【遺跡】借りと仇
マスター名:小風
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/06/06 02:40



■オープニング本文

 陰殻のとある屋敷、一室。
「どうも芳しくないですね‥‥」
 眼前の卓に山と積まれた手紙を一瞥して、蔓は溜息を吐く。数十通に登る手紙の山は全て開封し目を通してある。それだけの量に触れれば疲れても当然なのだが、別に彼女はそんな事で溜息を吐いているのではない。

 栢山遺跡。黒井奈那介という学者とその遺跡を求めて消息不明となった同じく学者である彼の父、その二代によって発見されたと言えるそれ。父の代では失笑ものだったが、実在したとなれば評価は一転。勿論、はっきりとした調査結果が出なければ完全な評価になりえず、黒井は調査準備を開始した。
 そこで問題となるのは、お金。当然、奈那介個人で捻出出来る範囲を大きく上回っており、その援助を様々な方面に求めた。多くは商人や名のある家――ある程度の確保は出来たが、世の中一枚岩ではない。拒否、極少ではあるが中止を求める声。理由は様々、単に不確定なものにお金を出したくない者。遺跡から何かがもたらされる事で市場が狂う事を厭う者。遺跡調査という行為そのものを嫌悪する者まで居た。

「もっと反対が多いものかと思いましたが‥‥六割?」
 で、蔓の元に届いた手紙は、彼女が傘下に収めている様々な商人達からの遺跡調査援助可否の返答であった。
 蔓の性格上、面白そうな事にはお金をつぎ込む傾向がある。その対象が遺跡調査となれば彼女が喰いつかないわけは無い。ただ、今回に関しては額は元より道楽では済まない内容だ。立場上、傘下の商人達に可否を求めたのだが、結果は先の通り。
「九割とか全員反対とかなら分るのですけど‥‥中途半端な。原因は何ですかね〜‥‥と」
 蔓個人の商会のような体裁を成している以上、この手の可否はある程度どちらかに傾いた結果を示してくる事が多い。蔓が潰れれば傘下の商人達も少なからず影響を被る以上、もっと大きな反対を予想していただけに何かが引っ掛かる。
「‥‥ああ、成程ね。あの人か」
 手紙再確認後、蔓は苦笑いしつつ一言。出てきた名前は元和、蔓の三倍以上は生きている老人。傘下の中では最も大きな規模と勢力の持ち主。彼が様々な手を使って否票に傾かせた模様。
「人が神楽を離れた途端にコレですか」
 彼女が直接出向けばどうにでもなるのだが、家督を妹から奪った直後で色々忙しい為そんな暇は無い。
 元和という人物、実は蔓が陰殻を出てから暫く世話になっていた人物である。働く場の提供と商売の勉強をさせてもらった事には感謝しているが、考え方が根本的に違っていた。蔓は色々な意味で手を広げる。元和は逆にとことん堅実。どちらも一長一短だが、そういった相違がある以上縁切りは早かった。その後、元和の商売が思わしくなくなった時に蔓が援助して現在の状態に至る。
 蔓としては世話になった借りを返したつもりだったのだが、元和にしてみれば仇で返されたと思っているのだろう。
 蔓を知る人間が事情を知れば『あんた、相変わらず言葉足りないな!!』と言われる事必至の状況だ。
「‥‥仕方ない、呼びますか」
 蔓が陰殻を出れない以上、あちらから来てもらうしかない。立場上は彼女の方が上なので、断られる事は無いだろう。後はまあ、自分に足りていない所を補ってくれる人間が必要か。


■参加者一覧
紬 柳斎(ia1231
27歳・女・サ
衛島 雫(ia1241
23歳・女・サ
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
風鬼(ia5399
23歳・女・シ
菊池 志郎(ia5584
23歳・男・シ
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
エグム・マキナ(ia9693
27歳・男・弓
来島剛禅(ib0128
32歳・男・魔


