不思議洞穴四【第二階】
マスター名:如月 春
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/07/30 01:06



■オープニング本文

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●不思議洞穴四、第二階にて
「たまには、こう先取りするのもいいわねぇ」
 
 ゆったりと暗視を使いながらひっそりと洞窟内を進んでいるのが一人。
 いつも文句を言ってる夢が堪らずに洞窟へとやってくる。

「しかし、鉱山だけあって鉄鉱石はよく見つかるわねぇ‥‥個人的には銀とか金とかその辺のも‥‥」

 こつこつと二度三度壁を叩いてみるとぱらぱらと上から埃が降ってくる。
 そっと壁から手を放してじっくりと状況の分析。
 静かに身を低くして地面に耳を付ける。

「結構緩いな‥‥派手にやらかすとやばいかねぇ」

 四つん這いの状態でじっとしつつ暗視で通路の奥を見やり一息。
 そこから一気に駆け抜けて通路の曲がり角まで走ってからまた一息。

「流石に普通に歩く程度じゃ、崩れない、か」

 現職ギルド嬢、元シノビは伊達じゃないらしい。
 そしてもう一度辺りを見回して索敵と周囲確認、徹底した確認ぶり。
 これが生き延びるコツという物だ。

「後は‥‥アヤカシが問題ってところか、ねぇ!」

 脇に収まっている短刀を素早く抜いてすぱっと一閃。
 そのまま抜いた短刀を振りぬいてから鞘に収めてもう一度周囲確認。
 アヤカシの残敵なし、先に進む。
 と、倒したのもあってか油断して横道からの一撃を貰い、咄嗟に後ろに飛んで避けた所で。
 
「と、とと‥‥!」
 
 軽く地面が陥没し、足が埋まってしまう。
 横から攻撃を浴びせてきたアヤカシに対しては間合いが取れる刀で凌ぎなんとか倒すものの、足が取られて動けない。さらに言うと地盤が緩いのもあってかずっしりと上から土が落ちてきたせいもあり殆ど自力で抜け出せない状態になってしまった。

「さて、どうしたものか‥‥」

 楽しそうに笑みを浮かべながら脱出する為にいろいろとし始める。


●ギルド受付にて
「今日も宅配、宅配〜♪」
 最近何かとギルドにやってきている深夜真世(iz0135)がいつものように夢に珈琲を持ってきたのだが、珍しく不在。机の上には「ちょっと洞窟いってくる」との書置き一つ。
 それを眺めてから口を尖らせて。

「いーなーいーなー、夢さんだけずーるーいー」

 ぷくっと頬を膨らませてぶーぶーと紙に向かって文句を言う。
 とりあえずいつも座っている椅子に座ってがたがた揺らしながら珈琲を啜る。

「‥‥苦い‥‥とかいっちゃうんだよねー」

 楽しそうに真似をしていると夢の上司がやってきて。

「あ、配達ご苦労様です‥‥夢、知りません?」

「洞窟にいったんじゃないんですか?」

 ふむ、と一言。しばし考え事をしてから口を開き。

「いや、洞窟の事前調査に出たんですが‥‥やけに遅いのですよ‥‥とりあえず洞窟の調査依頼書はあるので張り出しておきますが‥‥」

 ぺたっと事前に用意されていた依頼書を掲示板に張りつつ溜息。
 またサボってるんだろうな、とか言ってたとかどうとか。

「‥‥大丈夫かなぁ‥‥」

 椅子を眺めながらそんな事を言うまよまよ。


■参加者一覧
天津疾也(ia0019
20歳・男・志
夏葵(ia5394
13歳・女・弓
雲母(ia6295
20歳・女・陰
朱麓(ia8390
23歳・女・泰
ルエラ・ファールバルト(ia9645
20歳・女・志
オラース・カノーヴァ(ib0141
29歳・男・魔
フレイア(ib0257
28歳・女・魔
ジークリンデ(ib0258
20歳・女・魔


