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■オープニング本文 「間に合わんのです」 ――いきなりギルドに駆け込んで来て何を口走っているのだこの男は。 「来週くらいには先生が戻ってきてしまうのです」 先生って何? つーか、ここは雑談の場所じゃねえよ。出てけ。 「あー、いや失礼。切羽詰まっていて錯乱してしまいました」 その割に、物言いはえらく冷静に感じるがな。 「ここがどういう場所かは存じてます。手を貸して欲しいのですよ」 ‥‥依頼ですか。では、簡単に概要を説明して頂けますか? 「ええ。私の夏休みの課題を手伝ってほしいのです」 ――帰れ。今すぐ回れ右をして家に帰れ。 「いやいやいや! 最後まで話を聴いて下さいっ」 開拓者ギルドに駆け込んできたのは、年の頃二十歳前後の若者。何やら、腰に木刀を挿している。 彼は、神楽の都にある一軒の剣術道場に通っているという。 道場の指導傾向は、あくまで剣術の基礎及び一般人の護身術水準。それ以上は、どれだけ頼み込んでも教えてくれないらしい。 指導者は三十歳半ばの女性で、元は何処かに仕えていたらしいが足に後遺症の残る怪我をしてしまい、経験を生かして道場を開いたそうだ。 その指導者が若者の言う『先生』で、彼女は二か月前から実家に里帰りをしている。 その間、当然道場はお休みなのだが――出立前に、先生は若者に自身が戻るまでの課題を残していった。 曰く――何か必殺技一つ、編み出しなさい―― ――それ、絶対に出来ない事を前提にした課題だろ。 「そんな事はありませんっ。 今まで誰にも必要以上の事を教えようとしなかったあの人が、そう言って下さったという事は、僕に才能があるという事っ」 ‥‥うわぁ、すげえ前向き。そもそも、剣術やっている割にその木刀の握り綺麗すぎない? 「失礼な、毎日通ってましたよ」 その割に手はやたら奇麗だし、身体は細くて筋肉無いし、足腰もしっかりしているように見えないけど。 「才能があるのですから、他の人のように無駄に体を痛めつける必要は無いでしょう?」 ――いや、才能があっても修練しなきゃ意味無いだろ。つーか、あんた‥‥毎日、道場で何してたの。 「先生とお話を」 ああ‥‥何か、その先生があんたに『必殺技の習得』を言い渡した理由が分った気がする。 「貴方も、僕の才能を分ってくれましたかっ」 何という無駄な前向き‥‥一応確認しておくけど、その先生ってひょっとして美人さん? 「? ええ、とても綺麗な方です。でも、何故分りました?」 ――自覚があるのかないのか――それに、ここまで聴けば予想の一つも出来るわっ。 「はあ‥‥まあ、とにかく先生に無様な姿は晒せません。そういうわけで、開拓者の方の力をぱぱっと僕に教えてくれれば」 あー、今ここに開拓者の人居なくて良かったなあ‥‥切れる人絶対居るよ、その物言い。 そういや、何でこんなギリギリに来るのさ? 二か月前の話なのに。 「友達と遊んだりまあ、色々忙しくて何もしてませんでした。僕の才能なら、そんなに長い時間は要らないでしょうし」 て、典型的な駄目人間が居る‥‥二か月間、何もしてなかったのかよ。つか、才能才能うるせえよ。 「では、僕は家に居ますので。人選お願いします」 提示した金額だけはまとも――金持ちの馬鹿息子か? 暫く後、その依頼書冒頭にはこう綴られていた。 『依頼人の必殺技修業を手伝ってくれる方募集。 どの様な形で依頼人を満足させるかはお任せ。*ここ重要っ』 ――誰かさんの個人的意見が思いっきり書かれているが、詳細を確認すれば大概の開拓者は納得するであろう。 |
■参加者一覧
万木・朱璃(ia0029)
23歳・女・巫
沙羅(ia0033)
