カワイ過ぎる刺客
マスター名:香月丈流
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 7人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/07/17 20:14



■オープニング本文

「さぁ、みんな。一緒にパンダさんを呼ぼうね。せ〜のっ!」
『ぱんださ〜〜〜ん!!』
 引率の教師に促され、10歳にも満たない少年少女達が期待の声を上げる。それに応えるように、檻の奥から大きなパンダが2匹姿を現した。周囲の子供達から、歓喜の声が上がる。
 パンダという希少生物は泰国にしか生息していない。しかも頭数が少ないため、実物を見る機会は滅多に無いのだ。今回は『社会見学の一環』という事で、パンダの生体調査をしている研究所に協力して貰っている。
「今日は、ありがとうございます。あの子達、本当に楽しそう…」
 研究所の所員に頭を下げ、礼を述べる教師。彼女の言う通り、子供達はキラキラした瞳でパンダを眺めている。白と黒の体毛に、愛くるしい仕草。子供のみならず、見る者の興味を引いて止まないだろう。
「いえ。我々の施設が社会勉強の足しになるなら、お安い御用です。それに…子供は好きですから、私」
 優しく微笑みながら、所員は眼鏡を上げた。普段は研究に没頭しているだけに、今日の事は良い息抜きになったのかもしれない。
「ねぇ先生〜。何か、檻の中が変だよ〜?」
 少女が不安そうな表情で教師の裾を引っ張る。視線を檻に向けると、黒い霧のような物が湧き上がっていた。
 開拓者が1人でも居れば、その正体に気付いて避難を促していただろう。黒い霧…すなわち瘴気は、アヤカシの出現する前兆のようなものだ。
 程無くして、檻の内部に異形の存在が姿を現した。虎のような姿をした、人型の化物。虎の頭に、全身を覆う黄色と黒の体毛。牙と爪は、普通の虎よりも鋭い。
「うわぁぁぁぁ!!」
 悲鳴を上げながら、教師と子供達は研究所を出て行く。逆に、所員は檻の鉄柵を掴んで叫んだ。
「シュンシュン、ハルハル、逃げろ!」
 悲痛な声が周囲に響いたが、パンダに逃げ場は無い。虎の化物は2匹のパンダに手を伸ばし、頭部を掴んだ。激しく抵抗されても気にせず、掌から暗紫色のオーラを送り込む。直後、シュンシュンとハルハルの抵抗が弱まり始めた。
 数秒後。抵抗が完全に止んだのを確認し、アヤカシが手を離す。2匹のパンダは所員に獰猛な瞳を向けると、猛獣のような雄叫びを上げた。どうやら、完全に操られてしまったようだ。
「しゅ…シュンシュン…ハルハル…?」
 目の前の光景に茫然としながら、パンダの名前を呼ぶ所員。シュンシュンが腕を振ると、鉄柵が野菜のように斬り裂かれた。驚愕する職員に向かって、ハルハルが腕を伸ばす。鋭い爪が職員の胴を貫き、吐血しながらその場に崩れ落ちた。
 血溜りが広がる中、3体は檻を脱出して研究所を出て行く。進路は、泰国の中央に位置する朱春。多くの命が失われるまで、彼等の行進は止まらない。


■参加者一覧
皇 りょう(ia1673
24歳・女・志
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
ファムニス・ピサレット(ib5896
10歳・女・巫
Kyrie(ib5916
23歳・男・陰
狸寝入りの平五郎(ib6026
42歳・男・志
ラグナ・グラウシード(ib8459
19歳・男・騎
キルクル ジンジャー(ib9044
10歳・男・騎


■リプレイ本文

●パンダ救出大作戦
