月下の悪行
マスター名:香月丈流
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/12/13 19:09



■オープニング本文

「へへへ‥‥こいつぁ、大当たりだぜぇ」
 約2m四方の木箱、その中身を眺める男が4人。見るからに『善良な一般市民』ではない。
「ワザワザ泰国まで来た甲斐があったわネェ。あたし、ゾクゾクしちゃう♪」
 大柄で筋肉質の男性が、自身の小指を軽く噛む。これほどまでに『不気味』という言葉が似合う人物は居ないだろう。
「へへへ‥‥お頭ァ、手筈はどうなってるんで?」
 小柄な男に聞かれ、眼帯の男は酒瓶から口を離した。
「心配いらねぇよ。予定通り、迎えの船が来る事になってる。お宝を引き取りに、な」
 ニヤッと笑いながら、酒を煽る。フラつきながらも立ち上がり、木箱をコンコンと軽く叩く。
「大金に化けてくれよ‥‥なぁ、パンダちゃん」
 パンダ。泰国の山奥にのみ存在する希少生物。姿は熊に似ているが、目の周り、耳、肩、両手、両足の体毛は黒く、それ以外はクリーム色に近い白をしている。その容姿に加え、頭数が少ないために取り扱いは極めて厳しい。眠らせてロープで縛り、木箱に押し込むなど、言語道断である。
 だが、ここに居るガラの悪いオニィサン達は、それを平然とやっている。つまり‥‥。
「でも、ダーリン♪ 密輸なんてして、大丈夫かしらぁ?」
「ダーリンて呼ぶな、馬鹿。密輸なんざ、バレなきゃ問題ねぇ。俺達ぁ、いつだってそうして来ただろ?」
 酒瓶を軽く揺らし、眼帯男は中身を一気に飲み干した。
「おい、もう一本よこせ!」
 顔を上気させながら、眼帯男が長身の男に叫ぶ。長身の男は軽く溜息を吐きながらも、酒瓶を放り投げた。眼帯の男はそれを受け取ると、封を開けて再び酒を煽る。
「さぁて、大人しく寝てて頂戴ね、パンダちゃん♪」
「へへへ‥‥明日の夜には、大金持ちですぜぇ」
 オカマ男と小柄な男が笑みを浮かべる中、長身の男が箱に蓋をする。この箱が再び開封されるのは、いつなのだろうか?
 取引の時か?
 密輸先に着いた時か?
 それとも‥‥。


■参加者一覧
緋桜丸(ia0026
25歳・男・砂
風雅 哲心(ia0135
22歳・男・魔
三笠 三四郎(ia0163
20歳・男・サ
皇 りょう(ia1673
24歳・女・志
水月(ia2566
10歳・女・吟
利穏(ia9760
14歳・男・陰
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
エルレーン(ib7455
18歳・女・志


■リプレイ本文

●暴かれた悪行
 閑散とした、古びた港跡。朽ち果てた建物。大きな木箱に、人相の悪い4人組。
 そして、そこに近付いて来る4つの人影。
「へへへ‥‥お兄さん達、ここは立ち入り禁止ですぜ?」
 下品な笑みを浮かべながら、小柄な男が言葉を発する。それに合わせて、長身の男が拳を鳴らしながら一歩前に出た。
 立ち止まり、対峙する8人。その距離は、約5メートル。
「貴様等か? 『ぱんだ』を密輸しようとしている輩は!」
 密輸団を『ビシッ』と指差しながら、皇 りょう(ia1673)が吼える。脅しに怯んでいる様子は、微塵も感じられない。
「事情は知らないが、密輸たぁ随分とふざけた真似してるじゃないか」
 静かな口調だが、低く冷たい声で言葉を吐く、風雅 哲心(ia0135)。そこには、深い怒りが込められている。
