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■オープニング本文 ●お屋敷にて いつものようにごろごろ‥‥していないおやかた様が難しい顔をして書類とにらめっこしている。 珍しく真面目にその様子を見ている爺も険しいというか真面目な顔でそれを補佐している。 「やはり、他国の情勢が把握できんのう」 ぱさっと書類を机に置いてからお茶を一啜り。 「流石に向こうまでは此方も把握できませんからね」 「ふむぅ、そこで提案なんじゃが、わらわが直接いこうと思うのじゃよ」 「‥・・大丈夫、ですか?」 ちょっとだけ眉を顰めた爺がおやかた様を見つめて軽く思案する。 確かにここ数ヶ月で心身ともに成長はしたが、果たして一人で他国に送り出すのはどうなのだろうかと。 軽く唸りながら、ぽんと手を叩いて一閃き。 「わかりました、開拓者を付けましょう。私はお屋敷で留守をせねばなりません、それに‥‥玖琉滝のお館様として他のものを導く存在なのをお忘れなきように」 「大丈夫だ、爺。わらわもそれぐらいは心得ておる。だからこそ見聞を広めなければならない」 「お館様‥‥」 貰ったハンカチ、涙やらでぐしょぐしょになってるが今日もまたそれを濡らす日々。 しかし手のかからなくなるのはそれはそれで少し寂しい爺だったりする。 空を眺めて、先代のお館様を思ってうるうると。 「では、少し出かけてくるぞ?」 まだまだ雪の積もっている天儀、薄着は寒い。 ばさっと上着を羽織る姿が少し凛々しく見えたこのごろ。 ●ギルドにて 「暇、ねぇ‥‥最近、ずーっと洞窟ばっかりだったしぃ」 煙管を揺らして椅子をぎいぎいと鳴らしながらぼうっとする。 ある意味での禁断症状が出まくりだ。 「ほう、暇してるのう、ぐうたらギルド嬢」 「うるさいわよ、ちんちくりん」 膝に乗せて撫で撫で‥‥ほわほわ。 「んむ、むっ‥‥ちょっと、開拓者を集めてほしくてのう」 撫でられほわほわしながら話を進めていく。 夢のほうはというとあー?と生返事の状態で撫でまくっているが。 「ジルベリアの方にいこうかと思うのだが、わらわ一人はダメといわれてのー」 「まぁ、過保護だしねぇ‥‥ほれ、ちょっとどけ」 おやかた様を持ち上げて下ろす。 持ち上げたのはお前じゃろーがー!とぷんすこ怒っているおやかた様を尻目に依頼書に筆を滑らせ。 ぴっと筆を最後に跳ねて書き終わり。 『ジルベリア観光、参加者募集』 |
■参加者一覧
風間・総一郎(ia0031)
25歳・男・志
禾室(ib3232)
13歳・女・シ
白銀狐(ib4196)
14歳・女・シ
咲宵(ib6485)
24歳・女・陰
ルキノ(ib6603)
20歳・女・砂
ミーリエ・ピサレット(ib8851)
10歳・女・シ |
■リプレイ本文 ●お屋敷前にて 「さてと、皆の者そろった様じゃし、出発するとするかの。土産は何でもいいのかの?」 「勿論、おやかた様の物でしたらなんでもうれしゅうございます」 いつもの服装に外装を羽織ったおやかた様が爺に出迎えられて開拓者と出発する。 開拓者と合流して顔ぶれをみてからいつもどおりの面子じゃのうと、一言。特にいつもどおりでいいのうとも。そんな中おやかた様よりも小さい子が一人。 「おやかたちゃん、始めまして!‥‥あれ、様をつけたほうがいいのかな?」 ミーリエ・ピサレット(ib8851)がぱたぱたとおやかた様にご挨拶。おやかた様ちゃん?おやかたちゃん様?といいながら笑っているので撫で撫で‥‥ご満悦のようだ。後ろで白銀狐(ib4196)と禾室(ib3232)が二人そろって指を口にあてて「いいなー」とかつぶやいていたとか。でもその後しっかりいつものお約束、白銀狐が撫でてぎゅうぎゅうめでてから出発の時間。 とりあえずこんなところで撫で撫でぎゅうぎゅうしていても出発できないのでいいところで切り上げてから、みんな爺に手を振って見送られ、初めての海外りょこ‥‥じゃなくて、調査に向かっていくのだった。 ●ジルベリア そんなわけで、あっ‥‥という間にジルベリアにたどり着く開拓者一同。 とりあえず適当な宿に荷物やら荷解きをして一息ついたところで‥‥さぁ、どうしよう。 「しかし話には聞いていたが天儀より寒いな」 荷物を置き終えて一服している風間・総一郎(ia0031)が外を眺めてぽつりとつぶやく。 まだまだ春の気配もないジルベリアは天儀よりもかなり冷える。身長もあるせいで風がもろに当たるという部分もあったりするのだが。 