天才の黄昏
マスター名:如月 春
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 難しい
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/12/23 11:07



■オープニング本文

●街郊外の平原にて

「つまらないですね」

 そう吐き捨てるように刀を振るい、目の前にいたサムライを袈裟斬りする。
 ふぅと一息ついて辺りを見回すとサムライやら志士、その他武芸をしていると思われるものがゴロゴロと倒れ、血の海を作っている。
 血の付いた刀を思い切り振り下ろし、血抜きをする‥‥そのサムライは黒い和装と外装、血の様に紅い眼をし藍色の艶やかな長髪を靡かせながら刀を鞘にしまい、周りの状況を一瞥する。どれも自分には到底及ばず、退屈しのぎにもならない。
 
「女だから甘くみた、と言うわけでもなさそうですが」

 息絶えたサムライを蹴り、仰向けに転がせ、どれ程の者だったかを思い出すように眺め始める。
 しかし、自分よりも弱いのと言う部分しか思い出せない。
 それ程自分が強いと言うのも知っている。
 この惨劇を自分で起こした自覚もしっかりとある。
 それでも罪悪感や畏怖等は全くと言っていいほどない。
 
「もう少し遊べると思いましたが、話にもなりませんね」

 と、言うが転がっている死体はそれなりに名のある者、腕の立つ者が多い。
 彼女の噂を聞いて、挑戦しに来たのだが結果はご覧の通り。
 その噂とは家族をあっさり超え、数ある道場を血祭りに上げたと言う。
 
 彼女は幼い頃から刀と共に生きてきた。
 まずは姉妹を超え、次には親を超え、名のある武芸者を超え、武名を欲しいままにしている。
 
「仕方が無いですね‥‥暇ですし道場でも潰してきましょうか」
 
 死屍累々の平原を背に、外装を翻しながら街に消えていくのであった。


●開拓者ギルド
 
「ふーん‥‥で、揃いも揃って恨み辛みが溜まったって訳か」

 ギルドにきているミイラ男を見ながら煙管を吹かし、事について静かに聞き始める。
 どうやら彼女の事を快く思っている人間はいないらしく、やはり色々と恨まれているのだ。
 やられた者にしたらぼろくそに負けた上に見下されたのだ、当たり前と言えば当たり前だろう。

「それに辻斬りしてるって噂もあるんですよ、夢さん」

 そんな夢は煙管を深く吸い、紫煙を吐き出すと、依頼書の作成に取り掛かり始める。
 
「まぁ、私は依頼されたら書くだけだからな」

 さらさらと依頼書を作りながらミイラ男と話を進めていく。
 何だか血生臭い話になってきたなぁ、と思いながら煙管を吹かし、依頼書を張り出すのであった。


■参加者一覧
梢・飛鈴(ia0034
21歳・女・泰
無月 幻十郎(ia0102
26歳・男・サ
水鏡 絵梨乃(ia0191
20歳・女・泰
霧崎 灯華(ia1054
18歳・女・陰
リューリャ・ドラッケン(ia8037
22歳・男・騎
風和 律(ib0749
21歳・女・騎


■リプレイ本文

●まずは
 ギルドの方へと竜哉(ia8037)が一人歩みを進めて辻斬りについての話を聞き込みする。
まずは生きていたミイラ男状態の男に。
「ぶっちゃけた話殆ど情報はねぇよ」
 男の状態を見れば大体は分かるのだが、包帯塗れ、よく生きていたなと言えるぐらいだ。
「何かないのか?共通点や流派や技は」
「さぁ?俺が殺りあった時は泰拳士やサムライ、志士、色々いたし男も女も関係なかったな、流派も知らんな、我流だろ。」
 震えた手で煙管を掴み一吸い。深く吸い込んだ後に大きく吐き出し。
「俺はなぁ、確かに逆恨みともいえるだろう依頼を頼んだぜ?だけどな、それ以前に死人が出ているんだよ、あぁ言う奴はこの先ずっと殺しをするのもあるから頼んだんだよ。それにな、ここでてめぇが俺と話している間に何人殺せると思っているんだ?」
 こつっと煙管を灰受けに置くと、鋭い目つきで見つめ。
「あとは‥‥天才ってのは枠に縛られねぇんだとよ、俺から言えることはこれぐらいだ」
 無理をしていたのか一息ついて壁に寄りかかるとぐったりとし始める。
「‥‥分かった、ありがとう」
「せいぜいしなねーようになぁ」
 竜哉を見送り一息。
「‥‥ありゃ死ぬな」
 そんな事をいいながら煙管を吸い続けるのだった。

