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■オープニング本文 ●ギルドにて いつものように夢がだるぅん受付をしながら依頼書を作って張り出してまた受付、の繰り返しをしている。 正直桜も咲き始めて雪も解けてうららかに暖かいのになんでこんなギルドで血生臭い依頼書を作らないといけないんだと、呟きながら突っ伏している。 最近は新しい洞窟や遺跡の報告も無くて受付ばかり、上司には「最近休まないで頑張ってるね」と言われる始末。 この間行ってきた牧場では殆ど仕事だったため自分で花見は出来なかった。 してきた事と言えばさくらもふらに逆もふもふされていたせいで身動き一つ取れなかった。 花見がしたい、酒やらつまみやら料理やらたらふく食って堪能したい。 何故か知らないがそんな事を思っているとやけに奥歯をかみ締め始める。 たまには良いじゃないか、少し位ハメをはずしたって。 暗い話題ばかりよりも明るい話題で世の中照らした方がいいじゃないか。 「花見がしたいねぇ」 ぽつりとそう呟いて何時もの様に依頼書に手早く書き始める。 ――今から花見するからちょっと付き合え。 そんな走り書きの依頼を貼り付けてから手近に居た開拓者を捕まえて。 「花見、したいだろぉ?」 半ば脅迫気味にそんな事を言いながら一人二人と捕まえて花見の準備を始めていく。 「なに?ほら、仕事だから仕事」 そんな事を言われたらぴっと依頼書に指を指して得意げにする。 どうみても職権乱用です。 「息抜きくらいしないと死んじゃうっての」 煙管をひょこひょこと揺らしながら敷物やら酒やら調達し始める。 相変わらずの行動派な夢だった。 |
■参加者一覧
天津疾也(ia0019)
20歳・男・志
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
空(ia1704)
33歳・男・砂
剣桜花(ia1851)
18歳・女・泰
水津(ia2177)
17歳・女・ジ
雲母(ia6295)
20歳・女・陰
からす(ia6525)
13歳・女・弓
和奏(ia8807)
17歳・男・志
リーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)
14歳・女・陰 |
■リプレイ本文 ●強制連行花見隊 夢に連行されて渋々と乗り気で花見にやってきた開拓者九人。 どういう顔ぶれでこう集まったのはとても謎だがとにかく集まったのは確かなのだ。ただ酒が飲めるだの金がもらえるだの意気揚々と話し込んでいる。 「さぁ、腐るほど酒もツマミもあるし楽しむとするかねぇ」 酒樽をごろごろと転がしながら両手にぶら下げるツマミの類。どれだけ飲むんだお前、と言われてもおかしくはない。とにかく酒樽やらツマミの運搬を終わり結構広めの一角に止まると茣蓙を敷いて花見を開始する。 ●花見と言う名の建前 「おかしいな、俺これから今日も楽しい銭儲けって話聞いたアッー!」 天津疾也(ia0019)がそんな事を言いながらもう色々と諦めたのか花見を楽しみ始める。目の前に積まれている酒樽と自分で持ってきた酒「祝千」を飲みながら花見を楽しむ。ひらりひらりと舞う桜を楽しむのも「粋やなぁ」と言いながら酒を飲み、ぴんと一つ思いついたのか周りを集めて一芸を始める。 「ほーれ、よーくみとってや!」 ごそごそと取り出した一文銭をピーンと上に放り上げてそのまま落ち、地面に付いて「チャリン」と言う小銭の音が鳴るか鳴らないかの所で素早く拾い上げる。流石守銭奴、金の音には敏感だ。が、今一楽しくないのか夢が。 「一枚脱ぐごとに金やるぞぉ」 ピンと一文銭を一枚ずつ投げられる。勿論それに反応して拾ってしまうのが性であり、上着をまずは一枚。周りの花見客からも「脱げ」との声が上がっていきやはり投げられる小銭。金か脱ぐか金か脱ぐか。 「くっ‥‥いったれー!」 脱ぎ捨てられる服、銭の力は偉大です。 此方では葛切 カズラ(ia0725)が一人で桜を眺めながらちびちびと飲んでいる。 「良い感じに散り始めているわね〜」 杯に落ちてきた花びらを風流ねぇと言いながらすする。一夜干やら豆腐などのシンプルなツマミと一緒に良い酒を飲むのは中々粋なものだ。 「変に拘るツマミよりもこういう単純なもののほうが粋ってものよね」 ほうっと一息ついてツマミとお酒を止めて桜を見上げる。ほろ酔いで火照ったのか結構着物がずれ込んでいる。まぁ、特に気にしないので問題もないのだが。 そしてこっちのほうでは天津に飽きた夢と空(ia1704)がなにやら言っている。 