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■オープニング本文 ●港にて 何時もの様に開拓者が自分の朋友を引き連れて依頼に行く。 行っては戻り、行っては戻り‥‥。 当たり前といえば当たり前であるが、そんなことを繰り返していればまともな生き物であればストレスは溜まるものである。 ついに‥‥と言うか、今まで無かったのが不思議なくらいだが港にいる朋友と言う朋友がボイコットし始めた。 依頼以外にも貨物の運搬等にも活躍している龍は特に酷く反抗している。 『たまには休ませろ!』 龍のそんな眼差しがひしひしと伝わるほどにぎらついている。 考えても見れば港にいる間には自由といえる程自由ではない、何しろ大きさが大きさであり、逃げたら逃げたで大問題、うっかり「逃げられました」なんて言えるほど安いものでもない。 そんな朋友の恨み辛みの詰まった視線を投げかけられて、一唸り。 ‥‥苦渋の策で「放牧」をする事になった。 ●とある平原にて 宝珠の力と監視員をつけることによって実現した一時的な「放牧」計画。港の関係者は涙を流しながら請求書を受け取ったとかなんとか‥‥。 それなりに広い土地を丸々使ってのかなり大掛かりな計画になってしまったが、港を破壊させられるよりは全然ましと言う事だろうか。 ‥‥そんなこんなで出来てしまったこの場所。 貴方達はここの噂を聞いてのんびりと朋友の疲れとストレスを癒す為にやってきたのだった。 |
■参加者一覧
シエラ・ダグラス(ia4429)
20歳・女・砂
露羽(ia5413)
23歳・男・シ
ルーティア(ia8760)
16歳・女・陰
赤鈴 大左衛門(ia9854)
18歳・男・志
ザザ・デュブルデュー(ib0034)
26歳・女・騎
久悠(ib2432)
28歳・女・弓 |
■リプレイ本文 ●朋友の休日 ぞろぞろと港の関係者一同が涙を流した放牧場へと自分の朋友を連れて行く開拓者が見えてくる。 一人目は白い巨躯の龍と楽しそうに歩いているシエラ・ダグラス(ia4429)。 姉と弟のような感じに話しながら受付の方へと歩いてくる。 「今日は一人で思う存分遊んできなさい」 ゆっくり肌を撫でながらそういうといやいやというかの如く首を振るパティ。 とは言え、きてしまったものはしょうがない 「そろそろ姉離れしなさい、んじゃ、いってらっしゃい」 お尻のほうをぺしぺしと叩くと、ため息を付かん限りの顔をして放牧地へと飛び去っていく。それを見届けたシエラは受付から少し離れたところへいき。 「とは言え、私も弟離れできていませんね‥‥っと」 がさがさと茂みを抜け、放牧地へ潜入‥‥とはいかなかった。 「お客さん、困るんですよ、こういうことされちゃ」 腕っ節のよさそうな日焼けをした体と白い歯が特徴な港の関係者が二人目の前にいる。 「ここは朋友専用なんでね、特例とかもないんで」 両脇をがっしりと掴まれて、あっさりと放り出されるシエラ。 彼女が「パティィィィ!!」と大きく叫んでいるのは悲痛としかいえない。 二人目は久悠(ib2432)と自身の朋友、白月とともに受付にやってくる。 白月は早く空を飛びたいのかきょろきょろと辺りを見回している。 「あんまり迷惑を掛けないでな」 そういいながら一緒に入ろうとすると、やはり止められる。 「え、人はダメなんですか?」 うんうんと頷きながら、久悠を通せんぼ。それを見た瞬間に飛び出す白月。 他の開拓者の朋友が当たり前にいるうえに、よく見れば人はいない。 「夕方には連れ戻しますので、どこかでのんびりしていてください」 日焼けした肌と白い肌を見せる関係者にとっとと突っ返される。 ‥‥あぁ、どうしよう。 三人目、ザザ・デュブルデュー(ib0034)がイフィジェニィをつれてやってくる。 脇には玩具を持っているのできっと一緒に入る気なのだろうと、関係者はまたため息を付きながら、手続きを済ませ、中に入ろうとするザザを止める。 「‥‥お客さん、悪いんですが人はダメなんですよ」 真っ黒な禿頭にうっすら血管が浮き始めている。 「あの、少しぐらい‥‥」 「あちらの茶屋でのんびりとしていてください」 しょうがない、という顔をしながらイフィジェニィに竹で作った球を渡す。 イフィジェニィはしばし悩んだ後に球を尻尾でぽんぽんと飛ばしながら奥へと行く。 それを見送り、ため息を少々ついてから茶屋でのんびりとするのだった。 頭痛のし始めた関係者をよそに、四人目となる露羽(ia5413)、黒霧丸がやってくる。 きっちりとした忍犬の為かぴしっとしている。 手早く手続きを済ませ、黒霧丸に一声かける。 