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■オープニング本文 ※このシナリオは初夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。 激動の1014年は幕を下ろし、新年の朝日が大地を照らす。 天儀歴1015年…正月を迎えた人々は、喜びと激闘の中に身を置いていた。 正月料理を堪能し、親しい者と酒を酌み交わす大人達。子供達は元気に遊び回り、新しい年を全力で喜んでいる。 対照的に、お年玉目当てで親戚巡りをする少年少女も少なくない。新春の売り出しや福袋を求め、老若男女を問わず激しい争奪戦が発生。平和の裏で、熱い戦いが繰り広げられていた。 そして…争っているのは、人間だけではない。 「とうとう…正月正月が来たか。我は今日という日を、一年待っていた!」 大地の隅々まで響くような、重低音の咆哮。叫び声を上げたのは…1匹の提灯南瓜。新年早々、衝撃的な光景である。 「待ってたのはアンタだけじゃないわよぉ〜? アタシだって、『翼』を長〜〜くして待ってたんだから♪」 駿龍の言葉に、甲龍、炎龍が大きく頷く。待ってる時に長くするのは『首』なのだが…それをツッコむ者は誰も居ない。 「今年も『アレ』やるんだろ? へへっ…ハートが震えて、燃え尽きるくらいヒートしてきたぜっ!」 ついでに全身も燃えている鬼火玉。このまま消し炭になりそうで、少々心配である。 「えっと〜ぉ、今年もやるって聞いたから〜ぁ、勝負しに来たよ〜ぉ♪」 ゆっくりと話しながら、羽妖精は楽しそうに微笑んで見せた。 去年の正月…朋友達は『一年の顔』を賭けて、激しいレースを繰り広げた。優勝者は干支の代わりに、一年の代表を務める事が出来る。 ちなみに、去年の覇者は迅鷹で、1014年は『迅鷹年』だった。 「まぁ…どうせ勝つのは今年も僕だけどね。少しの間だけ、みんなには夢を見させてあげるよ」 勝者の余裕なのか、不敵な表情を浮べる迅鷹。勝者としての風格が、全身から放たれている。 その隣では鷲獅鳥が虎視眈々と下剋上を狙っているが…見なかった事にしよう。 「で、今年は何で勝負するの? 俺の時みたいに、問答無用で決められるのは勘弁して欲しいんだけど」 若干不機嫌そうに言葉を吐きながら、霊騎は前脚で地面を蹴った。 本来、1014年は午年。外見が似ている霊騎は、自分が主役の年になると思っていたのだが…朋友達の猛反発を受けた。結果、なし崩しにレースをするハメになり、午年は消滅。苦い想いをする一年となった。 「今年は公平を期するため、クジ引きで決めるのはどうだろうか? 各自が競技内容を紙に書き、それを箱に入れ、目隠しをした代表者が1枚引く…というのは?」 そう提案する自来也の手には、紙と筆が握られている。朋友達は互いに様子を窺ったが…反対する者はゼロ。自来也の提案に従い、全員が筆を走らせた。 クジを引くのは、去年の優勝者、迅鷹。目隠しをしたまま嘴を箱に突っ込み、1枚の紙を選び出した。 そこに書かれていた内容は……『大食い』。 「大食いか…こいつは、俺の翼の出番だっゼ!」 滑空艇が叫びながら宙に舞い上がったが、翼と大食いにどんな関係があるのか不明である。それをツッコむより早く、管狐が机を叩いた。 「異議あり! その勝負、明らかに体格の大きい者が有利でゴザル! 拙者や羽妖精殿は圧倒的に不利でゴザルよ!」 「そうアル! 身長の大きさで勝負が決まるなんて、理不尽ネ! カツオブシとマタタビが出ても反対アルヨ!」 管狐に同意し、猫又も声を荒げる。2人の語尾は若干アレではあるが、発言内容は至極正論。このままだと、公平な勝負は出来ないだろう。 「あの……だ、だったら、身長に応じて…その、食べ物の大きさを、変えれば……良いんじゃないかな? うぅ…ごめんなさい……」 申し訳なさそうに意見を述べたのは、駆鎧。