【負炎】人世の縁と花椿
マスター名:陸海 空
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2009/11/23 06:08



■オープニング本文

●北面の『花』部隊
 大アヤカシ炎羅との戦いに勝利したとの吉報に、天儀中が歓喜した。
 今まで誰も、どの国も成し得なかった偉業に、アヤカシの脅威に脅かされている民は大喜びだった。
 中でも開拓者ギルドから派遣された開拓者達が活躍したという報せに、やはり彼らは実に頼れると評判はうなぎのぼりだ。
 そして、自らの村を犠牲にしてまで大アヤカシを討伐した緑茂の里の復興に、誰もが少しでも手を貸そうと援助物資などを送るため開拓者ギルドに詰め掛けるのも、日常茶飯事のことだった。
 そんな中、いつも通り依頼を出す側受ける側でごった返す開拓者ギルドに3人の女性が姿を見せた。
 どこかの制服なのだろうか、全員が同じ袴を身に纏っている。
 すっきりとした薄桃の小振袖と臙脂の女袴。
 小振袖の胸元には椿の花が刺繍されており、女袴の裾と結び紐の先にも同じものが刺繍されていた。
「あの、依頼を出したいのですが‥‥」
 代表なのだろう一人の女性が、ギルド職員を呼び止めてそう告げた。

「私はアカリと申します。北面の有志部隊『花椿隊』に籍を置いている者です」
 北面には、大アヤカシとの戦いに派遣された瑞鳳隊をはじめとし、天護隊などの様々な部隊がある。
 国の認可を得て活動している部隊もあれば、花椿隊のように有志が集まり独自で活動している小さな部隊もあるようだ。
 その中でも、花椿隊は珍しい女性だけの部隊だそうだ。
 街娘から、資産家のお嬢さん、果ては貴族の姫と言う身分の女性までいるという。
「はぁ‥‥。で、その花椿隊の皆さんは今回どんな御用で?」
 ギルド職員の問いかけに、アカリが手にした巾着から一枚の料紙を取り出した。
「私たちを、緑茂の里まで送ってくださいまし」
 こちらが依頼内容を書いたものです、とその料紙をギルド職員に渡して花椿隊の3名は深々とお辞儀をした。

●花椿の志
 依頼を受けてくれる開拓者が現れたらご連絡ください、と告げて3名がギルドを後にした。
「依頼受けてくれる人いるかしら。ねぇ、アカリさん」
 一番年若い小柄な女性が代表して依頼を出して女性に問いかける。
「さぁ、どうかしら。受けてくださるといいのだけど‥‥。ね、カナデさん」
 アカリが、もう一人の女性に水を向ければ「そうね」と同意の声が返される。
「貴女は初任務だからって、舞い上がりすぎ。少しは落ち着きなさいサヤカ」
 3名のなかで一番冷静なカナデが指摘すれば、サヤカと呼ばれた最年少の隊員は肩を竦めて「ごめんなさい」と返事する。
 その様子を微笑ましげに眺めて、アカリがまあまあと二人を宥めに入る。
「ともあれ、依頼を受けてくださる方を待ちましょう」
 サヤカがはしゃぎ、カナデが叱り、アカリが宥める。
 ちぐはぐなようで、実に絶妙なコンビネーションの三人であった。

 そんな3名が残していった依頼を、ギルド職員は内容どおり規定の依頼用紙に書き写して張り出した。
 内容は以下の通りである。

・北面からの有志部隊「花椿隊」隊員3名を緑茂の里へ送り届けること。

 道中はアヤカシの残党が残っているだろうから、くれぐれも気をつけて送り届けるよう書かれている。
 そして、備考欄に小さくその他の希望が書かれていた。

・できれば、編み物や裁縫を得意とする人が望ましい、と。

 その不思議な文章に、依頼書を覗き込んだ開拓者達は一様に首を傾げるのだった。


■参加者一覧
風雅 哲心(ia0135
22歳・男・魔
天雲 結月(ia1000
14歳・女・サ
鬼灯 仄(ia1257
35歳・男・サ
レフィ・サージェス(ia2142
21歳・女・サ
菘(ia3918
16歳・女・サ
羽貫・周(ia5320
37歳・女・弓
楊・夏蝶(ia5341
18歳・女・シ
神楽坂 紫翠(ia5370
25歳・男・弓


