試胆会の代償
マスター名:香月丈流
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/08/31 17:36



■オープニング本文

 試胆会、というものを御存知だろうか?
 夜に廃墟や墓地、神社に向かい、霊的な恐怖に耐える…要は、肝試しの事である。
 元々は天儀の『夏の風物詩』だったが、今では他の儀にも広まっている。怖い物知らずは、どこにでも居る…という事なのだろう。
 だが、忘れてはならない。世界には、超常現象と呼ばれる不思議な現象がゴロゴロしている事を。
 そして…霊よりも恐ろしい存在が、すぐ近くに居る事を。

「結局、ユーレーなんて出なかったな。あ〜あ…ガッカリだぜ」
 月明かりの中、夜道を歩く少年が3人。歳は全員、10代後半くらいだろう。その中の1人、小柄な少年が、古臭い壺を手に愚痴を零した。
 彼等は、試胆会から帰る途中である。村の近くにある神社に行き、祀られていた壺を証拠として持ち帰ったのだ。翌朝、自分達の武勇伝を自慢するために。
「だから、非現実的だと言っただろう? 幽霊を探す前に、君の頭の中身を探してきたまえ」
 情け容赦のない、厳しい言葉。眼鏡の少年は溜息を吐き、呆れた様子で首を振った。
 彼の発言に、小柄な少年が不愉快そうに視線を向ける。トゲトゲしい雰囲気を感じ取り、細身の少年が2人の間に割って入った。
「ふ…2人共、落ち着いて! 壺は持ってこれたんだから、良いじゃない。ね? ね?」
 双方を説得するように、必死で声を掛ける。彼の言動で興が削がれたのか、2人は視線を逸らして足早に村を目指した。細身の少年は安心したように溜息を吐き、2人の背を追い掛ける。
 そこまでは、良くある平和な光景だった…。
 空が明るくなり始める中、3人は村に帰還。その直後、彼等の運命は大きく変わった。
 何の前触れも無く、壺から大量の霧が吹き出す。突然の事に驚愕し、3人は短い悲鳴を上げて壺を手放した。地面に落下しても壺は割れず、霧が瞬く間に広がって村全体を包んでいく。不穏な空気が周囲を支配する中、更なる異変が少年達を襲った。
 霧が集まり、歪んだ球形となって具現化していく。その表面には、恐怖に染まった人間のような顔が複数浮かんでいる。その数は、1つや2つではない。
 恐らく、壺には大量の瘴気が宿っていたのだろう。それが一気に解放され、人魂のアヤカシとして出現したのだ。相手がアヤカシなら…その目的も容易に想像出来る。
 出現した人魂は周囲を浮遊していたが、小柄な少年と眼鏡の少年に向かって突撃。彼等に吸収されるように、アヤカシが体の中に消えていった。
 数秒もしないうちに、2人の少年が獣のような咆哮を上げる。瞳に光は無く、完全に正気を失っているようだ。そのまま、近くに置かれていた農具を握って滅茶苦茶に振り回す。クワが家屋の壁を壊し、大きな草刈り鎌が戸や窓を斬り裂いた。
 突然の騒音に、家主達が慌てて飛び出す。そこを狙うように、人魂が突撃。村人達を次々に操り、騒乱が村中に広がっていった。
 細身の少年は運良く難を逃れ、見付からないようにコッソリと村を抜け出す。恐怖で震える体を無理矢理動かし、後悔を胸に秘めながら、少年はギルドに向かって駆け出した。


■参加者一覧
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
国乃木 めい(ib0352
80歳・女・巫
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
エルレーン(ib7455
18歳・女・志
銀鏡(ic0007
28歳・男・巫
帚木 黒初(ic0064
21歳・男・志
草薙 早矢(ic0072
21歳・女・弓
神無院 槐(ic1054
23歳・男・武
津久翅 空木(ic1107
10歳・女・武