「流石にこっちの寒さは堪えるね」 ほふっと白い息を出しながらルキノ(ib6603)が外を眺めて同じように、流石にアル=カマル出身だと気温的になれないのだろう。 「しかしお館の依頼を受けるのも久しぶりになってしもうたのう」 荷解きをしているおやかた様を咲宵(ib6485)が眺めながらしみじみ。なんだかんだで久しぶりに会うのでいつもの元気そうな姿を見て一安心。 「しかし特に何も決めずに着てしまったのう‥‥」 「おやかた殿はどこを見て回るつもりなのじゃ?」 ぼふっと荷解きをやめてベッドに座って足をぱたぱたとしながら考えてから。 「まぁ、時間はあるのじゃ、のんびりいろいろ回るとするかの」 そんなわけでジルベリア観光が始める。 ●観光 とりあえず全員どこにいきたくて何をしたいのかをざっと聞いた後に順繰りめぐるという事になった。 「ほれ、おぬし、ジルベリア出身だったのじゃろう?」 ミーリエにおやかた様が尋ねてみる。 「そうなのだ!でもミーリエはシェレゾみたいな大きな都市には言った事ないのだ!」 「あ、大丈夫ですの市内地図のほうを貰ってきたのですの!」 白銀狐が人数分の地図を持って一人ずつ手渡し。よしよしと撫でられてご満悦だ。後ろで禾室がうらやましそうにみてたり。 「ふむ、日が暮れないうちに宿に戻るとして‥‥順繰りめぐっていくかの」 そんなわけでぞろぞろとジルベリア観光が始める。 一番初めにやってきたのは機械ギルドやら工房、武器やら防具などの商店街にやってくる。 「やっぱこっちの武器ってのは厚いものが多いな」 風間が手ごろな見せに入ってブロードソードを手にとってまじまじと見つめる。 「そりゃ、斬るんじゃなくて叩き斬るって発想だしな」 「そりゃそーじゃろ、いくら切れ味が良いからといってぶあつい鉄板をお前はきれるのかの?」 「流石に無理だな、そりゃ」 「だから厚い鉄板にもろに衝撃が伝わるように、といった所じゃの。ジルベリア系の鎧じゃとめいすやもーにんぐすたーといった鈍器の方が効果的なのじゃよ」 ふふんと言いながらおやかた様が解説。店主が「お嬢ちゃん良く知っているな」と撫でくりまわす。すんごい得意げな顔しているおやかた様 「納得だな‥‥しかし流石にごつい連中ばっかだな、こっちにいるのは」 「ふぉ‥‥このふらいぱんいいのう‥‥」 その反対側では禾室が金物店に入って調理器具を見つめて目をきらきらさせながら尻尾を振っている。天儀にはないような珍しい機械‥‥というか器具に心躍る。 「装飾品類も結構違うものだな‥‥あぁいらん、俺は男だ!」 また女と間違えられるのはいつもの事。 「アヤカシもいるだろうし、武器の精度は数打ちじゃないね」 ルキノが近くの武器をまじまじと見つめながらじっくりと手ごろな武器を見つめ始める。 「ふむー、やはりジルベリア産の装備は地元に限るのう」 うんうんといいながら装飾品を物色したりと時間を潰す。 そんなこんなであっという間にお昼時、 前ほど治安は悪くないのでわいわいきゃっきゃと食べ物関係のお店、やら市場を見始めている。 「おー‥‥やはり、土地柄の出ている食材が多いのじゃ‥‥と、メモメモ‥‥」 禾室が珍しい食材やらを見つけてじーっと見つめながらメモを取り始めている。そして店を回るたびにこの国の特徴は何じゃろ?と聞きまわってぱたぱたとしている。 「はぐれたら宿に戻るのですの、無駄遣いはだめですの!」 ぱたぱたと白銀狐が仕切りながら開拓者一同に指示を飛ばす。楽できるおやかた様はのんびりその様子を眺めてほわほわしている。 「こっちはこっちで活気があっていいな‥‥あ、俺男なんで」 さらりとナンパしてきた男を避けつつ風間もまったりと後ろにくっついて観光。 「ふむー‥‥それなりに活気もあるし、物も充実しているね」 町のほうを見つめてじっくりと国情を確認していく。 「あれ、この間着たときより高いけどどーしてー?」 ミーリエが物価が上がったのを聞き込みしている。季節的な問題なのでどこかでやらかしているとか大きな戦いがあるというわけではなさそうだ。街の方も特に不潔でもなく、街中を歩いている衛兵もしっかりと、それなりの数がいるのを確認していく。 「わっちは先に戻って別の準備をするでのう?荷物、あるかのう?」 「あ、これもって行ってほしいですの」 「わしも持っていってほしいのじゃ」 禾室と白銀狐がわさわさと荷物を渡す、結構な量があったので風間を荷物持ちにし、一旦宿に戻るものは戻るのだった。 