【急変】小さな『希望』の光
マスター名:香月丈流
シナリオ形態: ショート
危険 :相棒
難易度: やや難
参加人数: 10人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/07/25 21:48



■オープニング本文

 混乱が続く理穴に在っても、希望を失わない者達…開拓者。彼等の活躍に加え、戦場の指揮を執る儀弐王。他国の王や兵士達の協力もあり、アヤカシと対等以上に渡り合っていた。
 だが…際限なく湧いて来るアヤカシ達に、一般人の恐怖心が煽られ、心に暗い影を落としているのも事実。それに、大アヤカシの存在も不安の源になっている。
 『歴戦の勇士達でも……2体の大アヤカシが相手じゃ勝ち目なんて無い』。
 そんな疑念が、徐々に広がりつつあった。
「だからこそ、一刻も早く宝珠砲を発射せねばならんのだ!」
 獅子のように吠え、老紳士が机を叩く。その威力と迫力は、机が割れそうなイキオイである。
「ですが、平雅様。試射も無しに実戦投入するのは、危険過ぎます!」
 男性兵士の言葉に、整備士達が同意するように頷いた。
 理穴国家、兵器開発担当、平雅源庵(ひらが げんあん)。彼が新たに開発した宝珠砲は、つい先日完成して運び込まれた。命中精度よりも破壊力を重視した、『一撃必殺』とも言える兵器である。
 問題は、その宝珠砲を『一度も最大出力で発射していない』という事。動作不良が無い事は組み立て中に確認済みだし、低出力の試し撃ちなら何度か行っている。が、その時の充填率は1割程度。そこからイキナリ最大出力で実戦投入しようとしているのだから、反対の声が上がるのは当然かもしれない。
「諸君らの言い分は分かる。むしろ、至極当然の意見だろう。だが…」
 そこまで言って、源庵は言葉を切った。
 数瞬の沈黙。
 3秒にも満たない静けさの後、ゆっくりと口を開く。
「儂は、民達に光を届けたいのだ。この宝珠砲で、戦を終息させる事は出来ん。しかし、その手伝い程度なら出来ると思っておる」
 言いながら、源庵は宝珠砲に手を乗せた。命中精度の悪い大砲では、大アヤカシを狙い撃つのは不可能に等しい。広範囲を狙い、大勢の雑魚を一気に薙ぎ倒す…いわゆる『露払い』的な役割を想定して、この宝珠砲を開発したのだ。アヤカシの数が少しでも減れば、人々の不安も緩和するだろう。
「今は、調整している時間も、充填する練力の無駄遣いも出来ん。危険は重々承知……儂を往かせてくれ。頼む!」
 愚直な程に、真っ直ぐな視線と言葉。男として、自身の信念と誇りに懸けて、行動を起こそうとしているのだ。
 こんな態度を見せられたら、反論の言葉も引っ込んでしまう。兵士や整備士達は源庵と視線を合わせ、深く頷いた。


■参加者一覧
柳生 右京(ia0970
25歳・男・サ
九竜・鋼介(ia2192
25歳・男・サ
菊池 志郎(ia5584
23歳・男・シ
フェンリエッタ(ib0018
18歳・女・シ
明王院 浄炎(ib0347
45歳・男・泰
破軍(ib8103
19歳・男・サ
月雲 左京(ib8108
18歳・女・サ
沙羅・ジョーンズ(ic0041
23歳・女・砲
久郎丸(ic0368
23歳・男・武
小野宮 環(ic0908
15歳・女・志


■リプレイ本文


 魔の森の西端から、約50m。一見すると何も無い平野に、開拓者達が集まっていた。彼等を先導したのは、平雅源庵。無骨な腕を振ると、巨大な宝珠砲が姿を現した。
 特殊な技能や、手品の類ではない。布に地面や草の色の迷彩を施し、宝珠砲に被せて隠していたのだ。