「好きに遊んできなさい、今日は特別ですよ」 「なでなで」と言いながら黒霧丸の頭を撫でるが、黒霧丸はというと「どうしようか」と首をかしげている。 「お客さん、忍犬ぐらいなら向こうで遊べますが」 ぴっと指差すところには、本当に小さな空き地‥‥というよりは資材置き場だろう。そこが多少空いているので使えるというが。 「ちょっと、狭いですね」 苦笑しながら正直に答える。仕方がないのでしゃがみこんで黒霧丸に話しかけ。 「のんびりしてくればいいのよ?」 ふっと笑いかけると、意図を汲んだのか、とてとてと走り出していく。 「いってらっしゃい」 そう言われて、返事をしたのか一吼えし、放牧地へといくのだった。 五人目の開拓者、ルーティア(ia8760)がフォートレスに乗りながらやってくる。 此方も早速といわんばかりに受付を済ませ中に入ろうとするが、案の定止められる。 「何で!?どーして!?」 色々と文句をいいながら、関係者に詰め寄る。 ストレスが溜まり始めているのは関係者かもしれない。 まったくと言っていいほど先程と同じような台詞をルーティアに言うと、両脇をがっちりと押さえ込まれて茶屋に連行されていく。 その光景をフォートレスは唖然と見ていたが、「しょうがないな」と言い聞かせるように心の中で呟くと、一羽ばたき。空へと向かうのだった。 最後になる開拓者がやってきた‥‥と思われたがやってきたのは一つの文を加えた猫又、にゃんこ師匠だった。そしてその文には赤鈴 大左衛門(ia9854)がしっかりとした字で「よろしくお願いします」と書かれている。 飼い主はと言うと、ここの事を伝えて、後はお留守番らしい。 何ともしっかりとした猫又なのだろうか、と関係者は文を読み進めていく。 特に問題もなく、のんびりと気ままにしてやってくれと書かれていたのであっさりとにゃんこ師匠を中に通す。 師匠は満足そうに「にゃん」と鳴くと、雄雄しく平原へと駆け出していくのだった。 ●各々の過ごし方 とてとてと平原を走っていくのは黒霧丸。 久しぶりに主人と一緒ではなく一人で自由に走っている。のが、意外と大変だ。 『さて、何をしようかな』 好きにしろとは言われたがどうも自由なのが馴染めないのかいまだに『うむぅ』と悩んでいる。取りあえず遊具はそこらに転がっているので遊ぼうと思えば遊べる、温泉に入ろうと思えばちょっと歩けばすぐ向こうに湯気が見える。 だが、やはり自由と言うのはなれないものだ、そう呟きながらてこてこと歩いている。そうすると、向こう側から球をぽんぽんと上に飛ばしながら近づいていくるのが一匹。イフィジェニィだ。 ‥‥取りあえず受け取ったこの竹製の球を跳ねるのは中々に楽しいが、どうも退屈でしょうがない。それでも折角作ってもらった物、遊ばないわけにはいかない。ぽんぽんと尻尾でうまく落ちないように何度も放り上げるさまは流石というべきだろう。 して、目の前にいる黒霧丸を眺める。いかにも退屈そう。 『退屈そうだな』 『自由なのは慣れなくて』 双方、唸りながらじっと見つめる。 そして不意に竹の球を黒霧丸へとぺしっと、叩き付けるように飛ばす。 それを確認すると、跳躍し一回転、イフィジェニィへと回転を利用してたたき返す。たたきつけられた衝撃で軽く変形した竹の球が戻ってくるのを確認すると、楽しそうに尻尾で打ち返す。傍から見ればかなり楽しそうに打ち合いをしている二匹。実際に二匹は楽しく竹の球で遊び続けている。 際どい球が来れば翼を使ったり、忍法を使ったりと人間以上に派手に遊んでいる。 そうしていると派手に打ちあってるせいで竹の球が遂には破裂してしまう。 『む、中々やるな』 イフィジェニィが破裂した竹の球を眺めながらそういう。 『久しぶりに楽しい遊びだった』 そういうと黒霧丸も一息ついて竹の球を見やる。 『疲れたし、温泉でもいかないか?』 『ん、そうしよう』 何とも変な組み合わせではあるが、遊んでいるうちに仲良くなったようだ。 のんびりと温泉にいくと二匹とも、目を細めてゆったりとお湯に浸かる。 久しぶりの温泉と、一匹でいるというのがあってかとてもゆったりと疲れを癒すのだった。 此方はフォートレス、主人もいないためかかなりのんびりと翼を広げて滑空をする。 先程別れた時にかなり落ち込んでいるようだったので、戻ったら空の一つでも見せてやらねば、と思いながら一匹でいるのを堪能する。 思えば自分は大事にされているんだなぁ、と改めて思う。 確かに依頼がないときは港で待ってはいるが、それでも様子を見に着たり、お土産といいながらお菓子をもってきたりと、色々してくれている。 今回もそうだ、個人的にはあまり疲れてもストレスもないといえばない。 何が一番かと言うとそうやって心配してくれているのが何よりも嬉しい。 ‥‥だから今日は目一杯楽しもう、そう思いもう一度空へと上がっていくのだった。 そして白月とパティ。 パティはきっとシエラが此処にきていると思っていた。 なので辺りをくまなく探しに探し回ったが、全くもっていない。 勿論シエラは日焼けマッチョに連行されて近くの茶屋で大人しくしている。 (何度か脱走を計り、そのつど連行されたのは言うまでもないが) と、言うわけで探している最中に丁度白月とであった。 パティはそんなこんなで忙しいわけだったが、白月が好奇心旺盛にパティに絡んできた。 勿論それを無視して、シエラを求めて散々飛びまわった。 そしてそれを追走してくる白月。 気性も荒く、尚且つ姉代わりのシエラもいない、切れるには十分すぎる程だった。 しかし、そこは流石に暴れられないのを悟っている。仕方がないので空にあがり、一気に突き放しにかかる。そうすると相手も同じように空に上がってくる。どうやら本気で相手をしなければいけない、両者そう瞬時に思い込むと。我先にと前に出るべく、加速する。下にいる他の朋友はそれをやんややんやといいながら眺めて楽しんでいる。何だかんだで平和なひと時。 『邪魔するな、忙しいんだ!』 『そんなこと言わずに相手してくれよ』 なんて会話をしながら異常な速度で空を飛び続ける。なんだかんだで楽しそうなのは、やはり開放的だからだろう。とは言え、本気の勝負に発展し始めている。 いい加減こいつを突き放さないと後々面倒になる。 確実にそう思い始めたパティはさらに加速し、白月を突き放す。 が、やはりそれも楽しそうに追いかける白月。 『この、邪魔者め!』 得意のソニックブームを放とうにもあいにく暴走防止に活性化されていない。苦虫を噛んだような顔と、お節介の姉めと言う感じにイライラが募り始めた。 こうなれば、こいつでストレスを発散せねば、と一気に反転し、一撃を加えにいき始める。 すれ違い様に一撃を与え、白月を落としたに見えた。 が、やられた本人は楽しそうに地面へと着地すると、ごろごろと寝転がり始める。 どうやら遊んでもらえたと思ったのか満足した様子である。 パティもそんなのを見れば肩の力が抜けて、ふぅと一息。たまには姉離れをして、楽しむとしよう。そう思い始め、捜索をやめ、空へと一気に上がっていく。たまにはこの大空を自由に堪能しよう、そう思って、色々な空中技をしていく。 にゃんこ師匠は一人のんびりと遊休を過ごしている。 いつもは大左衛門の師匠として振舞って入るが、ここではただの猫又。 一匹の猫又として過ごす。 『やはり野はいいものだ、若い頃を思い出す』 颯爽と草原を走りぬけ、之までの事を思い出す。 昔は本能のまま駆け抜けていたが、今は一人の男が気になってしょうがない。 随分俺も毒された物だと、自分を笑うかのように言うが、悪い気はしない。 寧ろそれが運命だったのかもしれない。そんな事を思いながら平原を駆け抜ける一陣の風となり、自由に、気ままに楽しむのだった。・・・・だが、何か物足りない、何時も叱責してるのがいないとどうも調子が狂う。 『ふふ、俺も甘くなってしまったものだ』 のんびりとした弟子の事を思い出すと、早々にここから戻り爪の痕でも一つつけてやろう、と思い始める。何でか知らないが、そんな気分になる。 ●寂しがりやは誰? 夕方になり、朋友達が戻ってくる。 一人はしっかりと抱き合い、涙を流しながら再会を祝ったり。一人はどうだった?と聞いたり。またある人は朋友のご飯をのんびりと作りながら帰宅をまったり‥‥。 各々の朋友も何だかんだで憑き物が取れたような顔やら、逆に疲れたような顔をしているが、どれも満足そうにしている。 「何もしてないよね?」 シエラがパティを抱締めながらそういい続けている。ちょっとだけ先に姉離れが出来たパティだった。 此方は此方で黒霧丸とイフィジェニィが仲良くして、主人をそっちのけに話している。こういう友情もあるものだなぁ、と皆が感心してみているが、本人達には関係のないことだ。 此方のフォートレスは主人を抱きかかえて背中に乗せる。 何だかんだで何時も世話になってるなぁ、と改めて実感したせいか、いつもよりふんわりと飛び上がる。 白月はもう少し遊ばせろと駄々をこねるような子供のように放牧地を眺める。 また、ごろごろとしてのんびり過ごせたらと思い、渋々帰宅する。 師匠はというと、あまりにも退屈だったせいか、先に帰って弟子の顔に爪を立てている。 だが、そんな日常が好きだというのが今回の件で分かり、内心楽しそうにする。 各々の反応を眺めてから、此方では。 「取りあえず、今回は成功してよかった・・・」 そう安堵の息を漏らす港の面々であった。 |