■リプレイ本文

●花椿隊と開拓者
 花椿隊の3人が依頼を受けてくれる者が現れたと連絡を受け開拓者ギルドにやってくると、早速件の開拓者と引き合わされた。
「この度は護衛の依頼をお受けいただきありがとうございます」
 深々とお辞儀をする3人に、集まった開拓者はそんなにかしこまらずにと言いながら自己紹介を始める。
 仕事を円滑に遂行するにはコミュニケーションはとても大事である。
「私は夏蝶よ。ティエって呼んで♪」
 楊・夏蝶(ia5341)が真っ先に名乗り上げる。
 女性だけの部隊と言うところに興味を感じているのか色々お話しましょうね、とも付け加えた。
 続けて風雅 哲心(ia0135)と鬼灯 仄(ia1257)が続けて名乗り、挨拶をする。
「しかし、わざわざ緑茂の里まで行くとは……度胸があるというか何と言うか」
 哲心が感心した風に呟けば、仄もまったくだなと頷く。
「まあ、何事も経験だろ。女ばかりの部隊ねえ。なかなか華やかそうだな。ま、よろしく頼むぜ」
 煙管を咥えてのんびりと言えば、隣から待ちかねたように天雲 結月(ia1000)が飛び出る。
「僕は騎士の天雲結月。よろしくね! エヘ、頑張る女の子ってなんだか共感しちゃう」
 絶対無事に送り届けるからね、と嬉しそうにニコニコと笑って言う姿に好感を持ったサヤカが「こちらこそ、よろしくお願いします」と微笑み返す。
「さまざまな者が共に協力し合うのは良いことだね。ま、いささか不安がないわけではない、が」
 良い訓練になるだろうね、と言って名乗り出たのは弓を手にした羽貫・周(ia5320)である。
 それに同調して神楽坂 紫翠(ia5370)も軽く会釈をする。
「‥‥人手不足のはずですから‥‥行ったら‥‥やる事はあるでしょうね」
 カナデがそれに微笑んで「はい、頑張ります」と応える。
「私も里の様子が気に掛かっていたところですから、丁度良かったです」
 そう言って挨拶をするのは大アヤカシとの戦いに参加した菘(ia3918)の言葉である。
 今回の依頼に名乗り出たのも、緑茂の里の様子を見に行きたいという意味合いも強かったのだ。
 そして、最後にかしこまった物腰のレフィ・サージェス(ia2142)が教本に使えそうなくらい綺麗な姿勢でお辞儀をする。
「護衛を承りました、レフィ・サージェスと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします」
 全員の自己紹介を受けて、アカリらは改めて名乗り「道中よろしくお願いします」とお辞儀をした。
 それぞれの挨拶が終ったところで、出立の準備が既に整っていることを確認し一行は緑茂の里へと出発するのだった。

「そうだ、出発する前にこれだけは守って欲しいことがある」
 哲心の言葉に、花椿隊の3人は姿勢を正して聞く態勢に入る。
「まずは、俺達は3人を囲むようにして移動するから隊列を崩さないこと。護衛をする俺達の指示は聞くこと」
 守られる側としての自覚を持つことが大事だといえば、神妙に頷く。
 哲心の言葉を継いで夏蝶もピッと人差し指を立てて、口を開く。
「それに、敵が出たらむやみに前に出ないこと! 戦うのは私たちの役目だからね」
 護るべき対象が敵に向かって突撃してしまえば、護衛としての意味がなくなってしまうのだから開拓者達が口を酸っぱくして言うのは当然のことだろう。
 仄もそれに同調して付け加える。
「まず己の自衛に徹してくれ。全体を把握するのは大事だからな。なあに、本職の戦いを見るのも勉強になるさ」
 その言葉に、菘や結月もうんうんと頷いて同意を示す。
「ま、あんたたちを護るのが私らの役目だ。安心して任せてくれていい」
 周がそうだろう? と水を向ければ紫翠もうむ、と言葉少なに頷く。
 確かに、自分たちが下手に動くより全面的に任せたほうが安心だと理解した花椿隊の3人はそれらの言葉に反論せずしっかりと頷いたのだった。

