逃走、脱走、大混乱
マスター名:香月丈流
シナリオ形態: ショート
EX :危険
難易度: やや難
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/04/26 20:29



■オープニング本文

 清々しい程に晴れた、卯月の某日。この日、泰国のとある街は大騒ぎになっていた。
「おい、居たか!?」
「いや、こっちには居ねぇ! アイツ等、どこ行きやがった!?」
「西の方に逃げたみたいです! 追いましょう!」
 棒や角材、農具を持って走って行く住人達。それは男ばかりで、女子供や老人の姿は無い。
 彼等が走り去ったのを確認し、物陰から2人の男性が顔を出した。
「…行ったみたいですぜ、アニキ」
「あぁ。ったく…面倒な事になりやがったぜ」
 頭を掻きながら、愚痴を零す長身の男性。その隣で、小柄な男性はオドオドしながら周囲を見回した。
 この2人、街の牢屋から脱獄した盗賊である。旅泰を襲っていた所を通報され、同心達の手によって捕えられた。が、投獄先で役人の隙を突いて鍵を強奪。そのまま牢を抜け出し、今に至る…というワケだ。
 脱獄した事は街中に知れ渡り、男衆と役人達が一致団結。脱獄した2人を探して、街中を走り回っている。こうなっては、捕まるのは時間の問題だろう。
「……ゼイ。確か、この街には養畜場があったよな?」
 名前を呼ばれた小柄な男性は、目を閉じて記憶を掘り起こす。街の地形や情景、建物等の配置。この街に来た時、豚や羊の家畜小屋を通り過ぎた記憶がある。
「確か…豚と羊と鶏が。でも、それが何か関係あるんでやすか?」
 ゼイの質問に、男性は不敵な笑みを浮かべた。明らかに、何かを企んでいる顔である。
「もしも家畜共が逃げ出したら…あいつ等、どうするだろうな?」
「なるほど! 住人が家畜を追ってる隙にトンズラでやんすね? 流石は、ダオのアニキ!」
 顔を見合わせ、不敵な笑みを浮かべるダオとゼイ。
 数十分後。街中の家畜が逃げ出し、騒ぎは更に拡大していった。


■参加者一覧
三笠 三四郎(ia0163
20歳・男・サ
菊池 志郎(ia5584
23歳・男・シ
此花 咲(ia9853
16歳・女・志
御形 なずな(ib0371
16歳・女・吟
ティルマ・ゴット(ib9847
13歳・女・騎
神室 巳夜子(ib9980
16歳・女・志
佐藤 仁八(ic0168
34歳・男・志
黒木 遼子(ic0536
18歳・女・シ
遊空 エミナ(ic0610
12歳・女・シ
燦千國 猫(ic0741
15歳・女・泰