「あァ、依頼に出さないと一緒に花見を一緒にする相手もいねぇのか‥‥クッ‥‥寂しい奴め」 「あ?その寂しい奴についてきた奴はそれ言える事かぁ?」 「あ゛?俺は何故かダチは結構いるんだよ、少なくとも花見をするぶんにゃぁな」 メンチをきりあいながらあ?あ?と口撃の応酬。 「へぇ、ダチがいるんだ、じゃあ何で誘われないのかしらねぇ、花見にすら誘ってくれないダチなのねぇ」 残念ながら口で勝てるわけがありません。 「良いトコの酒と餌が喰えそうだったから自主的についてきたんだよ」 「本当は寂しいんでしょぉ、一々そんなこと言うわけないじゃない、小さいやつねぇ」 一升瓶を片手にぐびぐび飲みながら夢が一々突っかかる。絡み酒と言うか既に暴君レベル。これ以上何か言うととにかく鬱陶しいと感じたので無視しながら飲み始める。とても懸命な判断です。とは言え一応依頼なので夢にツマミとして菱餅を差し出して 「ホレ、ツマミみてーなもんだ、来る途中で買ってきた。俺が手作りするわけねーだろ、面倒臭い」 「はぁ?んなこと聞いてないからさっと渡しなさいよぉ、何?作ってきたって照れ隠しなわけぇ?ちっちぇーやつ」 げらげら指差し笑いながら菱餅を食べ、一升瓶で一気飲みをする夢に思い切りため息を付いて一つ心に決める。 「(コイツは敵だ)」 そう言いながら夢から退散して一人で飲み始める。酒の飲めない子供も風情を気にするようなのもいないので心置きなく酒を傾ける。残念ながら口うるさいのは主催者だったが。 これまた逆側では覇王夫婦姉妹が三人並んでいちゃいちゃしながら花見を楽しんでいる。 ぐるりと辺りを見回した剣桜花(ia1851) 「しかしこの面子、初心者さん向けの依頼に邪魔しないように拉致したんですかねー?」 ある程度見慣れた面子がいるなぁ、と思いながら雲母(ia6295)に寄り添っている。そして見回した後にぽつりと「まぁ、旦那と私にかかれば雑魚なんですけど」と、黒い笑みを零していたとかどうとか。 「花見、いいねぇ、酒に女に料理に‥‥こういうことが無いとな」 「私は花より旦那です。いちゃつくのです。見せつけるのです」 やけに目の据わっている剣が雲母にんちゅーとキスをかます。それはもうかなり濃厚に。 そしてそのまま押し倒して馬乗りになり、脱ぎかけた所へと。 「わったしは可愛い踊り子さん‥‥♪お手を触れてはダメですよ‥‥♪桜の前に一撃かましましょ‥‥♪」 ぺしーんと水津(ia2177)がぎりぎりのところで剣と雲母を止める。何やっているんですかと言っている。まぁ、それはさておき、水津が作っておいたてんぷら、野草図鑑やら知識を使っての特性の垂れ付き。但しやけに真っ赤なのが一つまじっている。危険な奴以外は紫蘇やら蕗の薹やら中々美味しそうだ。 「歌って踊れる焔の魔女‥‥水津さんっじょう‥‥!」 片手にてんぷら、もう片手はきらっと人差し指と小指を立てて構える。まだ神楽舞だけしか踊れません。とにかくてんぷら料理を配りながらお茶をまったりと、周りの連中に合わせて飲むと即刻ダウンするのでちびちびとお茶を。 その反対側では真っ赤に染まりまくったてんぷらを食べて桜花がじたばたと悶えているある意味でテロだ。にやりとそれを確認して。 「ふっ‥‥桜花を焔で染め上げてやりました」 黒い笑みを零している。 「おい、芸の一つくらい見せてみろよぉ」 激辛のソースに悶えている剣をなでつつ雲母が一升瓶片手にそういうと。 「では、私の全てを見抜く眼鏡で‥‥お姉様の未来を占ってみましょう」 手帳やら羽ペンやら符を取り出してこっくりさん、雲母の事を占い始めるのだが‥‥。 「こ、これは‥‥恐ろしくて私の口からはいえません‥‥!」 ばりばりと手帳を破り捨てると無かった事にされる占い結果、きっと見てはいけない結果なんだったのだろう。 とりあえず激辛ソースでやられた剣が一息付いて雲母の隣に座って。 「たまには平和なのも良いですねぇ‥‥」 「ただ酒だしなぁ、これ依頼だろう?」 「じゃんじゃん飲むのよぉ?」 雲母に酌をしながらぴっとり密着して花見を堪能、辺りが桜のせいなのか雰囲気なのかは分からないが常にピンクな気配が漂う。そしてさりげなく夢も雲母と肩を組んで飲んでいる、ついでに水津も雲母に張り付いている。突き刺さる剣の視線はかなりのものだったとか。 此方ではからす(ia6525)が万商店を中心とした商店で酒やらつまみを購入している。実際は夢が殆ど購入してきたので追加と言う形になるのだが。 「花見をするんだ。良いモノは入っている?」 