【お館】伝令係
マスター名:如月 春
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/07/22 00:40



■オープニング本文

●シノビ里にて
 おやかた様、里長に呼ばれて今日はこちらへ。

「で、なんじゃよー‥‥」

「そんな無粋なこと言わなくてもいーじゃないのー」

 抱きかかえて胸の下にすっぽりと抱きしめたまま耳元で話を進めていく。

「ちょっと、書簡を持って行って貰いたいのよ」

「ふぁっ‥‥むぅ、そちらのシノビを使えばいいじゃろー?」

 はぁーっと溜息を一つついてから話を続けていく。
 耳に息を吹きかけられておやかた様はびくびくと。

「それがね、私の所からちょっと出せない事情があるのよ‥‥だからおやかたちゃんのお弟子さんたちに頼もうとおもってね」

「うにゅぁ‥‥むーむー‥‥危険なことはさせたくないのじゃが‥‥」

「だからー、一応私からの仕事ってことで、ギルドの方にお願いね?」

 そんな事を言いながらおやかた様の懐に巻物一つを入れておき。

「じゃあ、お願いねー?それなりに重要度の高いのだから気を付けてもっていってね?」

「受け渡し先と場所を聞いておらぬぞ‥‥」

「あら、そうだったわねー」

 と、言いながらまた耳元でぼそぼそと呟く。もちろんそれに驚いて猫が一鳴き。
 顔を真っ赤にしながら耳を抑えたおやかた様がむすっとした表情で頷いて。

「むぅ‥‥失敗しても、文句を言うなよ?」

「大丈夫、信じてるから」

 いつになく真面目な声だったのでちょっと驚きつつも嬉しそうにするおやかた様。
 そんなわけで、一つの巻物を手にギルドへと向かっていく。

●ギルドにて
「で、早速じゃがこの巻物を届けてほしいのじゃ」

「ふーん‥‥まぁ、いいけど‥‥シノビ絡みの陰謀とかじゃないわよね」

 首を振ってそれは違うと否定しつつ、話を続けていく。
 それなりに重要なのかいつもより距離が近い。

「ちょっと訳ありの情報でな‥‥まぁ見たり聞いたり開いたりしなければ大丈夫じゃ」

「んー‥‥まぁ、一応依頼って形で出させてもらうけど、届場所と渡す人物は?」

 そういいながらもう一度耳元でそのことについて伝える。
 ‥‥とは言え、そこまで遠くもなく近くもなく、といった場所だが。

「今回はわらわは本当にこっちにいるからのう‥‥心配じゃ」

「なに、あんたがちゃんと面倒見てる子でしょ、大丈夫よ」

 ふっと耳元に息を吹きかけられてふにゃー!と一鳴き。
 おやかた様は可愛いです。


■参加者一覧
村雨 紫狼(ia9073
27歳・男・サ
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔
八重坂 なつめ(ib3895
18歳・女・サ
白銀狐(ib4196
14歳・女・シ
ルキノ(ib6603
20歳・女・砂
サフィラ=E=S(ib6615
23歳・女・ジ
サラファ・トゥール(ib6650
17歳・女・ジ
アルゥア=ネイ(ib6959
21歳・女・ジ