■リプレイ本文

●言葉
 対アヤカシと対人。危険は前者、面倒は後者。開拓者としてどちらが解決容易かと言えば、大概前者。陰殻のとある屋敷で依頼主と向き合っている彼女も、そうした発想の一人。
「交渉相手との関係は伺ったが、仲違いした後何も言わずに援助したのだろう? それでは色々勘繰られるのは当然だ。今回の件もそこに一端があるのではないかと思うぞ」
「そういう‥‥ものですか?」
 依頼主である蔓の返答に、紬 柳斎(ia1231)は目を細めた。この人物、商人以前に人としてずれている。言っている事は一定の事実だが、それを緩和させるのに言葉が必要である事に気付いていない。口と耳を使って疎通しない人があるものか、とも思うが――
(あまり人の事は言えんか‥‥聞く耳も語る口も無かったのは過去の私も同じ、と)
 柳斎は厳格な家とそこの道具である事を嫌って飛び出した身。あの時もう少し耳と口を駆使していれば、と自嘲するが、必要なのはその後どうするかである。
「何にせよ、言葉が足りんのは事実。貴方自身はそういう対応に何とも思わないのかも知れんが、大概の人間は言葉が無ければ不要に裏を見る。あっても同じな時もあるが、端から無いのではな。少し、ずれている事を自覚したほうが良い」
「そんなものですか‥‥」
 蔓も思う所はあるらしく考え込む。柳斎と隣の衛島 雫(ia1241)は、ここには居ない菊池 志郎(ia5584)や鈴木 透子(ia5664)から蔓の家督奪取経緯を聴いているが、その辺りの事を思い浮かべているのか。
「言葉は気を使えば済むが、もう一つ場所が拙い。会談場所としては適さないと思う」
 雫が話の方向を変える。蔓の言葉足らずは指摘した所で、直ぐ治るようなものではない。言葉選びが出来るなら、指摘した以上は注意する筈。なら、もう一つの問題を片付けるべきだ。
「‥‥何故です?」
「本気で言っているのか? 妹から家督を奪った場所がここと聞いている。そんな所に呼べば、勘繰っている相手の警戒心を更に煽る事になる」
 不思議そうな蔓に少々頭が痛い雫。蔓が妹から家督奪取経緯や顛末は表面化しているものとは違うが、知らない相手から見れば雫が語ったような事になる可能性は大きい。
「出向けとは言わないが、対等な条件で向き合える場所は? 互いの知っている宿を借りるとか」
「ありますが‥‥陰殻に限りますよ?」
「それでもここでやるよりはマシだ」
「場所を決めてくれんと、拙者達も準備のしようが無いのでな」
 もっと癖のある人物と聞いていたが、妙に大人しい。助言を求めた以上、当然ではあるのだが。