●対決
 しばらく時間がたった後、全員が合流し玲のサムライをおびき寄せる事にする。場所は町から少し離れた平原、特に何があるわけでもなくただただ広い場所。とにかくまずはサムライを見つけて誘い出す‥‥のはあっさりと出来た。普通にそこらへんを異様な威圧感を放ちながら歩いていたのだ。そして背中にはいたるところの看板が積み込まれていた。
「さ、早速やりましょうか」
 ゆらりと開拓者の前にサムライが前に出ると笑っている。
 どうも出鼻を挫かれたような感じではあるが、とにかく依頼の為にも霧崎 灯華(ia1054)が動く。
「お姉さん、楽しめそうね」
 と、全長二四〇程の死神の鎌を振りながら一気に接近し斬りかかりに行く。
「冗談なら、消えてくれないかしら」
 刀すら使わずに数歩前に出て刃の付け根を押さえ、顔を近づける。
「いい血の匂いをする子ね、ただふざけて死合う気なら引っ込んでてくれない?」
 鼻を鳴らし頬を舐めてため息を付いて蹴り飛ばし距離を取る。
「今ので三回、仕切りなおしてあげる」
 ぽつりと呟いた後にもう一度距離を取りゆらゆらと動き始める。
 その場にいた全員の目つきが変わり、死合を始める。

 まずは梢・飛鈴(ia0034)と水鏡 絵梨乃(ia0191)が前に出て相手の足を止めるべく相手をし始める。
 水鏡は既に古酒で一杯やった後だ、腰にふらふらと瓢箪を揺らしながら乱酔拳を使い相手を貼り付けるにするべく、攻撃を繰り出し始める。サムライも楽しそうに徒手で応戦しながら横目で梢の動きを追い続ける。円運動をしながら水鏡の邪魔にならない程度に苦無を投げつつ牽制する。
「人を斬る以外に楽しい事は、っと‥・・ないのか?友達を作ったり、料理したり」
「人斬り?死合ですよ、何を間違った事を」
 バシバシと拳を打ち合い、飛んでくる苦無を掠めながら水鏡の質問に答える。
「まぁ、斬るのと斬られるのは背中合わせってこっちゃ」
 苦無を投げつつ水鏡の攻撃にあわせて蹴りを飛ばしつつ相手を押し込んでいく。サムライはというとくすくすと笑い楽しんでいるようにもみえる。
「まー、そろそろ年貢の納め時ってやつだナ」
 そういいながら瞬脚で距離を取りながら間合いを見計らう。水鏡とも攻防は続くのだが、その場から動けないと言う弱点がある。苦無を投げての牽制、次の苦無の準備をしている最中に一気に間合いを詰められて上段斬り、振り下ろされるその直前に間合いに入り込み気力を極限まで注ぎ込んでのカウンター狙い。肩口から斬られ始めた瞬間に柄頭を殴り刀を飛ばそうとするのだが。
「いまいち、手が足りない」
 大きく上に跳ね上げられたのを利用して鞘を抜くとそのまま梢の顎を殴りあげる。視界が一瞬白くなりつつも少し下がりぺっと血を吐き出す。
「なかなかやる、アルな」
 とは言え柄頭をぶん殴った威力はかなりの物で刀の持ち手を変えている。利き手がどうかは分からないがかなりの威力があったのは確かだ。
「ボクも本気を出さないといけないなぁ」
 拳から足技に切り替えた水鏡が空気撃と泰練気法・壱を組み合わせて何度も同じ場所を攻撃し始める。攻防は続き水鏡がサムライの攻撃を上半身を逸らし避けたところに大きく横に振りかぶる鎌の一撃が風を切りながら飛んでくる。
「天才だかなんだか知らないけど、あたしのこと舐めるんじゃないわよ」
 霧崎も鎌使いとしてのプライドか先ほどのが許せないのか目つきも変わり本気で斬りかかる。上半身を逸らした水鏡の前髪も数本巻き添えにしながらサムライを刈り取るように向かうのだが、幾ら強力とは言え大鎌、対一人用の武器では全くないわけで。先ほどと同じように数歩前に詰めてから一閃、左下腹部から右肩へ一筋の線を作り白い着物を真っ赤に染め上げる。
「動くと死ぬわよ、早く治療しないとはらわたもでてくるし」
 冷たく鋭い目でそういうと蹴りを入れて吹っ飛ばされる霧崎。その手から落ちた死神の鎌を拾い、一呼吸。
「‥‥ふふ、くたばれ」
 出血をおさえて止めながらふらふら立ち上がる霧崎が親指で首をかっきる動作をする。事前に仕込んであった地縛霊がサムライを襲い声があがる。
「くっ、やるじゃない、楽しいわ」
 刀についた血を舐め取り、一気に水鏡と梢の横をぬけて霧崎のほうへと走り出す。突きの構えで固定し、一直線に喉を狙うのだが。
「それは流石にさせませんよ」
 風和 律(ib0749)が横から滑り込み、重々しい突きを大剣で受けきる。ぎちぎちと火花を散らしながらにらみ合いを続ける。
「騎士、相手をしてて一番つまらないわ、防御するだけ、受けるだけ」
 刀の切っ先を捻り返しての切り上げ、風和の横髪を数本飛ばしてまた距離を取る。
「言ってくれる‥‥!」
