【大会】朋友対戦・青
マスター名:香月えい
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/07/08 16:27



■オープニング本文

●武闘大会
 天儀最大を誇る武天の都、此隅。
 その地に巨勢王の城はある。
 城の天守閣で巨勢王は臣下の一人と将棋を指していた。
 勝負がほぼ決まると巨勢王は立ち上がって眼下の此隅に目をやる。続いて振り向いた方角を巨勢王は見つめ続けた。
 あまりにも遠く、志体を持つ巨勢王ですら見えるはずもないが、その先には神楽の都が存在する。
 もうすぐ神楽の都で開催される武闘大会は巨勢王が主催したものだ。
 基本はチーム戦。
 ルールは様々に用意されていた。
「殿、参りました」
 配下の者が投了して将棋は巨勢王の勝ちで終わる。
「よい将棋であったぞ。せっかくだ、もうしばらくつき合うがよい。先頃、品評会で銘を授けたあの酒を持って参れ!」
 巨勢王の求めに応じ、侍女が今年一番の天儀酒を運んでくる。
「武芸振興を図るこの度の武闘大会。滞る事なく進んでおるか?」
「様々な仕掛けの用意など万全で御座います」
 巨勢王は配下の者と天儀酒を酌み交わしながら武闘大会についてを話し合う。
「開催は開拓者ギルドを通じて各地で宣伝済み。武闘大会の参加者だけでなく、多くの観客も神楽の都を訪れるでしょう。元よりある商店のみならず、噂を聞きつけて各地から商売人も駆けつける様子。観客が集まれば大会参加者達も発憤してより戦いも盛り上がること必定」
「そうでなければな。各地の旅泰も様々な商材を用意して神楽の都に集まっているようだぞ。何より勇猛果敢な姿が観られるのが楽しみでならん」
 巨勢王は膝を叩き、大いに笑う。
 四月の十五日は巨勢王の誕生日。武闘大会はそれを祝う意味も込められていた。


●朋友対戦
 神楽・開拓者ギルド。
 あなたは壁に貼られた大会要項に目を通していた。

『◆朋友対戦 参加者募集◆
   朋友達の晴れ舞台!
   いつもは街中を連れ歩けない大型朋友、珍しい希少朋友はもちろん、もふらさまも参戦。
   巨勢王の御前で、ぱぁとなぁの雄姿を見せつけよう!』

(「‥‥‥‥」)
 御前試合にも色々あるらしいが、この試合は朋友同士を戦わせるもののようだ。六体でひとつの組を作り、他の参加組と対戦させるという趣向らしい。
 戦うのは朋友、一対一の入れ替え戦。開拓者は指示兼観客だ。
 特定の場所で対戦相手を待ち受けて一戦、此方から出向いて一戦。単に強さを競うだけでなく、朋友達のお披露目的な催しでもある。勝っても負けても、祭りの雰囲気を楽しめるだろう。
 ギルド内を見渡してみた。他にも参加しようと考えている開拓者がいるかもしれぬ。
(「‥‥‥‥」)
 目が合った。
 ギルド内には対戦相手もいるようだが、ひとまずあなたは自分以外の五名の同士を見つけ出したのだった。


●青き『砂浜』
 春の空は高く青く澄んで、春の海は深く青く輝いている。
 砂浜に横たわっていた鹿瀬 柳威(iz0126)は、深く息を吸い込んで立ち上がった。と同時に、やってくる開拓者一行に目を留める。
「おぅ、お前らが青班に入った奴らか?話はきーてるぜ」
 さらさらと足元で砂が音を立てる。朋友対戦の為の障害物の少ない広い場所を確保せよ――そう言いつかった柳威が、この広大な海辺を思いつくのにさほどの時間はかからなかった。
「まー、ちょっと風は強ぇけどなぁ」
 柔らかな春風――とは行かないのが、この海の風の特徴でもあった。
 しかしそれでもここの海は美しく、風にも負けずにピクニックや水浴びに来る人も少なくないのだとか。
「戦闘中、海には入っちゃ駄目だぜ?有利不利がないように、完全に平らな砂の上でな」
 どうやら開拓者がここに来る前に、柳威が簡単な危険物除去は終えていたらしい。よく海岸に落ちている鋭い棒切れや大きな石ころは大体が取り除かれ、足を傷つけることは滅多になさそうだ。
 会場は広く、大声を出しても近所迷惑にはならないだろう。観客席は、会場を広く見渡せるように設けられている。応援にも熱が入るというものだ。
「俺も応援してっから、がんばれよ」
 にぃと笑った彼は、設けられた観客席の中央にどっかと腰を下ろした。