18歳・女・陰
梢・飛鈴(ia0034)
21歳・女・泰
八重・桜(ia0656)
21歳・女・巫
剣桜花(ia1851)
18歳・女・泰
吉田伊也(ia2045)
24歳・女・巫
橘 琉架(ia2058)
25歳・女・志
葛葉 京(ia4936)
18歳・男・志 |
■リプレイ本文 ●一日目・午前 戦いにおいて幾つか要求されるものがある。 精神、技術、身体――要は『心・技・体』。 「どれ一つとして揃って無いのが凄いわね」 容赦無く息継ぎ一つ無く言い切った、橘 琉架(ia2058)。艶めいた彼女の容貌には、ありありと不機嫌な表情が張り付いている。 しかし、今回の依頼人はあらゆるものを都合良く解釈する超人だった。 「才能に勝るもの無し。それらのものは必要なら後で身に付ければ良いのです」 「‥‥殴っていいかしら?」 「いやいや、例え特訓と言えど僕には女性に剣を向ける事は出来ませんっ」 明らかに順序が間違っているのだが、何をどうしたらこういう発想になるのだろうか。ただ、才能ばかりを先に立たせる姿勢は志体持ちにとっても他人事ではない。先天的に身に付いている超人的なものに溺れる志体持ちとて、偶には居るだろう。そういう意味では反面教師に見えなくもない。 「ま、とりあえずは基礎を教えるアル。逃げる事の出来ない戦士は三流ネ」 何やら興奮気味の犬を二匹引き連れた、身体の線が綺麗に出る服に身を包んだ少女。梢・飛鈴(ia0034)という名の彼女は、何処のものとも分らない物言いで続ける。 「今からこの犬から逃げてもらうヨ。思い付く限り対抗手段を試しても良いネ」 「そういうわけで、はいどうぞです」 続けて渡される肉の塊。のんびりとした風情の可愛らしい少女と無骨な肉の塊との対比が怪しげ。その八重・桜(ia0656)は、肉を受け取った青年に一言。 「食べられたり落としたりしたら、修行は打ち切りです」 「へ? ちょ――」 「昨日からこの子達ご飯抜きネ――そういうわけで、頑張るヨロシ」 華麗に無視、問答無用で犬を離す飛鈴。一日断食から解放された犬は、即座に食べ物のある方へ疾走。犬に本気で追われれば、大概の人間は太刀打ちしようがない。結果、青年は逃走を開始する事となった。 「可哀そうですねー。犬」 青年ではなく犬への心配を口にする吉田伊也(ia2045)。彼女にとっては、あの青年よりも断食させられた犬の方が余程哀れなのである。 「まあ‥‥彼らには後でご褒美を上げるとして――桜花さん? 顔」 「うー‥‥はっ」 伊也が目を向けた先に居たのは、どこか先程の犬以上に肉に惹き付けられていた剣桜花(ia1851)。我に返った自称日雇い開拓者少女は、言わなくても良い自身の現状を何故か捲し立てる。 「日々仕事探しに頑張ったのですよギルド前に朝から並んでいたのですよお仕事しないとおまんま食べられないのですよようやく取れたお仕事内容は意味不明で依頼人は可愛げのないヘタレ男だし朝からお肉みせられるしつまりお腹が空いたって言うかGがああああああああ」 もはや最後は意味不明である。てか、Gって何だ。 「――沙羅様と京様があちらでお肉焼いているから、皆で朝食――ね?」 とりあえず、琉架が慰めてみた。 上手く焼けた肉を翳して叫んでみる。 「上手に焼――」 「却下。枕にUを付けるのも禁止です」 自身の出番はもう少し後という事で、朝食の準備に周った二人。沙羅(ia0033)と葛葉 京(ia4936)。前者の少女はおっとりとした風情もあって気にした風も無いが、後者の青年は容姿とは明らかに反比例するこの行為に少々苦悶。でもお肉を回す手は止めない、立派。 しかし、朝から骨付き肉ってどうなのよ。 ●一日目・午後 意外な事に依頼人の青年は昼になるまで逃げ切っていた。