 朱春に押し寄せる、大勢の人々。正確には、『避難して来た』と言うべきだが。東部にアヤカシが現れた事で、誰もが不安を感じているのだろう。
 そんな人波を逆行し、東部に向かう者達が居た。
「『ぱんだ』のように愛らしいものを操り、人々を苦しめるとは……万死に値するな!」
 拳を強く握りながら熱く語る、皇 りょう(ia1673)。荷車に檻を乗せて引いているが、それは研究所員が貸したパンダ運搬用の物である。
「気が合うな。卑劣なアヤカシめッ! 私の大剣にて打ち砕いてやるッ!」
 裂帛の気合を込めた、ラグナ・グラウシード(ib8459)の叫び。どうやら、彼もパンダに愛着があるようだ。
 互いに通じる物があったのか、ラグナとりょうは視線を合わせると固い握手を交わした。
「へぇ…パンダってなぁ、えらく可愛いんだな。そんなパンダを操って悪行三昧たぁ許せねえ。虎野郎をぶっ倒して必ず助けるぜ!」
 不敵な笑みを浮かべながら、狸寝入りの平五郎(ib6026)は右の拳を左の掌に打ち付ける。好戦的になっているが、避難して来る一般人からの情報収集を忘れない。
「気持ちは分かるけど、奇襲されないように注意してね!」
 闘志を燃やす3人に向かって、リィムナ・ピサレット(ib5201)が元気に声を掛けた。敵がいつ襲って来るか分からない以上、油断は大敵である。
「うん…それに、急がないとまた被害者が出てしまうかもしれません」
 俯き気味に言葉を呟くのは、ファムニス・ピサレット(ib5896)。姉のリィムナとは対照的に、大人しい性格のようだ。
「でも、ご乱心したパンダさんと虎人間なら、目立つハズなのです。それを探せば…」
 周囲を見渡しながら、キルクル ジンジャー(ib9044)が口を開く。その言葉が、途中で不自然に途切れた。
 理由は簡単。彼が視線を向けた先に、虎のアヤカシとパンダが居たからだ。周囲の樹木を薙ぎ倒し、無駄に地面を抉っている姿は『見付けてくれ』と言わんばかりに目立っている。
「確かに、あれは目立ちますね。わざわざ探す手間が省けました。皆さん、準備は良いですか?」
 軽く笑みを浮かべ、Kyrie(ib5916)は全員を見渡す。開拓者達は無言で頷くと、兵装に手を伸ばした。りょうは物陰に荷車を隠し、戦闘に備える。
 敵もこちらの存在に気付いたのか、2匹のパンダが吼える。直後、3体は地面を蹴り、一気に距離を詰めて来た。

●虎とパンダと大乱闘
 りょう、平五郎、ラグナ、キルクルの4人が、後衛を守るように素早く前に出る。兵装を握り、敵と対峙した。
「どうした、その牙は飾りか?! …そうでなくば、かかってくるがいいッ!」
 挑発しながら、ラグナは大量のオーラを全身に纏い、戦闘能力を高める。彼の言葉を理解したのかは分からないが、虎のアヤカシはラグナに向かって爪を薙いだ。
 直後、周囲に固い金属音が響く。ラグナが大剣を盾代わりにして、攻撃を受け止めたのだ。若干反応が遅かったせいか、腕から薄っすらと出血している。
 虎は不快そうに低い唸り声を上げると、地面を蹴って横に跳んだ。その先に居るのは、平五郎。
「うぎゃああ! 殺されるー!」
 大袈裟に悲鳴を上げながらも、平五郎は盾を構えて防御に徹する。それが敵の爪撃を受け止め、完全に無効化した。
 虎に注意が向いている隙を突き、パンダが間合いを詰めて、りょうとキルクルに爪を振り下ろす。りょうが太刀を構えると、刀身が夕日のような輝きを放ってパンダ達の爪撃を弱めた。そのまま、攻撃を捌くように太刀を操る。
 キルクルはオーラを纏って防御を固め、パンダの攻撃に合わせて槍を振り上げた。巨体から放たれた一撃を、小柄なキルクルが受け止めて耐える。
