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■オープニング本文 ●とある山中 下衆な笑い声をあげながら松明を振りかざして村を焼き払う。 「女子供は人質だ、片っ端から捕まえとけ!」 また一つ家屋を燃やしながら抜いた刀で指し示す。松明と刀を振り回しげらげらと笑いあげる。 燃やしていない家屋の扉を蹴破り、中に入ってからぐるりと見回す。 奥でがたがたと震えている女性が一人、そしてその前で火縄銃を構えている男性が一人。 その様子をまたげらげら笑う。その直後に銃声が響く。正眼で構えた刀から硝煙が軽く出ている。 「火縄銃‥‥んー、いいねいいね、手軽に人を殺せる技術も糞もない、しっかり握って銃口を向けて引き金を引くだけ、刀なんかより全然いい」 慌てて火薬と鉛玉を込めている男に近づいて一振り。返り血を浴びてまた下衆な笑いをあげる。その後悲鳴を上げている女を縛り上げる。 そして銃声を聞いた部下がそれを回収していく。 「頭、これで全部のようですが、残りは?」 「あ?男と老人は殺せ、そうだ忘れていた、身代金要求しなきゃなぁ?」 「はぁ?奪うもん全部奪いましぜ?」 「搾り取れるもんは全部絞りとる、人間生きている間に贅沢しないとダメだろぉ!!」 アホな質問をした自分の部下を蹴り飛ばす。これだから馬鹿はと溜息を付いている。 「今の世の中なぁ、頭を使うのが常識なんだよぉ!!」 「げほっ、えほっ‥‥すいません‥‥お‥‥」 振り向き様に刀を一閃し首を跳ね飛ばす。 「これだから馬鹿は嫌いなんだよぉ、名前を言うとやりにくくなんだろ、愚図が!」 死体を蹴り飛ばしてから唾を吐き捨てる。 「戻るぞ、残した男はそうだな、ぎりぎり生きてるぐらいにしとけよぉ?」 下衆な笑いを響かせながらげらげらと笑い続ける。 ●開拓者ギルド 肘をついて頭を抱えている夢がイライラしながら報告を聞いている。 被害状況を聞きながら何度も唸りを上げる。 「こういう頭のいい野盗ってのは相手するのが難しいのよね‥‥」 事件の報告書を眺めながら唸り続ける、どう対策したものかを。 「身代金の要求で人質を解放ね‥‥ご立派に此方の受け渡し人数と条件、いやにがっちりしてるわね‥‥」 生き延びたという男もつい先刻死んだ報告も受けた、何から何まで向こうの思惑通り進んでいる。 ご丁寧にも誰が頭か、名前すらも明かしていない。 机をとんとん叩きながらどうするか考える。煙管を吹かして机を何度か叩いてから立ち上がる。 「しょうがない‥‥昔のツテをあてにするか‥‥おい、そこの机の依頼書張っておけ」 上着を着込むといつもより真面目な顔をして外にでていく。 私?みたいな顔をしているギルド員がしぶしぶ机に置いてある依頼書を張り出す。 |
■参加者一覧
アルバルク(ib6635)
38歳・男・砂
雨傘 伝質郎(ib7543)
28歳・男・吟
破軍(ib8103)
19歳・男・サ
イデア・シュウ(ib9551)
20歳・女・騎
イグニート(ic0539)
20歳・男・サ |
■リプレイ本文 ●開拓者ギルドにて 報告書と目の前にいる開拓者を見てから大きくため息を付いて煙管を一吹かし。 誰一人として夢に目線を合わせる事はしない。 返り血やら自分の血、怪我等でぼろぼろになっているのを見ればわかりきる事だが。 「一応ね、ギルドとして正式な依頼だったわけよ、少しでも生存者がいれば御の字ぐらいで考えていたの」 ばさっと報告書を机に置いてからまた溜息一つ。 「人質は全滅、野盗はどうなったかさっぱり、死体は全部アヤカシに食われて骨すら残ってない、男と女の区別もできなきゃ誰が誰で、どう死んだかも全くわからない」 ばしっと報告書を叩いて。 「まあ、終わった事はいいわ、で、どういう事か説明して頂戴。あんた達を連行して牢屋にぶち込まないだけありがたいと思いながらね」 それを聞いてばつの悪そうな顔をしつつまた目を逸らす開拓者。 「報告までするのが仕事よ」 そして開拓者が重苦しくその口を開いていく。 ●時は遡り 目標である野盗の砦前に軽く文句を言いつつ身代金でもある食料と金銭を運んでいく破軍(ib8103)、事前の用意として金銭はすべて小銭に、さらに二重蓋の箱の底に武器を隠し、焙烙玉も底に仕込んでおく。 「随分と手癖の悪い連中のようだな」 「面倒くさい、砦に入れるなら何でも良いだろう」 イグニート(ic0539)も自分の鎧を台車の下に仕込んでから荷物の中に潜り込んで大人しくし始める。 