支給品が
マスター名:如月 春
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/06/10 04:16



■オープニング本文

●どこかの街道にて
 春の陽気も麗らかな都沿いの街道。
 ごろごろと馬車が一台、荷台に荷物を積み上げながら都へと向かっていく。
 お届け先は万商店。毎日毎日配っている物をお届けするために、馬車に揺られて。
 直接的な言い方をすれば支給品です。沢山積み上げてる支給品。
 勿論開拓者には無料で配布ではあるが、盗賊にすれば豪華なもんである。
 そんなわけでひゃっはー!と言わんばかりに襲撃されてあっという間に支給品は盗まれました。

「命があるだけマシなんでしょうか」

 呆然としながらとりあえず、盗まれたことを報告しにいかないと、と言いながら馬車を進ませる。
 ‥‥というか特に慌てた様子もなかったりする。いつもの事ぐらいの感覚。

●開拓者ギルドにて
「支給品が盗まれたって?」
 目の前にいる商店の店員を眺めながら夢がいつも通り煙管をぷかぷかと吹かす。
 別に支給品の一つや二つ、いいじゃない。と思っていたのだが。
「開拓者に渡す分が根こそぎ持ってかれたって‥‥どんだけ間抜けなのよ」
 はぁ、すいませんと特に慌てた様子もない店員から話を聞きながら目撃情報やら、何を盗まれたのかと聞いていく。
 支給品丸ごとなのでかなりの数ではあるようだ。
「でも、まぁ‥‥よくよく考えてみれば支給品って食い物とか飲み物もあるのよね」
 実際に支給されている品物の一覧を見つめながらお腹をさする。
 梅干しやら握り飯やら味噌汁やら食い物ばっか見つめているのは気のせいではある。
「お腹すいたわねぇ‥‥で、お礼とか少しはいい物もらえるの?」
「あ、はい‥‥支給品の方から少し」
「んー‥‥ま、いっか。支給品ももらえるんだし、あんまし高い物はもらえないとおもうけど」
 そんな事をいいながらすらすらと依頼書にいつも通り適当な感じに書いていく。
 支給品の奪還依頼を。


■参加者一覧
紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454
18歳・女・泰
礼野 真夢紀(ia1144
10歳・女・巫
巳(ib6432
18歳・男・シ
斎宮 桜(ib8406
10歳・女・泰
正木 雪茂(ib9495
19歳・女・サ
香(ib9539
19歳・男・ジ


■リプレイ本文

●ギルドにて
 開拓者達六人が馬車やら縄やらを用意しつつ、夢と万商店の店員と話を進めている。
「こんにちは、今回もよろしくですー」
 相変わらず足元にもふらを連れた紗耶香・ソーヴィニオン(ia0454)が夢にお弁当を渡しつつ、挨拶をしている。足元のもふ龍はふんすこふんすこ鼻息を荒くしながら夢を警戒している。そんな夢は鼻歌を奏でながら貝しぐれのおむすびをさっそくほおばっている。
「‥‥いいなぁ‥‥」
 夢がほおばっているおにぎりを見つめて礼野 真夢紀(ia1144)が人差し指を口に当ててじーっと見つめている。その様子を見てから夢が近づいて、見せつけるように食べると頬を膨らませて嫉妬の眼差し。
「なぁに、やってんだか」
 大人げなくげらげら笑っている夢を煙管を吹かしつつ巳(ib6432)が見つめている。ぎゃーぎゃー言い合いしているのをへらへら見つめながら借りた馬車の上でのんびり。
「おー、足手まといにならないように頑張るぞー!」
 ちょっと離れたところでは斎宮 桜(ib8406)が、にゃーにゃー言いながら張り切っている。お仕置き、お仕置きと楽しそうに言っているのはちょっと怖い。
「こんなご時世とはいえ、盗みを働くとは許せぬ、絶対に成敗いたす!」
 ぎゅっと獲物を握りしめて固くなっている正木 雪茂(ib9495)、おにぎりを食べ終わった夢が耳に息を吹きかけるとにゃふっと声を上げて震えあがる。適度に力を抜けということだが、真っ赤になって怒っている。
「んで、その盗賊、どこらへんにでたん?」
 やる気のない声で店員に香(ib9539)が襲撃場所を聞いている。特に大した遠くもない少しだけ都から離れた普通の街道で茂みから現れたとのこと。少しやつれていたのもあるので食うのに困っている感じらしい。