■リプレイ本文


 ウルサイくらいに蝉が鳴く、ある夏の日の昼下がり。『彼等』は、森の木陰から村を眺めていた。無論、単なる覗き魔や、盗賊の類ではない。
「話には聞いていたが…凄い状況だな。人魂が飛び回るとは、夏らしい怪奇現象だ」
 溜息と共に、苦笑いを浮かべる篠崎早矢(ic0072)。彼女の言う通り、視線の先の村では、人魂らしきモノが大量に飛び回っている。
「恨み辛みがアヤカシを呼ぶ事はあれど、幽霊等と云うものは居らぬよ。人の恐怖心の呼ぶ、まやかしだ」
 少々呆れたような口調で、神無院 槐(ic1054)が言葉を漏らした。武僧として、精霊と強い信頼関係があるため、幽霊の存在を否定出来るのだろう。
「ってことは…ゆ、ゆうれーじゃないんだよね? な、なら…こここ、怖くないもんっ!」
 強がりながらも、エルレーン(ib7455)は木の陰に隠れたまま震えている。どうやら、幽霊の類が苦手なようだ。必死に強がる彼女の姿に、仲間達から笑みが零れた。
 そんな中、暗い表情を浮べている少年が1人。不安と後悔の入り混じった瞳で、村を見詰めている。
 彼は今回の事件を起こした張本人だが、村の危機をギルドに知らせた救世主でもある。開拓者達を村まで案内して来たが…自分の軽率な行動が村を危機に晒した事を、後悔し続けていた。
 少年の異変に気付いたのか、リィムナ・ピサレット(ib5201)が彼の背を強く叩く。
「キミが知らせてくれたおかげで、手遅れにならなくて済みそうだよ♪ ありがとっ!」
 満面の笑みを浮かべながら、少年の手を握ってブンブンと振る。リィムナの言動に、少年は少しだけ笑顔を見せた。
「あなた達は大きな過ちを犯しましたが、私達をここまで導いてくれました。あとの事は、お任せ下さい」
 言いながら、国乃木 めい(ib0352)は少年の頭を優しく撫でる。アヤカシを呼び寄せた事は大きな罪だが、村を助けるためにギルドに走り、開拓者を連れてきた。その行動は、充分罪滅ぼしになる…少なくとも、めいはそう思っていた。
「1つ、頼まれてくれるかな? この七輪で煙を立上らせておいて欲しい。誘導の時に煙が目印になるからね」
 大人びた口調で、七輪を取り出す津久翅 空木(ic1107)。少年が安全な場所で煙を上げてくれれば、避難誘導の目印になる。『安全な場所まで逃げろ』と説明するよりも、的確で分かり易いだろう。
 空木の狙いを理解したのか、少年は頷いて七輪を受け取った。
「村の中は危険じゃからの? 大人しく、儂らを信じて待っておく事じゃ…やんちゃ坊主でも、出来るじゃろう?」
 銀鏡(ic0007)は不敵に笑いながら、煙管を吹かした。飄々としているが、彼なりに少年を心配しているのだろう。
「事の顛末を見届けるのも、良い勉強になるでしょう。状況的に…とんだ肝試しになりそうですが」
 帚木 黒初(ic0064)は少年に語り掛け、視線を村に向けた。人魂が飛び交い、混乱の渦中にある村…その結末を見届けるのは、かなり辛いかもしれない。
「少々お聞きしたいのですが、健康を害している人や乳飲み子、妊婦さんやご老人の居場所に心当たりがありますか?」
 救助作業をするなら、優先順位を決めた方が効率が良い。鈴木 透子(ia5664)は少年に問い掛け、その答えを手帳に書き込んだ。
 情報確認、作戦内容、戦闘準備を整え、開拓者達は互いに顔を見合わせる。
「みんな、行こうぜ! これ以上、アヤカシなんかの好きにさせるか!」
 ルオウ(ia2445)の叫びに合わせ、10人は一気に駆け出した。村の入り口で2手に別れ、別々の方向に進んでいく。村人の救出と、アヤカシの排除が、静かに始まった。


