命のキラメキ
マスター名:香月丈流
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/12/29 23:35



■オープニング本文

「はぁ‥はぁ‥‥はぁ‥‥」
 走る。
 奔る。
 疾る。
 満天の星の下、静寂が支配する森の中を、縦横無尽に動く人影が2つ。
 いや‥‥その2つを追う影が、複数。
「ぅわっ!」
 短い悲鳴。
 逃げていた人影が、木の根に引っ掛かって転ぶ。
 もう一人がそれを引き起こし、木の陰へと運んでいく。
「すまない、翔汰」
「気にすんよ、マサキ。今更、だろ?」
 身を隠しながら、軽く笑顔を交わす二人。
 だが、その表情はすぐに真剣なモノへと変わる。
「ちっ! しつこい連中だぜ」
 追って来る影を見ながら、怒りにも似た表情を浮べる翔汰。
 その視線の先に蠢く、異形の姿。
「あんなバケモノは見た事も無いね。僕達が追われる理由も、全く予想がつかない」
「あぁ。だが‥‥オトモダチになりたい、って様子じゃねぇな」
 月の光が、異形の姿を闇の中から照らす。
 豚のような顔をした、鬼の化物。成人男性程度の身長で、肥満気味だが筋肉質の身体。
 しかも、棍棒片手に追って来るのだから、絶対に友好的ではない。
「なぁマサキ‥‥俺達が初めて会った時の事、覚えてるか?」
「突然どうしたん‥っ!」
 マサキが言葉を紡ぐより早く、翔汰の鉄拳が腹部を直撃した。顔を歪めながら、マサキは翔汰の腕に掴まる。
「翔‥た‥‥」
 絞り出すように言葉を吐き、倒れ込むマサキ。翔汰はその体を抱き上げ、目立たないように木の陰に隠す。
「悪いな、相棒。俺が囮になる、なんて言ったら、お前は絶対反対するだろ?」
 軽く笑みを浮かべ、翔汰は帽子を脱いでマサキに被せる。そのまま木の陰から飛び出し、大声で叫んだ。
「こっちだ、豚頭共!」
 翔汰の声に反応し、棍棒を振り回しながら追い駆ける豚鬼達。明ける太陽を背に、翔汰は化物を引き付けながら、マサキから離れて行く。
(お前だけでも、生き延びてくれ!)


■参加者一覧
風雅 哲心(ia0135
22歳・男・魔
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
水月(ia2566
10歳・女・吟
菊池 志郎(ia5584
23歳・男・シ
利穏(ia9760
14歳・男・陰
トカキ=ウィンメルト(ib0323
20歳・男・シ
長谷部 円秀 (ib4529
24歳・男・泰
玖雀(ib6816
29歳・男・シ


■リプレイ本文

●誓いの言葉
 天高く昇った太陽が、大地に柔らかい光を降らせる。とは言え、冬の空気は冷たい。吐息が白く染まる程の寒さは、少々厳しいものがある。
「よぉ、元気そうだな、ふしぎ。肩を並べられんのは嬉しいぜ。捜索の方は任せたぞ?」
 満面の笑みを浮かべながら、身をかがめて視線を合わせる玖雀(ib6816)。30cmの身長差があるため、彼なりに気を遣っているのだろう。
「わぁ、玖雀もこの依頼受けたんだ。絶対2人とも助け出そうね…って、わわ、わざわざ身長あわせなくても、平気なんだぞっ!」
 喜んでいた天河 ふしぎ(ia1037)の表情が一転し、軽く頬を膨らませる。怒ったフリをしているのか、ツンデレなのかは定かではないが。
「アヤカシどもは俺らで引き受ける。そちらは頼んだぞ」
「みなさんの捜索の邪魔にならないよう、1秒でも長く引き付けておきます!」
 囮担当の、風雅 哲心(ia0135)、菊池 志郎(ia5584)が、捜索班のメンバーに向かって声を掛ける。
 話し合いの結果、今回は囮班と捜索班に別れて行動する事になった。囮班がアヤカシを引き付けている間に、捜索班が保護対象を救出する、というものだ。
 2人の言葉を受け、水月(ia2566)が『こくこく』と何度も頷く。言葉は発していないが、その瞳は『任せて下さい。絶対に救出してみせます!』と言っているようだ。
「水月さんの言う通りです。相棒は、2人揃っていなければ意味がありませんから」
 利穏(ia9760)にも、彼女の気持ちが伝わったのだろう。拳を強く握り、静かに闘志を燃やしている。
「これは…時間との勝負、ですね。一刻も早く合流しないと」
 森を眺めながら、長谷部 円秀(ib4529)が口を開く。広大な森に、冬の寒さ。遅くなれば、状況は悪化する一方である。
「それじゃ、お仕事ですし、急いで探しに行きましょうか」
 仕事と割り切っているのか、クールな様子のトカキ=ウィンメルト(ib0323)。8人は顔を見合わせると、二手に別れて森の奥へと消えて行った。