「先日送り届けた宝珠砲が、いよいよ力を発揮するのですね。これも何かの縁、警護はお任せ下さい」
「菊池殿の、言う…通り、だ。朱藩から、漸く、ここまで来た、のだ…その、努力、その、願い…無下には、させん…!」
 4mを超える宝珠砲…これを朱藩から移送した時、菊池 志郎(ia5584)と久郎丸(ic0368)も護衛として参加していた。その縁もあり、2人は今回の依頼を受けたのかもしれない。
「賭け事なぞやった事も無いが…此度は賭けさせて貰うのじゃ。平雅殿の『意気込み』に、わらわの命を乗せるぞ!」
 腕を組み、不敵な笑みを浮かべる小野宮 環(ic0908)。少々ツンとしているが、源庵の想いと熱意は充分過ぎる程に伝わっているようだ。
「移送に協力してくれた方も居るとは心強い…皆の気遣い、感謝する」
 開拓者達の言葉に、源庵は深々と頭を下げてる。今回の無茶な作戦に参加してくれた事を、心から感謝しているのだろう。
「1つ、良いか? 合図にはコレを使ってくれ。乱戦の最中でも気付くよう、少しでも保険を掛けておきたいのでな」
 言いながら、明王院 浄炎(ib0347)はブブゼラを差し出した。宝珠砲を撃つには、練力の充填が必要不可欠。源庵が発射準備を進め、充填中の護衛は開拓者達が担当する。
 準備完了時には呼子笛で合図する事になっているが、ブブゼラならより遠くまで、より大きい音を届ける事が出来るだろう。
「ブブゼラに合わせて、久郎丸君と環君は笛で、アタシは狼煙銃で合図するわ。確認次第、全員退避…分かってるわね?」
 沙羅・ジョーンズ(ic0041)の言葉に、源庵を含めた全員が静かに頷いた。彼女と久郎丸、環の役割は、源庵直近での護衛。合図を送るなら、適役である。
 加えて、笛と狼煙の二段構えは、合図に気付かないリスクを軽減する狙いがあるのだ。
「皆さん、準備は良いですか? 発射までの約20分、共に道を拓いて光を届けましょう…!」
 フェンリエッタ(ib0018)の瞳に迷いは無い。充填が終わって宝珠砲が発射されれば、希望の光がアヤカシを蹴散らすに違い無い。
 静かに、源庵が充填を開始。彼を守るように、沙羅、久郎丸、環は周囲を取り囲んだ。残り7人は自分達の役割を果たすため、魔の森の方向に駆けていく。


 宝珠砲の存在に気付いたのか、充填中の練力に引かれたのか、魔の森から瘴気が吹き出す。それが鳥や獣と化し、宝珠砲に向けて移動を始めた。
 それを妨害するように、5人の開拓者が立ち塞がる。彼等が居るのは、宝珠砲から40m程度離れた地点。ここで防衛線を展開し、アヤカシを迎え撃つ作戦なのだ。
「さて、ここから先は通行止めだ…通させはしない!」
 咆えるように叫び、九竜・鋼介(ia2192)は2本の刀を抜き放つ。固い決意を表すように、刀身が炎に包まれた。燃える双刃が狼や狐を両断し、瘴気に還す。
「クソムシどもの御出座しだ。殺るぞ、チビ助…」
「相も変わらずの鳥頭で御座いますか…月雲が夜叉、左京。お相手…致します」
 破軍(ib8103)と月雲 左京(ib8108)は口論するように言葉を交わしながら、敵の集団に突撃。野獣のような破軍の剣戟が、敵を斬り裂いていく。それに合わせて左京の斬撃が入り乱れ、アヤカシを斬り伏せた。
「この数が相手であれば…50匹以上は斬りたい所だな」
 氷のように冷たい笑みを浮かべ、柳生 右京(ia0970)は右脚を軸にして回転。紫の刃が渦を成し、獣達をまとめて薙ぎ払った。
 追撃するように、浄炎が八尺棍を振り回す。巨大な棍棒がアヤカシを直撃し、吹き飛ばされながら瘴気と化して消滅した。
