【お館】屍退治
マスター名:如月 春
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/05/23 00:32



■オープニング本文

●事の始まり
 相変わらず何時もの様にごろごろとしているおやかた様。
 こんな感じですがお仕事はしています。
 気配を感じて体を起こしてから天井裏か差し出される手紙を受け取り読んでいく。
 最近何かと意識の変革が起こったのかシノビとしての自覚が中々に出てきている。
 手紙を確認してから、二度三度手を振ると気配が消える。

「お手紙、ですかな」

 お付の爺が少し間を空けてからおやかた様の部屋へと入っていく。
 ことんと館と書かれた湯飲みを置いて尋ねると。

「んー、そうじゃな、ここら辺の状況についてちょっとのう」
 
 ぱらぱらと手紙を真剣に読んでいるおやかた様。
 爺は成長したおやかた様を見れるだけで幸せです。

「爺は嬉しいですぞ‥‥」

 ぐっと握りこぶしを作りながら涙を拭いている。
 それはさておき、手紙の内容を読んでいるとおやかた様がふふんと一声。

「おぉ、丁度よさそうな依頼がだせるのう、ちょっとギルドにいってくるのじゃ」

「はっ、お気をつけていってらっしゃいませ」

 ぴしっと丁寧にお辞儀をしておやかた様を見送っていく。
 心の中で、立派に成長していますぞ、と空を眺めて呟いたとか。

●ギルドにて
「なんだ、チビ助、また依頼か?」

 おやかた様をわしゃわしゃ撫でながら夢が相変わらずの態度で受付をしている。

「おっ、おおぅ‥‥うむ、ちょっと手ごろな物があってのう」

 そういうと手紙を取り出して一部分を指差し。

「丁度魔の森に近い所に廃村があるのじゃが屍がいてのう、既に生存してるものは避難なりしていないのだが、屍がうろつくようになっての」

「調査がてらの殲滅戦って所かねぇ?」
 
 煙管をぴこぴこと揺らしながら示された手紙の部分を読んでいく。
 確かにそう記述はあるのだが、今一確証がない。

「これ、信用できるの?」

「ふふん、わらわを見くびるなよう?確実な情報じゃ」

 自分の手柄ではないが胸を張ってむふっと。
 ふむ、と一言呟いてから依頼書を作り始める夢に。

「おっと、あまり熟練した開拓者はいらぬぞ、それとわらわも同伴するのじゃ」

「はいはい」

 そんな訳で屍退治の依頼が張り出される事となった。


■参加者一覧
風間・総一郎(ia0031
25歳・男・志
八重坂 なつめ(ib3895
18歳・女・サ
白銀狐(ib4196
14歳・女・シ
ルキノ(ib6603
20歳・女・砂
ニッツァ(ib6625
25歳・男・吟
スゥ(ib6626
19歳・女・ジ
神座亜紀(ib6736
12歳・女・魔
レオ・バンディケッド(ib6751
17歳・男・騎


