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■オープニング本文 ●村の収穫期ともふらさま 開拓者ギルドに、とある農村からの依頼が舞い込んだ。 「いやぁ、これからうちは収穫期でてんてこ舞いでねぇ」 手ぬぐいて額の汗を拭きながら、依頼者の農夫が切り出した。 収穫期で多忙なのでもふらさまの相手をして欲しい、と。 「今年は収穫物が多くてね、村中の子供から大人まで総動員になるんでねぇ。もふらさまたちの面倒を見る人手が欲しいんだよ」 農夫はそう言って、手ぬぐいを懐にしまいながらいくつか条件をつけくわえた。 曰く、村には2体のもふらさまがおり、お世話をする期間は三日間。 その間の宿泊場所、食事などは村が負担する。 とにかく、やんちゃで遊びたがりのもふらさまたちなので退屈させないように遊んでやって欲しい。 幸い村の近郊には渓流やちょっとした峠があるので釣りやキノコ狩り、紅葉狩りなどを楽しむのもいいかもしれない。 ただし、皆が心配するから野営などはせずに、夕飯時には帰ってくること。 夜の峠や渓流は足元が見えにくく危ないので、月見や星見は許可できない。 それを守ってくれるなら、遠慮せずにもふらさまと遊びまわって欲しい。 「夜は仕事を終えた村の衆がもふらさまのお世話をするから、日中だけ頼めないかねぇ」 たいしたお礼は出来ないかも知れないけれど、どうかよろしく頼むよ。 そう言って、農夫は開拓者ギルドを後にした。 |
■参加者一覧
瑞姫(ia0121)
17歳・女・巫
俳沢折々(ia0401)
18歳・女・陰
北条氏祗(ia0573)
27歳・男・志
ダイフク・チャン(ia0634)
16歳・女・サ
ロウザ(ia1065)
16歳・女・サ
ロックオン・スナイパー(ia5405)
27歳・男・弓 |
■リプレイ本文 ●一日目、食いしん坊バンザイ! 「それじゃあ、よろしく頼むよ」 村の代表に頼まれた開拓者一行は、まずはもふらさまと馴染むために挨拶からはじめることにしたのだが。 「もふらさま〜!」 瑞姫(ia0121)はもふらさまたちを見るや、そう叫んでむぎゅっと小もふらさまを抱きしめた。 「もふぅ!」 小もふらさまは驚きはしたものの、いやではないらしく大人しく抱っこされている。 「よろしくみゃ☆ こっちは黒猫の綾香様みゃ☆」 飼い猫がもふらさまの頭に乗ろうとしているのを見て、仲良くしてねとにこにこしているダイフク・チャン(ia0634)も、もふらさまにもふっと抱きついている。 「ろうざは ろうざ! おまえ もふら! こっちも もふら!」 「もっふー!」 「もふぅ!」 野生児のロウザ(ia1065)が元気良く挨拶をすると、もふらさまも何か親近感を覚えたのだろう負けないくらい元気に返事をした。 「もふらさまはキノコは好きかな? 聞いた話だと珍しいキノコを探すのに嗅覚の鋭い動物を使ったりするんだけどやってみない?」 もふらさまの鼻先を指でつんつんとつついて挨拶(?)をするのは俳沢折々(ia0401)である。 もふらさまは理解しているのかどうか、機嫌がよさげにしている。 「拙者は北条氏祗という。よしなに」 「なに堅っ苦しい挨拶してんのサ、タダピー! リラックスしていこうぜ〜♪ 俺はロックオンね、男はどうでもいいけど、お嬢さんがたはど〜ぞよろしく〜!」 無難に挨拶をした北条氏祗(ia0573)の肩を組むようにしてロックオン・スナイパー(ia5405)は、もふらさまよりもそれを取り巻く女性陣にむけて熱烈な挨拶を投げキッスと共に飛ばす。 その後ロックオンは女性陣全員に積極アピールしたのだが、全てすげなく返り討ちにあったことは言うまでもない。 皆がそれぞれ簡単な自己紹介や挨拶を済ませた後、さっそく山へキノコ狩りをしにいくことにした。 キノコ狩りに意欲を見せているのは折々で、キノコ博士になれるくらい採取して、山のキノコマップを作成しようと目論んでいる。 もふらさまの嗅覚で珍しいキノコを見つけようと、手帳を持って付いて歩いている。 