 今回、開拓者達がすべき事は2つ。『アヤカシを発生させている壺の破壊』と『村人達の避難』だ。開拓者達が2手に別れたのは、両方の問題に同時に対応するためである。
 壺破壊担当のルオウ、めい、リィムナ、エルレーン、早矢の5人は、村の中央部に向かっていた。彼等の存在に気付き、人魂と操られた村人達が寄って来る。5人は一旦脚を止め、兵装を構えた。
「ううっ…ま、待っててね、すぐに助けてあげるから!」
 エルレーンは怯えながらも村人に向かって叫び、地面を蹴る。ほぼ同時にルオウも突撃し、鋭い斬撃を放った。切先が人魂を斬り裂くと、霧でも散らすように簡単に消え去っていく。
「鍛えに鍛えた愛用の弓の威力…今こそ、世の為に活かす時!」
 援護するように、早矢は矢の雨を降らせた。愛用の弓は、良く手入れされているのだろう。強烈な弓撃が、次々に放たれていく。
 更に、リィムナの魔曲が周囲に響き渡る。4人の狙いは、人魂のアヤカシのみ。村人への被害は避け、敵だけを消し去った。
 それを確認し、鈴を鳴らしながら静かに歌う、めい。彼女の歌声に呼応し、周囲の精霊が活性化して癒しの力が広がっていく。範囲内に居た村人達が精霊力に触れると、憑りついていた人魂が消滅して瘴気に還った。
 が、数秒もしないうちに人魂が集まって来る。開拓者達が迎撃に移る一瞬の隙を突き、再び村人に憑依。結果として、村人達の大半が再び操られてしまった。
「人々を一度に癒せるのは良いですが…敵の数が多過ぎますね」
 苦笑いを浮かべながら、めいは再び癒しの力を広げる。それに合わせて、ルオウは村人達の中に飛び込んだ。
「よっし、ここは俺に任せて先にいけえ! 回・転・剣・舞!」
 叫びながら地面を蹴って跳躍。武器を振り回し、村人に憑りつこうとしている人魂を纏めて薙ぎ払った。自身を囮にし、仲間達を壺の撃破に向かわせるつもりなのだろう。
「なら、ここはお願いっ! あたし達は、速攻で壺を破壊してくるから!」
 彼の考えを理解し、リィムナが叫ぶ。ルオウを残し、4人は壺を目指して再び駆け出した。


