼぅ」
 赤マントの名乗りを自分の叫びで打ち消すロウザ。
「こ、この‥‥美味しい所をなんてことをっ」
 と口惜しそうに呟く赤マント。
 そのさ中にも、赤マントの後ろにまわりこみ、出口を確保する三笠。
「これで貴方は袋の鼠です。おとなしく観念してください」
 と告げる三笠に対して、赤マントは大胆不敵に一言。
「では、力ずくで奪う事にしましょうかー」
──ボウッ
 その言葉の直後、三笠は入り口近くに用意してあった燭台に火を灯す。
 これがロウザに対しての合図。
 この蝋燭が消えるまでの30分、最低でも戦い粘ろうというものであった。
「ではいくぞお嬢さん」
「こい!! あくとう ロウザがいるかぎり このよにあくは さかえない」
 そのまますかさず飛込んでいくと、手にした手斧でちからいっぱい赤マントに向かって切りかかる!!
「なんのっ!!」
──ドッゴォォォォッ
 すぐ近くにあった『歴史的に価値のある細工物の燭台』で力一杯受け流す。
──ゴイイイイイイィィィィィン‥‥バキッ
 そのまま手斧と燭台での乱打戦。
 それで燭台が壊れると、赤マントは壁をせにして次々とロウザの攻撃を躱わす。
「おまえ すばやい」
「お嬢さんこそね‥‥と」
 ロウザの手斧が壁に掛けられていた名画や掛け軸に直撃、次々と破壊の限りを続けていく。
「ちょ、ちょっとロウザさん落ち着いて!!」
 必死にロウザを宥める三笠だが。
 すでにヒート状態のロウザと赤マントは、さらに室内の装飾品を次々と撃破。
「ふぅ‥‥とりあえずはこれで目的は達しまして‥‥」
 と。いつのまにか赤マントがロウザの腰に下がっていた宝箱と鍵を握り締めている。
「それは いつのまに?」
「先程までの戦いでね。では失礼します」
 と告げると、そのままさらに奥の方にある調度品の影に飛込んだ。
「まて、 にげみちないぞ」
 とロウザが慌てて追いかけると、床の一部が外れて地下へとつづく穴がポッカリとあいているのを発見。
「しまた ここにぬけみちが」
 そのロウザの声を聞いて三笠は外にいる仲間たちに連絡する。
 だが、すでに赤マントの姿はどこにもなかった‥‥。


●そして後日談
──モンテクリスト卿宅
 翌日。
 静かな朝。
 モンテクリスト卿が居間で一行に礼を告げる。
「よくぞ本物を護ってくれた‥‥礼をいうぞ」
 そう告げるモンテクリスト卿。
「いえいえ。まさか奴も、私の胸許に隠してあるとは思っていなかったでしょうねぇ‥‥」
 と告げつつ、胸の谷間から布に巻かれた『蒼龍の碧玉』を取出す。
「確かにな。まあ、もしまた奴からの挑戦が在ったときは、よろしく頼む」
 と告げられて、一行は屋敷をでていった。

──それから少しして
 屋敷の近くの物陰に、裸で縛り上げられたモンテクリスト卿を発見した。
「も、モンテクリスト卿。どうしたのですか?」
 縄を解きつつ告げる嵩山。
「今朝方だったか。突然窓から赤マントが侵入して‥‥気がつくとここにいたのだが。何がどうなった? 『蒼龍の碧玉』はどうなった?」
 そう告げられて、アルティアが手をポンと叩く。
「最後の最後に填められましたか」
「そのようだな。すまぬ依頼人殿。護りきれなかった」
 と淡々と告げる御凪。
 そのまま意識を失った依頼人に謝罪の言葉をすると、必ず赤マントより碧玉を取り返す事を誓う一行であったとさ。

 めでたしめでたし。

──Fin