■リプレイ本文


 ある日の麗かな昼下がり。優雅な午後をブチ壊すように、街中に豚や鶏の鳴き声が響き渡っている。
「ああ、豚さん達がこんなに沢山!? と…兎に角、早く集めないとなのです!」
 街の様子を眺め、此花 咲(ia9853)は拳を握って決意を固めた。空いた手には、家畜用の餌を入れた皮袋を持っている。
「街が大騒ぎになっていると思ったら…成程、養蓄場から動物が逃走したのですか」
 慌てる住人達とは裏腹に、冷静に状況を分析する菊池 志郎(ia5584)。家畜の動きを目で追いながら、聴力を研ぎ澄ませて物音にも注意を向けた。
「ドコの誰の仕業か分からへんけど…一次産業従事者を舐めた奴がおるもんやな?」
 全身から怒りのオーラを放っているのは、御形 なずな(ib0371)。農家出身の彼女は、家畜の大切さを良く知っているのだろう。
「同感です。住民が手塩にかけて育てた大切な家畜達を逃亡の道具とするなど…言語道断。彼らにはキッチリと罪を償って頂かないと、ですね」
 なずなに同意しながら、神室 巳夜子(ib9980)は薄っすらと笑みを浮かべた。無論、楽しい時の笑顔ではなく、『何か企んでいる時』の表情だが。
「確かに、家畜を逃がすのは効果的ですが…盗賊の癖にやることがセコイですね」
 黒木 遼子(ic0536)の言う通り、住人達は家畜の対応に追われ、盗賊まで手が回っていない。手段の是非はともかく、悪知恵は働くようだ。
「全く、けしからん賊どもじゃな! 家畜共が野良に襲われぬ内に、連れ帰ってやらんとな…」
 家畜達を心配しつつも、燦千國 猫(ic0741)は軽く頬を膨らませている。ヤル気を表すように、肩を回してみせた。
「あまり先走り過ぎないでくださいね? マオはそそっかしいのですから、躓いて怪我をしないように」
 そんな彼女に、ティルマ・ゴット(ib9847)が注意を促す。斜に構えた言い方だが、彼女なりに猫を心配しているのだろう。
「家畜の方は、みんなに任せるわ。あたしぁ、ちょっくら逃げた野郎共を懲らしめてくるぜ!」
 佐藤 仁八(ic0168)は仲間達に声を掛け、森に向かって歩いて行く。その格好を見て、誰もが言葉を失った。
 パンダはクマ科に属するため、仁八は熊の全身きぐるみを着ている。問題は、体の右半身を白、左半身を黒に塗り分けてしまった事だろう。奇抜過ぎる配色のせいで、新種の生物のように見える。
「仁八さん…何か、色々と間違ってるみたい。大丈夫かな?」
 心配そうに言葉を漏らしながら、仁八の背を見送る遊空 エミナ(ic0610)。彼女の心情を表すように、兎の耳が元気無く垂れ下がっている。
「まあ…何とかなるでしょう。万が一の場合は、私と巳夜子さんでフォロー出来ると思いますし」
 村人達に聞いた情報を纏め、三笠 三四郎(ia0163)は荷物を持ち上げた。そこから木刀の姿が覗いているのが、少々物騒だが。
 全ての準備を終えた開拓者達は、家畜と盗賊を捕まえるために別れて行動を始めた。