●駆け引き
「奴の家に呼ばれるよりはマシだな。で、話はそれだけではないだろう」
 交渉場所決定の知らせを持って訪問した風鬼(ia5399)と志郎に対して、元和の返答。
 伝聞では恐らく齢八十越え。だが、姿勢は正しく目は鋭く声も聴き取り易い。
「先にお訊きしたいのですが、反対する理由は?」
「俺の所は良いが、奴から直接出資を受けている所もある。遺跡からもたらされる利益は多々あるが、即効性、確実性に欠ける。奴が潰れれば影響を受ける所が多い。そいつらを集めて反対させた」
 あっさり自分の票操作を認める元和。それを聴き、更に言葉を続ける風鬼。
「ふむ‥‥それだけで反対と叫ぶ方には見受けられませんが?」
 元和も商売人。考え方が違うとはいえ、遺跡に興味が無いとも限らない。伝え聞く彼の考え方から連想するに、確実に利益が得られる形があれば乗って来る。そもそも元和自身が『俺の所は良いが』と言った。つまり、蔓が潰れようが彼には影響は少ないのだ。風鬼の言葉は暗にそこを指摘している。
「‥‥これから口にするのはお前の個人の考えか? それとも奴か?」
「どうでしょうね?」
 探る老人に飄然と返す風鬼。彼女からの説明は以下に。
「商会として主に物的支援。物資は蔓さんが皆さんから一斉買い上げし調査団に。これで短期的には元和さん達の利益、蔓さんも調査への援助ができます。同時に蔓さんは人的援助。利権を確保する裏任務を帯びた目端の利く開拓者を、調査に送り込むわけで」
 商会側に立った考え方。風鬼は口にしていない部分がある。この考え方、調査の利益を得られなければ蔓のみが損害を受ける。敢て口にしなかったが、元和も気付いているだろう。後に続く『立場逆転』にも。
「ふん‥‥で、そっちの坊主は? お前は何か無いのか?」
「そうですね‥‥元和さんにとって蔓さんは何です?」
 風鬼に応えず志郎に話を向ける元和。彼がかつて雇い、今は上の立場になった蔓に対する損得を省いた感情が見えてこない。志郎とて蔓の性格を把握しきっているわけではないが、誤解があるなら解いておきたい。
「此方に来る前、蔓さんに『善行はわかるように積め』と言ったのですが、そもそもあの人善行のつもりはないようで。自分がやりたいからやった、だそうです」
「‥‥相変わらず、人の都合を考えん奴だ。言わんで良い事は言う割に必要な事は言わん。やってはいかん事の区別は付く割にやらんでいい事の区別は付かん。その様子だと、奴とは付き合いがあるのか?」
「変わった人、ですかね。商売やっている割に欲は無いですし、色々考えている割には陰湿な面は無いですし‥‥表現し難い人です」
 開拓者ギルドのとある受付さんから『変人』呼ばわりの蔓、それ以外呼び様が無い。それだけならまだしも、妙に義理堅い面も持ち合わせているので、結果的に関わる人間は調子を乱される。
「それから、後日に陰殻の交渉場所までご案内させて頂きますが、あの国をご覧になって遺跡調査と合わせ考えて下さい。蔓さんの事は抜きにして」
 予想されるよりは蔓を嫌っていないのは言動で分った。後は風鬼の進言と合わせ、元和個人として遺跡調査に対しどう考えるかだ。

 後日、元和が二人に連れられ陰殻に出立直後、傘下商人達の間に情報が駆け巡っていた。
 賛成派反対派問わず流れた情報を一言で言えば『遺跡調査支援賛成に対する見返り』。

 一つ、商売拡大の為の無利息資金援助。返却期限を現在既定の倍に。
 一つ、今日までにおける融資金返済の白紙化。
 一つ、現商会主破綻時、商会主を一時元和へ移行。現商会主は負債と共に個人商として分離。正式商会主選出及び商会運営は協議によって決定。
 一つ、今後現商会主の家にて仕えるシノビ達を希望があれば優先派遣。但し、派遣されるシノビ達に外界の勉強もさせる事。
 一つ、調達物資の原価五割増買い取り。質や量によっては増額も考慮。

 具体案を蔓から引き出しそれを傘下の商人達へ伝えたエグム・マキナ(ia9693)だが、その表情は硬い。というのも、この案、最後の一つ以外は即答に近い出され方をしたので、原案程度は頭にあったのだろう。
 そしてエグムが納得出来ない部分がもう一つ。
 この仕事、開拓者が行う必要性が薄い。商取引という利害が大きく絡むこの仕事で開拓者を運用すれば、直接的害意を持っていると誤解されかねない。エグムが蔓に言った言葉を借りれば『暗殺者』。動機目的を明瞭にしない蔓のその行為にエグムは苦言を呈した。
『確かに、明瞭でなかったのは私の落ち度ですね。色々な方から言われてはいるのですが、どうもこの辺りは苦手でして』
 当人、反省はしている様子。
 因みに、超人的肉体と不思議な力を持つ開拓者は商人にとって有用な取引相手、一般にも基本的に敬意を持って迎えられる相手である。ギルドとて暗殺依頼などまず受領しない。過去、虚偽で開拓者を利用しようとした例もあるが、虚偽発覚時点で開拓者は依頼遂行放棄出来る。また、その依頼主の将来も明るくない。何より、開拓者はギルド登録と居住地が明確である関係上、暗殺には全く向かない。
 その背景から、蔓にそういう発想が無いのは仕方ないとも言えるが――やはり、エグムはどこか納得しきれなかった。