口ばかりかと思いきや、無駄に意思は強いらしく精神力で乗り切った模様。 「とりあえず、お肉回収ですっ」 疲労困憊といった風情の青年に背後から膝崩しをお見舞いし、無事だった肉を回収。それを大事そうに仕舞った後、朝の残りを功労者たる犬達に上げ、徐に昼寝形態に入る桜。 「今のが必殺技その一。これに色々書いてあるから、心の目で読む事。そういわけでわたくしは寝るのです」 野外でも寝れる辺りは流石に開拓者か。渡された白紙が連なる本モドキを見て青年は桜に何か言おうとしたが 「――最終奥義、昼寝!!」 寝言で叫ぶ桜。一日目前半にして飽きたらしい。 「流石にお疲れのようですから、午後は激しくないものにしましょうか」 「ぐ、具体的には?」 「ここにお胸の大きな人が居ます。この人を相手に必殺技の練習ですよー」 と、沙羅が示した先には桜花。只でさえ大きな乳房が尚更強調されている服を纏っているが―― 「し、しかし女性に対しそれは」 「先生も女性でしょう。わたくしを先生に見立て、どうぞ。 きっと先生も貴方を待っている筈――というわけで後々強引に迫る練習です!」 桜花の容姿はどちらかと言えば可愛い部類なので、色気的なモノはあまり期待出来ない。それでもその言葉に押されたのか、身構える青年。というか、既に必殺技の修行から逸脱してるのに気付いてない。 「式で女性を模れれば早かったのですけどねぇ」 沙羅は元々は自身の式で似たような事をやるつもりだったのだが、実寸人型の式など作れる筈も無い。丁度良い所に似たような事を考えていた桜花が居たので、其方に任せる事にしたのだ。 「‥‥よく、あんなのに身体を触らせる気になるわね」 「うちならお断りですねぇ」 「あたしも却下ネ」 「私もご遠慮願います」 「すぴー」 琉架、沙羅、飛鈴、そして何やら作成中の伊也、最後はお昼寝中の桜。散々な言われようだが、青年の矛先はあくまで自身の先生らしく桜花に向かう彼の動きは躊躇気味――その辺りは評価に値するか? 「何か落ち着かないと思いきや――男性は私一人だったのですね‥‥」 今更ながらに状況に気付いた京。とりあえず明日――一度くらいはまともに鍛えてやるか、と薄く笑い瞳を光らせた。 その日の修行は、桜花の何処かに圧迫された青年が呼吸困難で危険だったので、切り上げになった。何故そんな事になったかと言えば、沙羅の怪しげな対女性講義だったり、桜花の指示した『寝床の女性に向けて空中で全裸になりつつ跳び込む練習』が元凶だったりするのだが――それをも前向きに解釈してしまう青年、思考の上ではやはり超人なのかもしれない。 ●二日目 この日は、真面目な剣術修行になった。 京の刀が宙に線を描く。本気ではないが手を抜きすぎもしない。前日の逃走訓練が効いたのか、無様な格好ながらどうにか青年は回避している。 (ふむ‥‥真面目にやればそれなりのモノに化けるのでは?) 本来は自身ではなくアヤカシなりケモノなりを相手に実戦を経験してもらおうと思っていた京なのだが、都合良くそんなモノが現れるわけはない。時間を掛ければ別だが三日しか無いのだ。ならば、と自身が付き合ってやる事にした。 「と、ところで技らしきものを一度も教わって無い気が‥‥」 「自身で編み上げなければ技など生まれません――実戦が一番の近道ですよ」 刀は勿論逆刃で持っているが――開拓者が全力で当てようものなら、即死しかねない。前日と違いまともな訓練になっているので、文句を言いつつも青年の表情は真剣だ。 「成程、その先生とやらが貴方を放り出さない理由が少し分った気がします。ならば――火神、牙に汝の炎を――」 気付かれぬよう小声で詠唱、青年の操る木刀に宿る炎。驚いた表情のまま、その木刀を京に振るう青年。