「俺達は希望の光を届けるため、ここに集ったのだ。志も信念も無いアヤカシ風情に、止められる道理は無い…!」
 棍を地面に突き立て、力強く叫ぶ浄炎。彼の言う通り、5人の勢いは止まらず、アヤカシが次々に撃破されていく。
 が、いくら歴戦の勇士達でも、全ての敵を相手にするのは困難である。鳥達が頭上を飛び去り、豹や狼が隙を縫うように駆け抜けた。
「団体さんの到着ですね。フェンリエッタさん、討ち漏らした個体はお願いします…!」
「了解。全部撃ち落とすつもりでいくわ」
 前衛5人と、宝珠砲との中間位置。最前線を抜けた敵に備え、志郎とフェンリエッタは迎撃の準備をしていた。
 鳥の大群に向かって、志郎は杖を向ける。その先端から猛烈な吹雪が発生し、扇状に広がった。圧倒的な冷気が、敵集団を飲み込んで凍結させていく。氷塊と化した鳥達は落下し、地表に激突して砕け散った。
 吹雪や凍結を免れた敵には、フェンリエッタが飛礫を投擲。更に、精霊の力を借りて清浄な炎を生み出し、射程内のアヤカシを燃え散らした。
 火の粉や瘴気が乱れ舞い、瞬間的に2人の視界を遮る。それに合わせて、敵の一部が猛進。志郎達を振り切り、宝珠砲に狙いを定めた。
「来たわね…敵は逐次撃ち抜きましょう。久郎丸君、環君、準備は良い?」
 言いながら、沙羅は空に向かって銃を構える。久郎丸は槍を投擲するため逆手に持ち、環は弓に矢を番えた。
「猛者達を躱し、ここまで来たのは褒めて遣わす。心置きなく、散るが良い…!」
 静かに言い放ち、環は矢を射ち放つ。それに合わせて、沙羅も引金を引いた。2人の射撃が鳥達を撃ち抜き、落下しながら瘴気と化して消えていく。
 射ち残した敵に、久郎丸が槍を投げ放った。黄色の光が宙を奔り、アヤカシを貫通する。瘴気が舞う中、槍が空中で進路を変え、久郎丸の手元に戻った。
 ほぼ同時に、豹と狼が宝珠砲に飛び掛かる。久郎丸は槍に精霊力を纏わせ、素早く突き出した。刺突と共に衝撃を浴びせ、豹を弾き飛ばす。
 環は弓を投げ捨て、刀に持ち替えた。直後、高速で抜刀して刃を奔らせる。高速の斬撃が狼を捉え、深々と斬り裂いた。
「こ、これだけ…デカい、宝珠砲だと…恰好の的、だな」
 巨大な宝珠砲に視線を送り、久郎丸が独り呟く。防衛対象が大きい分、苦労も大きい。
 3班に別れた開拓者達だが、どの場所でも戦闘が繰り広げられている。全ては、宝珠砲を発射してアヤカシを一掃するため…源庵と開拓者達の想いは一致していた。
 ただ1人を除いては。
「一匹たりとも、逃がしは致しませぬ。消えたい者から…かかっていらっしゃいませ…!」
 狼の遠吠えに似た雄叫びを上げ、敵の脚を止める左京。そのままアヤカシの中に飛び込み、兵装を振り回して周囲の敵を薙ぎ払った。
(チビ助の奴、何かあったのか? この動きは、まるで…)
 破軍だけは、彼女の違和感に気付いていた。八つ当たりするような、鬱憤を晴らすような、荒々しい太刀筋。負傷を一切気にせず、暴れ回っているようにしか見えない。
 戦う左京の姿を見ていると、不安感が胸の中で膨らんでいく。破軍がそれを口にするより早く、魔の森からアヤカシの大群が発生した。
「増援か。ならば、一気に蹴散らす!」
 浄炎は周囲に注意を向けながら、敵集団に飛び込む。気合を込めて大地を踏みしめると、圧倒的な衝撃の波が波紋のように広がった。それが、アヤカシを内部から破壊していく。
「所詮は、数が武器の雑魚だろう? 退屈はさせるな」