●惹き付ける者達
「こっちです! この先に、アヤカシの気配が!」
 大声で叫び、両腕の精霊鈴輪を鳴らしながら進む志郎。森に入って数分後、彼の瘴索結界がアヤカシの瘴気を捉えたのだ。程なくして、囮メンバー4人の視界に豚鬼が姿を現した。その数は、3体。
「大当たりだな。グッジョブだぜ、志郎!」
 玖雀は志郎の肩を軽く叩き、笑顔で親指を立てる。志郎が笑顔を返す隣で、哲心はゆっくりと武器を抜き放った。
「捜索班が動き易くなるよう、囮の役目を果たさないとな」
 言葉と共に、冷たい笑みを浮かべる。こちらの姿に気付いたのか、豚鬼達は棍棒を片手に駆け寄って来た。
 それを迎え撃つように、哲心はアゾットを構える。彼の周囲に吹雪が生まれると、切先から扇状に広がって敵の視界を白く染めた。1体は地面を転がって避けたが、残り2体が極寒の嵐に飲み込まれる。
 吹雪が晴れるのと同時に、2筋の光波が敵を追撃する。志郎の放った気功波だ。攻撃を終えると、素早く木の陰に隠れる。囮班で唯一の回復持ちなため、攻撃を受け過ぎないように注意しているのだろう。
 2体の豚鬼が、鼻息荒く雄叫びを上げる。その片方が棍棒を振り上げ、木の枝を叩き折りながら哲心目掛けて一気に振り下ろした。咄嗟に後ろに跳び退いたものの、先端が頬を掠めて赤く染まる。
 2体目は思い切り地面を蹴り、トカキに向かって体当たりを放った。が、敵の気を感じ取り、攻撃の流れを読んだトカキは、それを難無く避ける。勢い余った豚鬼は、そのまま木に激突した。
「見切った…なんて言ってみたり」
 軽く笑みを浮かべるトカキ。ほんの一瞬だったが、それは致命的な隙。そこを狙って、3体目が木々の間から姿を現した。空を切り裂く勢いで、死角から棍棒が迫る。
 次の瞬間、黒い風が吹いた。加速した玖雀が、トカキと豚鬼の間に割って入り、攻撃を受け止めたのだ。そのまま棍棒を弾き返し、苦無で敵を斬り裂く。
 追撃するように、トカキは大鎌に透き通った瑠璃色の精霊力を纏わせて薙ぐ。斬り裂かれた豚鬼の胸から瘴気が舞い散った。
「すいません、玖雀さん。助かりました」
「気にすんなよ。至らぬ部分は補い合うもんだろ?」
 背中合わせで声を掛け合うトカキと玖雀。互いの顔に、軽く笑みが浮かんだ。
「新しい瘴気!? みなさん、気を付けて! まだ来ます!」
 志郎の言葉に、全員の表情が緊張で強張る。数秒後、木々をなぎ倒しながら2体の豚鬼が近付いて来た。
「千客万来、だな。まぁ良い……暴れ足りなかったトコロだ」
 不敵な笑みを浮かべ、口元を歪める哲心。そのまま、手を振り上げた。