■参加者一覧
無月 幻十郎(ia0102
26歳・男・サ
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
斉藤晃(ia3071
40歳・男・サ
奏音(ia5213
13歳・女・陰
趙 彩虹(ia8292
21歳・女・泰
八神 静馬(ia9904
18歳・男・サ


■リプレイ本文

●春の空は青く
「前に一緒に闘った事あるけど、今回は茉莉花一人(一匹?)心配だなぁ」
 はぁ、とため息を吐いたのは趙 彩虹(ia8292)だ、白く染めたまるごととらさんを着こんだ彼女は隣の猫又、茉莉花をチラリ。
「大丈夫☆あたしだって頑張んなきゃね?」
「クロのお〜えんも、もーりーほぁのお〜えんもするのですよ〜」
 猫好きである奏音(ia5213)が相棒、猫又のクロを撫でまわしながら茉莉花を覗きこむ。そのまま茉莉花を抱き上げ、むぎゅ☆すりすり‥‥両手に華ならぬ両手に猫又。
「みんな、祭り楽しもうぜーっ!」
 うぉぉっ!と春風に負けんばかり、清々しい笑みを湛えた八神 静馬(ia9904)が駿龍、紫苑の隣で拳を振り上げる。
「盛り上がっとるやないか、相棒バトル、今回はゆっくり見物させてもらおか。熱かい悩む火種よ。てぇぬくやなぁ」
 斉藤晃(ia3071)が手を伸ばし酒を喉に流し込む‥‥今年一番の天儀酒、炎龍の熱かい悩む火種ははぁ、とばかりに熱いため息を吐いた。
「(やれやれ面倒な仕事を‥‥しかし、手を抜くなというだけが命令か、適当なことは戦いではせんが)」
 なんだかんだと言いつつも熱かい悩む火種も戦闘好きだったりする。
「頑鉄、晴れ舞台だ、己の武を見せて来い」
 羅喉丸(ia0347)は一枚岩のように堅牢な甲龍、頑鉄の首を叩く。
「はっはっはっは 勝負をするには、いい天気だ‥‥斎藤殿、此方にも酒を一杯」
 駿龍、八葉に酒「桜火」を飲ませながら無月 幻十郎(ia0102)は枡に入った酒を飲み干す。
「良い飲みっぷりやなぁ」
「主に似たのか、酒が好きな子なので」
 飲ませた方がいいんですよ、と無月は返す‥‥横で頑鉄の調子を整えていた羅喉丸になみなみと入ったお酒。
 戦勝祈願、嗚呼、と受け取った彼は飲み干し、盃を割った。
「よっし、頑張れよ!」
 ギルド受付員である鹿瀬 柳威(iz0126)が観客席の中央から手を振る。
 ―――さあ、熱い祭りの始まりだ。

●似たモノ同士
「遠距離では鎌鼬で近距離で針千本かな?」
趙のヒソヒソ声に茉莉火が返事を返す、打ち合わせも余念がない。
「抵抗が高かったらクロウに変えた方が良いよね」
 現れた相手は、軽く4mは越える炎龍、趙と茉莉花が視線でやり取り‥‥甲龍じゃなくて良かった、ではなく戦法である。
「相手の攻撃は基本的に避けてね?‥‥体制的に無理な時だけ受ける事」
「解ってるよぉ‥‥あたしからは攻めこまない」
見た感じは温厚そうであるが炎龍、その攻撃力は侮れない。
「後は状況に合わせて攻撃手段を変えていければ大丈夫じゃないかな?」
「おっけ☆さぁー、頑張りますかーっ!」
「はじめ!」
 掛け声と同時に先攻を取ったのは茉莉花、頑張れ茉莉花!と叫ぶ趙を目端に鎌鼬を放つ。
「速さなら負ける気は無いわよ!」
 炎龍も負けじとリーチを生かして踏み込み、飛び上がりキック‥‥横の砂が舞う―――茉莉花は、無事だ。
 接近しての攻撃、尾を振るう炎龍の攻撃を身をかがめ回避、白の光に包まれ茉莉花が放つ針千本。
 踏みつぶされそうなところを危うくかわす、掠めた程度、大した傷じゃない。
 当たりやすいのはお互い様‥‥次の手に移るのは茉莉花の方が速かった。
「喰らっちゃいなさーい!」
 弾けた鎌鼬、白い砂を巻き上げ相手に命中する‥‥対戦者が白旗を上げた。
「やった、茉莉花お疲れ様―っ!」
 頑張ったね、と抱き抱き、ほっぺすりすり、撫でまわされる茉莉花、一言突っ込まねばと口を開く。
「そういえばさ?今回は小虹戦わないのにとらさん着てるの?」
「んー、ほら、応援にも気合入るじゃない?」
「そう、なのかなぁ‥‥?」
 見かけそっくりな主とその相棒、お互いにお疲れ様、と相手をねぎらった。