「あん? 何の事だよ? 変な言い掛かりは止めて貰いてぇな」
 嘲るように笑いながらトボケる眼帯男。その行動が、りょうと哲心を逆撫でる。二人が武器に手を伸ばそうとした瞬間、利穏(ia9760)が素早く一歩踏み出した。
「なら、その後ろの木箱‥‥中身を確認しても構わないですよね?」
 言いながら、木箱を指差す利穏。全員の視線が、木箱に集まる。
「アラ嫌だ♪ カワイイ坊やの頼みでも、乙女の秘密は簡単に見せられないわねぇ」
 前言撤回。
 オカマ男だけは、利穏に熱い視線を送っている。恐らく、好みなのだろう。全身をクネらせながら話す様子は、不快な事この上ない。
「だったら‥‥力尽くでいくぜ? 生憎、悪党にかける情けは持ってないんでな」
 緋桜丸(ia0026)は、不敵な笑みを浮かべながらボキボキと指を鳴らす。そのままゆっくりと刀に手を伸ばし、柄を力強く握った。
「その通りだ! 悪事に加担する者には天誅あるのみ! ましてや、オカマなど言語道断!!」
「むっき〜! レディーに向かって、失礼な小娘ね! アタシがお仕置きしてあげるわ!」
 りょうとオカマ男の視線がぶつかり、激しく火花が散る。お互い、平和的な方法で解決する気は毛頭無いようだ。
「面倒だが、仕方無ぇ。おい、お前はアッチの黒髪をやれ。赤いのは、俺が相手する」
 気だるそうに指示する眼帯男。長身の男は無言で頷くと、哲心を睨みながら片手剣を構える。
「へへへ‥‥なら、あっしは金髪の坊やを相手しますぜ」」
「仕方ありませんね。出来れば‥‥穏便に済ませたいんですが」
 苦笑いを浮かべながら、剣を抜き放つ利穏。それが合図になったかの如く、密輸団は一斉に駆け出した。開拓者達は互いに距離を置き、1対1の状況を作る。
 ここまでは、作戦通り。
 彼等4人の役目は、囮。密輸団を木箱から離し、注意を引く事にある。
 その隙に、戦ってる8人の逆側からコッソリと近付く人影が4つ。三笠 三四郎(ia0163)、水月(ia2566)、リィムナ・ピサレット(ib5201)、エルレーン(ib7455)の4人だ。
 バレないように木箱を取り囲んでパンダを確保し、周囲からの不意討ちに備える。
「うぅ〜‥‥」
 不安そうな表情で、辺りをキョロキョロと見渡す水月。夜間に、朽ち果てた港跡に居るのだ。彼女の年齢を考えれば、怖がるのも無理は無いだろう。
「大丈夫ですか? 暗くて怖いかもしれませんが、夜は人目につかなくて済みます」
 彼女の様子に気付いたのか、三四郎が声を掛けた。その気遣いが嬉しかったのだろう、水月の表情が微笑みに変わる。
 そこから数メートル離れた場所では、金属音と共に火花が散っていた。眼帯男の横薙ぎを、緋桜丸は紙一重で避ける。更に、頭上から頭上から振り下ろされた一撃を、副兵装で易々と受け止めた。
「おイタをすればお仕置きがあるって‥‥教わらなかったのかい?」
 最小限の動きで懐に潜り込むと、主兵装の柄頭を胴に叩き込む。痛烈な一撃に、眼帯男は鳩尾を押さえてうずくまった。
「どうした。1人じゃ何にも出来ないのか?」
 意地悪そうな表情で、淡々と言葉を紡ぐ緋桜丸。挑発するようなセリフに、眼帯男は奥歯を噛み締めて立ち上がった。
「ナメんな‥若造が!」
 獣のように吼え、再び剣を振るう。