●森の中の迷い人
 囮班が大暴れしていたのと同時刻。円秀は踏み潰された草や足跡を調べ、水月とふしぎは神経を耳に集中させていた。迷わないよう、木に傷を付けていた利穏が、遠くから響く轟音に顔を上げる。
「始まったみたいですね。僕達も、頑張って2人を探さないと……」
「でも、焦りは禁物ですよ? 痕跡を見逃してしまっては、元も子もありません」
 同様に、円秀も顔を上げる。2人は顔を見合わせて軽く頷くと、痕跡探しを再開した。
「荒い……鼻息?」
「うん。あっちには何か居る…ひとまず避けてこっちだよ」
 超越聴覚を駆使していた2人が、豚鬼の音に気付く。その方向を避け、ふしぎの先導で、4人は雑草生い茂る獣道を奥へと駆け出した。
 順調に進んでいた一行だが、ふしぎが突然足を止めた。
「これは…足音? しかも一人って事は、翔汰さんだよ!」
 その言葉に、全員の表情が明るく変わる。が、それも束の間。正面の茂みがガサガサと揺れ、豚鬼達が姿を現した。
「今は2人の保護が最優先です! ここは、強行突破で行きましょう!」
「邪魔しないで! 僕達には、助けたい人がいるんです!」
 叫びながら、利穏は地面を蹴って飛び出し、先頭の豚鬼に斬り掛かる。更に、円秀は追撃するように回転蹴りを叩き込んだ。その衝撃で豚鬼は後方に吹き飛び、後方の群れにブチ当たる。予想外の出来事に混乱している隙を突き、4人は一目散に駆け出した。
「翔汰さん、どこですか!? 聞こえているなら、返事をして下さい!」
 走りながら、大声で叫ぶ利穏。保護対象が見付かっていない事で、ふしぎ、利穏、円秀の顔に、焦りの色が浮かぶ。水月の表情は変わっていないが、ソワソワと落ち着かない様子である。
「うをぉぉぉあ!?」
 聞きなれない男性の声。反射的に、4人はその方向に駆け出した。木々の間から見え隠れする、男性と異形の影。男性が足を滑らせて転倒すると、2体の豚鬼は棍棒を振り上げた。
 次の瞬間、ふしぎの姿が男性の隣にあった。周囲の時間を3秒間だけ止め、その間に移動したのだ。その後を追うように、円秀は超加速して一気に間合いを詰める。
 豚鬼が振り下ろした棍棒を、ふしぎは兵装を交差させて受け止める。そのまま敵の腹部に蹴りを入れ、距離を離した。
 円秀は拳を重ねて棍棒を受け止めると、全身の筋肉を駆使してそれを弾き飛ばす。
「翔汰、大丈夫!? 助けに来たから、もう安心だよ!」
「お前、どこから現れた!? 一体、ナニモノだよ!?」
「説明は後です! 危険ですから、下がっていて下さい!」
 突然の出来事に、驚きを隠せない翔汰。それでも、円秀の言葉に従って木の陰に身を隠した。そんな彼の元に、水月と利穏が駆け寄る。
「…無理は、駄目」
 水月の小さな手が、翔汰の手を包む。かなりの無理をしたのか、彼の全身には真新しい生傷が刻まれていた。その傷を、水月から発生した優しい風が癒していく。
「すぐ終わらせますから、コレを着て待っていて下さい」
 優しく微笑み、利穏は従者の外套を手渡す。豚鬼に向き直ると同時に野太刀を構え、距離を詰める。練力を纏った刀身を横に薙ぎ、敵の胴を深々と斬り裂いた。
「豚鬼達、もう好きにはさせないんだからなっ…! くらえっ、空賊忍法乱れ鎌鼬!」
 ふしぎの叫びと共に、周囲に真空の刃が発生して乱れ舞う。それが2体の豚鬼を飲み込み、無数の赤い線を全身に刻んでいく。
 軽く拳を交差させ、円秀は自身の勁力を増幅させる。それを右の拳に収束させ、大きく踏み込んで拳撃を叩き込んだ。膨大な勁力と共に、衝撃が敵の全身を駆け巡る。瘴気を撒き散らしながら豚鬼は転倒、空気に溶けるように消えていった。
 仲間を倒された豚鬼が、怒りの雄叫びを上げる。だが、そこ声は徐々に小さくなり、終には全身を弛緩させて大人しくなった。周囲に響く、優しくて、さやさやとした歌声。水月が豚鬼を眠りの底へと誘ったのだ。
 眠る豚鬼に向かって、利穏は野太刀を振り上げる。万が一に備え、ここで始末するべきだと考えたのだろう。振り下ろした刀身を通し、練力が弾けて破壊の力に変わる。縦に両断された豚鬼の体は、一瞬で黒い霧になって空気に溶けていった。
「なぁ…あんた等、何で俺の名前を知ってんだ?」
 敵が倒れて安心したのか、翔汰が4人に問い掛ける。ふしぎは笑みを浮かべると、親指を立てながら口を開いた。
「僕達は、ギルドの依頼を受けて来たんだよ。君達を助けに、ね!」
 その様子に、安堵と共に翔汰の表情が和らぐ。そんな彼の衣服を、水月がクイクイと引っ張った。
「マサキさんは……どこに、居るんですか?」
「あいつは…置いて来た。巧く逃げてりゃ良いんだが」
 彼女の言葉に、翔汰は沈んだ表情を見せる。恐らく、マサキの安否が心配なのだろう。
「もしかしたら、まだその場所に残っているかもしれません。案内して貰えませんか?」
 利穏の提案に、翔汰は深く頷く。その直後、茂みがガサガサと揺れて豚鬼達が新たに姿を現した。
「皆さん、翔汰さんと一緒に先に行って下さい! 豚鬼は、私が足止めします!」
 力強く演武を舞い、敵と対峙する円秀。彼の言葉に従い、他の4人は森の奥へと進んで行く。襲い来る敵に向かって、円秀は叫んだ。
「ここは殿(しんがり)、貴方達の墓場です!」