■リプレイ本文

●洞窟前の相談
「お宝が埋まってそうな気配がするのはうれしい事なんだが、銭稼ぎするには少々あぶないなぁ」
 天津疾也(ia0019)がそんな事をいいながら鼻を鳴らしている。なんとなくだが本当に銭の匂いを嗅ぎつけそうで恐ろしい。金は命並みに大事だから。
「覇王様―」
 ぱたぱたと夏葵(ia5394)が雲母(ia6295)に近づいてはぎゅり。嬉しそうに頬ずりしている。その状態で撫でくり。とっても満足げにしながら撫でられている。
「いいこねぇ‥‥しかし、あの夢がしくじるなんてねぇ‥‥流石に迎えにいかないとまずいか」
 撫でながら煙管を吹かして一服。くるくると長銃を回しながらなついてくる夏葵をはぐ返して撫で続け。無愛想な顔をしているくせに手は止めていない。流石覇王様。
「ま、あいつの事だし大丈夫だとは思うけど‥‥流石に心配さねぇ」
 こちらも相変わらずの調子で朱麓(ia8390)が洞窟の中を覗いておーい、と一声。おーいと何度も木霊して返事なし。こりゃ死んだかなー?と冗談めいて言いながら準備を始める。
「まずは如月さんの救出が先、ですかね‥‥」
 ルエラ・ファールバルト(ia9645)が松明を用意しながらしばし思案。とりあえず中がどうなっているかは今の所一階までしかわからないので心眼「集」もすぐに使えるように用意しておく。
「さて、どうなることか」
 オラース・カノーヴァ(ib0141)が腕に手帳を巻きつけつつ洞窟へと入る準備をし始める。
「さて、地盤がどんどん緩くなってきているとすると大きい落盤があるかもしれないですわね‥‥とはいえ、一階層が鉄鉱山なのもありますし、山が潰れると死活問題ですね」
 いつものようにフレイア(ib0257)が手帳を開いて事前にもらっておいた一階の地図と照らし合わせて完璧な地図を作っておく。これも相変わらずの事と言えば相変わらずだ。
「崩れていく洞窟、ですか‥‥アヤカシ自体が脱出しようとしているのでしょうかね」
 ジークリンデ(ib0258)が顎に手をあててじっくり洞窟を眺めておく。とはいえ所詮推測でしかないので何が原因かはわからない。
 ともかく開拓者八人、夢を助けるのか金に目がくらんだのかはたまた退屈しのぎなのかよくわからないがともかく第二階層へと足を進めていく。
 
 
●第二階層
 開拓者八人、洞窟へと足を踏み入れる。前回、塞いでおいた為か第一階層の方には殆どアヤカシは見当たらない、むしろ普通に村人が中に入って補強しつつ鉄鉱石を発掘している。下級アヤカシぐらい数人で殴り掛かれば倒せるとかどうとか‥‥山の男は強いものです。
「しかしまぁ、銭も鉄だが、やっぱちゃんとした形のほうがいいのう」
 ぶーぶーと文句垂れながら鉄を掘っているおっさんを眺める。ずいぶんと不満たらたらのようだ。まぁ、それもそのはずだが。
「特にアヤカシもいないですね」
 鏡弦を使って索敵をしながら雲母の近くにぴったりとくっついている。目標が目の前にいるのもあってか特になついている。それを撫でつつ。
「獲物は二階か‥‥退屈だなぁ、本当に‥‥」
 とりあえず欲求不満なのを、夏葵を撫でることで晴らしている。
「ほんと、こんなところで夢がやられているとは思わないんだけどねぇ」
 補強された所を見ながら心配げに、そんなところを見られて何でもないとか言う。鬼嫁も悪友が心配なのです。
 まぁ、とにかく何もない上に特に大した事もない。あるものといえば筋肉達磨のおっさんばかり。むさくるしくてなんとも汗臭い。男の職場とはこういうものだ。そんなこんなでさっさと二階に下りていく。
 