 長身の男は両手の片手剣を連続で突き出す。哲心は難無くそれを避け、刀を思い切り振り上げた。刀身が敵の片手剣を捉え、弾き飛ばす。長身の男が驚愕の表情を浮べるのと同時に、哲心は柄尻で敵の鳩尾を突いた。前屈みになったトコロに後頭部へ追い討ちの鞘撃。その2撃で、男は地に伏した。
「これで、実力差は分かったろう。大人しくお縄につくなら良し、さもなくば‥‥もっと痛い目を見る事になるぞ」
 そう言って、哲心は鼻先に切先を突き付ける。それが脅しではなく本気なのは、表情を見れば一目瞭然である。
 オカマ男と火花を散らしていたりょうは、大きく踏み込んで刀を振り下ろす。と、見せかけて横に跳び、着地と同時に地面を蹴って背後に回り込んだ。オカマ男は何とか反応し、回転しながら剣を振る。りょうはそれを受け止めると、激しい鍔迫り合いへと変化した。
「あら、眼鏡のイケメン♪ じゃなくて、パンダちゃんから離れなさいっ!」
 周囲の雰囲気をブチ壊す、オカマ男の奇声。その声量と気色悪い声に、りょうに一瞬隙が生まれた。オカマ男は力任せに彼女を吹き飛ばすと、木箱に向かって内股で走って行く。
 リィムナはオカマ男の動きに合わせて飛び出し、擦れ違い様に向う脛を思い切り蹴飛ばした。形容し難い悲鳴を上げ、オカマ男は無様に地面を転げ回る。
「えへへ♪ こう見えても、あたしパワフルなんだからね!」
 自慢げに笑みを浮かべるリィムナ。どうやら、相当のお転婆さんのようだ。悶えるオカマ男と同じように、醜態を晒している者がもう一人。
 利穏の練力を込めた一撃が、小柄な男の片手剣を叩き折る。ヤケクソ気味に男はナイフを投げたが、利穏はそれを掴み、無造作に放り投げた。驚く間も無く、一瞬で間合いを詰めて討ち掛かる。鞘に納められた剣の一撃が小柄な男の胴を強打し、そのまま膝を付いた。
「あの‥‥そろそろ手加減するのも限界なので、投降してくれませんか?」
 穏やかな利穏の言葉に、小柄な男は体をガタガタと震わせる。彼の発する剣気が、男を威圧して怯えさせているのだ。
 圧倒的な実力差を見せ付けられた密輸団達。心が折れ、降伏するのも時間の問題だろう。
「みんな、気を付けて! 瘴気が濃くなってきたよ!」
 周囲に意識を張り巡らせていたエルレーンが、突然大声を上げる。それが意味する事は、ただ一つ。
 開拓者の宿敵、アヤカシの出現である。

●邪魔な天敵
 木箱の向こう側、密輸団と反対の位置で、瘴気が形を成す。禍々しい炎の塊‥‥鬼火。2体の鬼火が、夜の闇に妖しく浮かんでいる。
「三十六計ですぜ! 逃げやしょう!」
 小柄な男が叫ぶと同時に、密輸団がバラバラの方向に走り出す。アヤカシの出現で彼等に対する注意力が甘くなっていたのか、開拓者の反応が一瞬遅れてしまった。
「ちっ、追うぞ! あいつらは俺らで押さえる、そっちは任せた!」
「無論だ! 『ぱんだ』に仇成す輩は、皇家の名にかけて許さん!」
 舌打ちしつつ、哲心が指示を飛ばす。りょうは拳を強く握り、オカマ男の後を追って走り始めた。利穏と緋桜丸、哲心も同様である。
「悪い人たち、しっかりお仕置きしてきて下さいね!」
 闇に消えて行く4人に、エルレーンが激励の言葉を掛ける。残った4人は、アヤカシから木箱を守るように素早く移動した。
「援護、します!」
 力強く叫ぶと、水月は勇壮なる騎士の物語を紡ぐ。普段口数の少ない彼女だが、その歌声は雄々しく、聞く者に不屈の闘志を植え付ける。