「さてさて、どこに隠れているのですかー?」
 意識を集中させ、生物の気配を探りながら街を歩く咲。隠れている存在まで探知出来る反面、気配が何なのか判別出来ないため、少々苦労しているようだ。
「…北東の方角から、豚らしき鳴き声が聞こえます。此花様、ご一緒しませんか?」
 遼子の研ぎ澄まされた聴覚が、家畜の鳴き声を捉える。北東に、動物を飼育する施設は無い。と、いう事は…逃げた家畜で間違い無いだろう。咲が元気良く頷くと、遼子の先導で走り始めた。
 街中を担当しているのは、彼女達だけではない。なずなも集中力を高め、鳴き声や物音に注意しながら歩き回っている。家畜の大体の位置を把握し、広場のような場所に移動して大きく息を吸い込んだ。
「戻れ、家畜共よ!♪ 飼いならされた豚共に外の世界は危険だ!♪ 檻の中での安寧な日々を思い出せ!♪」
 ロック調の歌声が、周囲に広がっていく。歌詞は少々アレだが…彼女の歌声に惹かれ、動物達が集まり始めた。その大半が小鳥や犬だが、首輪をした鶏も交じっている。
 小動物を十分に惹き付けた処で、なずなの歌声が一転。ゆったりとした曲が響き渡り、動物達を眠りの底に落としていった。
 混乱が続く街中に、一陣の風が吹く。それが、逃げていた仔羊を優しく抱き上げて捕まえた。
「そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。さぁ…俺と一緒に帰りましょう?」
 疾風の正体は、高速移動した志郎。微笑みながら仔羊に語り掛け、その背を優しく撫でた。彼の言葉と雰囲気で落ち着いたのか、仔羊は暴れる素振りを見せない。
 仔羊を養蓄場に返す役を住人に任せ、志郎は動物の名前、対応した人の名前、現在地等を手帳に記入した。こうする事で、行方不明な動物が出るのを予防しているのだろう。
 4人の活躍で混乱が徐々に収まる中、残った家畜達の動きが変わり始めた。細い通路を使い、開拓者達が追い難い道順で逃げている。それでも、咲と遼子は家畜を逃げ場の無い袋小路へと追い詰めた。
「追い詰めたのですよ。もう逃がさないのです!」
 『ビシッ』と指を差し、高らかに宣言する咲。次の瞬間、彼女の後方から豚と羊が1匹ずつ駆け込んで来た。次いで、なずなと三四郎が姿を現す。
 予想外の場所で合流し、驚きを隠せない開拓者達。状況を理解する間も無く、退路を塞ぐように家畜達が集まり始めた。どうやら、追い詰められたのは開拓者達の方らしい。
「罠…やったんか。オモロい家畜達やな! 全員、覚悟しぃや!」
 不敵な笑みを浮かべながら、なずなが敵意にも似たヤル気を見せる。彼女だけでなく、咲と遼子も家畜と対峙して身構えた。
「あ〜…みんな、手加減は忘れないで下さいね?」
 三四郎が若干苦笑いを浮かべながら、注意を促す。彼女達が家畜を傷付けるとは思っていないが、念のためというヤツだろう。
「ご心配には及びませんよ。家畜の扱いはメイドの嗜み…力勝負でも、負けはしません!」
 荒縄を握り締めながら、鋭い視線を向ける遼子。頼もしい事この上無いが、全力で方向性を間違っている気がする。思わず、志郎は乾いた笑い声を漏らした。
 開拓者のヤル気を感じ取ったのか、殺気立っていく家畜達。徐々に間合が詰まる中、咲は皮袋から餌を取り出し、家畜に向かって投げ放った。
 数秒前の殺気はどこへやら。家畜達は一瞬たりとも迷わずに、嬉しそうに餌に喰い付く。遼子は荒縄を全員に渡すと、4人で豚や羊を手早く縛り上げた。


 街で家畜との追い駆けっこが始まった頃、森の中でも開拓者が走り回っていた。
 2匹の仔豚と、1匹の羊を追い駆ける、ティルマと猫。木々の間を抜け、茂みを突っ切り、徐々に距離を詰めていく。
 羊が走り疲れて脚を止めた隙に、猫は首を抱き締めるように飛び付いた。そのまま、優しく頭を撫でる。
「よしよし…もう心配要らんのじゃ。さぁさ、ウチに帰ろうな」
 落ち着かせるように語り掛けながら、笑顔を向ける猫。羊は観念したように座り込み、大きく呼吸を繰り返した。
 ティルマは仔豚を横から抱き上げ、両脇に抱える。小柄な彼女だが、身体能力は人並み以上。仔豚を2匹持つのは難しい事ではない。
 が…仔豚は今の状況が嫌なのか、キーキー鳴きながら暴れている。
「あんまり動かないでください。大人しくしないと…投げますよ?」
 そう言って、ティルマは軽く笑みを浮かべた。言葉は理解出来なくても、雰囲気は理解出来たのだろう。2匹の仔豚が、急に大人しくなった。
 猫は縄を取り出し、家畜達の首輪に結び付ける。その3匹を引き連れ、2人は街の方向に歩き始めた。