残った禾室と白銀狐、ミーリエとおやかた様がのんびり食事やら物色し始める。 はもはもと乾燥肉を食べているミーリエは肉ばかり食べているのでとりあえずご満悦。お土産にとそこそこの量も買っている。 白銀狐のほうはジルベリア産のお菓子を見つけて目をきらきら。今回はケーキがメインのようだ。今回は禾室と仲良くできればいいなーといいながら一緒にご飯を食べている。ちなみに狐嫌いの禾室というと対抗心はおやかた様を中心に出ているがそこまで嫌いというわけじゃないのと目の前のご飯やらお菓子のほうが気になるのかこっちも目をきらきらさせながらお菓子を一緒に食べている。 「仲良いのう‥‥」 お茶‥‥はないので紅茶で一服するおやかた様。あんまり飲まない味なのでちょっとだけ顔をしかめたがすぐに慣れたのかまったりと。 「んー‥‥美味しいのじゃ!お土産を買って、後は‥‥皆も食べてみぬか?」 「ほふ、幸せですのー‥‥」 「おー、美味しいのだー!」 思い思いの物を食べて騒いでいる三人を眺めておやかた様がちょっと思う。よく食べるなぁ‥‥と。 一通り見終わってから夜になって咲宵がおやかた様を連れ出して色町の方にへといっていく。手ごろな店におやかた様を連れてとりあえず酒場らしき所に入っていくが、ここで大誤算。 「わらわは酒が飲めぬぞ」 「まぁ、見るだけでも勉強じゃよ」 そんなわけでつまみをぽりぽり食べつつ踊りを見ながらおやかた様の様子を見つめる。 特に頬が赤いとかそういうことはなく退屈そうにたれている。 「のー、咲宵よ、どーしてここに着たかったのじゃ?」 「おやかた様もシノビ、床の技術も一流であるべきじゃろ?」 「んーあー‥‥そうじゃのー‥‥」 なんとなくさらりと流される。しょうがないといいながらため息混じりにおやかた様を撫でている所に軽く踊らないかと誘われるがおやかた様に止められる。 「わらわ達は客じゃぞ?」 しっかりしていたおやかた様に杞憂じゃったのうとため息混じりに呟いてまったりすごす‥‥空間でもないのでさっさと宿に帰るのだった。 そんなこんなで帰ってくるとミーリエがおやかた様に抱きついて。 「おやかたちゃん、サウナいこー!」 「さうな‥‥あぁ、蒸し風呂のことじゃな?」 そういうわけで、全員サウナに入ってのんびりと。 皆まったりと汗を流して観光の疲れを癒していく、ぺちぺちと備え付けの棒で体を叩いて血行をよくしながらはふーっと一息。 「叩いてあげるー!」 ぺちぺちとおやかた様をねぎらって叩く。あーうーと唸りながらも気持ちよさそうにするおやかた様。まったりと汗を流してから水風呂に入って体を締め、ぷしゅーっと火照った体を冷まして一息。 「ジルベリアもいいものじゃのー‥‥」 皆してうんうんと唸ってまったりと疲れを癒していく。 ちなみに一人だけ男な風間はまったりと雪景色を見ながら酒盛りしてたとか。 おやかた様に連れられて危うく女湯の方にいきかけたのは内緒。 ●いつもの天儀 あっという間に旅行も終わりお屋敷まで皆戻ってどさっと荷物を置いてからほふっと一息。色々観光するのはなかなかよかったが旅行疲れという奴だろう、久しぶりに飲んだ爺のお茶が身にしみる。 「あ、そうですの!」 白銀狐がもぞもぞ荷物から取り出したビターチョコ。 「遅くなっちゃったけど、お土産の友情チョコですの」 爺にそれを手渡す。そんなかまわなくてもいいのですよ、と優しく微笑む爺はとても嬉しそうだったとか。ちょっと照れくさくなったのか新しくかった帽子をきゅっとかぶりなおしてからおやかた様にくっつきに戻る。 「お、そうじゃ、次の目的地の参考にこれを渡すのじゃ」 甘味マップ「アル=カマル」をおやかた様に渡す。わしも手伝って作ったんじゃぞ!と胸を張って言うので撫で撫で、ご満悦。 「とと、忘れてたですの」 夜中に全員からきいた情報をまとめたたびのしおりをおやかた様に提出。内容はさまざまだが色々と書き込んである。それを受け取ってから撫で撫で、ご満悦。 「いいなー、撫でてほしいなぁ」 ミーリエがそんな事を言うのでおやかた様が撫で撫で、ご満悦。 「次はどこにいくんだろうな、ジルベリアの酒もなかなか良かったし」 「そうだな、次の場所も楽しみだ」 土産に持ってきた酒を分けつつルキノと風間が話す。 「ふむむ、おやかた様はもちっと深い所までいってもよさそうじゃの」 煙管を吹かしながらくつくつと咲宵が笑っている。 そんなこんなで留守番をしていた爺に土産話やら酒盛りを始める開拓者一同だった。 |