■リプレイ本文

●出撃準備
 開拓者八人、一部おやかた様の顔見知りが混じっているが、ともかく開拓初心者がおやかた様と合流して各々人物像を眺めて感想をいい始めるという事に。
「なぁ!おやかた様って俺の親父よりも偉いのか?」
 レオ・バンディケッド(ib6751)がおやかた様を見下ろしながら訪ねる。本人に悪気は無いのだが、普通に興味があるのだろうか、少し緊張しながら言っている。
「ちなみに俺の親父はジルベリアじゃ、有名な一流騎士だぜ!」
 自慢の父親なのか胸を張って。
「ほぉ、それは凄いのう‥‥それは期待しないといかんなぁ」
 敢えて名の部分避けてを少し意地悪気味に言うとさらに緊張し始める。初めての依頼と親の名前を背負っているせいだろう。
「おやかた様なんていうからどんな立派な人が来るかと思ったら、ボクよりも小さい子じゃないか」
 とことこ近づいていき、おやかた様の頭を撫でながら神座亜紀(ib6736)が可愛がる。頭を撫でまわし、頬をつついていると。
「おっ、むっ‥‥これ、依頼者に馴れ馴れしいのはいかんぞ」
 ぺしーんとおでこに一発デコピンがはいる。かなり容赦のない一撃にしゃがみながらおでこを抑え始める。ちょっと涙目。
「デニの踊り子、スゥボータ‥‥スゥ(ib6626)って、呼んでね?」
 おでこを抑えている神座を見ていたおやかた様を撫で始める。おやかた様自体、撫でられるのは嫌がっていないのでそのままぽふぽふ撫でられている。
「すんませんなぁ、キャラバン、デニ ニデーロの音楽担当ニッツァ(ib6625)言います、よろしゅうに」
 スゥを引き離しながらおやかた様に挨拶。もうちょっとと言いながら膨れているスゥをなだめながら準備を始める。
「廃屋が多いと、視界が怖いかも」
 少し離れた所で依頼書の場所の部分と地図を眺めながら八重坂 なつめ(ib3895)が、そう言いながらじっくり見ている。何事も慎重になるのは悪い事じゃない、とおやかた様がぽつりと言っているのを本人は知らないだろう。
「おやかた様の二度目は討伐依頼か、今回もやってみせるさ」
 んー、と伸びながらルキノ(ib6603)が、おやかた様と会って挨拶を交わす、開拓者になってからお世話になっているのと、顔見知りなのもあって前回よりは緊張していない。
「屍さんですか‥‥ちゃんとお掃除しないからですの」
 特製のお酒玉を腰の袋に詰めておき、おやかた様に挨拶をしているのは白銀狐(ib4196)前回から引き続いてのおやかた様の依頼、相変わらずぺたんぺたんと尻尾を揺らしながらおやかた様の頭をなでる。
「さて、顔合わせもいいころ合いだし、行きますかい」
 煙管の紫煙を燻らせてから風間・総一郎(ia0031)が立ち上がり、出発の準備を始める。
それを起点に全員が村に向けて出発をし始める。
「さて、どうなることやら」
 おやかた様は楽しげだ。


●屍の山
 しばらくしてから村の入り口にたどり着く。
「とりあえず村の真ん中まで歩くぞ」
 風間が先陣を切って先に進んでいく。その後ろを開拓者とおやかた様が続いていく。ともかく全員が村の中心部に向かって進んでいく。今のところ屍の姿は見えず、ただただ廃屋があるだけだ。
「そういえば、おやかた様、この村を選ばれるなんて何かありますの?」
 顎にに人差し指をあててかくりと首をかしげながら尋ねる。おやかた様は一言「秘密じゃ」と楽しそうにいっている。
「子供同士仲良くしよう?」
 先ほどのでこぴんがあってかちょっと引き気味に月餅を取り出して。
「これ、特製なんだって、終わったら半分こして食べよ?」
 差し出された物を見つめてから、おやかた様「ちゃんと頑張ったらの楽しみにしておくのじゃ」と言って懐に仕舞いさせる。仕事が近づくとやはり険しい顔つきになる。
「緊張してきた時はやっぱり、笑うのが一番だぜ!」
 両手足が一緒に出てるのに気が付いて声を出して笑い始める。いきなりの実戦で緊張しないものはいない、これから慣れていけばいいだけと言われて笑いながらとても深く深呼吸、先ほどよりは大丈夫そうだ。
 
 そうやって話している間に村の中心までたどり着く。
「んじゃ、俺達はこのまま北側を見てくるわ、そろそろ屍共も動き出すだろうよ」
 そういって北側、南側の相談したとおりに分かれる。おやかた様は神座に言われて北側へと一緒に行く事となる。