●成績表?
 今年度分の帳簿を捲りながら、透子は記入されている金額の桁に何とも言えない気分になった。前年度以前もあるが、其方に目を通す必要は無いだろう。
「初期出資はどのくらいに?」
「現金のみであれば、蓄えの五分と言ったところです。主になる物資の調達次第で、追加一割までは予定を」
 返答を受け透子は一割五分の数字を頭の中で算出。具体的に出す気にもならないが、相当の数字だ。お金はある所にはあるらしい。
「そういえばあの宿、蔓さんの傘下なのですか?」
「いえ、皆さん言われたように私の息が掛っていたのでは、元和を警戒させるだけ。私が彼の元に居た際、此方で共に仕事をした時の常宿です」
「‥‥で、元和さんとの和解は? 妹さんの二の舞だけは勘弁です」
「そこは何とも。腹を割って話すというのが初めてに近いもので」
「理屈上の妥協点は幾らでもあるでしょう。問題は態度及び言葉なのですから、何時もみたいに斜め上に走らないように」
 居心地の悪そうな蔓を見て、透子は率直な意見をぶつけた。
「ただ今戻りました。午後には元和さん達が到着する予定です」
 部屋に入って来る来島剛禅(ib0128)。開拓者と商人を掛け持ちする彼の立場は蔓に最も近い。在り方は真逆だが。
「お疲れ様です。元和の様子は?」
「途中一度会談させて頂きましたが、平静でした。少なくとも、貴方をそれほど嫌っているとも思えませんね」
 来島は道中での会談を回想する。彼が当初、元和が抱いているだろうと考えていたものは、反骨心、嫉妬、老婆心――そういったもの。彼の商人への認識として、恨み辛みは抱かないという前提があるのだが、強ち外れていない様子。風鬼と志郎の意見も概ね同じだった。
「ですが、会談場所が陰殻というのが不安材料ではあります。今更ですが、国外が最良でしたが」
「今、家を空けるわけにもいかないのですよ。留守を任せられる人も居ませんし」
「あー‥‥あの子じゃ駄目でしょうね。留守居は」
 そのやり取りで、透子は蔓が唯一抱えるシノビを思い出した。屋敷で何度か見掛けたが、使い物になりそうに見えなかった。
「伺った話では、何処かから貰い受けたと」
「ええ。シノビとしてまるで駄目。種牝馬扱い決定直前で、頂いてきました。色々大変でしたね、志体持ちを別の家から引き取るのも」
「何でまたそこまでして」
「この国に心底馴染めないのにシノビ。逸材だと思いませんか?」
 意味不明だが、蔓の声の調子からして何かしらの期待をしているらしい。
「終わったぜ〜‥‥確認宜しく頼む〜」
 追加一名、ルオウ(ia2445)。陽性の少年には似つかわしくない紙束を抱え、部屋に入って来る。帳簿以外の、会談で提示する資料を彼が整理していた。透子も手伝ったが、彼女は他にもやる事があり、ルオウ自身が雑用を申し出たのでこういう形に。彼の性質からして身体を使う方が向いているのだが、残念ながらそういう仕事は無かった。
「有難う御座いました。厨房にうちのシノビが居る筈ですから、お茶とお菓子でも出してもらって一服して下さい。必要なら食事も」
「おう。とりあえず行ってくる。てか、あいつ大丈夫なのか?」
「流石に食事くらいは作れますよ。あまり上手ではないですけどね」
 紙束を受け取った蔓の礼にルオウは応え部屋の外へ。透子と来島は資料を覗き込む。
「私も少し目を通しましたが‥‥必要なんですか、これ?」
「‥‥ざっと見る限り、交渉に関係しないように思えますが」
「商会の歴史、ですかね。交渉の成否問わず、元和に見てもらおうと思いまして」