 とりあえず準備をして、馬車と荒縄、ついでにもふ龍が勝手に荷車をひいている。とりあえず馬車をなくしたり壊したりすると弁償しなければならないので取扱注意とのことだったので特に苦労もなく準備完了。ついでに礼野が馬車の荷台に布をかぶせて一種の隠蔽をしつつ、用意を進める。
「あ、その奪われた支給品って、万商店とかに流してないんですかね?」
「さー、どうでしょう‥‥あまり高価なものは別手段で運びますし‥‥」
 それに高いものをあんなふうには‥‥と小さくつぶやいているのはさすがに気が付かなかったようだが、ふむーっと考え込む。
「はーい!どの辺で盗まれて、どっちのほうにいきましたー?」
 斎宮が手を挙げて質問、向こうの町から都だから、ちょうど左手のほうの茂みから現れてそのまま同じ方向に取って返していったと。
「しからば目撃情報等は?」
「んんー‥‥なんにせよ盗賊騒ぎなんて日常茶飯事ですから‥‥」
 つまり現行犯を追いかけて吐き出したほうが早いってことだ。
「んまー、言ってみりゃわかるってこった。ほーれ、日の暮れないうちにさっさといってこいやー」
 けぷーっとおにぎりを食べきった夢に見送られて開拓者たちが出発していく。
 そんな中、店員の眼鏡が怪しく光っていたり。


●街道にて
 春の陽気から夏の陽気に変わり始めているこのうららかな街道を開拓者がごとごと、馬車を歩かせる。ついでに足元のもふ龍もふもふもいいながらついてきている。ついでに正木もいかづちに乗りながら同伴する。そんなこんなで道行く人に色々と話を聞いていく。
「そこの道行くあんちゃん、この辺で盗みとかしちょる奴らのことしらへん?」
「この辺…特に話も聞かないし、雑魚なんだろう」
 止まりながらも腿をあげて絶えず動いているやけにふてぶてしい男性が考え込む。とくに聞いたこともない様子でじっくりと考え込み。
「盗賊の一つや二つ、いまどき珍しくもないしな」
そういうと走り去っていく。確かになぁとか言いながら頭を掻きつつ溜息。
「裏通りなんてのもまったくないか‥‥」
 巳も溜息を吐きながら戻ってくる。裏通り事態まったくないので情報が皆無、ついでに言えばやっぱり雑魚なので度外視されているようだ。
「お弁当とか持ってきたらよかったかもしれませんねぇ」
 足元のもふ龍にそんなことを言いながら陽気を楽しむ紗耶香。すかさず反応するのは礼野で、小さくお弁当とつぶやいている。斎宮も道行く人に尋ねていくが、特にこれといった情報なし。うにゃーっと頭を傾げながら考え込む‥‥が、よくよく考えてみればこんなところで支給品奪っていくんだからやっぱりそこまでの相手じゃないかな、と。

 そんな風にまったりとしていると茂みから盗賊が現れる。そしてお決まりの台詞を言うと‥‥。
「ひゃっはー!そこの馬車!荷物を降ろして‥‥」
 数人の盗賊が現れると同時に待っていましたと言わんばかりの勢いで斎宮、正木、香が飛び出して強襲、開拓者が一般人を殴れば、悪ければ死ぬが手加減すればでかいたんこぶ程度で済むのが救いだろう。
 顔面ぼこぼこにしてはれまくって完全に戦意喪失しているのを楽しそうに縛っている斎宮がぎゅぎゅっと縛ってーとか言っている。
「動いたらさすで?しょーじきにアジトの場所、はきんしゃい」
 喉元に短刀を突き付けながら笑顔で尋ねる。こんな雑魚に自尊心なんてものはないのであっさりと吐く。店員が言っていた通り茂みから出てきた方向に進めばすぐに見つかるとのこと。
「‥‥確かにあっちだな」
 巳が超越聴覚で聞き出した場所に向かって耳を立てる。確かに数人いる声が聞こえてくる。とりあえず捕まえた盗賊はもふ龍の荷台といかづちが見張り、開拓者たちはアジトのある方向へと歩みを進めていく。