「やめるのです! えっと……りょうさんっ! シュンシュンとハルハルの区別が付かないです〜!」
「それは…えっと……どちらでも構わん! 私達で足止めするのみっ!」
 困ったように声を上げるキルクルに、割り切って開き直るりょう。どうやら、2人とも区別が付かないようだ。パンダの飼育を専門に行っていない者に、見分けを付けろという方が無理な事ではあるが。
 2人の言動が気に障ったのか、パンダ達が眉間にシワを寄せた。泰国のチビッコが見たら、一生トラウマになりそうな形相である。
「前衛の皆さんが敵を引き付けている隙に、まずは私達の底上げをしましょう」
 言葉と共に、Kyrieが静かに舞う。それが彼とファムニスの心を落ち着かせ、精霊の加護が抵抗力を上昇させた。巫女である自分達が、状態異常に陥らないための予防策である。
 ファムニスは穏やかに舞い、周囲の精霊に力を借りる。精霊力がリィムナを祝福し、身体能力を向上させた。
「姉さん、パンダさんをお願い…!」
「任せといて! あんたが手伝ってくれたんだから、絶対成功させる!」
 口元に笑みを浮かべ、リィムナがパンダ達に向かって呪文を唱える。それが強烈な眠気を誘い、徐々に動きを鈍らせていく。ほんの数秒で、2匹のパンダは地面に崩れ落ちた。
「やったのです! パンダさん、暫く大人しくしてて欲しいのですー」
 満面の笑みを浮かべながら、キルクルは眠るパンダに優しく語り掛ける。りょうは珍しく乙女のような表情を浮かべ、そっとパンダの頭を撫でた。
「流石だぜ、リィムナ! もう演技の必要は無ぇな!」
 平五郎が大袈裟に悲鳴を上げていたのは、虎の注意を引くのと、周囲の一般人に危険喚起を促すのが目的である。パンダが行動不能になった今、次にするべき事は敵への集中攻撃だ。
「本気で怯えているようにしか見えなかったぞ。役者に転向しても喰っていけそうだな」
 冗談交じりに言いながら、ラグナは視線を平五郎に向ける。二人は不敵な笑みを浮かべると、虎に向き直った。
 ほぼ同時に、虎の爪撃が平五郎に迫る。咄嗟に後方に跳び退いたものの、先端が胸を掠めて赤い線が描かれた。更に、虎は大きく息を吸って咆哮を上げる。恐怖心を煽るような叫び声が周囲に響き、不快感が全身を駆け抜けていく。
 苦痛に顔を歪める7人。特に、ラグナと平五郎は耳を塞ぎながら崩れ落ち、片膝を付いた。
「うっさい虎ね…これでも食べてなさいよ!」
 叫びながら、リィムナは地面に手を付いて精霊に働きかける。それが魔法の蔦となって虎の足元から伸び、全身に絡み付いて自由を奪った。間髪入れず、リィムナは兵装を構える。周囲に閃光が奔り、電撃が虎の口を目掛けて一直線に飛来した。雷の矢が口内を射抜き、瘴気が噴き出す。
 雄叫びが止み、開拓者達は安堵の息を吐きながら頭を軽く左右に振った。
「貴様の外道のような所業、即刻終わらせてくれる…!」
 太刀に精霊力を纏わせ、りょうは地面を蹴って間合いを一気に詰める。白く澄んだ気を纏った刀身を全力で薙ぎ、虎の胸を深々と斬り裂いた。精霊力が瘴気を浄化し、梅の香りが周囲に漂う。
 キルクルは槍を握り直し、腰を落として体勢を下げた。その状態から全身のバネを使って急加速。強烈な槍撃を突き出し、敵の胴を貫いた。その様子は、まるで一角獣の突撃である。
 自身の頬を叩き、気合を入れ直すラグナ。大剣にオーラを収束させ、虎に向かって駆け出した。キルクルとりょうが左右に跳び退き、場所を空ける。入れ違うようにラグナが駆け込み、兵装を振り下ろした。斬撃が虎の胴を深く裂き、傷口から大量の瘴気が噴き出す。