「もふ、もふ〜」 「おお、これは伝説の‥‥!」 もふらさまが何かキノコを見つければ、それが良く見る種類のキノコでも楽しげに大袈裟に驚いて楽しんでいる。 その様子が楽しいらしく小もふらさまも中もふらさまも大喜びで次から次へとキノコを探し当てていく。 「あ、ヤマイモを見つけました、ムカゴも沢山です〜」 瑞姫が村人から借りた笊にムカゴを摘んで入れていくと、近くで焚き火を準備していた氏祗も傍に来た。 「どれ、芋は拙者が掘り出そう。芋は村の土産にしてムカゴは炙って食べればよかろう」 キノコを沢山探し当てたらしいもふらさまたちも、いつの間にか戻ってきており氏祗が芋を掘るのを興味深げに見ている。 「‥‥ずっと見られてると、やりにくいんだが」 じーっと見つめてくるもふらさまたちの視線に居心地が悪くなった氏祗は、うっかり途中で掘り出そうとしていた芋を折ってしまったのだった。 「ま、まあ売り物にするわけじゃないので、折れても問題ないですよ」 瑞姫は落ち込む氏祗を慰めているうちに、もふらさまたちは果物を採っているダイフクたちに呼ばれて駆けていってしまった。 「みゃっ! うーん届かないみゃ〜」 アケビの木を見つけたのだが、ダイフクが手を伸ばしてピョンピョン飛び上がっても届かない位置で、見かねたロックオンがそれをもいで手渡す。 「はいよ、他にどれを採ろうか?」 「ありがとみゃ☆ もふらさまは、どれがいいみゃ?」 「もふ、もふー!」 もふらさまに話をふれば、上にある大きいアケビを指定される。 「お、白饅頭も中々目の付け所がいいね。でかいじゃないか」 ロックオンが良く熟れて大きいアケビを採ろうと上を見ると、木に登って猿のように飛び回るロウザが目に入った。 「もふらー! ろうざ、いっぱいとった! くるみ、やまぶどう、あけび! くりもあるぞ!」 確かにいつの間にか背に背負っている篭の中には色んな果物が沢山詰められている。 だが、その収穫物よりもロックオンは枝を渡るたびに揺れるロウザのナイスボディに目が釘付けのようだった。 「なーいすばでー!」 さっきまで親切な兄ちゃんだったのだが、爽やかに叫びながら鼻血を吹くさまは色々台無しであった。 その日の収穫は、昼ご飯やおやつに食べた残りを村へのお土産にすることになった。 というか、それくらい沢山の収穫があったのだった。 ●二日目、渓流で大騒ぎ 前日と同じく朝食後に村人に連れられてきたもふらさまたちと、今日は渓流遊びに行くことになった。 泳ぐには既に肌寒い季節になってきたが、日が高いうちは暖かく足をつけて遊ぶくらいなら全く問題はない。 早速渓流に足をつけて遊ぶダイフクに中もふらさまも、浅瀬でピョンピョン跳ねて遊ぶ。 「みゃっ! もふらさま、つめたいみゃ☆ えーい、おかえしみゃ!」 跳ねる飛沫にダイフクも負けじと飛沫をあげてキャッキャとはしゃいでいたのだが、黒猫の綾香様が川に飛び込もうとするのを見て慌てる。 「綾香様! 川に飛び込んじゃダメみゃ!」 咄嗟に抱きとめて事なきを得たのだが、今度はダイフクが川に落ちそうになり氏祗に助けられた。 「大丈夫か? 気をつけろよ」 「ありがとみゃ☆」 タッチの差で、美少女を抱きとめて助けるというヒーローの役を採られたロックオンはちょっと面白くなさそうである。 「タダピーってば、美味しいトコもっていきやがって」 そんな彼も、その直後に同じく川に飛び込もうとした中もふら様を抱きとめるというヒーローになったのだが、あまり嬉しくなさそうであった。 「うふふ、もふらさまこーろころ〜」 水辺から少し離れた場所では、瑞姫が小もふらさまを鞠のようにコロコロ転がして遊んでいる。 いや、それもふらさまと遊ぶというよりは、おもちゃにしていないか? というツッコミがどこからか入るが、もふらさまに夢中な瑞姫に届いてはいない。 しかしながら、小もふらさまも何か転がるのが楽しいらしく嫌がっていないようなのでいいのだろう‥‥いいのか? そのうち、中もふらさまとダイフクも混じってコロコロ転げ回り始めたのだが、どうも転がるペースが合わなかったのだろう、ひっきりなしに転がそうとする瑞貴に小もふらさまが「もふぅ!」