●続・惹き付ける者達
「これで終わらせる。轟け、迅竜の咆哮。砕き爆ぜろ……アイシスケイラル!」
 かざした哲心の手から、鋭利な氷刃が発生して手負いの敵2体に殺到する。それが突き刺さるのと同時に炸裂し、氷片と猛烈な冷気が全身を斬り裂いた。糸の切れた人形のように倒れ込む豚鬼。その体が地面に付くより早く、黒い霧と化して空気に溶けていった。
 無傷の豚鬼が、棍棒を振り回しながら玖雀に迫る。横薙ぎの一撃を後方に跳んで避け、木の幹を蹴って跳躍。木から木へ跳び移っていく。
「……遅いな。どこを見ている?」
 嘲笑と共に、木の上から敵を見下ろす玖雀。豚鬼が頭上を見上げるのと同時に飛び下り、苦無で背面を斬り裂いた。
 着地のタイミングに合わせて、違う豚鬼が大地を叩く。その衝撃が波となって地面を伝播し、玖雀の足元から全身を駆け巡った。
 同様に、もう1体の豚鬼も大地に棍棒を突き立てる。狙われたのは、哲心。見えない攻撃が足元から迫り、衝撃が打ち付ける。
 二人の顔が苦痛に歪む中、志郎の体が淡く輝いた。その光が周囲に広がり、玖雀と哲心の体に吸収されていく。治癒の力を含んだ光が、内側から全身を癒す。
「手間を掛けて悪いな、志郎。助かったぜ!」
 笑顔を向け、礼を述べる玖雀。哲心も、志郎に向かって軽く微笑んでいる。
「さてさて…じゃあ必殺技でも使いますかね?」
 大鎌を構え、手負いの敵との距離を詰めるトカキ。白く澄んだ気を纏ったそれを、袈裟斬りに振り下ろした。梅の香りを伴い、切先が豚鬼を斬り裂く。傷口から瘴気が浄化され、ほんの数秒で全身が霧のように消えていった。
「こいつでどうだ。響け、豪竜の咆哮。穿ち貫け……アークブラスト!」
 哲心が叫ぶと、2筋の電光が宙を奔る。眩い閃光が軌跡を描き、残った2体の敵を射抜いた。
 その攻撃に合わせるように、玖雀は礫と苦無を投げ放つ。礫が敵1体の全身に降り注ぎ、鋭い切先が突き刺さる。投擲の集中豪雨を浴び、豚鬼の体は霧になって崩れていった。
「あと1体! これで決めてみせます!」
 叫びながら、志郎は両腕を突き出す。その掌に気を収束させ、光の弾丸として撃ち出した。鋭い弧を描き、光弾が敵の胴と頭を射抜く。穿った穴から瘴気が漏れ出し、後ろに倒れながら空気に溶けて消えていった。
 だが、安心する間も無く新たな豚鬼が姿を現す。敵を見据え、兵装を構える4人。その耳に、甲高い笛の音が響いてきた。
「この笛の音は……捜索班の合図ですよね!?」
「どうやら、囮は終わりですね。皆さんと合流しましょうか」
 志郎とトカキの口から安堵の言葉が漏れる。軽く顔を見合わせ、4人は合流場所に向かって駆け出した。

