【お館】護衛と旅路
マスター名:如月 春
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/06/26 23:35



■オープニング本文

●お屋敷にて
 いつものようにごろごろ、とはせずに何かの報告書をじっくりと眺めているおやかた様。自分と関わった開拓者の仕事の状況をまとめた物を見てそれに何かを書き込んでいる。
 あの子は頑張っている、この子はもうちょっと、などと事細かにその纏めている物に書き込んで一息ついたところでしっかりと大切に懐にしまう。今では宝物です。
 体は小さいけれど、心の中では親みたいな感じ、なんだか複雑な心境です。
 ほっこりとそんなことを思っていると天井から一人シノビが降りてくる。
「元気にしてたー?おやかた様ー?」
 わっしゃわっしゃ撫で始める、勿論おやかた様は抵抗しません。
「お、おぉ‥‥誰じゃったかの?」
 かくりと首をかしげて尋ねると、がくっと膝が崩れるシノビ。
「ひどいですねー、同じ諏訪のよしみじゃないです」
 そういって諏訪分家である証を見せてから。
「おやかた様、里にきてないでしょう?最近頑張ってるみたいだし一度顔を見せに来てほしいのよね」
 腕を組んでうんうんと言いながら、かなり上下関係があやふやだが、とくには気にしていないとのこと。
「むぅ、里は遠くて大変なのじゃよ‥‥」
 ものすごく行きたくないのかごろんと横になってばたばた、伝言を伝えにきたシノビが視線を逸らして「あれをみたら私は立ち直れない」とか言いながら話を進めていく。
「開拓者とか雇っていいから、とにかく来てほしいのさー、何かと頑張ってるんだから、ね?」
 そのことについては事実であるので反論もできない。最近は開拓者やらギルドから情報を流してもらって(殆ど夢からの経由になるのだが)いる為か、向こうの方にも知れているようだ。
「じゃ、頼んだよ?」
 普通に玄関から去っていく伝言シノビ、かなり自由だ。
 そうしているとお茶とお茶菓子を持ってきた爺が入ってきて。
「お出かけですかな、おやかた様」
「うーむー‥‥面倒なのじゃー」
 大福を頬張りながらもにゅもにゅ‥‥頬が膨らんでいるのを見て爺が悦るのはいつもの事。
 お茶を啜ってまた大福を食べて、全部平らげてから。
「うむ、ギルドの方にいってくるぞ」
 素早く着替えると出かけ始める。
「では留守番をしております、お気をつけて」
 ゆっくり丁寧にお辞儀をしてからお見送り、
 最近おやかた様が仕事やら、何やらと忙しくなって寂しい爺。
 ほろろと出てきた涙をこの間もらったハンカチでちょいちょい拭い。
「‥‥成長するのはいいのですが、寂しいのはいただけませんね‥‥」
 おやかた様は今日も元気です。

●ギルドにて
「で、今日は何の用だちび助」
 夢に見下ろされた状態で上からわしっと頭を掴まれてなでなで。
 勿論、おやかた様は何もしません。
「おぉ、おおぅ‥‥」
 十分に撫で回されてから、一息ついて。
「んむ、少し開拓者を借りたくてな、少し遠出するのだが道のりが大変での」
 そこまで言うと何となく察したのか、「あぁ、そういうことね」と夢がつぶやく。
「護衛とちょっとした旅路にな、結構大変なのじゃよ」
 むふーっとした感じにおやかた様が溜息を吐いて面倒くさいのがが吐き出されていく。
「ま、無事に帰ってくるなら特に構わないよ」
 さらさらと依頼書に依頼内容を書き始めていく、夢。その間おやかた様は座って足をぱたぱたさせています。破壊力がやばいです。
 書き終えた物をぱたぱたと振って、乾燥させてから掲示板にぺたり。
 内容は「おやかた様のお守り」
「間違ってはいないが、納得が」
「だって、これ以上書くことないでしょ?」
 はぁ、っと溜息。なんだかんだで仲のいい二人だったとか。


■参加者一覧
八重坂 なつめ(ib3895
18歳・女・サ
白銀狐(ib4196
14歳・女・シ
咲宵(ib6485
24歳・女・陰
ルキノ(ib6603
20歳・女・砂
サラファ・トゥール(ib6650
17歳・女・ジ
レオ・バンディケッド(ib6751
17歳・男・騎
フィロ=ソフィ(ib6892
24歳・男・吟
琥宮 尋(ib6972
16歳・男・陰