と抗議した。 「ご、ごめんなさい」 咄嗟に謝る瑞貴だったが、小もふらさまは転がること自体は楽しいらしく自分の望んでるペースで転がされるとあっという間にご機嫌になったのだった。 さて、渓流ですることといったら、釣りである。 氏祗は川瀬で釣り糸を垂らしながら、水遊びなどに興じるもふらさまたちを見張り‥‥というか、眺めている。 ダイフクたちが川に落ちかけたこと以外、概ね長閑な時間を過ごしており何度目かの欠伸を噛み殺した。 その近くではロウザが石で囲いを作って魚を追い込もうと川瀬を走り回っている。 ばっしゃばっしゃと、遠慮なく飛沫を上げて走り回っていては氏祗の釣り糸の周囲に魚が寄るはずも無く。 「こら! 魚が逃げるじゃないか!」 さすがにお叱りを受けるのだが、ロウザは全く気にした様子が無い。 「わはは! ろうざおこられた!」 むしろ楽しそうである。 そのうち、釣り糸を垂らすことを諦めた氏祗も囲いに魚を追う手伝いを始めて、もふらさまたちも加わりいつの間にか囲いの中には魚が大量に集まったのだった。 川瀬の大騒ぎに、少し離れた場所に腰を下ろし昨日の山でのキノコマップを作成しようと紙に書き込んでいた折々も、それを眺めて楽しそうに時折一緒になって笑う。 「キノコ山渓流マップというのもいいね」 名案を思いついたとばかりに、書き込む範囲を広げて渓流のマップも追加する。 キノコを嗅ぎ分けるもふらさまや、飛び跳ねる魚や楽しそうに笑う仲間の姿も描きとめて、中々趣向の凝らされたマップになりつつあった。 その日獲った魚も、全員で食べきるには大量すぎてやはり村へのお土産となったのは言うまでもない。 ●三日目、紅葉狩りと宴会 最終日である三日目は、秋の風物詩でもある紅葉狩りに出かけることになった。 紅葉の樹が生えている場所はちょっとした丘になっており、ススキなども生えていてまさに秋盛りである。 「赤いの、大きいの、綺麗なの。うん、素敵だね」 紅葉を見上げたり拾ったりしながら、折々はキノコ山渓流マップをさらに拡大して「キノコ山渓流紅葉マップ」にするべく着々と書き込んでいく。 「もっふぅ」 「ん? 小もふらさまもここに描こうか?」 「もふぅ〜!」 興味深げにそのマップを覗き込む小もふらさまに折々が聞けば、嬉しそうに一鳴きして己の姿が描き込まれていくのをジッと見つめる。 「上手いもんだね、キノコも上手に描けてる。けどこっちのコレ赤ごけじゃん、毒キノコだよ?」 同じくマップを覗き込んでいたロックオンが、描き込まれたキノコを指差して聞けば折々は頷く。 「そうだよ、村の人が言うには毒キノコだけど漬物に出来るらしいからね」 面白そうじゃない? との言葉にロックオンはなるほどと頷く。 ただ、毒があるから知らない人は採らない様にと言われたことも書き込んでいるようだった。 「で、これは君だよ」 折々が指差した場所には、なにやら鼻血を吹いて笑っている人物のイラストがある。 どうやら、一日目の出来事を全部見られていたらしい。 女性に興味を持たれて嬉しいやら悲しいやら、ロックオンは泣き笑いのような顔でトホホと呟いた。 その傍で、同じく画板を手にして飛び回って遊ぶもふらさまを絵に描いていた瑞姫が小さく笑う。 物悲しい気分になっていたロックオンだったが、ふと今両手に花の状態であることを思い出しあっという間に立ち直ったのだった。 中もふらさまはロウザ、ダイフクと一緒になってススキ野原の中を駆け回る。 木の実を拾ったり、ススキに突っ込んでみたり服にススキが付くのも構わず楽しそうである。 「もふら、すすきのみみずく、しってるか?」 摘んできたススキを使って器用にミミズクを作ったロウザが、木の実で目と口をつけてもふらさまの見せる。 「もふー!」 なかなか上手に出来ており、その姿にもふらさまもびっくりしてマジマジと見つめている。 「みゃ☆ もふらさまびっくりしてるみゃ☆ かわいいみゃ〜!」 