●編み物道中記?
 理穴の精霊門から緑茂の里へ向けて出立した一行は、アカリ、カナデ、サヤカの3人を中心に囲んで守りながら街道を歩く。
 哲心が時折心眼を使いながら、安全を確認しつつ慎重に進む。
 弓を使うだけあって、視力の良い周と紫翠は視界が開けていれば遠くまで見通せたし、仄も不穏な気配を感じれば心眼を使って確認も出来る。
 とは言え、精霊門付近は比較的安全なので一行の雰囲気は比較的和やかである。
 安全な場所では、それぞれのおしゃべりも進むというものだ。
 それが休憩中ならば、なおさら。
 花椿隊の体力を考慮して少し多めに休憩を入れながら進んでいるのだが、彼女らは休憩時間を無駄にせず緑茂の里に渡すために編み物を始めたのだ。
「もう、冬支度の時期なんですね」
 そう呟きながら、縫い物なら得意と言う菘は足袋や巾着袋を縫って彼女らの手伝いをしながら呟く。
「日々の生活に使うものですし、沢山あって困ることはないでしょうね。天雲様、急かずにひとつずつ編んでくださいませね。大丈夫、綺麗に編めております」
 ハウスキーパーだけあって、レフィが見事な手際でセーターを編み上げながら編み物初心者の天雲に丁寧に指導している。
「う、うん‥‥。こ、こうかな。レフィさんは凄いなぁ‥‥僕あこがれちゃうなぁ」
 慣れないながらも丁寧に一目ずつ編んでいく結月は、魔法のようにどんどん編んでいくレフィの手際に目をキラキラさせる。
「作品にも女にも、華がないとな」
 そういいながら仄は、自前の器用さを生かして次々に作品を仕上げていく。
 本人の言うとおり、猫のワンポイントのある手袋や椿の飾り編みの入った帽子など、それらは華のあるものばかりだ。
「わあ! 鬼灯さん、凄い上手です!」
 編み物が苦手で四苦八苦しているサヤカが、独壇場と言っても過言でない仄の手際に感動する。
「む、中々難しいな」
 哲心もチャレンジ精神を発揮して紫翠や周に指導してもらいながら、簡単なマフラーを編んでいく。
「初心者は、簡単なものが良い‥‥」
 紫翠は鉤針で帽子を編みながら、糸のかけ方から丁寧に教えていく。
「結構覚えてるもんだね、随分久しぶりなんだが」
 周は久しぶりにする編み物に少し懐かしそうな目をして靴下や手袋を編んでいく。
 夏蝶は手と同じくらい口も動いている。
 というか、それだけ喋っているのに網目を全然間違えないのが凄いと、カナデが感心する。
「ねね、花椿隊は何人くらいいるの?」
 夏蝶が興味深々で質問を投げれば、飾り用のボンボンを作りながらアカリが答える。
「そうですね、私たちが所属している組は大体40名ほどです。花椿隊は3つの組で形成されていて、全体的には100名くらいになります」
 隊としては多い数字ではないが、全員が女性のみと言うのは結構な数だろう。
「それは凄いですね。全員女性だそうですが、どんな方がいるんです?」
 菘も興味があるのだろう、針に糸を通しながら問えば今度はカナデが答える。
「私たちは普通の街娘だけど。隊員の中には、大店のお嬢さんや貴族のお姫様もますね。それぞれ請け負う仕事が違うので組分けしてるんです」
「色んな人がいるんだね。凄いな」
 結月がそう呟いて、マフラーの長さを確認する。
 数回目の休憩だが、その度に毛糸や布が減り作品が増えていくのは圧巻である。
 そして、会話が進めばやはり恋の話と言うものも話題に上る。
 恋人はいるかと言う質問に、最年少のカナデが恥ずかしそうに首を振る。
「まだ独り身なんです。でも、花椿隊は仕事柄出会いが多くて、結婚する人も多いんです」
 年頃の乙女らしい発言に、仄が可愛いねえと微笑ましげにからかえばカナデが顔を真っ赤にして慌てて、目を盛大に飛ばしたのはお約束である。