■リプレイ本文

●おやかた様一同
 いつものようにおやかた様のお屋敷へと開拓者が集まり顔合わせ、と言っても殆どがおやかた様の事を知っている。とりあえず挨拶がてらに。
「お久しぶりですねぇ」
 八重坂 なつめ(ib3895)がそんな事を言いながらおやかた様へと挨拶。少し前よりは積極的になっているかな?とおやかた様がぽつりとつぶやくが本人はきょとんとしている。今回も槍「黒十字」を担いでおやかた様を護衛する。
「いやはや、おやかた様も色々と大変じゃのう‥‥妙に行きたくないようじゃが‥‥はて」
 素直に言わないだろうなぁ、と心の中で思いながらおやかた様を見つめるのは咲宵(ib6485)。何かとおやかた様も大変だろうのう、と言いながら相変わらずの様子を見ている。
「さてと、護衛か‥‥ガイドの訓練とかは受けてきたけど実地はまだだから丁度いい」
 ルキノ(ib6603)が「んー」と言いながら伸びて準備をし始める。砂漠の案内はお手の物‥‥と言っているが実際はこれが初めてなのでどうなるかはよくわからない。
「おやかた様の護衛、承りました」
 丁寧に爺にへとお辞儀をしているのはサラファ・トゥール(ib6650)。やけにぴりぴりとしているような、辺りを警戒しているような、緊張しているような変な感じにおやかた様が首をかしげる。
「おやかた様の護衛か!何か騎士っぽくていいよな!難しいらしいけど‥‥」
 張り切っているのか下向きなのかよくわからなくなってるレオ・バンディケッド(ib6751)がそんな事を言っている。騎士っぽいだけでいいのかと突っ込みが入りそうだが、敢えて黙っているおやかた様、元気よく挨拶を済ませてから準備を進めている。
「旅路には良い日和だ、ゆっくり景色を楽しめないのは残念だが」
 パラストルリュートをポロンと言わせて溜息交じりにフィロ=ソフィ(ib6892)がつぶやいている。護衛も兼ねているのでなかなか風景を見られないのは残念で仕方ない。
「お守りか‥‥」
 依頼書を眺めながらぽつりとつぶやくのは琥宮 尋(ib6972)。本当に護衛が必要なのかはわからないがそれはさておき、おやかた様の頭を撫でておく。今日はそれなりに大人しく撫でられているおやかた様、機嫌は斜めだが。
「おやかた様、いろんなお店いっぱい教えてくださいね」
 出会うとぎゅっとおやかた様を抱きしめるのは白銀狐(ib4196)そしてそのまま撫で撫で、かなりの顔見知りの白銀狐だから許されるといっても過言ではない。おやかた様の目に映るのはぺたんぺたんと振られている尻尾。
「おぉ‥‥おおう‥‥」
 口を三角にとがらせて抱きしめられたり撫でられたり、本当に実力者なのかわからなくなってくる。しばしそれが続いた後に、ちょっと離れて。
「んむー‥‥では、いくとするかのう‥‥」
「おやかた様、一応呼び出しなのですから」
 爺が耳元でぼそぼそと、それに反応して不機嫌気味に「んむー」と返事。そんなおやかた様を見ながら苦笑いを浮かべた開拓者たち。そろそろ出発だ。

●のんびり?
 都から出発し、おやかた様を守るようにぐるりと囲まれた状態で開拓者たちが歩いていく。そろそろ夏の季節が近づいているようで日差しが少しきつい。おやかた様が熱にやられないように、と白銀狐がぴったりと並んで日傘をさしている。
「道中に何があるか全くわかりませんねぇ‥‥」
 槍を肩に担ぎながら八重坂が辺りを見ながらのんびりと歩く。まだまだ出発したところだが。今回は直観に頼って少し能動的に。
「おやかた様、とりあえず距離と日程位わからんかの?」
 煙管の煙をぷかぷかと出しながら咲宵が尋ねる。シノビの世界ということなので言えないことはあるだろうと思いつつも。
「んー‥‥大体、一日二日と言ったところじゃなぁ‥‥別に危ない所もないし、普通に歩いていても明日には付けるのう」
 あれあっさり言っていいんだ、と思いながらそれを聞く。詳しい場所は言っていないのでそのあたりは秘密なのかのう、と。
「そういえば、案内っていうけど、行先が分からないと案内もしようがないな」
 あっ、と声を上げて気が付く。なんだかんだでちょっと抜けているのだろうか、とはいえ、護衛することにか変わりないのでしっかりと辺りを見ながら進んでいく。
「まぁ、あまりピリピリしていてもどうにもならないし」
 そんな事を言いながら口笛を奏でながらフィロが歩く。おやかた様はどちらかというと面倒くさいといった感じの顔で、嫌がっているわけではない顔をしている。ちょっと神経質になりすぎたかな、と口笛を奏でながらそう思う。
 そうして口笛と鳶の鳴き声を聞きながらのんびり進んでいく。
 