ススキで綾香様の耳や尻尾を飾っていたダイフクも、目をまん丸にして驚くもふらさまを見て笑い転げる。 どうやらもふらさまはススキのミミズクが気に入ったらしく、ロウザはねだられるままに幾つもミミズクを作り出した。 紅葉のある丘は村から少々離れた場所にあったため、一行は少し早めに村に帰ってきた。 ススキだらけになったダイフク、ロウザ、もふさらまたちが埃を落としている間に、氏祗が持ち帰った紅葉でおやつ代わりに天ぷらを揚げ始めた。 「まあ、紅葉を天ぷらにするんですか?」 紅葉の天ぷらと言うものを初めて見た瑞姫が驚いて問えば、氏祗は笑いながら頷く。 「やっぱり皆驚くよな。結構美味しいんだぞ、衣に砂糖と胡麻を混ぜてるから甘くて香ばしいし。かりんとうみたいな感覚かな」 氏祗の説明を聞けば、なるほど中々美味しそうである。 それならばと、瑞姫もそれを手伝い皆が戻ってくる頃にはできたて紅葉の天ぷらが沢山準備されていた。 「えぇ〜、タダピー本当にコレ大丈夫なんか?」 「誰がタダピーだ。安心しろ、さっき味見したがちゃんと美味かった」 ロックオンのつけた変なあだ名に反論しつつも、味の保障をすれば瑞姫も頷く。 「美味しかったです。私も揚げるの手伝いました」 既に味見(毒見?)した者がいるとなれば、少し安心したのか全員天ぷらを摘んで恐る恐る口に入れる。 おっかなびっくりに咀嚼し始めたのだが、口に広がるほのかな甘さと香ばしさ、サクサクした食感に皆は紅葉の天ぷらがお気に召したらしい。 気がつけば大量に揚げた天ぷらがあっという間になくなってしまうくらい、我先に手を伸ばして笑いながらおやつを平らげた。 もちろん、一番大量に食べたのはもふらさまたちであったのは言うまでも無い。 夜は最終日と言うこともあり、忙しさの山を越えた村人がお礼代わりにちょっとした宴を催してくれた。 饗されたのは、開拓者一行がもふらさまと大量に採取してきたキノコや魚を使ったホカホカの鍋と栗ご飯である。 「いやあ、皆さんのおかげで無事忙しい時期を乗り越えられました」 村長の言葉に村人達も頷いて笑う。 「もふらさまたちも楽しかったようで、朝になったとたんに皆さんのところに行きたいと急かす位でした」 「もふぅ!」 「もっふー!」 村人達に感謝されて、一行は嬉しくないはずもなく。 「またいつでも呼んで下さい。是非もふらさまのお世話をさせてもらいます」 そんな言葉を交わしながら楽しい夜を過ごした。 折々は宴の間に村の物知り爺さんから、キノコにまつわる色んな話を聞いて三日間に渡って書き込み続けた「キノコ山渓流紅葉マップ」を見事に完成させたのだった。 ●また会う日まで 次の日、もふらさまや村人に見送られて一行は神楽の都に帰ることになった。 「もふー!」 「もふぅ!」 ぴょんぴょん跳ねて見送るもふらさまたちに、離れがたいのか少し涙目の瑞姫は何度も振り返って手を振る。 「もふらさまー! また一緒に遊びましょうね!」 同じく綾香様を抱いてダイフクも手を大きく振る。 「とっても楽しかったみゃ☆ ね、綾香様!」 「みゃーん☆」 ロウザは自分がプレゼントしたススキのミミズクを手に持って見送ってくれる子供達にも手を振る。 「ろうざ、たのしかた! もふら! またあそぶ、みんなもいっしょ! いいなー!」 それに付き合うようにちょっと控えめに手を振りながら、氏祗が色々大変だった三日間を思い出して一息つく。 「やれやれ、無事に依頼終了。あとは帰るだけだな」 村人ともふらさまというより、村娘たちに向かって手を振り投げキッスをするロックオンは三日間のあれこれを思い出してニヤニヤしている。 「目の保養にもなったし、いい依頼だったなぁ」 折々は完成した「キノコ山渓流紅葉マップ」を広げて眺めながら、我ながら会心の出来に満足そうにしている。 「うん、今回の一句。鼻先が 探り当てるは 珍味かな。俳沢折々」 即興で詠んだ句をマップの端に書き込んで、随分離れたのにまだ手を振ってくれている村人やもふらさまたちに向かって大きく手を振った。 |