「他の連中がどう動いているか分からないのが問題だな」 砦の裏手ではアルバルク(ib6635)、雨傘 伝質郎(ib7543)が準備をしている。 「へへへ、あっしとしてはこういう屑な連中は嫌いじゃありませんぜ?」 「面倒な事には変わりないがな、命を粗末にする連中で集まっているのが心配だが」 くっくと笑いながら雨傘が別れつつ、一言。 「ま、奴らには三途の川の渡し賃としては多すぎですぜ」 そういうとアルバルクとは別の方に進んでいく。 こちらもため息を付きつつ、辺りの地形を把握し始める。茂みの中から物見の位置を確しつつ狙撃位置を吟味していく。 また、別の茂みの中ではイデア・シュウ(ib9551)が剣を握り締めてから一呼吸、自分が信じていた修羅の世界が垣間見える事で内心うれしく思う。‥‥今まで生きた人間は斬ってないが、練習は積み重ねてきた。ここで一つ、自分を変える為にも狂気を植え付ける為にも。次第に剣を握る力が込められるのを感じながらじっくりと機会をうかがっていく。 また暫くして、扉の前門へと破軍が台車を引っ張ってから立ち止まる。 物見から此方を確認した賊が一度引っ込むと数人が顔を出してくる。 「結構遅いじゃねーかぁ‥‥って、おいおい、一番初めに言われた事もわかんねーのか、この馬鹿はよぉ!」 どうみても下っ端の奴が物見の上から叫びをあげる。上下の関係はしっかりとあるというか、恐怖政治のようなものだ。自分で決めた規律に従わなければ、いう事に従わなければあの世行き、人間自分の命は惜しいものだ。 「荷物をばらせよお、一つずつ確認できねーと、入れねえっていったろーがぁ!」 銃声が響くと破軍の足元に一発銃弾が撃ち込まれる。破軍が舌打ちをしながら荷物を一つずつみせていく。それを見ながらも後ろでは何かの指示を受けているようだった。しばらくしてから正門が開かれて中に入れるようになる。素直に台車を押して中に入り、すぐ門は閉められる。 「この重量物をてめえらが運べるのか?」 「頭おかしーんじゃねえのか?こっちに指示できる程てめえは上じゃねえだろうが!」 そういわれつつも、指定された場所で立ち止まる。辺りをぐるりと見回して頭を探すが、それらしいのは特に見当たらない、自分がやられれば瓦解するというのも把握し、おいそれと前には出てこない。 「おい、荷物を下ろせよ、てめえが下って事をわかってねーんじゃねえのかぁ?」 一定の距離から見下ろしたまま様子を伺う野盗。荷物を下ろしている最中に結局イグニートも見つかる。当たり前と言えば当たり前だが、暴れようにも暴れられない。 「おーおー、どこの馬鹿が考えたかしらねーが、舐めているのか?」 奥から数人の人質が連れてこられると、こめかみに銃口を当てる野盗。 「恨むならあそこの馬鹿共をうらめよ?」 その直後、銃声と共に脳症と血を辺り一面にまき散らし、首から上が無くなった人質が倒れ込む、勿論それをみた他の人質が叫びをあげるがすぐにその声も抑えられ。 「うるせえと、お前もこうするぞ?」 そういうと声を押し殺して黙り込む人質、そして銃声を聞いたせいで他の開拓者が動き始める。 「さて、こっちも始めるか」 アルバルクが銃声を聞いてから物見を狙撃し始める。戦陣「砂狼」、ダナブ・アサドを使い、じっくりと物見で様子を伺っている奴に一撃。銃声と共に物見が驚き辺りを見回す。下からの撃ちおろし、射程もある状態であっさりと当たるわけもなく、2発目でやっと肩口に一撃、舌打ちをしながらすぐに次弾を込めながら様子を伺う、とは言え馬鹿でかい銃声を響かせた上に、物見の狙撃も成功とも言えず、もたつきが見られる。 「流石に柵があっちゃ声は届かないですなぁ?」 すぐに作戦を変えて、怪の遠吠えを奏でていく。音は聞こえないが遠くでアヤカシが鳴いている。音に反応してこちらに向かっているようだ。ついでに野盗が殺した人質を探してみるが、あくまで無駄な危険を冒すという事はしないようで其の辺りの処理は確実に行っている。とはいえ先ほどから砦の中から血の匂いは漂ってくる。そちらに釣られてアヤカシがやってくるだろうと思いつつ、合掌。 「ちっ‥‥手間がかかる‥‥!」 イデアが柵をよじ登りながらアルバルク達がいる方に目を向ける。二度目の銃声が響いた方に注意が回っている様でその隙にするりと潜入する。すぐさま家屋の陰に隠れてから剣を握りしめて辺りを見回す。騒ぎを聞きつけた野盗の一人を通り際に一閃。