 特に大した事もなく、陽気の中をどんどん歩いていく。出発したのはまだ朝方だったのだが、もう太陽も真上だ。そろそろお昼ご飯でも食べるかなっと言ったところだ。
「おやかた様、里までの間に甘味とかないですの?」
 「えへへ」と言いながら歩きながら撫でる。そんなおやかた様は顎に人差し指を当てて「うーむ」と一唸り。どこがいいかなぁと考え中の様だ。(その間も撫でられている)
「里まで行けば大福があるのじゃがなぁ‥‥わらわも小さい頃に何度かしか行った事がないのでなぁ」
 今でも十分小さいだろ、と誰かが言ったような気がする。というか全員が心の中で呟いたに違いない。
「ふむ、ならどうして行きたくないのじゃ?」
「むぅー‥‥付いたら多分わかるぞ?」
 はぁ、と溜息ひとつ。旅路というかこういうのんびりとしたのは嫌いじゃないようなので何が嫌いなのか今いちわからない。
「そろそろお昼にでもするかい?向こうに茶屋もあるようだし」
 ルキノが警戒のために使っていたバダドサイトでお店を一つ見つける。普通にどこにでもありそうな茶屋だね、と一言。
「うむー‥‥少しは気分も変えないとのう」
 そんなわけで茶屋にたどり着き、ほっと一息。
 おやかた様、白銀狐、咲宵、ルキノ、レオがまずは中で休憩を。サラファ、フィロ、琥宮が偵察がてら先に言って様子を見てくるとのこと。
「では、とりあえず人数分のお団子をもらおうかの」
 おやかた様が足をぱたぱたさせて楽しみに待ち始める。その間に咲宵が人魂を使って偵察している、厨房へと入り毒の類を入れているかの確認を。
「(ふむ、とくに問題はなさそうじゃの)」
 一通り見ながら出てきたお団子を見てから人魂を解除しておく、とはいえ相手はシノビなのを忘れてはいけない、もともと練りこまれていたかもしれないとかそんな事を考える。
 おやかた様、お団子の串を持ってあーんと口を大きく開けてぱくっとかじるところにレオが横取りして。
「んぐ、んむ‥‥ごめんな、おやかた様、ちょっと毒見させてもらったぜ!」
 からんと、お皿に串を置いてからしばし様子見。特に何ともない。
「うー‥‥早く食べたいですの‥‥」
 何かあった時の為に一番後に食べる白銀狐は先ほどから尻尾を振りながらお団子を見つめながら机に突っ伏す。ついでに真向いに座っているおやかた様もちょっとむすっとしている。お団子の恨みは怖いのです。
「生贄が生きていたようだし、私たちも食べるか」
 ルキノがさらに手を出して食べ始める。こちらも問題なし。
「では、こちらも」
 サラファもぱくっと団子を食べてみる。やっぱり問題なし。
 白銀狐も続いて食べて、おいしいですの、と一言。尻尾振りまくり。
「んむー、やっとじゃ‥‥」
 はむっとおやかた様も食べ始めて‥‥んっと一言上げると苦しそうにし始める。
 それを見てすぐさま行動を起こして。
「店主!てめぇ、何をしやがった!」
 素早く近くにいた店主を捕まえて尋問し始める。
「場合によっては‥‥わかりますね」
 鞭を撓らせながら店主へと詰め寄る。
「ここで当たりとはね」
 ガチャっと銃を取り出して詰め寄っていく。
「おやかた様大丈夫ですの!?」
 近寄って様子を見つめる。お茶を指さして取ってくれと言っているらしいので、素直に渡すとそれを一飲み。
「ほぉ‥‥大きくて喉に詰まったのじゃー‥‥」
 全員振り向いて「ほっ」と一息。とりあえずレオは土下座して謝っている。
 そんな騒動が終わった後に、偵察に行っていた三人も戻ってくる。
「特に何もなかった‥‥」
 八重坂が気を張りすぎのせいかちょっと疲れている。無理もないだろう。
「何とも、意外と平和で拍子抜けと言ったところだ」
 フィロもお団子を食べ始めて、んまいんまい、と言いながら食べる。
「初めての割には、楽だな」
 琥宮もお団子を食べながら一息。

 全員お団子を堪能してから今日の宿へとたどり着く。
 本当にここまでは何事もなく、平和そのもの。口笛やら歌やらのんびりとしながらと‥‥宿に入っても殆ど戦闘という戦闘はなく、たまにレオがちょっと突っ走ったりや八重坂が直観で攻撃したところは別の獲物(小型のアヤカシ)だったりとかなり拍子抜けだった。
 勿論この夜中も大したことはなく。