■リプレイ本文

●出発前の顔合わせ
 あまり機嫌の良くないお館様が眉間に軽く青筋を立てながらぶつぶつと言っている。その手元にはごくごく一般的な大きさの巻物が一つ。頼まれごとのさらに頼みごとなのが気に入らないらしい、それ以前に危険なことはあまりさせたくないのもあってだろう。
 しかも先ほどから村雨 紫狼(ia9073)がやけに近づいてくるので考えがまとまらない、だらしのない顔で此方やら他の開拓者を眺めている。犯罪だろう、これ。流石に邪魔しているのを見逃すわけもいかず、サラファ・トゥール(ib6650)が鞭「フレイムビート」で村雨を縛り付けてから一発殴っている。
「小さなことからコツコツと、積み重ねが大事ですね」
 ジークリンデ(ib0258)がそんな事を言ってはいるもののお館様は良い顔はしていない、当たり前と言えば当たり前だが。
「お届け物の仕事はしたことあるけど、こういったお仕事は初めてねぇ」
 アルゥア=ネイ(ib6959)がそういいながらひょいっと巻物をお館様から取ると手の中でくるくると回し始める。本人に悪気はないし、見る気もないのだが「何が書いてあるのかしら」と、回しているところにお館様のデコピンが飛んでくる。「あたっ」と言いながらおでこを押える。デコピンされつつもその後抱きしめて撫でておく。
「仕事をしているなら丁寧に扱わぬか、まったく」
 巻物を取り返して、ふぅっと一息ついている所にサフィラ=E=S(ib6615
がお館様を抱きしめ。
「初めまして、おやかた様っ!」
 よろしくねーと言いながら可愛がる。とりあえずお館様はされるがままに説明を始めていく。
「これから持って行って貰うものは、重要度が高い物だ。依頼にも貼ってあったと思うが無くしたり、汚したりするじゃないぞ」
 とりあえず抱きしめられているサフィラの頭と耳を撫でて無力化しておく。動きにくいようだ。ふにゃふにゃとその場でへたり込んだサフィラにはとりあえず撫で続けて。
「そういうわけだからちゃんと、しっかり、確実に届けるように」
 そういいながら白銀狐(ib4196)に巻物を渡す。
「ほ、本物を任せてもらえるなんてどきどきですのっ、がんばりますのっ!」
 ぎゅっと巻物と一緒に木板を握りしめている。なんだかんだで一番付き合いの長い白銀狐なのもあってだろう。
「行ってまいりますね」
 ちょっとだけお館様になれた八重坂 なつめ(ib3895)が少しだけ袖に触れるような挨拶をする。撫でられ撫でられ。
「前みたいにおやかた様の大福ってオチじゃないだろうな?」
 頭を撫でているお館様にルキノ(ib6603)が尋ねる。そういえば一番初めの依頼では大福を運ばされたなぁ、と言いながら。
「今回は私から、ではないからな‥‥とりあえず無事に運ぶことは前と変わらぬよ‥‥それでは後で向かう、少し外せない用事があってな、頼んだぞ」
 お館様はそういうとすたすたとギルドを出ていく。いつもの「おやかた様」ではなく「お館様」状態なのでそれなりに危険な仕事ではあると少なからず感じる開拓者達。

 なにはともあれ、巻物を渡すという依頼を進めていく。

●道中
 そういうことで開拓者ギルドから出てくる開拓者達。巻物はというと白銀狐が防止の裏側に入れている。丁度帽子の留め布のようになっている。
「とりあえず用意しておかないとね」
 そんな事を言いながら近くの書店で同じような巻物を人数分買ってくるアルゥア。
しばし待機‥‥。
「ふふーん♪」
 サフィラが大きく受け取った巻物に「はずれ、スカ」と書いたものを作って満足げにしている。変に楽しんでいるのは何故だろうか。とにかく人数分‥‥村雨は勝手に本を丸めた物を作っているので、七人分の巻物を各々の方法で本物のようにみせつけておく。八重坂は胡蝶刀と一緒にしておき、。白銀狐は紐を付けて首から下げて懐に、中身は彼女らしい可愛い内容のものだ、あとは基本的に同じ、ルキノ、サラファ、アルゥアは紐で結んでしっかりと括り付けている。
 そういうわけで準備は整ったので出発する。

 都から出て、普通の街道へ出るとそろそろ夏の日差しがきつくなってきたのがよくわかる。じりじりと日差しが熱い。
「天儀の方も、中々に暑いね」
 ルキノがそんな事を言いながら手で仰ぎながらそんな事を言っている。そういえばおやかた様にいろいろと教わっているのはアル=カマル出身者が多いな、と今回の面子を見て思う。何だかんだで多国籍な面子だと。
「このまま何もなければ一番いいですね」
 ふぅ、と一息ついて八重坂が髪の毛を上げて涼んでいる。また、その様子を後ろから村雨が見て、興奮し始めている。正直ちょっとは緊張感を持ってほしいと言いながら無視して先に進んでいく。
「今の所直接的な襲撃もなさそうですかね」
 辺りを見回しながらサラファが進んでいく、見晴らしの良い街道なので襲撃するにも襲撃できないトいったところだろうか。中継の街まではまだそれなりに距離がある。ので気が抜けない。ちらりと白銀狐の方をみると耳をぴくぴくさせて。
「んー‥‥辺りに怪しい人は居ないですの」
 ほっと一息。頭の上に乗っている本物のせいか少しだけ過敏になっている。
「あ、茶店がある!ねーねー、たべていこーよー!」
 駄々っ子サフィラがとてとてと茶店に接近して、とりあえず団子とお茶を注文している。先は長いのでこの辺で休憩をしても問題はないだろう、と。
「緑茶もたまにはいいですわね」
 ずずずっと啜りながらさっそく団子を食べているのはアルゥア、ある程度の緊張感も大事だが、こういうのも大事なのよと言いながらおいしそうに食べている。確かに気をずっと張っているのも逆に疲れてしまう。
「付近と、店主は問題は無し」
 サラファが見回りとライールを使った探りを入れてから一息ついている。前回の護衛でこのあたりの探りを入れることに関してはなかなか上達してきている。
「うめぇ、うめぇ!」
 そんな事を知らずに団子とお茶をむさぼり食っている村雨。まぁ、基本的に休憩なので特に誰も気にしていない。店主はご満悦の様だが。
「のんびりしすぎでは?」
 そんな事をジークリンデが言うものの、お館様がいても似たようなことになるので問題ないとの事。とりあえず茶屋で団子を平らげてから今日の中継まで進んでいくことになる。もちろん道中は街道の一本道であったので特に大したこともなく、さくさくと進んできた。