 群がる敵に向かって、右京は挑発的な言葉を吐いた。刀を握り直し、独楽のように回転しながら振り回す。一瞬だけ動きを止めて敵を引き付け、今度は逆方向に回転。その様子は、まるで紫の竜巻のようだ。
 敵が増えた事で、各地点での個体数も増加している。無論、それは宝珠砲近辺でも例外ではない。
「通す、ものか。環、沙羅…援護射撃を、頼む…」
 天地双方から迫り来る敵に向かって、久郎丸は気迫の籠った大声を浴びせた。その迫力に、アヤカシ達の動きが一瞬止まる。
 沙羅は瞳に精霊力を集中させ、上空の敵に狙いを定めた。正確な照準から銃撃を放ち、素早くリロード。連続射撃が鷹や鷲を撃ち抜き、瘴気に還した。
 地上の敵には、環が刀を奔らせる。刀身に炎を纏わせ、燃える斬撃を放った。炎が獣を焦がし、瘴気を焼き散らしていく。
「流石に数が多いわね…菊池さん、少しの間だけ、掃討はお願い!」
 周囲の状況を確認し、フェンリエッタは穏やかな歌声を響かせた。それが遠くまで広がり、精霊に干渉して癒しの力が発現。仲間全員の負傷を癒していく。
「この歌声は…フェンリエッタ君、ありがとう〜!」
 回復に気付き、沙羅は微笑みながら手を振った。歌い終えたフェンリエッタは視線を合わせ、笑顔を返す。
 微笑み合う2人に向かって、上空から敵が急接近。まるで矢のように、嘴から突撃してきた。
 風切り音に気付き、フェンリエッタは刀を、沙羅は剣を抜き放つ。素早く振り返り、カウンター気味に兵装を突き刺した。紙一重の回避で頬が浅く切れたが、敵の姿が瘴気となって消えていく。
「よし…間も無く充填完了だ! 合図を送るが、良いか?」
「その言葉、待っておったぞ! 沙羅殿、預かった笛、使わせて頂く!」
 源庵の知らせに、環は歓喜の言葉を返す。4人はタイミングを合わせ、ブブゼラと呼子笛、狼煙銃で合図を送った。笛の音が周囲に響き、狼煙が空に上がる。
「みなさん、急ぎましょう。撤退が間に合わなそうなら、射線上から退避して下さい」
 合図を確認した志郎は、声を掛けながら狼煙銃を撃ち上げた。2発の狼煙が上がれば、見落としは防げるだろう。
「おまえ達、今の合図は聞こえたな? 下がるぞ!」
 発射の合図は無事に前衛まで届き、右京が仲間達に向かって叫ぶ。目の前の敵を突き飛ばし、開拓者達は全速力で退避を始めた。
 だが…左京だけは撤退せず、敵に向かって兵装を構えている。破軍は怒りの形相で舌打ちし、彼女を小脇に抱えた。
「何故、お止めになるのですか…っ! 離して、下さいませ…!」
「黙っていろ!! 手間を掛けさせるな!!」
 怒りを露にした叱咤の言葉に、左京は口を閉ざす。仲間達から若干遅れたが、2人の後退も無事に完了した。


 破軍と左京が退避した数秒後、充填を終えた宝珠砲がついに発射された。砲弾が薄っすらと光を纏い、若干斜め上空に向かって飛んでいく。射線上のアヤカシを薙ぎ倒し、魔の森に到達するギリギリで炸裂。爆音と爆風、閃光が周囲に広がった。
「…音と光の兵器に興味は無いが、破壊力に関しては想像以上か」
「何と力強い…光を届けたいと仰った平雅さんの心を、ちゃんと宿しているのね」
 目の前の光景に、右京とフェンリエッタが賛辞の言葉を口にする。他の開拓者達も、歓喜に包まれていた。
 源庵は感極まったのか、顔を伏せたまま全身が小刻みに震えている。フェンリエッタが声を掛けようとした瞬間、源庵は拳を振り下ろして宝珠砲を叩いた。
「こんな結果になるとは……今の一発、完全なる失敗だ…申し訳ない!」
 予想外の一言に、開拓者達の雰囲気が一変。不安と困惑が周囲を支配し、視線が源庵に集まった。当の源庵は、顔を上げて開拓者達に向き直る。