●おやかた様が来たくなかった理由
 そんなわけで二日目、朝から毒見やらなんやらでまた一騒動起こしてから数時間。
「うむぅ、ついてしまったのう‥‥」
 おやかた様の案内で道なき道‥‥ではなく、本当に普通の村‥‥というか町にたどり着く。本当にここで合っているのかと疑いたくなるほどのんびりとして、それなりに活気のある町だ。
「普通の町ですね‥‥特に何もないようで」
 軽くフィロが辺りを眺めて感想を。どちらかというとあまりにのんびりしているせいで気が抜ける感じもする。
「むー‥‥確かこっちじゃの‥‥」
 そうして案内されたのはちょっと大きめのお屋敷。門番が二人、おやかた様を見つけてすぐに扉を開ける。開拓者たちもその屋敷の中に入り、案内された部屋で待機。そうしているとおやかた様だけが呼ばれて奥の部屋へと。とにかく何が起きるかわからないので全員臨戦態勢にはなっている。
 ‥‥しばらくして、奥の部屋からおやかた様の鳴き声(いつものにゃー)が聞こえてくると同時に全員が一気に襖をあけ放ちながらおやかた様の所へと。
 組み敷かれてばたばたしている所へと八重坂の蜻蛉、白銀狐の風神、サラファのラティゴパルマ、レオのオーラをまとっての突撃、琥宮の呪縛符。追加に攻撃する直前にフィロの奴隷戦士の葛藤もおまけだ。つまるとこ総攻撃。組み敷いていた人物はそれによって倒されることはなく、ひらりと避けて開拓者へと向き直る。
「おやかた様に何をした!」
 レオが剣を向けて声高らかに。
「返答次第によっては」
 サラファが鞭を振りながら。
「少し痛い目にあってもらわないと」
 槍「黒十字」の先端を向け。
「いけないですね」
 ルキノが銃で狙いつけ。
「お仕置きですの!」
 むすーっと白銀狐が尻尾を逆立たせて。
「‥‥元気いっぱいねぇ、この子たち」
 楽しそうに微笑むと正座して、おやかた様を抱きしめる。もちろんにゃーにゃー言ってるおやかた様。‥‥微妙に空気が違う感じがして各々獲物をおろし。
「これが来たくなかった理由じゃよ‥‥わらわの母上の姉じゃ‥‥」
 存分に可愛がられているおやかた様を見つめて全員が納得する。
 撫でられるわ、抱きしめられているわ、挙句の果てには接吻してるわで愛情表現がすごいことに。
「まぁまぁ、家族じゃないのー」
 全員がため息をついておやかた様を見つめる。いくら強いといってもまだまだ子供ということか、と。そんな結論に至る。
「ちなみに、ここの里長だからのう、礼儀よくするんじゃぞ?」
 それを聞いてまた驚き、全員がとりあえず土下座。本人は気にしていないようだが。
「でも、おやかたちゃん、こんなにお弟子さんいて成長したわね‥‥お母さんうれしい!」
 それなりに大きい胸でおやかた様をぎゅうっと抱きしめつつ。
「この子、寂しがり屋だからね、みんなとなかよくできててうれしいわ」
 にこっと微笑みかけて。

 なんだかどっと疲れた、そんな感じに開拓者一同もう一度大きなため息をつく。

●ご褒美
「とにかくみなさんご苦労様、今日は温泉にでも浸かってのんびりしていってね」
 そんな事をいいながら里長がおやかた様を胸の下に抱きしめて頭の上に胸を乗せている。おやかた様はというと「おもいおもい」と言いながらばたばた、年ごろなので恥ずかしいだけなのよねー、と勝手に決めつけられる。この里長、侮れません。
「ま、まぁ‥‥注意することに越したことはないですし」
 瞬間的に飛び入ってラティゴパルマをほぼ直撃させたのもあってか少し反省気味、どんどんキレが良くなってくのう、と逆に褒められたりしていたのだが。
「とりあえず、いろいろと話を聞いてみるかな」
「あ、私も聞きたいですの」
 ぱたぱたと白銀狐と琥宮がおやかた様と里長に話を聞いてる間、他の開拓者は今日の温泉宿に先に向かう。その間にいろいろとおやかた様についてや開拓者についてなど話を。
「いろんなことを見ていろんなことをして、それから目標を見つけても問題はないのよー?」
 琥宮には里長がそんな事を言っていた。これからの人生どうするかは自分次第、とのこと。
 それとは別に白銀狐がおやかた様から手招きされ。
「わらわといてくれてありがとのう、ご褒美じゃ」
 ぽんと手渡される木の板。玖流滝の家紋が書かれた物を押し付ける。どうやら一人前の証とのこと。ぺたんぺたんと尻尾を振ってそれを嬉しそうに懐に入れる。

「何か刺客とか送った方がよかったかしら?」
「‥‥まだまだ危険なことはさせたくないのじゃが‥‥」

 そんな物騒な話をしていたのはまた内緒。