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■オープニング本文 ●お屋敷にて くしゅっとくしゃみを一つしながらおやかた様が震えている。 火鉢に手を当ててさむぃと言いながらぬくぬくしている。 あっという間に夏も終わり、すっかり冬も近くなっている。 「寒いのう‥‥そろそろ布団が恋しい季節なのじゃ‥‥」 へっちょと言いながらくしゃみをして鼻を啜る。 もふっと上から上着を一枚追加しつつ、鼻をちーんと拭きつつ爺がお茶を入れている。 「おやかた様、いつもこたつや布団で丸まっていると思いますが‥‥」 寒い物は寒いんじゃ!とむすっとしながらお茶を啜っている。 「たまには、運動でもしたらどうです?」 「んむぅ‥‥いつも追いかけられてるからのう‥‥たまにはわらわも追いかけたいのじゃ」 お茶を啜りつつ、達磨みたいに着込んだおやかた様が立ち上がり。 「ギルドにいってくるのじゃぁ‥‥」 その足取りはかなり重い。 ●ギルドにて 「さみー‥‥」 火鉢を足元に置きつつ褞袍を羽織って受付で震えている夢が一人。 こんなクソ寒い日にやってくる奴はよっぽどの急用か暇人だろ、と悪態を付きながらぬくぬくと。 「おぉ‥‥寒かったのじゃ‥‥」 そんな中、おやかた様が火鉢に直行してぬくぬく温まり始める。 二人そろってぬくぬく。 「何しにきたのよ」 「んむ、また依頼をだそーかと思ってのう?」 片腕を器用に使って依頼書と筆を取り出して、何するの?と尋ねる。 「こうぬくぬくするのもいいのじゃが、運動もしないといけないからのう‥‥鬼ごっこでもしようかとおもうての」 「またぁ‥‥?追いかけられるの好きねぇ‥‥?」 「んや、今回はわらわが鬼をするのじゃ、お主もするかの?」 首を横に振ってからさらさらと書き込んだ依頼書をとおりすがった他の職員に張り付けてと言ってお願いする。 ちなみに歩いて十歩ほどの距離だが。 「あ、ちなみに今回は都全部じゃからな?」 「派手にやるわねぇ‥‥」 たまにはお屋敷以外も足を伸ばさんとのう?と、言いながら重ね着してある足を出してみる。 でも寒いのですぐ引っ込みます。 「寒いのは苦手じゃ‥‥」 「ごもっともねぇ‥‥」 開拓者ギルドの火鉢に毛玉のようにもさもさした二つの物体がいるという話が出回ったのはまた別のお話。 |
■参加者一覧
風間・総一郎(ia0031)
25歳・男・志
村雨 紫狼(ia9073)
27歳・男・サ
白銀狐(ib4196)
14歳・女・シ
サフィラ=E=S(ib6615)
23歳・女・ジ
獅炎(ib7794)
25歳・男・シ
テト・シュタイナー(ib7902)
18歳・女・泰 |
■リプレイ本文 ●都の一角にて。 「ふ〜ん、ふふ〜ん♪」 ぴょんぴょんと猫のように家屋の屋根を飛び回っている影が一つ。腰に鈴を一つつけてちりんちりんと鳴らしながら飛び回る。そうして目的の物を見つけるとにまーっと笑って飛んでいく。 ●お屋敷にて 開拓者六人とおやかた様、爺が鬼ごっこの説明をしながら面子を確認しているおやかた様。この辺からおやかた様はさりげなく集まった開拓者の特徴を調べているのは内緒だ。そしてそんなのはお構いなしに白銀狐(ib4196)とサフィラ=E=S(ib6615)がおやかた様に抱きしめて暖をとっている。 「うみゅー‥‥寒いよぉ‥‥ぬくぬく‥‥」 おやかた様にぼふっと顔を当ててすりすりとふにゃーっと顔が緩んでいる。結構ぬくいようだ。砂漠出身のサフィラにとってはとても苦しい冬。主に寒さ的な意味で。 「寒いですの‥‥でも、おやかた様は暖かいですの♪」 しょんぼり耳を伏せつつ、こちらもおやかた様をもふもふと。耳がぴくぴく。久しぶりにおやかた様をもふもふするのはお気に入りらしい。 「鬼ごっこか、たまにはこういうのも悪かねぇしな」 こっちはこっちで屈伸やら足首を伸ばしているテト・シュタイナー(ib7902)、尻尾がぱたぱた‥‥目の前でおやかた様が猫じゃらしをびょんびょん振ってやるとそれにあわせて尻尾がぱたぱた‥‥。