「咆哮は厄介ですね。念のために、ラグナさんと平五郎さんの援護を…」
 両腕を広げ、再び舞い踊るKyrie。静かな神楽が精霊に作用し、ラグナと平五郎の心を落ち着かせ、加護を与えた。
「ここからが本番ですね。回復して、一度仕切り直しましょう」
 ファムニスは風の精霊に働きかけ、優しい風を生み出す。それがラグナと平五郎を包み、傷を癒した。回復が必要な程の負傷では無いが、ダメージの有無で気持ちも変わるだろう。
 平五郎は振り向いて軽く礼を述べ、虎に迫る。殺気を込めたフェイントで敵を惑わせながら、ナイフを奔らせた。切先が虎の体を捉え、傷を刻んでいく。
 連続攻撃を受け、敵の全身から瘴気が漏れている。追撃しようとした瞬間、その姿が視界から消えた。驚愕の表情を浮かべ、周囲を見渡す開拓者達。アヤカシの姿を見付けた時には、ファムニスに向かって爪が振り下ろされようとしていた。
 瞬間移動にも見えたのは、アヤカシが高速で移動したためである。ファムニスを狙ったのは、彼女が一番小柄で倒し易いと思ったのだろう。
 殺意を伴った爪撃がファムニスに迫る。それが届く直前、Kyrieは地面を蹴って跳び、彼女を抱き締めながら地面を転がった。結果、ファムニスは無傷で助かり、虎の爪は地面に突き刺さった。
 だが……。
「Kyrieさん…! 何で…」
「怪我は…ありませんね? 良かった…」
 泣きそうな声を出すファムニスは、指先に生暖かい液体の流れを感じていた。見なくても分かる。それは…Kyrieの血だ。ファムニスを庇った時、アヤカシの爪撃を喰らったのだろう。Kyrieの背は、大きく斬り裂かれていた。
 彼は、敵の攻撃を喰らわないように注意していた。回復の要である巫女が倒れては、仲間を癒せなくなるからである。そう思っていたのだが、仲間が不意打ちを喰らいそうになっているのを見て、体が無意識のうちに動いてしまったようだ。
 驚愕と不安が胸の中で渦を巻く。突然の事で混乱しつつも、開拓者達は2人の元に集まった。
「…傷は大きいが深くは無いな。ファムニス殿、回復を頼む」
 傷の具合を確認し、りょうはKyrieをうつ伏せに寝かせる。目に涙を浮かべながらも、ファムニスは回復のスキルを発動させた。
 虎は爪を引き、開拓者達に視線を向ける。7人が固まっている今が、一番の狙い時だと思っているのかもしれない。静かに近寄り、両腕の爪を一気に振り下ろした。
 それに気付いた平五郎とキルクルが、兵装を構えて割って入り、爪撃を受け止める。
「これ以上…俺の仲間を傷付けさせねぇよ! キルクル、いくぜ!」
「了解なのですー!」
 タイミングを合わせて爪を弾き飛ばし、平五郎は盾で、キルクルは槍の柄でアヤカシの胴を打つ。あまりの衝撃に、敵の体が大きく揺らいだ。
 体勢が崩れている隙を狙い、りょうは天高く舞う。落下しながら刀身に精霊力を纏わせ、一気に振り下ろした。斬撃が敵を肩口から斜めに裂き、地面を抉る。
「ちょっと待ってなさい。あのムカツク虎、速攻で倒してくるから!」
 ファムニスの肩を叩き、リィムナはアヤカシに怒りの視線を向けた。手にした杖から電撃が二連続で放たれ、敵の右肩と左脚を貫通。穿たれた傷口から、大量の瘴気が溢れ出した。
「私の仲間を傷は重いぞ…この世界から消えて失せるが良いッ!」
 ラグナの怒りに呼応するように、大剣に収束させたオーラが輝きを増す。大きく踏み込み、横薙ぎの斬撃を放った。刀身がアヤカシの胴を両断し、瘴気と共に断末魔が漏れる。その声すらも斬り裂くように、追撃の一刀を振り下ろした。その一撃でアヤカシの体は瘴気と化し、空気に溶けて消えていった。

●笑顔の見送り