 ぎりっと奥歯をかみ締めている最中に無月 幻十郎(ia0102)と竜哉が次に攻撃を開始する。一対多ではどうしても三人前後で戦わないと邪魔になるのもある。とりあえず最初の三人の功績は大きい。
「辻斬りの噂は本当かね?」
 無月が相手の刀と鍔迫り合いしながら尋ねる。中々に押しの強いといい。
「先ほど言ったでしょう、死合をしていると」
 鍔迫り合いから離れ、刀を構えなおすところに竜哉の苦無が飛んでくる。流石に足止めとは言え、嫌そうな顔はする。
「チィ‥‥小ざかしい‥‥」
 柳の様にゆれ、一気に竜哉へと斬りかかる。苦無に通した糸を使って引き戻すのは間に合わずに風和が間に入りまた刀を受ける。
「くっ‥‥中々重い攻撃を」
「ほら、こっちだ!」
 抑えられたところを無月が追撃し示言と唐竹割での攻撃だが、愚直すぎるせいもあり、受けられ軽く冷や汗をかき始める。中々攻撃が通らない。守るところは守り、攻撃するところは攻撃する。面倒すぎる相手だ。刀自体をどうにかしようにも肉厚すぎて折ることは不可能だと打ち合っていて分かる。
「しかし太刀筋が洗練されていて美しい」
 そう呟きながら相手と剣劇を繰り返す。ぴしぴしと自分のほうには攻撃を食らい始めるが、此方の攻撃は相手にあまり当たらない。竜哉の苦無と風和の援護があってこそ現状が成り立っていると言うところだろうか。
「小ざかしいんだよ!」
 冷静だったサムライが声を荒げていくとどなく防御に回った風和に突きを繰り出す。オーラショットでの牽制は既に意味はなく直撃しても真っ直ぐに突っ込んでくる。
「まずい‥‥!」
 大剣を構えて防御するのだが、刀の反りを使い、開いていた腹部へと鎧を貫いて突き刺さり、鮮血が舞う。
「騎士様は意外と姑息ですね」
 オーラショットの直撃を貰った部分から煙があがり痛々しくはなっているのだが、そんなものは関係なく、ぎりぎりと刀を押し込んでいく。
「ぐっ、あぁ‥‥!」
 一撃を貰った瞬間からちかちかと点滅する視界が痛みによって鮮明になっていく、内臓は避けているがぶちぶちと肉の切れる感触が風和を襲い、青ざめていく。
「やばいな」
 竜哉が短剣をもってサムライに近づき風和から引き離すべく攻撃、無月もそれにあわせて攻撃を繰り出す。サムライは軽く舌うちをすると風和から刀を引き抜き、鞘と刀で短剣と刀の攻撃を受ける。
「もう少し気楽に生きれれば、いいんじゃないかね」
 と、そう無月がいいながら引き離すと、一対一へともつれ込む。その間に竜哉は風和へと慌てて近づいて治療を始める。とは言え、流石に簡易な物しかないので応急措置ぐらいなのだが。二人で火花を散らしながら笑いながら刀を振るうのだが、無月にしては何時首が飛ぶか分からないせいで冷や冷やしながら攻撃をしのぐ。
「なんとも、いい腕なのにもったいない」
「それは私が決める事だ」
 刀の軌道を逸らしてそのまま無月の肩をえぐるように貫く。
「貴方達ふざけているのなら消えてくれないかしら」
 ぐりぐりと深くえぐり続け、動かすたびに無月のうめき声が響く。
「死ぬ気も殺す気も、ましてや勝つ気もないのに相手しないでくれませんか?」
 顔が血に濡れながらも何かをはき捨てるような顔でいいながら刀を下ろし始める。
「っと、流石にまずいだろう」
 水鏡が飛び蹴りを食らわすと不意打ちの攻撃に刀を離して数歩後退する。そこから水鏡と梢が連携攻撃で押し込み、どうにか無月の致命傷を避ける。無月は息を荒くしながら肩口の刀を勢いよく引き抜いて投げ捨てる。真っ赤に辺りが染まり血の匂いが意識を奪うようにあたりがちかちかとする。
「くぅ、きつい、な‥‥」
 ぜいぜい息を荒げながら傷口を抑えてその場に座り込む。
 その間にも攻撃が続きサムライがどんどんと後退しているところに。
「‥‥血が、足りないじゃない」
 横から血まみれになった霧崎が死神の鎌を振り下ろし一閃、サムライの左腕がザンといい音と共に宙に舞う。

●最後
 自分の腕が飛んだと言うのに冷静に息を吐いて笑い始める。
「ふふふ‥‥多数とは言え私の腕を飛ばすとは、面白い、面白いわ」
 そのまま後ろに下がっていくと一気に走り出して逃げ始める。
「いい事を教えてあげるわ、辻斬りなんて馬鹿は私はしないのよ、ただ私に向かってきたのを殺しただけ、それだけよ」
 それだけ言い残して夕闇の平原へと消えていく。
 
 数日して取り逃がしたとギルドに言われていたが、平原に一つの死体があがる。
 左腕を切られた黒装束の女の死体が一つ。
 アヤカシかケモノにやられたのか顔は判別できなかったが開拓者の証言と同じ服装であったので本人と断定した。なんとも呆気ない終わり方ではあったが、なぜか開拓者達は妙なざわめきを覚えていた。