●ボケVSツッコミ異種格闘技戦
「盛り上げていこうか、紫苑」
 続いて現れたのは八神と紫苑、対戦者が言霊を唱えると同時に現れるジライヤ‥‥スピードでは勝てる、逆を言えば持久戦には持ちこみたくない相手である。
 低く鳴いて返答を返す紫苑、やや紫苑の方が大きいが大きさはほぼ互角、始まりの合図と共に空へと飛翔する。
 砂を纏い視界は白くけぶる、ソニックブーム、そしてそのまま炎を吐いた‥‥白の砂煙と共に赤い炎が熱を帯びて相手のジライヤへと迫った。
 燃え立つ火柱、ジライヤは身を固め防御を行う‥‥完全に大ダメージを与えるだろう。
 誰もがそう確信した瞬間、その場からジライヤが消えた―――否、空へ。
 跳躍した大きな蝦蟇はその長い舌を紫苑へ、伸ばす。
 降下していた紫苑、思わず‥‥
「(なんでやねんっ!)」
 全力移動、色々な意味で必死、大きな口でパクリ☆なんてされたら泣いてしまう。
「紫苑、あの技を使え!」
 八神の応援にも熱が入る、あの技‥‥伝説の、あの技である。
 小さく鳴いた紫苑、片手に持つのは軍配。
「ガウッ!」
 ビシィッ、と決まっる軍配‥‥絵的にオールオッケイ。
「お粗末さまでした」
 と、ジライヤ―――此処でありがとうございました、と退ける訳も無く。
 バッと音と共に広げられた手、どっちがツッコミなのか、或いはどちらもボケなのか‥‥攻勢に転じたジライヤの行動力を活かし、紫苑は地に落ちた。
 その姿はやり切った、笑顔は正に雄姿。
「お疲れ様、よくやった、紫苑」
 笑顔と共に握手、驕らぬ者は強く―――ペットリとしたジライヤの手と紫苑の手が結ばれる。
 同じくして八神も対戦者に握手を求めたのだった。

●飲んでも飲まれるな!
「帰ってきたらまた、酒を飲ませてやるさ」
 笑顔で送り出した無月、八葉と対するのは人妖。
 空中戦を希望だったのだがこればっかりは仕方がない、全力で行って来いとちらつかせる酒瓶。
「負けてもいい勝負であれば良しっ、勝てばなお良し!」
 飲ませろと言いたげな八葉、それを遮って始めの声がかかる。
 先手を取ったのは八葉、相手は50cm程‥‥だが、容赦は無し、全力で戦う、それがこの場での最大の礼儀だ。
 白く眩しい砂浜、照り返しが陽炎として揺らぎ戦いの場を更に熱くさせる。
 一気に接近、そのままキック‥‥当たる、と思いきや相手の酔拳、成程。
 だが、酔いどれ勝負なら負ける事は無い―――いえ、本当は飲んでないのですが。
「酔いで負けるなよ!」
 回避を主体とした相手へ炎を吐く、ちょっと酒臭い‥‥相手も神風恩寵で傷を治し、接近。
 足取りがおぼつかないのは‥‥まさか酔った?
 高速回避、その一瞬、チラリと視線が酒瓶へ―――THE、執念。
「いい勝負だな」
 ちゃっかり酒の席に落ちついて八神が口を開く、紫苑も興味津々?
「よーし、いけ、決めて来い!」
 人魂に転じた相手、そのまま練力を温存して、粘る、粘る。
 小さな者に当てる事は難しく、攻撃回数は緩やかに下降線を描く‥‥が、相手の練力が、尽きた。
 ふらつく人妖に迫るキック、練力が切れた事を確認した対戦者は白旗を上げた。
「良くやった、さぁねぎらい酒だ。た〜んと一緒に呑もう」
 お疲れ様、と簡単な酒の席へ戻る無月、傍らに八葉―――勝利の美酒は、嗚呼、美味しい。