 
 第二階層、補強も済んでいないいまだに未踏の地。とりあえず人の足跡‥‥多分夢の物であろう足跡がついているが、どうも飛び飛びでその足跡がついているのに開拓者一同首をかしげる。普通の足跡にしてはどう考えても飛び飛びであって不自然であり、不規則である。
「変に、足跡が付いていますが‥‥如月さんのものでしょうか」
 先頭を歩いているルエラがじっくりと足跡を眺めてふむ、と一息。飛び飛びかつ壁にそうようについている足跡をじっくりと見つめて考える。
「ともかく先に進んで夢さんを救助してから、ですかね」
 とりあえず手帳を広げて手帳に書き込み。そしてそのついでに事前に鉱夫から聞いていた補強の仕方や崩落個所の見つけ方をもう一度確認しておく。流石に山で働く男、この辺の手順や方法についてはほぼ完璧で、芸術作品でもある
「とにかくまずは如月さんを探してから第三階層の道を探しますか」
 そういいながら足を進めていく。
「おーい、ゆーめー!いるかー?死んでいても返事しろー!」
 と、言いながら目の前に出てきたアヤカシを一殴り。何だかんだで朱麓も洞窟馬鹿ということだろうか、あっさりと環境になれて順応している。
「さて、獲物も出てきたところだし‥‥楽しくなりそうだ」
 暗い道の先を一人暗視で眺めつつ長銃を構えて一発。松明やマシェエライトの光の先でアヤカシが一体瘴気になるのを察知するルエラと天津。前回同様に心眼「集」を使いながら索敵、流石に今回ばかりは消耗した状態で来ていないので弾切れは起こさないようだ。
「ほちょっ‥‥覇王様、流石ですの」
 そんな事を言いながら自分自身も鏡弦をつかっての索敵で一匹打ち抜く。何だかんだで凄い事をしている夏葵、さりげなく撫でられる。
「しかし銭の為に万全を期すのはあたりまえやろ?」
 索敵しながらも這うように金目の物を探し始めるあたり守銭奴。後ろで雲母がわざと一文落とすとそちらに反応する。ああ悲しきかな守銭奴。
「そうさねぇ、私も今回ばかりは資金稼‥‥」
 わざとらしく咳払いをしながらごほごほと言いながら言い直して。
「じゃなくて、夢の救出と前衛を頑張らないとねぇ」
「何度か塞がっている道、崩れている道もありましたし早めに助けないと‥‥」
 瓦礫で塞がっている所に罰印を付けながら新しい道へと進んでいく、今回も地図係のフレイアがため息を吐きながら迂回路を探す。
「と、まだお客の様だが」
 オラースが指さした方向に数匹のアヤカシがいるのを確認。
「さって、久しぶりの前衛だし、気張るかねぇ」
 ゆっくりアヤカシの方へと行くと愚直に向かってくるアヤカシ群。流石にこの辺の低級アヤカシなんて腐るほど倒してきた開拓者にとってはこんなもの朝飯前の準備運動にすぎない。
「なんとも歯ごたえのない連中だね」
 雲母がつまらなさそうに横から飛び出てきたアヤカシに一発。軽く揺れたか?と言いながらじっくり再装填しながら天井を見上げる。
「まだ大丈夫のようですが」
 後ろで魔術師二人、ストーンウォールを立てて補強作業。土木作業しているようだ。オラースはというと錬力が十分でない状態で潜ったためそうそうに弾切れを起こして棒立ち状態だ。
「流石にこの程度ではやられはしないですが‥‥崩壊が怖いところですね」
 ベイル「翼竜鱗」を構えて初撃を受け、逸らすように動け流す。その隙をついて天津が殲刀「秋水清光」を振るいアヤカシを一閃して瘴気に。最小限に動きをとどめて確実に相手を倒すべく刀を振るう。
「なんや、ただの雑魚かいな‥‥」
 狭いのを考慮してか居合の形で相手を狙っていく。一撃振ってから素早く刀を戻して半身を向けた状態でルエラの後ろに。その隙間を狙って雲母と夏葵が同時攻撃でアヤカシを殲滅し始める。さらに戦闘の衝撃をストーンウォールで塞ぎつつ、さらに進行していく。
 