 三四郎は水筒の蓋を開けると、中の水を頭から被った。アヤカシの炎で燃やされないための下準備である。水を滴らせながら、三四郎は地面を強く蹴って走り出す。両手の剣を強く握り、交差させるように振り抜いてアヤカシを斬り裂いた。
 その隙を突くように、もう一体の鬼火が真横から炎を吐き出す。三四郎は剣を交差させ、火炎の直撃を防いだ。
「熱っ! でも‥服を乾かすには丁度良いですね」
 炎に照らされながら、軽く苦笑いを浮かべる。そのまま裂帛の気合を込めて剣を振り、炎を振り払った。直撃は避けたものの、蒸発した水が蒸気となって彼の体から立ち上る。
「三四郎、避けて!」
 リィムナの声に反応し、三四郎は敵の居ない方向に飛び退く。直後、彼女の武器から吹雪が生まれ、扇状に広がって2体のアヤカシを飲み込んだ。冷気から逃れるように、手負いのアヤカシが飛び出す。リィムナは聖なる矢を生み出すと、その敵に向かって飛ばした。清浄な光が鬼火を射抜き、風穴を穿つ。
 そこから炎が吹き出し、鬼火が更に激しく燃え上がる。炎の玉と化した鬼火は、木箱を守っている開拓者達に向かって突撃した。圧倒的な炎が、殺意を伴って迫る。誰よりも早く、エルレーンは地面を蹴って飛び出し、木箱とアヤカシの間に身を割り込ませた。
『エルレーン!』
 悲痛な叫びが周囲に響く。エルレーンは身を挺して盾となり、鬼火を正面から受け止めたのだ。苦痛に顔を歪めながらも、エルレーンは鬼火に刀を突き刺した。更に、短銃を突き付けての零距離射撃。爆発音と共に白煙が上がると、鬼火の体は黒い塊と化して四散、そのまま夜の闇の中へ溶けていった。
 アヤカシ1体の消滅を見届けると、エルレーンはその場に崩れ落ち、膝を付く。痛々しい程の火傷が、広範囲に彼女の体を侵食していた。
 水月は両手を広げ、術を唱えながら舞を奉じる。月夜に踊る白銀の巫女は、幻想的で美しい。術と舞に呼応し、エルレーンの周囲に水が生まれて体を包む。最初は痛みに顔を歪ませていたが、その表情は徐々に穏やかになっていく。水が火傷を癒すのと同時に、冷やしているのが功を奏したのだろう。舞い終えた水月は、エルレーンに歩み寄って上着の裾を軽く掴む。
「無理は‥駄目」
 緑色の瞳が、真っ直ぐに彼女を射抜く。エルレーンは苦笑いを浮かべながら、自身の頬を軽く掻いた。
「無理と言うか、気付いたら体が動いてて‥‥心配してくれて、ありがとうなの」
 顔を見合わせ、軽く笑みを浮かべる2人。微笑ましい状況であっても、アヤカシが空気を読んで行動するワケが無い。フラフラと漂うように飛び、木箱に近付いていく。
「パンダちゃんに近付くなら、容赦しないよ!」
 叫びながら、リィムナは聖なる矢を連続で撃ち出した。1本はアヤカシを掠ったが、もう1本は貫通して穴を穿つ。
 エルレーンは水月の頭をそっと撫で、立ち上がって剣を振った。その刀身が紅い燐光に包まれると、体勢を低くして一気に駆け出す。紅葉のような燐光を散しながら、エルレーンは素早い横薙ぎを叩き込んでアヤカシを横に両断した。
 間髪入れず、三四郎が天高く舞う。2本の剣を合わせて両手で持ち、落下しながら振り下ろした。真紅の刀身がアヤカシを縦に両断し、虚空で縦横の剣閃が重なる。真紅の十字を抱きながら、アヤカシの体が闇に還っていく。黒い塊は一瞬で霧のように消え、雫が大地を汚した。
「ナイスコンビネーション、エルレーン」
 親指を立て、軽く笑みを送る三四郎。同様に親指を立て、エルレーンはウインクを返す。周囲にアヤカシの気配は無く、月夜は本来の静けさを取り戻した。

●パンダと笑顔