一升瓶やら酒樽のものは殆ど買い占められているので「桜火」だけを購入しておく、一応のんべえの数を考えると結構な大量購入なので丁度店の手伝いをしているもふらに仕事を依頼。 「報酬はクッキーでどうだい?」 出されたクッキーを何度か見てから「もふらだから甘く見るなよ」といった感じにからすを見つめる。しっかりと商売癖が付いているので現金じゃないと動かないらしい。 「しっかりしてる」 小銭をなんぼか渡して交渉成立。もそもそと動いて運搬を始める。 少し遅れて花見の場所にやってきたので完全に出来上がっている連中が騒いでいるのを目の当たりにする。お香を焚いた所で気にするものもいないので今一である。とりあえず「桜火』や花濁酒、天儀酒や『もふ殺し』等を御酌して回り始めるのだが、分かるとおり一気飲みやらそのまま口をつけて豪快に飲むのばかりなせいで杯を持っている者が少ないと言う謎な現象が。とは言え。殿様おにぎりやもふら饅頭、寿司の折詰等はツマミなのでみるみると減っていく。残念ながら酔い潰れる程にやわなのはいないので誰も薬草茶には手をつけないうえに見向きもされない。そもそも酒樽一つやら一升瓶を一気飲みする連中がごろごろいるのだが。 「風情はないのかね、ここに」 軽くため息をつきながら自分もお茶やら酒、料理に手を出し始める。 すっかり出来上がった夢が和奏(ia8807)に絡んで花見を始めている。お菓子やら購入しておいて楽しむぞーという感じはあったのだが、どうやら気に食わないので絡まれたらしい。本人は結構おろおろとしている、そしてそれを見て楽しむといった構図になっている。 「んー、いまいち楽しんでないようねぇ?」 撫で‥‥と言うか頭を掴むようにわしゃわしゃしているだけなのだが。 「いえ、そんなことはないですよ?」 楽しんでいるように見えるが、やはり見よう見まね、周りに合わせてといったのに今一楽しくないらしい。 「ほーら、笑って楽しみなさいよぉ?」 頬をむにゅんと伸ばして笑顔を無理やり作りつつ、むにむにと。桜なだけにサクラをしにきたのだと思っていたのだがこうなるとかなりおろおろとはし始める。 「まぁ、いい、とりあえず何も考えずに楽しめばいいんだよ、分かった?」 「何も考えず‥‥」 ぼぉっと何も考えずに‥‥ぼぉっと‥‥。目の前で手を振ってみると反応がない。あまりにも素直なのも考え物である。 「あぁ、いいわ、芸でもできないの?」 「芸‥‥と言うと笛くらいは」 そういって横笛を取り出して吹き始めるのだが、今一。 「微妙ねぇ‥‥もー、いいわよ」 そう言ってやめさせると料理やら酒やらをごっそりもたせて。 「ま、好きにしてみなさい?」 そんなわけで探り探り花見を楽しみ始める。真似やら言われてではないので少々困惑しながら花見をしながらのんびりと。 こっちではリーゼロッテ・ヴェルト(ib5386)がのんびりと桜と酒を楽しんでいる。芸はする気が無いので酒だけ渡して後はご自由にと言った感じだ。あんまり何か眠らせると言ってみたが効果がなさそうである。 「桜の見頃って短いのよね」 ちびりちびりと酒を飲みながら満開になっている桜の木を見上げて酒と桜を堪能し始める。桜に酒にツマミに、のんびりとこのゆっくりとした時間を堪能していく。 「なかなかこういう事って出来ないし」 久々の休みを堪能しながら桜を眺める。開拓者の特権と言うか、ただの夢の職権乱用のおかげなのだが、こういうお零れ的な物はもう少しあってもいいんじゃないかなぁ、と言いながら花見に浸る。 そんなこんなで一通り花見を楽しみ、今日一日が終わっていく。 ●種明かし 「あぁ、そういやこれ報酬ね」 一人一人に手渡していく物凄い微量の報酬。茶封筒であれば風が吹いてばたばたはためく位に薄いだろう。それくらい少ない。 「おろ?やけにすくないな?」 天津がその少ない額に文句を付けつつ夢に尋ねると。 「ただ酒が飲めるって勢い付いていたわね?あれは嘘よ、あんた達の報酬さっぴいて酒とツマミかったんだから」 そう言うと向こう側で空がバリンと酒瓶を一つ割ったのが聞こえる。 「いやー、ピンはねするの大変だったのよねー」 腹を抱えながら笑っている夢を見ながら開拓者全員ががっくりと肩を落としたのは言うまでもない。 その向こう側で剣が旦那といちゃいちゃしているところで一つ。 「あぁぁぁっ!体重が増える〜ダイエットできる依頼に入らないとー!」 「それは夜にしっかり運動しようなぁ?」 いちゃいちゃ空間が展開されている此方は特に気にしてなかったり。 何はともあれ、花見を堪能する分には成功しているので問題はなさそうだ。 |