 日も暮れて赤くなった空を見て。
「今日はこの辺ですかね」
 八重坂が空を見上げながらぽつりとつぶやく。丁度二日と言われてた通り行程の半分ほどにこの街があった。宿は流石に自分たちで見つけないといけないのでめぼしい所を探していく。もちろんその間にもスリの可能性が否定できないのでサラファ、八重坂、ルキノが白銀狐をそれとなく囲む感じで進んでいく。他の四人は付かづ離れずの位置関係を維持したまま行動。流石にまだ人の目につくところでの襲撃はないようだ。
 流石に相手が相手なのでスリに注意しながら歩いていく。とはいえ隠し場所が殆どスリのできる位置ではないのでそう、やすやすとは盗めないだろう。
「この状態でしたら問題はなさそうですわね」
 ジークリンデがそういいながら道行く人を眺めている。そこからしばし歩いてから。
「この辺の宿がよさそうだね」
 ルキノが示した宿、パッと見て二階建てのそれなりに広い部屋が置いてあるところだ。逃げ道等を考えればこの広さで十分だろう、と。
「と、流石に本名はまずいわね」
 偽名で逃げ道の確保しやすい角部屋と、本名で二階の一番階段に近い部屋を取っておく。用心することに越したことはない。流石に女性ばかりの部屋に野郎一人はいけないので囮の部屋に村雨が待機。お預けを食らった犬のような状態になっている。
「さて、あとは襲撃が来ないのを願うばかりですか」
とりあえず夕方〜深夜にかけて早番担当が見張りをし始め、深夜〜朝方にかけて遅番担当ということになった。早番の面子は白銀狐、サフィラ、ジークリンデ。流石に長い時間は担当できないのでこの人数だ。サフィラに関しては猫寝入りで適度に睡眠をとっていたせいかやけに元気だ。
「うー、どきどきするですの」
 胸にしまいこんだ木板をぎゅっと握りしめてから見回りをしながら超越聴覚で辺りを索敵し続ける。それに補助をする形でジークリンデが警戒。
「どっろぼー、どっろぼー、どこにいるー?」
 そんな事を言いながら怪しい場所を虱潰しに索敵しつつ、見回りを続ける。呑気な事をいいながら索敵の仕方はかなり念を入れている。きっとお館様のお仕置き(耳責め)が怖いから。入念な探索をしながら見回りを続ける。
 そんなこんなで入れ替わり、遅番組が辺りを警戒し始める時間になる。怪しくならない程度に見回りをしている、時に襲撃が起こる。
 丁度見回りをしていた八重坂の前に影が一つ横切る。素早く槍「黒十字」を構えて目を凝らす。流石に大立ち回りはできないので直線的な攻撃を重点に置き槍構。姿勢を低くして、影の方向に一撃。すぱっと軽く何かが斬れた感覚はあったが、手ごたえとしては今一。すぐさま構えを戻すところに、影が横切る。すぐさま振りぬきながら槍をもう一閃。ぼやけた姿を捉えて一息つくと巻物が取られ、足元に転がっている
「抜けられた!」
 すぐさま声を上げて警戒を促す。それを聞いて次にルキノが影を補足し、止めるべく戦闘をし始める。
「このまま帰ってくればいいんだけどな」
 進行を塞ぐ形でシャムシール「ジャミ」を振るいながら相手の様子を伺う。ひゅんひゅんと風切音を発しながら一歩踏み込み一閃。横に避けられたのを横目に見つめ、すぐさま腰に下ろしていたバーストハンドガンを抜き打ち。ぎりぎり避けられたのかよろめいているのを確認してさらに追撃。とはいえ、この状態だとうまい具合に攻撃も当てられないのを意識すれ違いざまの攻撃、ファクタ・カトラスを発動。確実に肉の切れる感触に手ごたえを覚えて向き直ると赤い斑点が奥に続いているのを確認。後ろからやってきた八重坂と合流して追いかける。
「おっと、ここからはいかせないんだぜ!」
 村雨がお館様に対して無礼ともいえるような台詞を言いながら咆哮している。流石に驚きはしたのか影が一瞬だけ振り向いて、すぐさま目的の方へと行こうとするところに。
「うにゃー!安眠妨害―!」
 サフィラが横の襖を蹴破りながら影に不意打ち。女の子なんだからと言えない普通の頭突き。ごつっと硬い物がぶつかる音が響き、完全に影の足を止めることに成功。が、流石に痛かったのか頭を押さえてしゃがみこむ。
「上出来ですよ!」
 その後ろから追撃の鞭「フレイムビート」が影に飛び、一撃。バシンと叩きつけるような音が響くと。影を大きく後退させる。吹っ飛ばされながら頭を振っている影が狙いをつけ、とりあえずここにいるのははずれだというような感じに離脱を始めている所に白銀狐が後かやらやってきて。
「く、くるですの!」
 忍刀「暁」を構えて迎撃体制に、素早く接近してきた影が狙いを付けて、懐の巻物を狙ったところ、スカッと空を切る。
「お館様直伝の空蝉よ、簡単につかまったりしないですの!」
 少し前に手合わせた時のように華麗に影の攻撃を避けるとそのまま合流して。向かいなおる。流石に不利だと感じたのかそのまま襲撃者は離脱していく。
「お姉さん、戦闘向きじゃないのよねぇ」
 ひょっこり出てきたアルゥアがとりあえずサフィラのおでこを撫でさすり。特に怪我も内容なので一安心といったところだろうか。このまま警戒を続けながら朝まで頑張るために紅茶を入れている最中だったとかどうとか。