●再会した『相棒』
 無事に森を抜け、入口に集合した10人。追手の気配は無く、ようやく安心して胸を撫で下ろした。
 マサキはゆっくりと翔汰に歩み寄ると、無言で殴り飛ばした。その衝撃で、翔汰は尻餅をつく。
「2人共、ケンカは駄目ですよ!」
 慌てて仲裁に入ろうとする志郎。そんな彼の肩を、哲心が掴んで止めた。
「心配するな。あれは、男同士の仲直りの挨拶みたいなモノだ」
 そう言って、不敵な笑みを浮かべる。
「もし……今度同じ事をしたら、僕は一生、君を許さない。覚えておきたまえ」
 目に涙を溜め、声を震わせるマサキ。複雑な表情でそれを見詰める翔汰。そんな彼の手を、水月が再び優しく包む。
「翔汰さんが囮になってマサキさんが助かったとしても…マサキさんはぜったい悲しむの。それは……駄目」
 涙ながらに訴える水月。玖雀は膝を付き、翔汰の肩を優しく叩いた。
「お前の選択を咎める気はねぇよ。だがな……本当に友人を思うのなら、簡単に命を賭すな。一生後悔するぞ? 残された側は、な…」
 言葉を終え、玖雀は天を仰ぐ。恐らく、今は無き主君の事を思い出しているのだろう。
 二人の言葉に、翔汰は視線を泳がせる。その瞳がマサキの目を見据え、ゆっくりと口を開いた。
「悪かったな、マサキ。アンタ等にも…手間掛けてすまねぇ。若いのに凄ぇな、リトル・ガールズ」
 反省の意を込めて、謝罪の言葉を述べる。最後の瞬間、彼の視線は水月とふしぎに向けられた。ガールズ…つまり、女の子達。
「…ぼっ、僕は男だっ!」
 顔を赤く染め、ふしぎはそっぽを向く。その様子に、周囲から笑いが零れた。
「相棒、か‥‥羨ましいですね。本当に、羨ましい」
 一人呟く利穏。その真意は分からないが、マサキ達に羨望の眼差しを向けている。
「それにしても、難しい仕事でしたね。あー…しんどい」
 首を回し、自身の肩を叩くトカキ。楽な仕事が好きな彼には、今回の依頼は少々大変だったのかもしれない。
「あとは、2人を無事ギルドにお送りすれば依頼は完了ですね。みなさん、最後まで頑張りましょう!」
 円秀の言葉に、全員が頷く。安堵の笑みと共に、10人は帰路へと着いたのだった。