●アヤカシ残党現る
 比較的安全だった道中も、緑茂の里に近づくとさすがに気配が不穏になってくる。
 大アヤカシを倒したとは言え、すべてのアヤカシを征伐したわけではないのだ。
 全員が油断なく周囲に目を配り、木立の揺れや葉ずれの音さえも聞き分け周囲を警戒している。
 哲心と仄が交互に心眼を使って、何かが潜んでいないかを確認しつつ慎重に移動していくのに、花椿隊の3人も緊張して手にした薙刀を握り締める。
 開拓者たちが油断せずに常に周囲を警戒していたおかげで、不意打ちを受けることなくアヤカシの出現を事前に確認することが出来たのは、彼らにとって最上のことだった。
「む、心眼に掛かるものあり。前方約40の距離」
 何度目かの心眼で哲心の琴線に触れたものを報告すれば、周がそちらに目をやる。
「あぁ、いるね。アヤカシだ、剣狼と骨鎧」
 同じく視力が身上の弓術師である紫翠がその数を把握する。
「剣狼‥‥が、5体。骨鎧、も同じ」
 合計10体の下級アヤカシの集団は、こちらに気付いたらしく明確にこちらを目指している。
「なるほど、多くはない。が、少なくもないですね」
 長巻を構えて菘が言えば、花椿隊の傍に移動した夏蝶が風魔手裏剣を手にして彼女らをかばうような位置を取る。
「来るなら来ればいいわ。私の手裏剣は痛いわよ」
 それに呼応するように弓を構えた周と紫翠が花椿隊の左右に展開する。
「お前さんたちは、そいつらの傍を離れるなよ。自衛に徹して、しっかりみとけ」
 スラリと刀を抜いて、ニヤリと笑った仄がおもむろに前に出るとそれにあわせて結月も刀を抜き放つ。
「白騎士、天雲 結月。参ります!」
 近づいてくるアヤカシに向かって、咆哮すれば彼らの意識は結月に向けられる。
「皆様は、後方にてお待ち下さいませ。敵は私共が対応いたしますので」
 長柄斧を手に、優しく微笑むレフィは今から戦うとは思えないほど落ち着いている。
「結構残ってるな、この際だ、しっかり駆除してやろうぜ」
 刀を正眼で構え、哲心はアヤカシを見据える。
 アカリらも緊張はしているものの怯えた様子は見せず薙刀を手に、自衛の構えを整えている。
「機先を制します!」
 勢いに任せて襲い掛かろうとするアヤカシらに、菘が駆け出し先手必勝とばかりに出会い頭に両断剣を放つ。
 十分に気合を込めた長巻は、凄まじい威力を持ってアヤカシの先頭を吹き飛ばし勢いを削いで優位を勝ち取る。
「申し訳ありませんが、倒させていただきます」
「掛かってきなさい!」
 レフィと結月が咆哮を上げて、分散しかけた敵の意識を引きつける。
 2人に群がろうとする剣狼と骨鎧を他の前衛が着実に切り結んでいく。
「‥‥援護、します」
 紫翠がレフィの死角から襲い掛かろうとする骨鎧に矢を射掛ければ、態勢を崩したそれにすかさず哲心がトドメを刺す。
「させないよ。残念だったね」
 結月の背後に回った剣狼に周が即射で矢を射れば仄の炎を纏った刀が紅葉を散らしながら、的確にアヤカシを屠る。
「言ったでしょ、私の手裏剣は痛いって!」
 夏蝶の放つ雷火手裏剣が菘が弾き飛ばしたアヤカシに炸裂すると、それがトドメとなり剣狼がどう、と倒れる。
「‥‥凄い」
 下級アヤカシとは言え、一般人には脅威となる存在である。
 しかし、開拓者の実力と連携は凄まじく、次々にアヤカシが倒れ霧散していく様を見てアカリたちは呆然と見入り、感嘆の声を漏らす。
 開拓者達は、ついに護衛対象である花椿隊に薙刀を振るわせることなく、見事にアヤカシから護り抜いて見せたのだった。