大きな体に似合わず、気弱な性格のようだ。 「ふム、良い案かもしれませんネ。どうせ、クジを引き直してモ賛否は出るハズ。だったラ、全員が公平に戦える条件を整えれば良イ」 「僕も駆鎧に賛成もふ! 正月から美味しい物を食べれるなんて、最高の年明けもふ!」 ミズチともふらが賛成意見を出すと、駆鎧は嬉しそうに笑顔を浮かべた。嬉しさのあまり、そのまま2人に突撃。情熱的な抱擁が、ミズチともふらに炸裂した。 「そいでは、これに決めて問題あいもはんね? 正々堂々、勝負(しょっ)しもんそ!」 土偶ゴーレムの訛りは激しいが、言いたい事は何となく分かる。『食べ物の大きさを変える』という条件付きで、全員が大食いに納得。ここに、1015年の競技が決定した。 「今年こそ、私が勝って…『からくり年』に。フフフ………頑、張る…!」 静かに通しを燃やす、からくりの少女。妄想が膨らんでいるのか、顔が愉快なくらいに緩んでいる。 「勝負は時の運。生々流転する万物に比ぶれば、我等の諍いなど些細な事…」 人妖は妙に達観しているのか、大きく溜息を吐いた。言葉だけ聞くと勝負に興味が無いように思えるが…シッカリと準備体操を始めていたりする。 盛り上がる朋友達を余所に、忍犬は物陰で不敵な笑みを浮かべた。 (三年後は戌年…無理に頑張らなくても、僕の年はくるんだよ、ふふふ♪) |
■参加者一覧
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
霧雁(ib6739)
30歳・男・シ
雁久良 霧依(ib9706)
23歳・女・魔
サライ・バトゥール(ic1447)
12歳・男・シ |
■リプレイ本文 ● それは、人が決めた『干支』を良しとせず、新たな決まりを作り出そうとする猛者の戦い。 自身の誇りと一族の命運を背負い、栄光を掴もうとする者達の記録。 この戦いに勝利した者は、干支の代わりに『1年の顔』を名乗る事が出来る。 天儀歴1015年、1月某日。 燃える闘争心を胸に、選ばれた朋友4組が決戦の地に集まっていた。 対戦方法は、厳正なるクジ引きで決まった『大食い』。勝負の行方を見守るため、同族の朋友のみならず、一般人も見物に集まっている。 参加者の中で一番注目を集めているのは、5mの巨体を誇る轟龍、チェンタウロ。既に戦う準備は整っているのか、口の端から炎が漏れている。 『大食いか…闇鍋ではないのが救いだな。せいぜい、派手に食うとするか』 今回の勝負で出される料理は、箸を使わなくても食べられる、握り飯、餅、甘味の3種類。体格差のハンデを無くすため、身長に応じて料理のサイズも変わる。一番大柄なチェンタウロは、サッカーボールサイズの握り飯を喰らう事になるのだ。 出てくる料理を想像しながら、チェンタウロは隣に居る少女、リィムナ・ピサレット(ib5201)に声を掛けた。 『ところで…ブレスで食物を燃やして灰にして食ってはダメか? 食べやすくなるが』 「ダメダメ! 勿体ないでしょー! フツーに頑張ってね、チェン太♪」 否定と共に、満面の笑みを向けるリィムナ。主にこんな表情をされたら、相棒として頑張らないワケにはいかない。チェンタウロは軽く微笑み、気合を入れ直した。 『じゃ、私は頑張ってくるから、応援お願いねぇ♪』 色っぽい口調でウィンクを飛ばしたのは、20歳くらいの美女。露出の高いメイド服を着ているため、抜群のスタイルを隠しきれていない。特に、豊か過ぎる胸元は、今にも布が弾けそうになっている。 周囲の視線を独り占めしそうな容姿だが…彼女は小柄な羽妖精。身長が50cmという事もあり、若干目立っていない。 「え!? 僕は応援するなんて一言も…」 相棒のレオナールから突然のお願いをされ、サライ(ic1447)は驚きの声を上げた。彼はロップイヤーの獣人だが、困り過ぎて普段よりも耳が垂れているような気がする。 