新しい獲物を見つけたような顔をしていたのは気がついていない、 「しかし、どうすっかねぇ」 いつもどおり煙管をふかしている風間・総一郎(ia0031)がおやかた様を眺めてため息。今までの経験上、中途半端な事をすればあっさり見つかるのは明白。一瞬頭に過ぎった心的外傷を思い出す。だらだらと冷や汗があふれだしてくる。 おやかた様とその様子を獅炎(ib7794)が眺めて煙管を吹かしてぽつりと。 「あんな子供がおやかた様ってのは世の中広いもんだな」 火鉢の前で煙管を吸いつつ、ざくざくと灰をつついている。 ついでに部屋の隅には接近禁止命令が出された村雨 紫狼(ia9073)がいる。まぁ、自業自得なわけだが。おやかた様側とついでに都の奉行側から灸をすえられたようだ本人は自覚してないので手がつけられん。 そんなわけで開拓者一同おやかた様から説明を受け始める。 「んむ、集まったよーじゃの。時間は日暮れまで爺が合図をする、それまで逃げ続ければ勝ちじゃ。捕まった者は屋敷で正座待機じゃぞ」 寒暖装備でおやかた様が立ち上がると手をぱんぱんと叩いて。 「ほれ、さっさといかぬとずーっと正座待機じゃぞー?」 開拓者一同はっと気がついてから屋敷から飛び出していく。 ●鬼ごっこ 「とりあえず、ばらばらに逃げるぞ!」 風間が屋敷を出たあたりでそういって、市場の方へと逃げていく。とはいえ、たっぱがでかいせいで丸わかりなのが悲しいところ。 「今日は負けませんの!」 鈴を握って音が出ないようにしながら街中に入って逃げ始める。遊びのようで遊びじゃない鬼ごっこにいつもより張り切る。 「うにゅー‥‥寒いのー‥‥!」 いつもより厚着をしているとはいえ外に出るとあっという間に体温を奪われる、とりあえず暖かいものを求めて市場を歩き始めるサフィラ。 「俺も町に逃げるとするか、鈴の音をごまかさねーといけねーし」 ぱたぱた尻尾を揺らしながら雑踏の中に消えていく。何だかんだで楽しそうだ。 「さて、俺も逃げますか」 のんびりと煙管を吹かしながら港の方へと。 「んじゃ、俺はぁ!」 町の方へと叫びをあげながら走っていく姿を見つめて軽くため息をして。 「爺、奉行所の方に連絡を‥‥流石にわらわも付いていけぬ」 「承知いたしました」 一礼してからすすっと外にでていく。流石、側近である。 「さーて、わらわも頑張るとするかのう」 そんなことで開始された鬼ごっこ、町のど真ん中でおやかた様のことを叫びながら走っている変態が一人。迷惑も顧みずに、あーだこーだ一般市民の前で叫びを上げている。 ・・・・と、叫んでいる途中でがしっと両脇を掴まれて確保され。 「はい、お兄さん、ちょっとこっちこようね」 眉間を引くつかせているお奉行様、ついでにその後ろには爺も青筋を軽く立てながらたっている。・・・・少し考えればだが、開拓者だからって何をしてもいいということではない。 こちらはサフィラ、早速といわんばかりに茶店に入ってお汁粉一つ。ほかほかのあんこに白玉を受け取ってからじゅるりと涎を啜って。 「いただきまーす♪」 はふはふと息をはきながら熱いのを覚ましてから一口。あんこの甘さがじわーっと口の中に広がって、それを堪能してからもう一度はふぅーっと一息。寒いときのお汁粉は強力なのです。 「おいしー♪幸せにゃー♪」 「ほー、そうかそうか・・・・あーん」 「ほい、あーん♪」 隣に座っているおやかた様に白玉をぽいっと放り込んでからまたぱくぱくとお汁粉を啜って、あっという間に空にする。茶碗を置いて、お茶を飲んで一息ついて。 「おいしかったねー?」 「そうじゃのー」 ぱたぱたと足を振ってから隣にいるおやかた様を二度見てしてから立ち上がって、えへへーと笑ってからばっと走り出す。 「にゃにゃにゃーっ!どいてどいてぇぇ!」 シナグ・カルペーを使い、人の間をするりするりと避けながら大通りを走っていく。流石というべきか、石の合間を水が流れていくようにするするりと進んでいく。 「ほー、頑張るのー」 にこやかに体の小ささを生かして距離をつめられて、ばさばさと靡いていたスカーフがぎゅっと握られたと同時にそれを脱ぎ捨て、さらに逃げていく。 