肉と骨の断裂感が手に伝わる。そして自分のやった行為と感触に身震いする。アヤカシを何度も倒してきたとはいえ、人相手だとまた感覚は違ってくる。目の前に真っ赤になった死体と剣を握ってからまた次の相手を探し始める。 「くそ、面倒くさいな、本当に!」 イグニートが野盗の一人を斬り伏せながら、ぜいぜいと肩で息をしながら戦闘を続けている。破軍も同じく隣で戦闘をしているが、焙烙玉の手段を講じようにも自分の近くで爆裂させるわけにもいかず結局何から何まで作戦は破綻、結果総力戦に移り変わる。ただの力押し、人数が均等で、群れる相手なら楽だったろうが、今回の野盗は違う。戦闘の仕方もしっかりとした規律と、法則に従って戦闘をするのでやりにくい。 「正直、開拓者ってのも馬鹿になったねぇ、時代は頭を使うんだよ、ばーかぁ!」 頭と思われる物が人質を斬り、それをイグニートと破軍の方へと蹴り飛ばす。すぐさま反応してその人質をもう一度斬り伏せてから視線をあげる。 「人質が死のうが俺には関係ねぇな」 破軍が笑みを浮かべながらそういう。勿論そんな事知っていると言わんばかりに次の人質が蹴り飛ばされ、それを斬り伏せていく。その間にも野盗が向かってくるのも対処していく。 「でもなぁ、残念だけどこっちの方が上手だったりするんだよぉ!」 野盗の数人がイグニートと破軍に斬られたのちにしがみつかれて動きを抑制される。 「俺は女が好きなんだよ!」 振りほどこうと野盗の死体を蹴り飛ばそうにも、先ほどの人質が足元に転がっているせいで邪魔になる。一言で言えばジリ貧だ。 動けなくなった二人を狙っている火縄持ちの野盗をイデアが一気に接近して斬り伏せる。初めての感覚を貪るようにまた次の野盗へと斬るところに邪魔が入る。志体持ちの野盗だ。 「女だが、童貞を捨てたのがさっきといった感じだなぁ」 ぶらりと刀を構えた野盗が続けざまに攻撃を繰り出す。それを盾で受け止めながらすぐに一閃。がりがりと金属の擦れる音を鳴らしながら距離を取る。 「ああ、待っていた、この不条理な世界を証明してくれる人間を!」 叩きつけるように剣を振りおろし、威圧しながら相手に迫る。 「もう俺たち野盗と変わらん、殺人者だよ!」 そばにいた他の野盗を盾にしてからそれごとイデアを貫いて押し込んでいく。生気の失った顔を眼前に野盗ごと柵に刀で貫かれるとふんと、軽く鼻で笑われてその場を去っていく。 「くそ、くそぉ!」 死体を振りほどきながら野盗の後ろ姿を眺めていく。 「アヤカシってのは血の方に行くとは言え、甘かったですかね」 周りに集まったアヤカシががんがんと柵を壊したり、雨傘の方へと向かってくる。 人数差があるのにわざわざ外へと出るわけもなく人質の悲鳴と断末魔、野盗の声に、仲間の声が聞こえるばかり、裏門を使ってまで外に出る必要はない、むしろ三人しかいない正面から出ていく方が楽だ。それに生きている餌が目の前にいるのにわざわざ遠い方にはいかない。雨傘自身に向かって来たアヤカシを撃退しつつ舌打ち。 「多少浅はかだったかね!」 物見の野盗を排除しつつ、向かって来たアヤカシに一撃。すぐに武器を持ち替えるが、その間にもこちらに容赦なく攻撃してくる。人質云々よりも今ここでやられれば元も子もない。 「くそ、下がるぞ、どうにもならん!」 「出てこないってのは、想定外でしたねぇ」 アヤカシを片づけながら下がっていく二人。 内部の三人はアヤカシがなだれ込んで来た騒ぎと同時に正門の辺りまで下がっている。既に目の前はアヤカシに食い殺された人質や野盗、自分たちが殺したものでごった返している。 正直なところどうなっているかもうわからない、何人殺して殺されて、誰がどう頭だったかもさっぱりわからない、一つだけ確かなのはここにいても自分たちが死ぬだけだ。 ある程度見切りをつけて撤退を始める。 ●そして現在に また煙管を吹かしてから大きく紫煙を吐きだして。 「大体の顛末は分かったわ‥‥ちっとも人質の事を考えてなかったって事ね」 ぎぃっと椅子にもたれてからもう一度開拓者を見渡して。 「ま、もういいわ‥‥後処理はするから帰っていいわよ」 しっしと払う様に開拓者を帰らせるときに、報酬金は渡さない。当たり前だろうという顔でもとに戻して。 「依頼を受けた以上、仕事はしっかりやってもらわないと困る。悪いがこの金は他の連中に回させてもらう」 そのまま渡すはずだった金を持って奥に引っ込んでいく夢。 残された開拓者はしばらく黙ったままだった。 |