そんな事は一切気にせず、レオナールは不敵に微笑んでサライに頬を寄せた。 『この前、サライきゅんが甘味大食い大会に出た時、私は一生懸命応援したわよね〜? 例の『アレ』で応援、お・ね・が・い♪』 そう耳元で呟き、彼女は天高く飛び上がった。慌ててサライが反論しようとしたが、既に声が届く距離には居ない。数分悩んだ末、彼は準備をするため控室にトボトボと戻って行った。 「ジミー! やるからには優勝するでござるよ! 頑張るでござる!」 会場で一番熱く盛り上がっているのは、猫の獣人、霧雁(ib6739)。かなり興奮しているのか、パステルピンクのフサフサ尻尾が激しく揺れている。 熱血な霧雁とは対照的に、相棒の仙猫、ジミーは軽く溜息を吐いた。 (俺ぁタダ飯が食えりゃそれでいいんだがな…) どうやら、ジミーは優勝に興味が無いらしい。『1年の顔』よりも、大事なのは食事。でっぷりした体型が示す通り、彼は食欲旺盛なようだ。身長はレオナールと大差ないが、横幅は段違いである。 そのせいで、霧雁の家計は常に火の車なのだが。 『ははは……皆さんお手柔らかにお願いしますよ』 参加者や開拓者の闘志に圧倒されたのか、提灯南瓜のロンパーブルームは乾いた笑いを零している。イタズラ好きの性格だが、人と争うのは苦手なのかもしれない。 「ロンちゃん頑張ってねぇ。優勝したら…私にどんな悪戯してもいいわよ♪ 『どんな事でも』…ね♪」 弱気な相棒を励ますため、雁久良 霧依(ib9706)は妖艶な笑みを浮かべながら自身の体を指でなぞる。自己主張の激しい胸部に、引き締まったウエスト。そして、細く長い脚線…。 『僕、俄然やる気が出てきました! 優勝しない訳にはいきませんなぁ!』 霧依の言動を見ていたロンパーブルームの両目に、闘志の炎が燃え上がった。数秒前までの弱気な態度はドコへやら。今は、霧雁よりも熱く盛り上がっているかもしれない。 会場の熱気も高まった処で、対戦台が置かれて料理が並ぶ。握り飯、餅、甘味が100皿ずつあるが、種類は様々。天儀のみならず、色んな国の技法で料理されている。朋友4人が席に着くと、勝負開始の合図が鳴り響いた。 ● 大量の料理を目の前に、勢い良く喰らい付く朋友達。1皿の大きさは違うが、食べる料理は全員同じ。当然、味も同じである。 『へぇ…結構いけるじゃねえか。うん、悪くない』 『同感♪ タダで美味しいスイーツ食べ放題なんて、幸せ♪』 バランス良く3種を味わうジミーに対し、レオナールはスイーツ中心。戦略は違うが、2人共『食べる事』を純粋に楽しんでいる。 (ここは一つ、先行逃げ切りでいきますか。噛まずに飲み込んでみせます!) 悪戯の懸かったロンパーブルームには、ゆっくり味を楽しんでいる余裕は無い。料理を手に取り、片っ端から口に詰め込んでいく。 そして、最低限しか噛まずに飲み込む。この作戦が吉と出るか凶と出るか分からないが、開始数分で独走状態。怒涛の勢いに、観客から歓声が上がっている。 周囲の状況を全く気にする事なく、チェンタウロのペースは一定。好き嫌いが無い事もあり、着実に皿をカラにしている。 「むぅ…拙者、ジミーだけに苦しい思いはさせないでござる! 係員殿!」 頑張る相棒の姿に心を打たれたのか、料理を運ぶ係員に詰め寄る霧雁。興奮気味に言葉を交わすと、係員は軽く頭を下げて準備室へ走って行った。 「すごいペースねぇ。はい、お茶どうぞ♪」 霧依は相棒の食べっぷりに感心しつつ、お茶を差し出す。基本的には朋友4人での戦いだが、多少のアシストは認められている。ロンパーブルームはお茶を受け取り、口の中の料理ごと一気に飲み干した。 『ありがとうございます。まだまだ行けますよ、ええ!』 礼を言い、ペースを落とさず食べ進める。本当は若干苦しくなってきたが、そんな事は口が裂けても言えない。 『おい係員。餅の味に少々飽きた。違う味の料理を頼みたい』 チェンタウロは磯辺焼きを噛みながら、係員に声を掛けた。