「助けたつもりが助けて頂くとは……私とした事が、詰めが甘かったですね」
 回復を受けたKyrieが、苦笑い混じりに溜息を吐く。ファムニスを庇ったのは良いが、敵の攻撃を受けて回復の手間を取らせたのを気にしているのだろう。
「そんな事無いです! Kyrieさんのお陰で、助かりました。本当に、ありがとうございます!」
 いつもは引っ込み思案で小声なファムニスにしては珍しい、大きな声でハッキリした意思表示。微笑みながら、彼女は深々と頭を下げた。
「その通りだぜ。お前みたいな侠気(おとこぎ)溢れる奴、なかなか居ねぇよ!」
 Kyrieの肩を叩きながら、平五郎は親指を立てる。その人懐こい笑みに釣られたのか、Kyrieも柔らかく微笑んだ。
「さて、ファムニスとKyrieの無事を確認出来たし、今度はパンダさん達を確認しなきゃね」
 妹の頭をクシャクシャと撫でながら、リィムナがパンダに視線を向ける。他のメンバーも注目を向ける中、2匹のパンダは目覚めて仲良くジャレ合っていた。
「目覚めていたか。ふむ…やはり『ぱんだ』は愛らしい生き物だな」
 普段通りの口調を崩さないりょうだが、その表情はデレデレになって緩んでいたりする。乙女心、大爆発中のようだ。
「白黒模様というだけで、どうしてこんなにかわいいんだろうなあ…なあ、うさみたん?」
 嬉しそうにパンダを眺めながら、背中に背負ったウサギのぬいぐるみに話し掛けるラグナ。本人曰く『めるへん&きゅーと大好き』らしいが…長身で筋肉質な成人男性(19歳)がぬいぐるみに話し掛けている姿は、色んな意味で衝撃的である。
 開拓者達の視線に気付いたのか、パンダ達は動きを止めた。そのまま見詰め合う事、数秒。見慣れない人間達に恐怖を感じ、パンダ達は一目散に逃げだした。
「わわ、またパンダさんがご乱心なのです! そこの白黒パンダ、止まれ、待て、ストップなのですー!」
 慌てながら、前衛職の4人が駆け出す。キルクルに『白黒じゃないパンダは居ないぞ』とツッコミたいが、そんな余裕は誰にも無いようだ。
 だが、唐突に始まった追い駆けっこは、唐突に終わる。2匹のパンダが、ゆっくりと崩れ落ちて眠り始めたのだ。
「久々に見たけど…やっぱり、大人しい方が可愛いよね♪」
 笑顔でウインクを飛ばすリィムナ。パンダが眠り始めたのは、彼女が呪文を唱えたからである。
「リィムナさん、ありがとなのです。お陰で、助かったのですー」
 小さく飛び跳ねながら、両手を振るキルクル。リィムナは笑顔で手を振り、それに応えた。
 ファムニス達3人もパンダに歩み寄り、怪我が無いか全員で全身を調べる。
「負傷は無いようですね。また逃げ出す前に、檻に入って貰いましょうか」
 Kyrieの提案に、全員が静かに頷く。反対意見が無い事を確認し、彼とキルクルは荷車に向かって歩き始めた。
「…か、可愛ええ! おい、だ、抱き付いちゃダメか? 」
「なら…私は、撫でても良いだろうか?」
 改めてパンダと向き合った平五郎とラグナが、興奮気味に呟く。2人を虜にしてしまう程に、パンダは魅力的で愛らしい動物のようだ。
「魅力が分かるのなら、好きにすると良い。ただし…起こさぬよう注意してくれよ?」
 そう言うりょうは、既にパンダに抱き付いて頭を撫でていたりするが。
 全員でパンダを堪能した後、寝ているうちに協力して檻に運び入れる。代表してラグナと平五郎が荷車を引き、7人は岐路に着いた。
「パンダさん達には、ご家族はいるのでしょうか…無事、居るべき所にお返ししたいですね」
 微笑みながら、一人呟くファムニス。元凶のアヤカシを倒した以上、彼女の願いは数時間後には叶うだろう。