 村の入り口付近では、住人の避難を担当する班も行動を起こしていた。
「被害を広げる訳にはいかぬ。早う祓ってやろう…」
 静かに言い放ち、薙刀を掲げる槐。直後、精霊力が『黒毛に金眼の狐』の幻影を生み出し、周囲の人魂を噛み砕いていく。
「人の世に蔓延るアヤカシよ、この大鎌で滅せよ…!」
 更に、空木が身長よりも大きな鎌を振り回す。精霊力を纏った姫翠色の刃は、まるで雑草でも刈るように人魂を斬り裂いた。
 その隙に、銀鏡は金属製の鏡を両手でクルリと回す。鏡が青い輝きを放ち、彼の周囲に癒しの力を宿した風が発生。それが村人を包み、体内の人魂を消し去った。
 爽やかな風と共に、小さな式が入り乱れる。透子が召喚した治癒の式が村人と同化し、憑りついた人魂を体外に押し出して消滅させた。
「被害の拡大を防ぐためには、火の始末も必要かもしれませんね…」
 呟くような、透子の言葉。今の状況で火事まで発生したら、厄介極まりないだろう。
 だが、それ以上に厄介で面倒なのが、アヤカシである。正気に戻った村人4人を狙って、大勢の人魂が押し寄せる。
「ここから先は、立ち入り禁止です。邪魔しないで頂きましょうか」
 迎え撃つように、黒初が敵と村人の間に割って入った。銀色の剣閃を奔らせ、人魂を斬り裂いていく。
 銀鏡と透子のスキルは単体にしか効果を発揮しないが、今回はそれが功を奏したようだ。対象が少ない分、狙われても護衛しやすい。
「経路は私が作りますから、動ける方は避難をお願いします。また憑かれたら大変ですし」
 人魂の数が減った隙に、黒初が村人に声を掛ける。刀を肩に担いで精霊力を纏わせると、村の外に向かって鋭く薙ぎ払った。真空の刃が真紅の燐光を纏い、人魂を一気に薙ぎ払って道を拓く。
「可能なら、早々に逃げてもらえると助かるさ。後は儂らに任せて…まずは、己の身を守る事じゃ」
 微笑みながら、避難を促す銀鏡。村人達は戸惑いながらも彼の指示に従い、黒初の拓いた道を駆けて行った。
 が、意識がハッキリしていないのか、1人の男性が膝から崩れる。彼が倒れるより早く、槐は男性の体を受け止めた。
「気を然りと持て。先ずは此の場を離れる…着いて参れ」
 軽く頬を叩きながら、励ましの言葉を掛ける。男性が立ち上がって頷くと、2人は村の外を目指して走りだした。
 槐とは逆に、村の奥に向かう透子。目的は、少年から聞いた優先救助者の保護。その視界に、ヨロヨロと走って来る老婆と、小さな少年の姿が飛び込んできた。
 2人の後ろからは、操られた村人と人魂が迫っている。透子は脚を止め、呪符を持ちながら地面に手を付いた。次の瞬間、2人の背後に巨大な黒い壁が生まれる。
「そんなに持ちません。早く、逃げてください…!」
 透子の言葉に、老婆達は頭を下げた。村人を治療しても、人魂が再び憑りつく。人魂を排除しても、操られた村人が2人を狙う。双方を止めるために、透子は壁を使ったのだろう。
 しかし、それも一時的な時間稼ぎにしかならない。ほんの十数秒で壁が崩され、瘴気となって消え去った。
 再び押し寄せる、人魂と村人達。透子が呪符を握るのと同時に、爽やかな風が流れ込んだ。更に、姫翠色の斬撃が人魂を消し去っていく。
「ほれほれ。猫の手も借りたいほどじゃ。避難を手伝ってくれんかの?」
 銀鏡は癒しの風を吹かせながら、正気に戻った村人達に声を掛ける。彼等が憑りつかれるのを防ぐため、透子は急いで黒壁を精製した。
「ここはボクが食い止めよう。さあ…貴公らは、あの煙を目指して逃げて」
 言いながら、空木は村の外で立ち昇る煙を指差す。村人達が走り去る背を護るように、空木は大鎌を構えた。


「勝手に、はいってくんじゃ……ねーーーーーーー!」
 ルオウの叫びが、周囲に木霊する。気力が全身を駆け抜け、自身に憑りついた人魂を外に押し出した。孤軍奮闘するルオウの周囲には、気を失った村人が転がっている。恐らく、足止めするために気絶させたのだろう。
 ほぼ同時刻。壺を破壊するために突撃した4人は、人魂の猛攻に晒されていた。
「数々のアヤカシ達を瞬殺した、あたしの魔曲…人魂君はどんだけ耐えられるかな?」
 不敵な笑みを浮かべながら、リィムナは魔曲を奏でる。開拓者として、彼女の技量は相当高い。その攻撃に耐えられず、周囲の人魂が次々に消滅していった。
 敵の撃破は難しくないが、数が圧倒的に多い。しかも、増援は次々に現れている。
「人魂が増えたという事は、本体の壺が近いハズ……あった!」
 冷静に状況を判断し、周囲を見渡す早矢。その漆黒の瞳が、破壊対象の壺を捉えた。素早く矢を番えて射ち放つと、衝撃が渦を巻いて一直線に伸びていく。それが直線上の人魂を薙ぎ払い、壺に突き刺さった。
 が、一撃では破壊するに至らない。早矢が動くより早く、エルレーンが地面を蹴って駆け出した。
「いちのたち! にのたち! …さんのたちッ!!」
 裂帛の気合を込め、神速の踏み込みからの平突き。正確無比な刺突が壺を連続で貫き、粉々に打ち砕いた。破片と共に、大量の瘴気が周囲に舞い散る。
「これで、増援は断てましたね。残るは、人魂の撃破と人々の治療です。あと一息、頑張りましょう」
 言いながら、めいは竹箒を振り回す。精霊の祝福を受けた箒は、ゴミでも掃くように軽々と人魂を粉砕。彼女に続くように、他の3人も人魂に向かって攻撃を仕掛けた。