 街道から少し離れた森の中、大体歩いて十分くらいのところだろうか。小さい集落があり。そこに盗賊がわんさかといる。とりあえず足元やら火元に食料が転がっているので支給品の食べ物はきっと全滅しているだろう。
「とりあえずさくっと倒してしまいましょう」
 遠距離から力の歪みと白霊弾での強襲、当たり所が悪いと即死しかねないが、そこは加減をして死なない程度に。
「よく群れてるもんだな」
 逃げ道にまきびしを撒いてから正面突破、手ごろな盗賊を峰うちで一撃。気絶したのを確認してからごすごすと峰うちを連打。
「お仕置きはちゃんとしないとね?」
 また違う方向では盗賊を殴っては蹴り、殴っては蹴り、ぼろ雑巾のようになった盗賊を量産している。何ともご愁傷様としか言えない。
 そして逃げ始めた盗賊の足を荒縄でひっかけて遊んでいる香、戦闘というか楽してお金もらいたいだけだろう。けらけらと転んだ盗賊を笑いながら次の獲物を見つけにいく。
「悪いが成敗させてもらうぞ!」
 ひゅんひゅんと方天戟「無右」を振り回してこちらも殲滅を開始する。肋骨の一本や二本、ついでに腕やら足やら折れても命まではとらないのでしっかりと殴っては器用にまとめていく。
 そんなこんなで制圧戦。開拓者がちょっと本気を出せばあっという間に制圧されていくもんである。ぼこぼこと殴られるわ、蹴られるわ、古銭をぶつけられるわ、槍でひっぱたかれるわと散々な盗賊たち、こっそりと紗耶香が荒縄で縛りつつ。馬車のほうへと引きずっていく。
「大変だと思ったら案外あっさりでしたねー‥‥こうまで理想的だとは‥‥」
 馬車の荷台ともふ龍の荷台にのせては戻って盗賊を連れて‥‥。
 あっという間に終わります。むしろこんな連中に苦戦するほうが問題なのだが。


●まさに外道
 しばらくして、ぼこぼこにされたあげく縄で縛られて荷台に転がされている盗賊十数人。開拓者がちょこっと本気だせば簡単な話で、むしろ弱いものいじめとも言われてもおかしくないくらいの勢いだったのは笑話だが。とにかく短時間で制圧された上にあっさりと降伏。情けないというか、自尊心がなさすぎるというか。
「おーし、ご苦労さん、あとはこいつら回収してもらって終わりだわ」
 夢が煙管を吹かしつつ、ギルドのほうから歩いていく、ついでに店員も取り戻してきた支給品を馬車から降ろして表と見比べて損失を計算し始めている。
「それなりに残っていますね‥‥まぁ、命があれば御の字と考えればいいんでしょうか」
 もふ龍を撫でつつ、荷馬車を離してやる。疲れたもふーっと言いながらころころしている。
「それなりに人数がいたのは驚きであったが」
 傷が深めな盗賊の手当てをしながら正木が捕まえた人数を数えて溜息。一応奉行所まで連れて行こうと思っていたのだが、夢が手配してくれたので楽になった。いかづちも嘶きながらさりげなく逃げ道をふさいでいる。
「ところで、支給品なのですが、花束「薔薇の祝福」がほしいんですけど‥‥あ、だめなら食べ物とか、薔薇の石鹸が‥‥」
「そうだなぁ、俺はロングボウ「流星墜」か髪留「梅花」がいいな」
「あ、自分、金色の弥勒像ほしいわ、だめだったら、せやね、サバイバルナイフでええし、」
「ええ、わかっていますよ、みなさんがほしいものは」
 にこにこと笑いながら開拓者一人ずつに包みを渡していく。それなりな重さによろこんでいるのが数名。食べ物じゃないと落胆しているのが一名。ほかは素直に受け取り、包みの中をあけるとそこには鍋の蓋(三個)が収まっている。
「んにゃ、どうみても鍋の蓋だー?」
 斎宮が包みをひっくり返してばさばさしてみるが出てくるのは鍋の蓋。ころんとむなしい音を立てながら転がっていく。
「ははは、いつから望みのものがもらえると錯覚していたんですか?」
 ドーンという効果音が後ろに出ているかのごとくふんぞり返っている夢と万商店の店員。受け取った鍋のふた(三個)を握りしめた開拓者達が恨みの眼差しで二人を見つめる。特に礼野と香が怒りに震えあがっている。
「食べ物の恨みは怖いんですよ‥‥」
「どーいうことやねん、鍋蓋三個ってどーいうことやねん?」
 じりじりと接近してめきめきと握りしめる鍋蓋(三個)。
「何って支給品じゃないですか、開拓者さんに『大人気』の」
 がしゃーんと鍋の蓋をたたきつけてから店員に襲い掛かる開拓者。するりとそれを逃げると。
「何分それなりに損失がありましたのでね、支給品もただではないのですよ!」
 びしっと指をさしてから捨て台詞を吐くと万商店に取り戻した支給品を詰めた荷車を転がしながらぴゅーっと逃げていく。もちろん追いかけていく数名。

 食べ物と金の恨みは重いということを、残った数名が目の当たりにしたのであった。