食べ易さを優先したため、餅は磯辺焼きしか並んでいない。味が1種類だけでは、飽きてしまうのも無理はないだろう。 チェンタウロの希望を聞き、係員は急いで調理場に移動。数分後、きな粉やアンコ、納豆やゴマの餅が運ばれてきた。 新しい料理が並び、軽く礼を述べるチェンタウロ。早速アンコ餅を頬張り、一口で飲み込んだ。 甘い物好きなレオナールも、お汁粉やゴマ餡を希望。時折、握り飯の塩分で口直しをしながら、甘味を次々と平らげていく。最後のケーキにフォークを伸ばした瞬間、彼女は『ある事』に気付いた。 『サライきゅ〜ん? 応援が聞こえないわよ〜♪』 姿の見えない主に向けて、大きな声で叫ぶ。彼女の呼び掛けに応えるようにサライが姿を現すと、どよめきと歓声が会場に入り乱れた。 真っ赤なプリーツのミニスカに、トレーナータイプのユニフォーム。両手にボンボンを持った姿は、どこから見ても『褐色肌の可愛いチアガール』である。 サライは顔立ちが整っている上、身長は140cmに満たないし線も細い。女装させても違和感がない…と言うか、似合い過ぎている。 「ふ…ふれ〜ふれ〜レ・オ・ナ! 頑張れがんばれレオナ〜!」 生足を高く上げ、ボンボンを振りながらハイキックを繰り返すサライ。ミニスカの下にはアンスコを穿いているが、それでも恥ずかしそうに頬を染めている。 突然現れたチアガールに、周囲から拍手と歓声が送られた。特に、成人女性を中心に。 『んん〜! いい眺めよサライきゅん♪ やる気でてきたわ〜!』 サライの応援で元気が出たのか、レオナールのペースが上がる。スイーツ系を全て食べ切り、今度は握り飯を食べ始めた。 相棒の力になるため、応援を続けるサライ。その背後から、霧依が静かに接近。妖艶な笑みを浮かべながら、彼に抱き付いた。 「サライきゅ〜〜〜ん。素敵な格好ねぇ♪ 『そういう趣味』があるのかしら?」 「違います! って、そんなに抱き付かないで下さい。む、胸が……じゃなくて! あぅぅ…」 霧依の不意討ちを喰らい、サライは耳まで真っ赤になっている。その表情がイタズラ心を煽ったのか、霧依の攻撃が激化。30cmの身長差を活かしてサライを抱き締め、彼の両脇をくすぐり始めた。 『あの…レオナールさん? 色んな意味でピンチみたいですけど…助けなくて良いんですか?』 様子を眺めていたロンパーブルームだったが、流石に可哀想になってきたのか、コッソリ問い掛ける。その言葉に、レオナールは満面の笑みを返した。 『平気平気。イジメられてるサライきゅんもカワイイし♪』 どうやら…彼女に助ける気は微塵も無いらしい。ロンパーブルームは乾いた笑い声を漏らすと、再び料理を食べ始めた。 勝負は後半戦に差し掛かり、どの朋友も食べるペースが若干落ちてきている。この時のために、リィムナは秘密兵器を準備していた。 「チェン太〜! ドリンクの差し入れだよっ♪」 言いながら、水筒のフタを開ける。その中身を空いた皿に注ぐと、黄金色の液体が広がった。と同時に、香ばしくて食欲をそそる匂いが鼻を撫でる。それが何なのか、チェンタウロは瞬時に悟った。 『この匂い…カレースープか! おい、リィムナ!』 「カレーは飲み物、だよね♪」 怒りの声を上げたチェンタウロだったが、リィムナの一言で言葉に詰まる。カレースープを飲み物として出されたのは予想外だが、差し入れを準備してくれたのは事実。その好意を無駄にしないためにも、チェンタウロは前歯で皿を挟み、カレーを飲み干した。 『ぐあああ! 辛過ぎるだろ!』 次の瞬間、天を仰いで炎を吐き出す。リィムナが準備したのは、激辛のカレースープ。文字通り、火を吐く辛さの。突然の火柱に、周囲から驚きと感動の声が溢れた。 当のチェンタウロは辛さが良い刺激になったらしく、食事のペースが上がっている。辛さを相殺するように、甘い物を中心に食べていく。 ここまで全員の食べた量は、ほぼ同じ。