●愛猫は苦労人?
「もしも〜けがしたら〜、ちゃんと〜おてあてしてあげるから〜、がんばって〜なのですよ〜♪」
 奏音のともすれば眠ってしまいそうな柔らかい声が響く。
「はぁ、見世物にされるようで気が進まんが‥‥まぁ、憂さ晴らしをさせてくれるというだ、たまにはこういうのも良いか」
 ため息をつきながら、自分の10倍はあろうかと言う巨体である相手の駿龍を見てクロがチロっと舌を出した。
「此れは中々―――」
 今まで味方や対戦者を見て来たが炎の攻撃もある、とは言え遠距離の方が無難か。
 小さな体躯、スピードも負けはしない‥‥漆黒の前足が砂浜を叩く、土隆衝―――砂を巻き上げる。
 相手の駿龍、高速回避‥‥眼前まで砂が迫る訳ではない、だが小さなクロの姿は砂煙に隠れただろう。
 当て辛いが生憎、空を飛び続ける事は禁止されている―――素早く動き、クロの瞳が緑に光る。
 風が唸り、鎌鼬が空間を裂く。
「(隙をついて背中に飛び乗って爪で裂いたり牙を立てたりしてみるのも‥‥面白いかも)」
 キックの為に飛び上がった駿龍の足の下をくぐる、身をかがめ最低限の動きで―――後背を取り、鋭い爪を光らせ飛びかかった。
一瞬の回避行動‥‥避けられる、爪が宙を抉り地面に落下する、反射的に身体を翻し着地態勢をとった。
「(猫である奴等も怪我をしないというが‥‥猫又である私も、この程度なら平気なようだね)」
「がんば〜れ〜、クロちゃ〜ん」
 怪我なんてしないよ、とばかりに奏音を見たクロは咄嗟に地面を転がりキックを回避、そのまま鋭い爪を立て、切り裂いた。
 怯んだ駿龍に畳みかける‥‥鎌鼬。
 地に伏せた駿龍を見ながら、誇り高く漆黒の猫又は嗤うのだった―――と、その後喜んだ奏音、逃げながらもクロは力尽きて大人しく抱きしめられるのだった。

●剛にて剛を語る
 甲龍対甲龍、どちらも堅固な肉体を持つ龍である‥‥姿とは裏腹に温厚と言われるこの二体。
 始まりのゴングを鳴らしたのは、主同士の拳のぶつかり合いであった。
 ニヤリと笑みを浮かべて二人が離れる。
「頑鉄、己の好きなようにやれ」
 任せる、と軽くは無い信用を以て相棒を見送る‥‥相手も同じく固い絆で結ばれているのだろう。
 侮りがたし、硬質化で身を固めた頑鉄が機を待つ、待つ―――
 やがて、最初に動いた相手の甲龍、ガツンと重い音を立てて両者の身体がぶつかる。
 攻撃は‥‥重い、だが勝てない相手ではない。
 獅子頭鉄角がやや視界を塞いでいるものの、攻撃にはなんら支障がない。
 極近い場所からのスカルクラッシュ。
 相手も硬質化を使用しているのか、槍のような武器がその鎧のような肉体を貫通する事は無かったがダメージは大きい筈だ。
 何より諦める事は出来ない‥‥一度壇上に上がった時から、戻る選択肢は無かった。
 相手が、一瞬息を、止める。
「今だ、頑鉄‥‥一気に決めろ!」
 二度目、ぶつかる頭、両者のスカルクラッシュ‥‥相手が息を整えた一瞬、力を溜めていたのだろう。
 主である羅喉丸は一瞬、逡巡した―――このまま攻め続けるのと、一旦の撤退。
 奇しくもそれは今、戦っている相棒と同じ考え‥‥戻る選択肢など無い。
「諦めるな―――」
 愚直と、頑固と人は言うのだろうが‥‥己の力量を信じるのみ。
 ガツンと重い音、ぶつかる頭と視線、ジリジリと互いの生命力が削れていく―――頭上で燃え盛る太陽が、砂浜を焼くように。
 息を詰めるような戦いを戦っているのは羅喉丸、そして対戦者も同じだろう。
 相手の方が手数が多い‥‥装備が薄いのだろうか?
 だが、頑鉄の方が堅固であった―――結果、一際重い音と共に崩れ落ちる。
 脳がゆすぶられるように、視界が揺れる‥‥そして、相手も崩れ落ちた。
「よくやった。弱い己に負けずに戦いぬいたというのなら、それで十分だ」
 羅喉丸の言葉にようやく、身体を起こす頑鉄―――相手は、まだ倒れている。
 勝負は‥‥?
 どちらも戦いぬいた、互いに褒めそやす羅喉丸と対戦者は一つの結論に落ち着く‥‥良き対戦者に出会った、と。