●会談
 当日午後。手配した宿の一室で商人二人が向き合う事になった。
 ここまでお膳立てした開拓者達は別室待機。宿で出された早めの夕食を摘まみつつ、交渉の行方を待っている。残念ながら、酒はまだ入れるわけにはいかない。
 堅苦しい挨拶に始まり、賛成見返り案提示、調査支援の詳細提示――元和は平然としたものだが、蔓は落ち着かない様子。当然だろう。今までやった事の無い行動に出ようとしているのだから。
 だが、その口火を切ったのは元和の方からだった。
「賛成した見返り、大きく出たな。回収出来るのか?」
「出来るからこそ見返りを」
「この案はもう傘下に提示されていると言った。ならば俺を呼ぶ必要は無いだろう。殆どの連中が賛成に回る筈だ」
「‥‥今回、開拓者の方々に色々手伝って頂きました。私の欠損を指摘してもらい、補って頂きました。妹から家督を奪った時にも同じでした。実感はありませんが、自分に何が欠けているのか分った気がします」
「俺から見れば、お前は欠損だらけな気もするがな」
「ですね‥‥言葉が最たるものですが、それ以前に他人が何を思っているかが分りません。現にそれで妹を潰し、貴方を敵に回した」
「‥‥俺をここに連れて来た内の坊主の方に国を見て考えろと言われたが、この国は相変わらず息苦しい」
「は? え、ええ‥‥まあ、そういう国ですし」
「雇った時からおかしなやつだと思っていたが、余計におかしくなりやがった。お前がどんな育ち方をしたのか、俺は知らんし興味も無い。だが、これだけ大きな商会を抱えるに至った割に、欠片も成長していない。
 ‥‥俺がまた独立するのは先の話か。いい加減、お迎えも近いのだがな」
「いやあの‥‥一応、成長記録的なものをご覧に入れようかと」
「要らんそんなもん。商会の成長記録なぞ見ずとも分る。俺が言いたいのは人間としての話だ。挫折の一つも無いからこうなる。最近漸く躓き始めたのなら、少しは良い勉強になるだろうよ。
 ‥‥もう少し付き合ってやる。やるだけやってみろ」
「‥‥えと、どちらへ?」
「帰る。お前の顔を見ていたら、要らん事を口走りそうだ」
「もう夜ですけど‥‥この国を夜に出るのは止めた方がいいと思いますよ。何があるか分ったものではないですし」
「‥‥‥」
「‥‥呑まれます?」
「顔だけなら酌相手に最適なんだが‥‥。よし、呑み終わるまで口を利くな。でなければ、前言を撤回する」
「??!!」

「なあ、さっきから爺さんの声しかしねえぞ? 大丈夫か?」
「一方的にやられる方とも思えませんが‥‥」
「決裂の可能性は低いだろうけど‥‥喋り過ぎて口を滑らせたとか」
「ああ‥‥普段しない事をすると暴発したりしますしね」
「あの依頼主が転がっていたりはしませんかね? 不用意な面があるようですし」
「さっきから仲居の出入りはあるから、それは無いとは思うぞ。というか、酒の回転がやたら早いな」
「あれでも一応、俺達の同類ですしね。元和さんがそういった人を手配した様子も無かったと思いますが」
「終わった後に元和さんに話をしようと思っていたけど、何時終わるのだろう‥‥」

 ――もう少し後、開拓者達は元和が只管説教をしている飲み会という、奇妙なものを目にする事になる。
 黙って酌をし続ける蔓は途方に暮れた目で、障子から覗く開拓者達に助けを求めたが、当然総員で気付かぬ振りを決め込んだ。