 ほぼ同時刻。エミナは耳を立てて、物音に神経を向けていた。家畜の鳴き声を聞き分け、素早く駆け出す。視界に羊の姿を確認すると、足音と気配を消すようにゆっくりと接近。後方から抱き付き、首輪に素早く縄を通した。それを近くの木に繋ぎ、逃げる間を与えず捕獲する。
「これで3匹目…と。迷子のままは可哀想だし、頑張らないと」
 少々暴れる羊の頭を撫でながら、決意を再び固めるエミナ。手帳に捕まえた家畜の頭数と場所を書き込み、森を奥へと進んで行った。まずは捕獲を優先し、後で纏めて引き渡すつもりなのだろう。
 何かを探している時ほど、探し物が見付からない事が多い。逃げた盗賊を追っていた三四郎と巳夜子だったが、木陰で眠っている数匹の家畜を発見してしまった。
「こんな森の奥に家畜が隠れているなんて、予想外ですね。あまり刺激したくないですが…回収班に連絡しますか」
 苦笑いを浮かべながら、三四郎は懐から狼煙銃を取り出す。家畜の回収は他の班に任せるため、これで合図を送るつもりなのだろう。
 振り上げようとした三四郎の腕を、巳夜子が制する。
「その前に、捕獲しておきましょう。首輪に縄を通して木に括れば、逃げる心配も無くなります」
 銃の発砲音で家畜が逃げてしまっては、元も子も無い。確実に捕獲するため、巳夜子は荒縄を三四郎に差し出した。軽く頷き、静かに移動する2人。家畜達の首輪と木を手早く結び、狼煙銃を撃ち放った。青い狼煙が上がった事を確認し、盗賊の捜索に戻る。
「青い狼煙…誰か、家畜を発見したのかな?」
 三四郎の合図に気付いたエミナは、地面を蹴って駆け出した。青い狼煙は、家畜を発見した事を意味する。エミナは現場に急行し、家畜の数を確認して手帳に追記した。


 家畜を移動中の猫とティルマだったが、目の前を鶏が通り過ぎる。次の瞬間、猫の瞳が怪しく輝いた。
「いつまでもおウチに帰らない悪い子は…食べちゃうのじゃ〜!」
 縄を投げ出し、本能的に鶏を追い回す。不敵な笑みを浮かべ、両腕をブンブン回し、まるで荒ぶる鷹のようだ。荒ぶり過ぎて、鶏だけではなくティルマにも狙いを定めている。
 危険を察知したのか、ティルマは猫が投げた縄を掴んで駆け出した。運悪く、彼女の後ろから鶏が逃げて来る。更にその後ろからは、荒ぶる猫が…。
「何で私まで追われるんですか!?」
 悲鳴を上げ、全力疾走するティルマ。彼女は、ネズミの特徴を持つ獣人。片や、猫は名前の通り猫の特徴を持つ獣人。ティルマが追い掛けられるのは、ある意味当然なのかもしれない。そのまま、2人は家畜と共に街まで走り去った。


 森の中に逃げた盗賊達は、不運だったかもしれない。周囲を見渡し、警戒しながら進んでいたが…遭遇してしまったのだ。左右非対称の色をした、傾(かぶ)き過ぎてるパンダに。
 盗賊の気配に気付いた仁八は、立ち上がって仁王立ちに構えた。更に『パンダー!』と絶叫しながら、金棒を振り回す。奇怪過ぎる光景に腰を抜かしたのか、盗賊達はその場に崩れ落ちた。
「どうれ…他人様に迷惑掛けやがったお仕置きてえのを、一つしてやらなくちゃあなるめえ」
 金棒を構え、舌なめずりをする仁八。益々パンダから遠ざかっている気がするが、ツッコんだら負けである。
 短い悲鳴を上げ、盗賊達は這いずりながら仁八から離れていく。その進路に、三四郎と巳夜子が姿を現した。
 怯える2人を見て状況を理解したのか、巳夜子は膝を付いて優しく微笑む。
「貴方達が、逃げた盗賊ですね? 私も鬼ではありません。今すぐ五体投地して投降するなら、優しく連行してあげますよ?」
 表情とは違い、厳し過ぎる一言。脱獄した盗賊達が悪いとは言え、充分に『鬼』である。
「あのパンダらしき謎の生物にお仕置きされるか、私に叩き伏せられるか…好きな方を選んで下さい」
 爽やか過ぎる笑顔で、追い打ちの言葉を掛ける三四郎。その手には、木刀が握られている。
 ここまで『泣きっ面に蜂』という言葉が似合う状況は、滅多に無いだろう。それでも、盗賊達は投降しようとしない。間違った方向に覚悟を決めたのか、仁八と三四郎に向かって突撃した。
 迎え撃つように、仁八は金棒を全力で振り下ろす。恐怖心を極限まで煽り、身動きが止まった瞬間に寸止め。素早く脚を払い、行動不能にした。
 三四郎は、そんな手間のかかる事はしない。盗賊の肩に狙いを定め、手加減して木刀を振り下ろした。鋭い一撃が意識を刈り取り、気絶して地面に転がる。
「いい腕してるねえ、三四郎。今度、あたしと手合せしてみるかい?」
 自称喧嘩屋の血が騒ぐのか、仁八は不敵な笑みを向けた。三四郎がそれを丁寧に断ると、仁八はゴザで盗賊達を包み、巳夜子と2人で簀巻きにしていった。