●最後まで突っ走れ
「(よかろう‥‥おおいに暴れて良しということだ)」
 勝負もこの一組で終わりになる―――現れた炎龍、熱かい悩む火種は青いミヅチと対面する。
 1m程、己の4分の1程しかない敵ではあるが侮れない。
 始まりの合図は熱かい悩む火種の放った炎、続いて上がる水柱。
 直接攻撃には、少しばかり遠い‥‥砂を蹴りあげ砂埃と共に上から奇襲をかける。
 そのまま、ファング‥‥鋭い歯を猛然と奮い付きたてた、そのまま捻りを加えて弾き飛ばす。
「(戦いに卑怯もなにもない)」
 軽く飛んでいくミヅチ、小さく鳴いては癒しの水で回復‥‥そして発生する水柱。
 自分の射程外からの攻撃だが、追いかける、追いかけ、空からキック‥‥踏みつける。
「なんぞかんぞいっても暴れるのは得意なのは一緒やの」
 攻撃の度に空いていく酒瓶、相手の手数の方が多い―――どちらかと言えば劣勢だ。
「こういう楽な依頼はええの‥‥湯豆腐、たこ焼きも頼むでぇ!」
「(ふん、こうでなくてはつまらない‥‥)」
 熱かい悩む火種も、劣勢だと言うのは理解している、が‥‥戦闘は大好物。
 避け難い頭上からの攻撃を加えていく、蹄鉄が相手にダメージを与えていく。
 とはいえ、与えるだけではなく同じくして離れた場所から水柱を受ける‥‥相手は回復出来るが、熱かい悩む火種はそうはいかない。
 練力切れを待つか―――それなら博打に出た方がいいような気がした。
 砂浜に炎を吐く、不思議そうなミヅチを放っておいて‥‥尻を捲くって逃走、速い。
 当然逃げれば追いかけたくなるもので、近づくミヅチ。
 此処からが分かれ目なのだろう、いきなり振り向く熱かい悩む火種、空中に散る塵埃。
 白く濁った視界、そのままキック。
「GYUAAA!?」
 熱かい悩む火種が咆哮する‥‥目の前で癒しの水を使ったミヅチ、飛ばされて痛みに鳴きながらも、水柱を放った。
 そのまま手数を利用した連続攻撃―――無害そうな表情のミヅチに熱かい悩む火種は、白旗を上げるのだった。
「おつかれさん。面倒がってころさんかったんでええんちゃうか」
 最後の最後まで攻撃を行おうとした熱かい悩む火種の傷は、酷い。
 無論それは対戦者にも言えることだが、斎藤が酒と肉を相棒の前へと置いた。

●強敵と書いて友と呼ぶ
 海に、夕陽が沈む‥‥朋友対戦も終了、各々が熱い戦いを繰り広げた様は恐らく巨勢王も満足であろう。
 だが、最大の満足なのは精一杯を出した相棒とその主か。
 湧き上がる観客達‥‥それに楽しげに、或いは面倒くさげに、或いはアウト・オブ・眼中に応えながら彼等は動き始める。
「奏音は桃果汁でもええがじゃんじゃんのめよ〜」
 勝てば祝杯、巨勢王の誕生日、或いは戦い、或いは絆‥‥
「ありがと〜なのです〜」
 斎藤から桃果汁を貰った奏音、クロに差し出すも知らん顔―――続いて、抱きしめる。
「クロも〜、お疲れ様なの〜」
「茉莉花、頑張ったね―――あ、ありがとうございます」
「勿論よ、小虹も応援、気合入ってたんじゃない?」
 趙と茉莉花が仲良く座り、料理に舌鼓を打つ‥‥美味しいと思ったものはすかさずメモ。
「メモしたこと、忘れないでね」
「忘れないってば!」
 微笑ましい掛け合いの横で、酒豪達が酒を酌み交わしていた。
「やっぱり、やり遂げるのはいいな!」
 八神とその横で紫苑がのんびりと寝そべる‥‥寛いでいるその姿は満足そうでよくやったと、互いが頷く。
「まだ、俺達は強くなれる‥‥それが証明できた、だろう、頑鉄」
 握手を交わして強敵と別れた羅喉丸、そして頑鉄。
 彼等が目指す背中は、いつか見えるのだろうか‥‥
「恵みの雨もふり木々の息吹が聞こえてきそうだ、この一杯が我輩達の息吹だが」
 八葉と共に酒を飲む無月、とっくに日は沈み月が顔を出しているが。
「良い月に、乾杯!」
「良い勝負だった、久しぶりに熱くなったぜ」
 鹿瀬も杯を掲げた。
 何かにつけて酒を飲むのが酒飲みの礼儀である、そして此処に一つの結果がある。
 ‥‥恐らく、彼らの消費した酒の多さはバトルの中でも優勝を勝ち取れるであろう。
 巨勢王ならこの酒の消費量も、笑い飛ばしてくれるに違いない―――多分。

(代筆:白銀 紅夜)