 北側、風間、八重坂、神座、レオ、おやかた様の五人で進行していく。瘴気もだんだんと濃くなり何時でてきてもおかしくない状況に。
「ねえねえ、おやかた様、超越聴覚でアヤカシの場所とか何言っているか聞こえない?」
「んー‥‥どうだろうなぁ、言っているかも知れんし、言ってないかも知れんのう‥‥」
 おやかた様、本当に見ているだけのようだ。意地悪だなぁ、と言われながらも索敵しながら進んでいく。
「流石に彼方此方朽ちているな、破棄されているようだし気兼ねなくぶっ壊せるのはありがたいが」
 未だに現れない屍に注意しながらどんどんと進んでいくとおやかた様。
「‥‥ふむ、ではお手並み拝見じゃの」
 何処からか取り出したのか生肉をぽいっと少し離れた所へ投げるとそれに釣られてぼこぼこと地面から湧き出し始める。
「おぉ‥‥出やがったな、ゾンビアヤカシ!見習い騎士だからって舐めるなよ!」
 手身近にやってきた屍に一撃、まだまだ荒削りな一撃だがしっかりと体重の乗ったいい攻撃が屍を真っ二つにする。その手ごたえをかみ締める。
「固まっているから、大丈夫かな」
 此方も素早く槍を「黒十字」を構えて一閃、迷いなく振るわれたその一撃におやかた様がほうっと一言漏らす。うまく槍の間合いを使って近づかれる前に切り捨てる、確実で槍の攻撃方法として最善だ。
「出てきた方法が納得いかないが、気合入れていくぞ!」
 煙管をくいっと上げながら姿勢を低く、一気に刀を振りぬく。それと同時に瘴気が溢れ屍が消滅していく。此方も太刀筋に迷いはなく、手堅く屍を殲滅していく。
 うまく円陣、正確には三角形での隊列で後衛の神座が後ろに付くのだが、均等の取れた構成で詠唱時間も稼げる。おやかた様の隣で呪文の詠唱を終わると同時に。
「うなれ、風の刃!」
 目の前に少しずつ迫ってきている屍に渦の巻いた風が襲い掛かり、あっという間に切り裂いていく。一体一体は弱いが数が多いせいか詠唱後は連射しながら前線を保つのに働き始める。
「ふむふむ、中々の連携に迷いのない太刀、素晴らしいのう」
 大福片手にその状況を眺めながらおやかた様が分析し始める。初対面での戦闘でどうなるかと思っていたがしっかりと戦線も維持出来ている、手の一つや二つ出そうかと思っていたが特にそんなこともなく。
「穏やかに土に返してやりてぇが、こういう方法しかなくてなぁ!」
 一体、また一体と叩き伏せつつ蹴散らしていくと。
「ま、瘴気の塊じゃからなぁ‥‥ではわらわはちょっと南側も見てくるぞよ?」
 しゅっと頭の上を飛び上がって屍を踏みながら南のほうへと向かっていくおやかた様を眺めながらも中央に向かって退きながらの戦闘を始めていく。

 南側、白銀狐、ルキノ、ニッツァ、スゥの担当だ。北側で戦闘が少し始まる前までさかのぼり‥‥。
「んー‥‥ここまでひっそりしていると、逆に怖いですの」
 耳をぴこんと立たせながら超越聴覚を使いながら索敵している白銀狐。耳と目の役目なので常に辺りを警戒しながら先行している。
「遠くのほうにも特に何も見えないね」
 瞳孔が開き、ベドウィンに伝わる遠視術を使いさらに索敵してみるが特にはいない。たまに向こう側に別のアヤカシを見つけたりするが此方には気が付かないほど遠距離なので無視をする。とにかく索敵を進めて、しばらくするとぴくっと耳が動き。
「向こうで始まったみたいですの‥‥こっち、もっ!」
 と、素早く振り向いて手裏剣を投擲。ザクっと言う肉に刺さる独特の音が響くと這い出てきた屍の一体が瘴気になっていく。
「結構、面倒な相手っぽいね」
 湾曲した刀身での一撃を振るいながらさっくりと近づいてきた一体を倒す。流石に騎士が使うような叩き潰す刀身ではない為に切れ味は抜群だ。一度目に足元を狙い、崩れ落ちた所へと二度目の斬撃、屍の首が宙を舞いながら瘴気と化していく。
「ん、おきゃく、さま」
 くるりとその場で回って微笑み、バイラオーラで一種のトランス状態になってから屍の前に出て踊り、引きつけ‥‥るにしてはかなりの大人数だ。それもそのはず、湧き出ると沸き出続けるのがこいつら。予想外の数におろおろし始めるのを。
「ほら、絡まれんよう、きぃつけなー?」
 さっそく武勇の曲を奏でて前衛の火力を上げ、追加や、と言いながら騎士の魂も演奏していく。途中前衛に屍が近づいた所を苦無で攻撃‥‥しようにも携帯品に入れていたためもたついて攻撃できなかったりとはあるが、特に問題もなく、屍を瘴気化させていく。
「どれ、大丈夫かの?」
 ぽこぽこと屍を踏みつけながらおやかた様がやってくる。一同ぽかんとしながら其れを眺めていると。
「ちょっと気になってのう‥‥そろそろ合図が来るじゃろうよ」
 ぽしゅんと狼煙銃の合図が空に打ち上げられ、発光。此方もスゥが其れに反応して呼子笛を吹いてから引き始める。
「では、中央にいくですの」
 手製の炸裂玉を使い、殿を務める白銀狐、足を送らせてから素早く早駆で隊列に戻ると一息付く。