流石にこれを当てられれば志体持ちとて痛い――なので、直前まで引き付けてから身をかわし踏み込み、がら空きになった青年の腹部に刀の柄をねじ込んだ。 「‥‥今ので、何か掴んだのでは?」 最後に少し茶目っ気を出し、微笑む京。地に伏せた青年には自力で炎を出したように見えただろう――道場主の前で手伝ってやる気は無いが、その時点で己の間違いに気づけば化けてくれるのではないか――同性としての、一つの手向けだった。 「意外に頑張るわね――」 腕立てやら腹筋やら走り込みを命じた琉架の正直な感想。勿論、青年が阿呆なのは変わりはしないのだが、色々言いつつもここまでやっているのには正直感心する。これで才能云々言うのを止めてくれれば良いのだが―― 「午前は僕の心が木刀に炎を宿らせました! 才能が開花し始めてますよ!!」 ――そこだけは変わってくれないらしい。 「変な自信付けさせちゃってまあ‥‥どうするのよ、アレ?」 「一度、完全に折れるのも一つの修行でしょう。締めは先生とやらがやってくれるでしょうし――」 「――ま、あの手の世の中舐めた子って一度痛い目見た方が良いとは思うけどね。変な後始末が回ってこない事を祈るわ」 本日の師匠、琉架と京の一幕。両者共に『一度折れてしまえ』というのは共通しているらしい。 「ところで、今日の昼食は?」 「‥‥肉よ」 「桜さんは、何処から骨付き肉を持ってきてるんですかね‥‥」 「彼女と桜花様以外、そろそろ厳しくなってるのよね‥‥」 そう。都へ帰っての夕飯以外、ここ二日間の食事は全て骨付き肉。野菜も食えと言われても桜は野菜が大嫌い。例え志体持ちでも胸焼けぐらいはするのである。 ●三日目 最終日、午前。 依頼主の青年は岩場に居た。本来の予定は採石場だったらしいが、こんな脈絡の無い行為を行うのに真面目に日々働いている方々の仕事を邪魔するわけにはいかない。まあ、適当な崖があれば最悪どこでも構いはしないのである。 青年の片足は、崖下に打たれた杭に繋がれた縄に捕えられている。 「そういった次第で、都合二日間で作り上げた岩っぽい何か(素材、その辺の塵やら土)を全て避けるのです!!」 崖の上から問答無用、伊也が初日からせっせと作っていたものを投げ落す。片手で持ち上げられる程に軽いが、岩を模しただけあり大きさはそれなりにある。そんなものが真上から降ってくれば、やはり逃げ回るのが人の習性。 「おおおおおおおお??!!」 良い感じに逃げ回る依頼主。逃げ足だけは三日目までに格段に上達している。 「逃げはあらゆる局面での必殺技アルよー」 同じく崖の上から飛鈴。言っている事は一面の真理を突いているが、割とどうでも良い感じである。 「お腹いっぱいなので寝るのです」 「お昼寝には丁度良い天気ですねぇ」 桜、沙羅、今はまだ午前中だ。 「んー、このお肉持って帰って良いですか?」 桜花は今後の食糧確保に余念が無い。 「明日には先生とやらが戻ってくるそうですし、完全に潰しては駄目ですよ」 少し離れた所で状況を見守る京。やるべき事は終わったと、彼も割とのんびりしている。 「ただ逃げ回るなら犬猫でも出来るわよ。回避に必要なのはまず見る事、後に繋がらない逃げをしてどうするのかしら?」 此方は初日から容赦の無い琉架。悪気は無く素でやっている辺りが彼女の怖い所。 「良い声です、その叫びがここまでに教わった必殺技の精度を高めるのです! これで最後――『岩っぽい何か・終の型』!」 ここまで全て逃げ切っている青年に向け、とっておきを投下する伊也。大きさは今までの倍。どうやって固めたとか材料どうしたとか尋ねてはいけない。 投下後一分――崖下から物音がしない。