「サフィラ式、空蝉―!」 そんなわけで服を握られたら脱いで、握られたら脱いで、を繰り返してあっという間にいつもの薄着になっていく。 「これ、ちゃんと、もたぬか!」 丁寧に服を回収しながらサフィラを追い続けるおやかた様。手には脱ぎ捨てた服を持って走りにくそうだ。 「うにゃー!まだ、終わってないー!」 ざばーんと、運河に飛び込んでざばざばと泳いで逃げていく・・・・が、流石に冷たいのかかなり速度は遅い。 「参ったと言ったら、お汁粉のおかわりも考えてもいいかのう?」 水蜘蛛でぱちゃぱちゃ歩いて追いついて、じーっと見つめながら言う。 「にゅー・・・・お汁粉がいいー・・・・」 あっさり甘味に釣られるサフィラだった。 サフィラが泳いでいた対岸、あまり人気のない方にその様子を眺めている獅炎。煙管の紫煙をぷかぁと燻らせながらじっくりおやかた様を観察。 「何だかんだで、恐ろしい相手だねぇ」 抜足を使いゆったりそこから身を引いてある程度人通りのある道へと進んでいく。朝からということもあるので手ごろな焼鳥屋で数本焼き鳥やら焼き烏賊を買って、食べ歩きながらおやかた様に捕まらないように、自然に人通りの中にまぎれていく。 しかしその焼き鳥がおやかた様の鼻にかかると一発で引っかかってしまうのはまだ知らない。腹ペコおやかた様。焼き鳥の本数を数えると数本足りない。 「と、落としたか?」 足を止めて焼き鳥の包みを覗いてみると、隣ではもはもと焼き鳥を食べているおやかた様。視線が二度三度交じってからにんまりと微笑まれる。 「まったく、さっきから皆してうまいものばっか食べおって・・・・ほれ、さっさとおごらぬか」 「おやかたさんよ、それはちょっとどうなんだ?」 二本目の焼き鳥を食べているおやかた様を眺めて苦笑い、してから早駆を使ってするすると距離を離して路地を曲がり、逃げ始める。十分に距離をとってすばやく角を曲がると三角飛びを使って距離をつめながらついてくる。食べ物の恨み、というわけではないが。昼飯をつまんだ結果がこれ。 「なるほど、そういうことかっ・・・・!」 おやかた様の目線のあたりに焼き鳥を置いてから抜足でさっと隠れる。物陰からその場所を見ていると、焼き鳥を見つけて満面の笑みでそれを食べてからきょろきょろと探し始める。 「育ち盛りの子供は、恐ろしいわ・・・・」 その後は超越聴覚を使っておやかた様の鼻歌を聞きながら一定距離を保ちつつ、観察し続ける。なぜだかわからないが父親な気分。 こちらはテト、鈴の音を抑えながら人ごみの中を歩いていく。時折道の端に言ってから手鏡で後方を確認してからまた進んでいく。なるべく人の量が多いところをわざと進みながら警戒して歩き続ける。 「ちっこいから結構わかりにくいな・・・・小細工が通用するかはわかんねーが」 似たような子供がちらちらと視界に入るたびにすばやく距離を取って周囲を確認する。なんだかんだでまじめにやってるので神経がちょっと過敏気味。ぴくぴくと耳やら尻尾を震わせながら警戒し・・・・ながらも尻尾がぱたぱた。 「手鏡はよかったのじゃがなー・・・・回数が多いのが問題じゃの?」 振られている尻尾をぺしぺしと叩いてみるとびくびく震える。それが楽しいのか猫じゃらしに夢中になる猫のような状態に。 「隙がないなっ・・・・!」 尻尾をてしられてるのを振り切って運足を使い、人ごみを縫うように進んでいく。勿論おやかた様が後ろから「うーうー」と唸りながら付いてきている。 「ええい、こいつ・・・・何度も使える手じゃねぇだろうけど・・・・!」 ちらっと手鏡で日を反射させておやかた様の視界を軽くふさぐ。後ろで「うにゃっ!」とおやかた様がうめいているので成功しているようだ。そのままどんどん道を進んで距離を取り、つめられれば手鏡で目くらまし・・・・してみるが流石に通用しないのか夜の射程圏内に入り始めている。 「ちぃ・・・・あとはこれで・・・・!」 軽くしゃがんでおやかた様の視界から隠れてから自分の進行方向と逆方向に風鈴を投げてみる。