 そんなわけで夜も明けて次の日。
「朝の紅茶はいいわねぇ‥‥と、次の襲撃もいつくるかわからないし、早く行きましょう」
 優雅に紅茶を飲み干してから開拓者八人目的地へと襲撃に警戒して昨日よりも早足で目的の街へと進んでいく。

●伝令係
 道中特に何もなく目的の場所までたどり着く。
 その後宿の襲撃後は一切の襲撃は無く、ここまで少し早足でやってきたので予定より若干早めについた。
「さて、受け渡し場所はここのようですが」
 とりあえず指定された場所で待っていると一人のシノビがすたすたと歩いてきて。
「お館様の使い、だね‥‥例の物をお願いするよ」
 淡々とそして確実に仕事をこなすために何事も簡潔に。
「その前に一応確認させていただきますわ」
 ジークリンデがあらかじめ聞いておいて依頼の事に関して質問し始める。受け取りのシノビは少し嫌そうな顔をしている。
「‥‥これで終わりだね。さ、渡してもらうか」
 質問を終えてから白銀狐がもそもそと帽子を外して、巻物を取り出す。と、ちらりと見えた木板にシノビが反応し。
「懐かしいなぁ、それ‥‥昔お館様にもらったのを思い出すよ」
 そういいながら巻物を受け取り、様子を確認してから一息ついて。
「ご苦労様、あとはこっちで引き継ぐよ‥‥それと君たちはどう思っているか知らないけど、その背中にはいろいろ背負っている物があるのを忘れちゃいけないよ」
 そういうと颯爽と走り去っていく。きょとんとした開拓者達、とりあえず近くの茶店でのんびりと休憩がてら、気の張りも終わったのでほっと一息。
 そんなところにお館様が到着し。
「はぁ‥‥はぁ‥‥どうやら、無事に、届けたようだな」
 かなり本気で走ってきたの汗をぬぐいながら近寄って安心したように胸をなでおろす。
「と、それと、だ‥‥ほれ、ちょっとこい」
 八重坂とルキノ、サラファ呼ばれて一人ずつ木板を受け取り。
「これからも精進するように、では私は戻る。ちゃんとギルドに報告するんだぞ」
 そういうとあっという間に走り去っていくお館様。いつもと違うのでちょっとあわただしかったのだが、これも育成やら家を継いでる物の姿なのです。

そんなわけで無事に巻物とご褒美をもらってからのんびりと足早にやってきた道をさかのぼり始めるのだった。