「狙いが予想以上にズレた…本来は地表に着弾し、炸裂する予定だったのだが……」
 そこまで言って、言葉が途切れた。この先は言い辛いのか、言葉に詰まっているのか…それは誰にも分からない。
「空中で爆発した分、巻き込まれた数が少なくなったのでございますね。しかも…轟音と閃光が、逆にアヤカシを呼び寄せております」
 源庵に代わり、状況を説明する左京。彼女の言葉に、源庵は静かに頷いた。
 徐々に、ほんの少しずつではあるが、砲弾が炸裂した場所にアヤカシが集まり始めている。再び襲って来るのは、時間の問題だろう。
「過ぎた事を悔やんでも仕方あるまい。源庵、再充填を始めてくれ。希望の光は、俺達で守り抜いてみせよう…!」
 力強い言葉と共に、浄炎は兵装を握り直した。彼に同意するように、数人の開拓者が力強く頷く。そのまま視線を合わせると、作戦会議が始まった。
「いや……充填するよりも、早くて確実な方法がある」
 開拓者の話し合いを遮るような、源庵の一言。その表情は今まで以上に真剣で、覚悟を決めた者の目をしている。
「宝珠砲を…爆発させる」
 数秒の間、周囲の時が止まったような気がした。悪い意味で、衝撃的な提案。必死で守った物を爆破するなど、普通は考えもしないだろう。
「何を、言ってるんです…? あの宝珠砲には、平雅様の願いが…想いが込められているんでしょう!? それを破壊する気ですか!」
「あんたの覚悟は、この程度だったのか? 自分から希望の光を破壊して、どうする!」
「あんな有象無象のために、宝珠砲を犠牲にする必要は無いわ。再充填の時間くらい、アタシ達で稼いでみせる…!」
 志郎が、鋼介が、沙羅が、反論の言葉を口にする。彼等の苦労と、源庵の想い…その2つを考慮すれば、素直に賛同するのは難しい。彼等3人だけでなく、開拓者の大半は反対派に回っている。
「五月蝿い…! 手前ェらも玄人なら、この程度の事で取り乱すんじゃねぇ…!」
 大地に響くような、破軍の怒号。その一喝で、全員が水を打ったように静まり返った。
 依頼を解決する事に関して、開拓者は玄人と言っても過言ではない。そして…玄人なら、依頼主の意向に従って臨機応変な対応をするのも必要である。例え、それが辛い選択だとしても…。
「い、一番、辛いのは…平雅殿、だろう。漢(おとこ)の、覚悟に、泥を…塗る真似、は、出来ん…!」
 口下手ながらも、久郎丸の指摘は正しい。製作者である源庵にとっては、身を切られる想いだろう。それに、アヤカシが動きを見せている以上、時間的余裕は無い。
 苦しい選択だが、開拓者達は覚悟を決めて源庵に視線を向けた。それを受け、源庵は宝珠砲の安全装置を取り外す。
「これで…数分後には練力が逆流し、爆発する。すまんな…貴殿らを、儂の我儘に付き合せてしまった…」
「結果はどうあれ、ぬしの意気込みは天晴じゃぞ? 共に仕事が出来た事、誇りに思う」
 失意の源庵に、励ましの言葉を掛ける環。彼の決意は全員に伝わったし、環以外のメンバーも同じ気持ちだろう。
 宝珠砲が火花を散らす中、11人は爆発に巻き込まれないよう、退避を急ぐ。30秒もしないうちに、宝珠砲はアヤカシを巻き込んで爆発。再び、閃光が周囲に広がった。
 源庵と共に、宝珠砲の最期を見届けた開拓者達。左京は左目をそっと抑え、少し俯いた。そんな彼女の頭に、破軍が乱暴に手を置く。
「一度しか言わねェぞ……俺が背を預けられるのは、手前ェだけだ。勝手に死に急ぐな…分かったか?」
「余計な…余計なお世話でございます…」
 呟いた左京の言葉は、宝珠砲の閃光と共に消えていった。