 壺を破壊してからは、簡単だった。増援は止まり、人魂は難無く倒せる。数分前までの激戦が嘘のように、村は静けさを取り戻した。
「はぁ〜…オバケじゃなくて、アヤカシでよかったよ。だって、斬っちゃえばおしまいだし…」
 深い溜息と共に、地面に座り込むエルレーン。戦闘が終わり、緊張の糸が切れたのだろう。胸を撫で下ろし、軽く笑みを浮かべた。
「素朴な疑問なんだが…オバケとアヤカシ、何が違うんだ?」
 彼女の言葉を聞いていた早矢が、素朴な疑問を投げ掛ける。『異形の存在』という意味では、両者は同じかもしれない。確実に存在するアヤカシとは違い、幽霊やオバケは存在するか不明だが。
 早矢の質問に、エルレーンは小首を傾げる。数秒後、乾いた笑いを漏らし、答えを誤魔化した。
「犠牲者や重傷者が出なかったのは、幸いでしたね。倒壊した家屋もありませんし」
 村人達を治療しながら、ほんの少しだけ笑みを浮かべる透子。彼女達の迅速な行動のお陰で、被害は最小限に抑えられた。多少は壊れた家もあるが、死亡者や重傷者は居ない。
 透子の隣では、めいが怪我人の治療に当たっていた。精霊の力を掌に集め、白い光と共に村人に送っていく。
「ええ。軽傷で済んで、本当に良かったです。『あちらの方々』は、まだまだ解決しないと思いますが…」
 順調に進む治療とは逆に、終わりの見えない問題が1つ。めいと透子は、その方向に視線を向けた。
 村の中央部付近に集まる、数人の開拓者と村人達。その中心には、今回の事件を起こした少年達が居る。無論、正座して。
「俺の手を煩わせるとは…良い覚悟だ。子供とて、何でも許されるワケではないぞ?」
 静かに、圧倒的な威圧感を放つ槐。事件が一段落してから、彼はずっと少年達に説教をしていた。感情的に怒る村人達よりも、淡々と言葉を続ける槐の方が怖いかもしれない。
「槐も村の人も、相当怒ってるみたいだね…あの子、お尻叩かれちゃうのかな?」
 リィムナは屋根の上から様子を眺めながら、苦笑いを浮かべた。恐らく、彼女は怒られてお尻を叩かれる事が多いのだろう。少年達に同情しているようだ。
 彼女同様、少年達に同情している開拓者は少なくない。
「まぁまぁ…そのくらいにしようぜ? 俺も似たような事しそうだし…」
 ルオウは大人達と少年の間に割って入り、仲裁役を務める。腕白少年同士、通じるモノがあるのだろう。彼の言葉に、渋々納得していく村人達。ルオウは少年達に視線を向け、『二度と同じことするな』と念を押した。
「やってしまった事は仕方ないですね。大切なのは、失敗の後にどうするか…ですよ」
 言いながら、黒初は視線とジェスチャーで少年達に合図を送る。その意味を理解したのか、彼等は立ち上がって深々と頭を下げた。
「夏に人魂…何とも風流じゃったが、『触らぬ神に祟り無し』。やんちゃも程々にの?」
 飄々と笑いながら、銀鏡は少年達の頭をポンポンと叩く。煙管を取り出して人の居ない方向に移動し、火を点けて仕事後の一服を吸い込んだ。
「好奇心は素晴らしいものだが、使い方を間違ってはいけない。間違えれば、今回のような大事になってしまうからね。いいかい?」
 年下の空木に注意され、苦笑いを浮かべる少年達。素直に納得しているワケではないが、反論の言葉は微塵も出てこない。少年達にとって、今日の事は良い経験になっただろう。
 村の復旧と怪我人の治療が終わる頃、少年達とルオウは村を出発した。向かった先は、肝試しをした神社。そこに新しい壺を設置し、事件は完全に幕を下ろした。