その風鈴を横目で見つつその場から離脱して隠れる。 「む、風鈴だったか・・・・どこかのうー・・・・」 割れた音で気がついたのか少し釣られてから足を止める。 「ふう、案外、たいしたことねーな」 くすくす笑ってからその場を去ろうとしたときにぎゅっと尻尾を握られてびくんと震える。 「大した事なくて悪かったのう?」 にぎにぎと尻尾を掴まれてそのままぺたんと座り込む、その隙に鈴を取っておく。夜で回り込んだのはちょっと卑怯だったかの、と呟いていたとか。 そしてこっちでは。 「仕方ない、仕方ないんだよな、これは・・・・」 風間が女装して街中を歩いていく。まぁ、残念ながら頭一つ飛びぬけているのでもろばれともいえるのだが。勿論街の人にも思い切り見られている。と、その身長のおかげか向こう側におやかた様が焼き鳥を食べながら接近している。それを見てから振り返り、おやかた様と同じ進行方向に行きどうするか考え始める。その様子を見ていた子が一人、おやかた様を見つけたのをこちらでも感知したのか風間に近づいて。 「お姉さま、あのお店に入りましょう?」 「お・・・・えぇ、そう、だね」 ちょっと引っ張られ気味に甘味屋に二人そろって入っていく。店の中でおやかた様が通り過ぎていくのを確認してから一息。 「あっぶねぇ・・・・さてと、どうする・・・・?」 「んー・・・・おやかた様のお屋敷に戻ってみるのですの」 指をぱちんと鳴らしてそれだ、と二人そろって頷いてお屋敷のほうに二人そろって歩いていく。遠目から見れば仲のよい姉妹に見える。が、きっと心の中ではないているだろう。そんなわけでおやかた様を警戒しながら・・・・というか何度か見つかっては白銀狐の目晦まし玉を食らわしたりで大変だったりする。 「ふははは!さーらばー!」 「私の、おかげですのー!」 自分の手柄のようにしている風間にすかさず突っ込みを入れつつ白銀狐がむくれている。 「とはいえ流石に付き合いが長いだけあって、熟練しているな」 「ふふん、おやかた様直伝ですの」 「教えた覚えはないのだがのう・・・・」 びくっと震えてすぐ後ろで首をかしげているおやかた様にすかさず後退したところでぴっと、風間の鈴が宙を舞う。 「まだ、取られてない・・・・!」 女装してるのに上段に蹴りを放って鈴を蹴り上げておやかた様の手の届かない範囲に。そこから風間を踏み台にして白銀狐が鈴を確保、そこからおやかた様の視界をふさぐようにばさっと傘を広げて、怯んでいる隙にまた走って逃げていく。 「むむー・・・・!」 手を上げてそれを追いかける前に視界から消えているのでまたうろうろし始めるおやかた様。そんな様子を知ってか知らずか、二人そろってお屋敷に戻って爺からお茶を貰ってほっこりしていたとかどうとか。 ●すべて終わって がたがた震えているサフィラに毛布をかぶせつつ、お茶を渡す爺。この季節の運河は本当に死んじゃいます。火鉢の前でうーうーと唸りながら暖を取り続ける。鬼ごっこしつつ、甘いものを堪能していた罰というかなんと言うか、きっとその辺の恨みだろう。 「はい、あーんですの♪」 火鉢を使って餅を焼いて、それをびょーんと伸ばしておやかた様にぱくっと食べさせる。もっちゃもっちゃ端の方からちまちま食べるおやかた様を満足げに見つめる。 「あ、俺にもくれよー」 びろーんと伸びた餅をもらいながら尻尾がぱたぱた。どっか食べにいこーぜといってたが、用意されているならまた別の話。もっきゅもっきゅとおやかた様と並んで餅を食べはじめる。 「中身が本当に女ならなぁ‥‥もったいねぇ」 獅炎が風間の女装姿をみながらものっそいため息をついている。あーあー‥‥といいながらこちらも火鉢の前で熱燗を煽りながら文句をたれている。風間にいたっては弄られているに必死に言い訳をしている。きっと受けだ、絶対受けだとかいいながらため息をもう一度吐く。おこちゃましかいないのが問題だろう。 ちなみに村雨だが、街中であれだけ騒いで公共の場で自分の立場を忘れてあんなことをしたわけで奉行所に拘置されている。さすがに前科二犯なので次はないとのことだったり。 |