 
 しばらくアヤカシと崩落に気を付けながら進んでいる所、天津が聞き耳を立て始める。何やら聞こえるらしくきょろきょろと辺りを見回す。
「どうしました?」
 一番前にいるルエラが止まって尋ねるが特に反応はなく、ずっときょろきょろと辺りの音を拾って‥‥一気に走り始める。
「何か察知したようですわね?」
 ストーンウォールを設置し終わったジークリンデも尋ねるが思い切り無視している。
「銭は‥‥こっちか!」
 最後の曲がり角を進んだところで一人の女が小銭を落としては拾い、落としては拾っている。
「あ、きたきた‥‥流石守銭奴ねぇ‥‥うんうん」
 片足が埋まって身動きが取れない夢がそこにいる。少しだけ疲れた顔はしているが元気そうだ。
「大丈夫ですか?」
 後から追いついてきたルエラが様子を見てみる。脚が埋まっている以外本当に問題はなさそうだ。とりあえず持ってきた回復用の甘酒を渡して一息つかせる。
「ふぅ‥‥ったく、しくじったわねぇ‥‥」
 喉を鳴らして飲み終わり、通路の先を眺めてはぁっとまた溜息。
「この先に三階層の道があるっぽいんだけど‥‥私が崩落させてつぶしたのよねぇ」
 そういっている間に朱麓がどれどれと眺める。確かに何かが炸裂した跡を見つけて地面に指を付け、何かを探り。
「あんた、爆破したわね?」
 指についた土の匂いを数度嗅いでみるとわずかだが火薬の匂いがするのに気が付く。そしてにんまりと笑って「夢らしいねぇ」と笑う。
「しかたがないですわ‥‥土砂を消しましょう」
 少し離れてと言い、自分の後ろに夢を含めた八人が下がって詠唱し狙いをつけているところで。
「ぶっ放して、回り全部崩落とかはやめろよ」
 煙管を吹かしながらその様子を眺めている雲母がぽつりと言っている。さりげなく夢も煙管を吹かして「もう一回埋まるのは嫌ねぇ」と。
 しばらく詠唱をし終わった後に、一息。目を見開いて一気に魔力を放出。灰色の光球が爆破された土砂の部分に当たり消失していく。この世から土砂の存在が掻き消えていくように消失していくのだが。
「補強しておいた方がよかったかしら」
 フレイアが天井を眺めてぽつりと、素早く詠唱してストーンウォールを設置し始める。なんとか間に合ったのか軽く崩落しただけで全壊はせずに一部だけ崩れ落ちるのにとどまる。
「敵は周りにはいないよう?」
 しっかりと鏡弦での広域索敵をしてから先に進んでいく。用心深いのは悪い事ではない。
 とりあえず夢から調べつくしたところを教えてもらい。三階層へと進んでいく。特に今まで通っていなかった道や二階層の脆い部分などの情報をあらかた聞ける。
「銭はなしかい‥‥」
 そんな中がくーんと肩を落としている天津が地面を見つめながらとぼとぼ歩いているとこつっと光るものを蹴り飛ばし、拾い上げる。小さめの砂金が一粒。目が金の文字に代わったのは誰も知らない。
「と、まぁ‥‥崩落の危険性とアヤカシがいるだけってのがここの問題だったんさね?」
「そういうこと‥‥派手にやれば一気に崩れてあの世いきってことよ」
 と、全員が立ち止りぽっかりと空いた穴を見つける。
「ここが、終点のようだな」
 マティエライトで照らしながら穴を覗いてるところ、さっくりとストーンウォールで穴を塞ぐ。とにかく二階を補強してから次は三階、いつまでもこんな崩落の危険のある場所にはいられない。そういいながら脱出を始めていく。

 
●久しぶりの太陽
「やっぱ娑婆の空気はいいわねぇ」
 うーんと伸びをしている夢、疲れた様子もなく特に疲弊もしていない。何とも元気というか無鉄砲というか。流石の洞窟狂、こんなことも日常茶飯事だとかどうとか。
「まったく、あんまし心配かけるんじゃないよ」
 ばしばしと夢を叩く朱麓。なぜかいつものような光景だが。煙管を揺らしながらやられほうだい。
「たまにはもう少し大人しくしてほしいんだがなぁ‥‥前にも都で走り回ってたろうが」
 夏葵をご褒美のように撫でつつこちらも煙管を吹かしながらそんな事を言っている。ほにゅーやらほちょーやらと鳴いているのを夢も撫でくり。
「ま、あと二日くらいあれば脱出できたと思うけど、まぁいいわ‥‥ありがとさん」
 そんな事を言いながら荷物を纏めて開拓者と都へと帰り始める。
「しかし、ちゃんと保険をかけておいてよかったわ、こーしてその保険が効いているんだからね」
 用心深さと用意周到なのが洞窟狂なのよ、と一言言ってから鼻歌を奏でている夢を見つめて開拓者一同溜息をもらす。