●緑茂の里へ
 すべてのアヤカシを倒し、念のため心眼で周囲の安全を確認した一行は荷物や装備を確認し、改めて緑茂の里へ向けて出発した。
 アヤカシの残党は、この付近にいたのは先ほどの者たちだけだったらしく、残りの道程は安全なものだった。
 花椿隊の3人も気丈に振舞ってはいたが、やはりアヤカシを前にして恐怖を感じていたらしく、もうアヤカシは出ないだろうと言われて、ホッとした様子だった。
 残りの道程も同じように休憩時に編み物をし、同じくらいのおしゃべりもして楽しく過ごした。
「皆様がお強くて、本当に心強いです」
 アカリたちは信頼の眼差しで開拓者一行を見る。
 開拓者達も照れはするものの満更ではない。
「でも、真の騎士になるにはまだまだ修行が足ないんだ!」
 高い向上心を持つ結月は、己の理想のためにジッとしていられないらしく刀の素振りを始める。
 真剣に素振りをしている時、一陣の風が通り抜ける。
 その悪戯な風は、ひらりとミニスカートをまくりあげ‥‥
「きゃあ!?」
 結月が慌ててスカートの裾を押さえるものの、丈が短いせいで居合わせた全員がバッチリ目撃した。
「純白ですね」
 若い故に少々空気の読めないサヤカが呟けば、カナデがこらっ! と嗜める。
「白騎士、ね。なるほど」
 そう呟いたのは誰だったか。
 その言葉を聞いて、結月は顔を真っ赤にして俯くのだった。

「これであらかた毛糸は使っちまったな」
 仄が手袋に最後の仕上げをしてアカリに手渡して確認する。
 花椿隊が大量に容易した布と毛糸を使いきる頃、目指す緑茂の里が見えてきた。
「はい、皆様本当に色々ありがとうございます」
 里の方々にも喜んでもらえそうです、とアカリが言えば哲心が笑みを浮かべる。
「いや、編み物というのも難しいが、結構楽しかった」
「役に立てたようでよかったよ。サヤカも少しは編み物が上手くなったみたいだし」
 周の言葉に、褒められたサヤカは嬉しそうにありがとうございますと返す。
 重いだろうと菘が作品の詰められた袋を担いで、出来上がった数に凄いなと純粋に感心する。
「天雲様も、大分上達なさいましたね」
 レフィにそう評価されて、「白」を披露してしまった結月も気分が上向きになったようだ。
「ね、緑茂の里では何をするの?」
「仕事は、沢山あると思うが‥‥ある程度決めておかないと、迷うからな」
 夏蝶と紫翠が問えば、まずはこの物資を配りますとカナデが答える。
「男手だけが必要と言うことはないでしょうし、炊き出しのお手伝いや掃除洗濯、子守などをさせていただこうと思います」
 女でなければ気付かない細やかな部分があるだろうから、と言う言葉に開拓者一行もなるほどと納得する。
 頑張れと言葉をかければ、3人は嬉しそうに誇らしげに微笑んでありがとうございますと返す。
「あ、里が見えてきましたね」
 その言葉に視線を向ければ、まだ焼け跡は生々しく残っているものの、順調に復興されている緑茂の里を望むことが出来た。