はて、と伊也が首を捻り覗いてみると 「あ」 最終兵器に押し潰され、依頼主がもがいていた。 ●課題提出の日 何か色々間違っているような気がする三日間が終了し、先生が戻る日の道場。 「やー、何か生まれ変わった気がしますよ」 それでも徹底した前向きの恐るべき青年。こいつ、方向性を間違えなければとんでもない奴になるのでは、とか全員思っていた。 そんな感じで色々会話していると、道場の入口が開いて背の高い女性が入ってきた。きつめだが端正な顔立ち――これが先生だろう。片足が少々不自由そうであるが、姿勢は美しい。 「――事情は聴いた。ならば試してみようか」 開拓者達に驚いた様子も無く、にやりと笑う先生。実は、朝の内に伊也が彼女に手紙を出しておいたのだ。決闘状の予定だったのだが、考えてみると青年に覚えが無いと言われてしまうと問題が複雑になるので、単純な事情説明と試す事をお願いするに留めたのだ。 割に真面目な表情で頷き、木刀を構える青年。対する先生は、木刀は持っているものの構えらしい構えはしていない。だが、開拓者からすれば充分に攻撃的な姿勢であるのが見て取れた。 青年の叫びと共に木刀が先生へと振るわれる――三日間の成果か、僅かだが打ち込みは鋭くなっている。意外な成長に目を見張る先生だが、やはり場数が違う。炎が宿る事が無かった木刀は空しく空を切り、先生の木刀が態勢を崩した青年を―― 「‥‥ふむ」 ――打ち据える事は無かった。無茶苦茶な態勢だが、回避に成功した上に木刀を構え直すまでに。 「加減はしたが、きちんと避けるとは――彼らに感謝するべきだな。逃げれないそして怖がれない者に刀を握る資格は無い」 似たような事を初日から言われていた青年は、満面の笑顔。必殺技云々はもう忘れているようだ。 「だが――」 構えを変える先生。木刀を肩より上、一直線横。 「――まだまだ足りんよ」 一足、踏み出した勢いそのままに木刀を一突き。開拓者にも中々出せない速度、正確性――片足が不自由とは思えないその一撃は正確に青年の額を打ち抜き、彼の意識を綺麗に刈り取っていた。 「これが、私の『必殺技』になるのか。只の突き――されど突き。妙な名前も派手なさも無い――日々繰り返した基礎に全て返る。見込みはあるのだ。彼らの行為を無駄にしない為にも、忘れるな」 そして―― 「門下生の教育、感謝致します」 居住まい正しく頭を下げる先生。一同、思ったよりはまともな結果に戸惑っている最中。 「まあ、結果良ければ全て良しですのような‥‥」 「うちの教えた事、後で実践するかもしれませんよ?」 「わたくしが教えたのも‥‥見事に習得してくれましたけど」 肉を食べ続けた桜、性的な意味で特訓した沙羅と桜花。特に後者は色々な意味で影響が大きい。 「手紙に書いてありましたが、中々面白い事を教えてくれたようで。今度、やってみるよう言ってみます」 良いのか、それ? 一同の心配を余所に先生は割に楽しげ。何だかんだで、青年の馬鹿さ加減を気に入っているのだろうか。 「あの犬達にも感謝するヨロシ」 「岩っぽい何かが役に立って何よりです」 伊也と飛鈴は満足顔。遊ぶだけ遊んで結果もそれなりなら、言う事は無い。 「見事な突き――志体が無くともあれほどのものが出せるなら、私も負けてはいられませんね」 昏倒中の青年よりも、先生の刀技に感心する京。 「あの子には変化するきっかけが必要だったのですよ。才能云々とよく言っていましたが、実の所的外れでもない」 だから、妙な課題を押し付けたという事か。 「それで、アレの想いは気付いているのでしょう? どうなさるの?」 最後に琉架の問い掛け。それに対し先生はにやりと笑い 「私が二か月も居なくなった訳ですが‥‥実家でお見合いをしてきたのですよ」 成程――見事なまでにオチていた。 |