「あ‥おかえり、なさい」
 近付いて来る気配に気付いた水月が、視線を向けて声を掛ける。アヤカシを倒してから数分後、密輸団を追ったメンバーが戻って来たのだ。皆、縄で縛り上げた団員を抱えている。
「待たせたな。コイツ等が大人しくしないのでな、少々痛い目に合って貰った」
 そう言って、哲心は冷たい笑みを浮かべる。何があったかは分からないが、その表情が状況を雄弁に物語っている。
「ったく、余計な手間掛けさせやがって。俺の慈悲深さに感謝しろよ」
 皮肉をタップリ込めて、緋桜丸は眼帯男を見下ろす。もっとも、気絶していて声は聞こえていないが。
「それよりも『ぱんだ』は無事か!?」
 オカマ男を放り出し、木箱に駆け寄るりょう。三四郎、水月、リィムナ、エルレーンも駆け寄り、そっと木箱の蓋を開けた。
 月の光に照らされ、モゾモゾと動くパンダ。眠りながら、前脚で顔を軽く撫でる。
 その愛らしい様子に、水月とリィムナの顔に笑顔が浮かぶ。りょうに至っては、目がハート型になって乙女心大爆発である。
 対照的に、エルレーンは小首を傾げている。その体に、火傷の跡はほとんど残っていない。
「‥‥でっかい‥熊?? 無事、みたいだけど」
 彼女はパンダを初めて見たのだが、どうやら好みではなかったようだ。だが、そっと手を伸ばしてパンダの頭を優しく撫でる。その表情は、満足そうな笑みに満ちている。
 穏やかな空気が流れる中、利穏は鬼気迫る表情で海岸へと走り出した。
「急にどうしたんですか? まさか‥‥敵襲!?」
 驚愕の表情を浮かべながら、三四郎が言葉を投げ掛ける。が、利穏は視線を海に向けたまま、振り向こうとはしない。
「今、海の上で何かが動いたんです! 遠過ぎて良く分かりませんが‥‥」
「利穏! コレ使って!」
 リィムナは荷物から望遠鏡を取り出して手渡す。利穏は軽く礼を述べ、望遠鏡を海に向けた。
「小さな船、ですね。何だか慌ててるみたいです。あ、逃げて行きます!」
「利穏、念のために、船の外見や乗組員の特徴を覚えておけ。もしかしたら、取引船かもしれん」
 鉄心の言葉に小さく頷き、望遠鏡を返す利穏。リィムナはそれを受け取り、倒れている密輸団を指差した。
「あ、あの人達にも聞いた方が良いんじゃない? 何か分かるかも!」
「そうだな。悪事を見逃してはおけん。仔細を問い質す必要があるな」
 ニヤリと、口元に笑みを浮かべるりょう。哲心はさっきと同じような、冷たい笑みを浮かべている。
「とりあえず、これで一件落着だよね? 私、ギルドに連絡して来るね。ぱんだと悪い人達、私達だけじゃ運べないし」
 全体の状況を見渡し、エルレーンが提案する。彼女の言う通り、今回は引き渡す物が多いため、ギルドに連絡した方が手っ取り早いだろう。
「俺も一緒に行くぜ、お嬢さん。年頃の女性が夜道を一人で歩くのは危険だからな」
 さっきまでの豪快で荒々しい態度とは一変し、紳士的な一面を見せる緋桜丸。その雰囲気は柔らかく、さっきとは別人のようだ。女たらしというワケでは無く、女性に対しては紳士なのだろう。
「じゃぁ、私達は盗賊とパンダを見張ってますね。個人的には‥コートを乾かしたいですし」
 言いながら、苦笑いを浮かべる三四郎。戦闘前に掛けた水が完全に乾いていないため、若干体が冷えてきたのだろう。三四郎は木箱の蓋に手を掛け、ゆっくりと閉めていく。水月は眠るパンダの頭をそっと撫で、パンダに向かって軽く手を振った。
「‥ばぃばぃ」