水の量は最小限に抑え、誰もが最後の追い込みを始めた。 「おお! うまい! これはイケるでござる! 苦しみは分かち合うでござるよ〜!」 激戦を繰り広げる朋友の横で、霧雁も同じ料理を食べている。数分前、彼が係員に詰め寄った理由は、コレ。ジミーと同じ料理を用意して貰い、自身も同じ苦しみを味わおうとしている。 とは言え…彼の喰いっぷりを見ると、単に腹が減っているだけのように思えるが。 『おい! お前タダ飯が食いてえだけだろ! …んぐっ!』 ツッコミを入れたジミーだったが、食べながら叫んだせいで握り飯が喉に詰まる。慌てて肉球で胸をペチペチと叩くが、詰まったまま飲み込めないようだ。 「いかん! これを飲むでござる!」 異常に気付いた霧雁は、急いで駆け寄って瓢箪のフタを開ける。それをジミーの口に捻じ込み、中身を一気に飲ませた。 喉が鳴り、液体が胃に向かって流れ落ちていく。詰まった物も無事に流れているが…何故かジミーの頬が赤く染まっている。 『ぷっはああああ! おい…にゃんだこりは…ぶはははは!』 瓢箪の中身を飲み干し、千鳥脚で陽気な声を上げるジミー。相棒の急変に驚きながらも、霧雁は瓢箪の匂いを嗅いでみた。鼻の奥に、独特のアルコール匂が広がる。 「ぬぉぉぉ! しまった、これは拙者秘蔵のマタタビ酒でござった!」 気が動転した霧雁は、相棒に酒を呑ませてしまったらしい。しかも、一気に。緊急事態だったとはいえ、意外とドジッ子なのかもしれない。 『おめぇは馬鹿にゃ〜♪ もっと食うにゃ〜♪』 完全に『できあがった』ジミーは、上機嫌で食事を再開。しかも、酔う前よりペースが上がっている。酩酊状態になった事で、色んなリミッターが弾け散ったのかもしれない。 勝利に向けてラストスパートをかけ、火花を散らす朋友達。からっぽの皿が高く積み重なる中、試合終了を告げる合図が鳴り響いた。 ● 食事の手を止め、周囲を見渡す朋友達。3人の対戦台には10皿以上の料理が残っているが、たった1人だけ全て平らげた者が居た。 それは……ジミー。この瞬間、1015年は『仙猫年』に決まった。 勝敗を決めたのは、霧雁のマタタビ酒。偶然にも酩酊した事が、良い方向に作用したようだ。 だが…良い事ばかりではない。優勝が決まるのと同時に、満腹になったジミーは夢の世界に旅立ってしまった。今は、だらしない寝相で気持ち良さそうに寝ている。 原因を作った霧雁は、『相棒と苦しみを分け合う』という理由で酒を一気に飲み、ジミーと同じように泥酔。結果として、優勝した朋友も開拓者も表彰されないという、異常事態に陥った。 「残念だったねぇ、チュン太。大丈夫〜?」 負けてしまった相棒を慰めるように、リィムナが優しく腹部を撫でる。チェンタウロは静かに頷き、軽く溜息を吐いた。 『腹が重い…あと、口が痛い…』 胃は満腹感に包まれているが、激辛カレースープの影響で口のヒリヒリは治っていない。リィムナは苦笑いを浮かべながら、水を貰いに走り去った。 『負けた……僕の、悪戯の夢が…!』 優勝出来なかったのが相当悔しいのか、膝を突いて地面を叩くロンパーブルーム。どんな悪戯をする気だったのか分からないが、可哀想なくらいにガッカリしている。 そんな彼を慰めるように、霧依は相棒を抱き上げた。 「お疲れ様♪ 優勝は逃したけど、頑張ったご褒美に抱っこしてあげるわ♪」 悪戯は逃したが、これはコレで悪くない。ロンパーブルームは嬉しそうに微笑み、小声で礼を呟いた。 その隣では、女装中のサライにレオナールが抱き付いている。 『応援、ありがとね。これはお礼よ♪』 情熱的なハグに続き、熱い口付けを交わす。女装を強制され、年上のお姉さんには弄られ、サライにとっては散々な1日だったが…最後の締めは悪くなかったかもしれない。 こうして、朋友達の熱い戦いは終わった。あとは……ジミーと霧雁が、風邪を引く前に目覚めるのを祈るだけである。 |