「39…40…41……よし、全部捕まえたみたいだよ。みんな、お疲れ様!」
 捕獲を担当した7人は、家畜を連れて養蓄場に集まっていた。エミナが代表して頭数を数え、リストと照合。全て捕まえた事を確認し、仲間達に笑顔を見せた。
「今回のは、家畜を養う人達の苦労が良く分かる事件だったのですよ……」
 安心して力が抜けたのか、咲がその場に座り込む。相当疲れたのか、彼女の腹の虫が盛大に鳴った。
「同感や。あ〜…しんどいわぁ。こうなったのも、脱獄した馬鹿のせいやで…!」
 なずなは咲に同意しながら、地面に腰を下ろす。もし彼女が盗賊の捕縛を担当していたら、激しい怒りをぶつけていたかもしれない。
「怪我をした家畜はおらんか? こやつらは巻き込まれただけじゃし、不憫でのぅ… 」
 心配そうな表情を浮べ、動物達を見回す猫。その優しさを、鶏やティルマにも向けて欲しい気もするが。
「家畜が逃げのびたとしても、外の世界は生きていくのに厳し過ぎますからね。これで良いのです」
 猫と共に、怪我の有無を確かめるティルマ。その表情が若干沈んでいるのは、家畜がいつか『食肉』になってしまうからだろう。幸い、今回は無傷で済んだが。
「皆さん、お揃いですね。家畜の捕獲、お疲れ様です」
 労いの言葉と共に、三四郎達3人が街に戻って来た。彼と仁八で、簀巻きにした盗賊を担いでいる。
「三笠様達こそ、お疲れ様です。その様子ですと、捕縛に成功したようですね」
 笑顔と共に、言葉を返す遼子。簀巻きの中身が何なのか、説明しなくても分かっているようだ。
「おうよ! この野郎共にゃ、タップリと反省して貰わねぇとな!」
 パンダ姿のまま、仁八はニカッと笑みを浮かべる。三四郎に視線を向けて軽く頷くと、2人は盗賊達を引き渡すため、奉行所に向かって意気揚々と歩き始めた。
「結局、パンダとは遭遇しませんでした。でも、事件は一件落着ですね」
 依頼を達成し、巳夜子は屈託無い笑みを浮かべる。散々走り回って誰もが疲れているが、苦労した甲斐はあったようだ。エミナは羊に手を伸ばし、モフモフとした手触りを楽しんでいる。
 全員が安堵の表情を浮べる中、志郎はコッソリと街中へ向かった。走り回る家畜は居ないが、住人の混乱はまだ治まっていない。
「大変な騒ぎでしたね…どうやら、脱走犯が逃げるために家畜を放ったみたいですよ?」
 一般人を安心させるため、養蓄場の名誉のため、積極的に会話していく志郎。こういう気遣いが出来るのは、流石である。