 村中心部。
 開拓者が全員集まってわらわらと群がってくる屍を退治し始める。どうにも村の規模的に数が合わないのだが。
「瘴気のたまり場だからなぁ、色々増えるのじゃよ」
 のんびりとおやかた様が大福を食べながら解説、ご丁寧にどうも!と全員が声を揃えて言いながらバサバサと切り捨てたり、燃やしたりと中々忙しい。
「まったく、いい加減成仏してほしいね!」
 業火を纏わせながら一体、また一体と斬り燃やしつつ前線を維持。多少疲れてきたのか肩で息をし始めている。
「まったく、もって、その通り」
 一度槍をふるってから上段に溜めて、振り下ろし。大地を割りながら屍数体をふっ飛ばしていく。
「屍相手に無理するとお仲間にされてしまいますの!」
 手裏剣を使って援護射撃をしながら神座の為にお酒玉を投げて仕込みを始める。瓦を投げようと思ったが、藁葺木造が多かったので断念。
「とにかく、早く片付けない、と!」
 湾曲刀を振るった隙に近寄ってきた屍に一発弾丸が打ち込まれる。バン!と大きな炸裂音と同時に頭がなくなった屍がふらふらとし、瘴気になっていく。
「このくらいはせんとなぁ」
 ニッツァが演奏をしながら全体の能力を上げている間に、屍はどんどんと処理されていく。流石に同じキャラバン同士、スゥとは連携が特に取れている。
「数が多いなぁ、ほんとっ」
 詠唱後、収束させた精霊力を放つと燃え盛った焔が屍へと飛んでいく。それと同時にお酒玉の効果も相まってあっという間に消し炭に。
「之ぐらいで根を上げてたら騎士の名が廃るぜ!」
 思い切り剣を振るい、屍を一体事に叩き潰していく。刀とはまた違う種類の剣の為、軽やかに、とは行かないが確実に仕留めている。

●後片付け
 しばらく中央での屍との戦闘が続き、最後の一匹が切り倒されるとぱったりと出てこなくなる。索敵役の白銀狐が耳をぴくぴくさせながら辺りを調べてからほっと一息。
「もう、いないようですの」
 其れを聞いて、レオが剣を空に突き上げ。
「よっしゃー!初依頼完遂―!」
 元気がいいのうと、おやかた様に言われるとそれに元気良く答える。
「おやかた様は怪我しとりませんかー?」
 と、聞いてのんびり口を拭いているのを見てから杞憂だったなぁ、と笑う。その間におやかた様、スゥに「えらいえらい」と言われながら撫でられまくり。
「早く帰って一杯やりてぇなぁ‥‥」
 その光景の隣でそんな事を言う。
「二度目の依頼も、なんとかかな」
 ルキノもふぅと一息ついて湾曲刀を仕舞う。辺りにはアヤカシも見えないので大丈夫だろうと。
「あ、そうだ‥‥」
 神座が月餅を取り出して半分こ、するところをおやかた様に止められる。
「それは帰ってからのお楽しみにするのじゃぞ?」
 逆に撫でられる。ちょっと不貞腐れているが嬉しそうにしている辺りまだまだ子供だ。
「さて、帰って報告してもらおうかの」
 帰ってちゃんと報告するまでが依頼。おやかた様がパンパンと手を叩いて纏めてから、開拓者達を帰り始める。

 これからどんな開拓者になるか、おやかた様は期待するのだった。