鉄機
マスター名:如月 春
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/03/27 00:15



■オープニング本文

●某所
 軍服を着た騎士一人の男が駆鎧の上に立ち、眼前にいる自分の部隊を眺めて声荒げて話し始める。

 諸君、私は駆鎧が好きだ
 諸君、私は駆鎧が大好きだ

 装甲が好きだ
 迷彩が好きだ
 武装が好きだ
 重量が好きだ
 機構が好きだ
 
 天儀で、ジルベリアで
 泰で、新大陸で

 この世界でありとあらゆる物の中で駆鎧が大好きだ
 巨剣で相手の装甲を叩き潰したときなど心が躍る

 激しい打ち合いを制して敵機を撃墜するのが好きだ
 ひしゃげた装甲から飛び出してきた敵兵を叩き潰すのが胸がすくような気持ちだった
 
 
 と、演説を始めて其れを聞き始める部隊。
 演説を行っている軍人、一般的な駆鎧に比べて歪、その隣に立て掛けてある巨剣が禍々しく威圧感とその威力を物語っている。
 そしてその横に並みの大きさの駆鎧が三機、剣に槍に盾をそれぞれ持ち控える。
 最後に大型機の前に整列している駆鎧六機。一般的な物に比べて少し小さくみえる、武装もそれぞれだが小回りの利くといった特徴のある機体だ。
 黒色の機体が太陽の光をかき消すかのよう一帯を闇に覆っている。
 そして演説も終わり、声高らかに。

「さぁ、出撃だ」

 手を前に掲げると同時に全機反転、足並みを揃えて雪も解けてきた緑色の草原を茶色に染めていく。
 駆鎧の無機質な駆動音と足音が辺りに響きながら一直線に都へと向けて。
 進行方向の物を蹂躙しながら一個小隊がただひたすらに前進していく。

●ギルドにて
 夢が頭を抱えて対応をしている。
 駆鎧の軍勢が村を破壊しながら都へと一直線に向かって来る。
 どこから調達し、どう整備しているのかは不明だが、とにかく叩き落さなければ被害は出る一方。
 煙管を一度吹かしてから、開拓者を集める為の指示、もしものときの防衛線の想定をしていく。

「とにかく進行方向は一直線なら開戦はここだ、確認されている機数は壱拾、小型機とも言っていた点からそれなりの機体であれば押し返せるはずだが」

 いつになく厳しい顔で地図を広げながら進行と被害を計算しながらどこが一番被害が出ないか、そして有利なのかを考える。
 煙管の吸い口をぎりっとかみ締めながら考えを続ける。流石に自分は出撃出来ない点が歯がゆいが仕方ない。
 そして掲示板に張られる一枚の依頼書

 ――駆鎧使い求む と。


■参加者一覧
シュヴァリエ(ia9958
30歳・男・騎
サーシャ(ia9980
16歳・女・騎
龍馬・ロスチャイルド(ib0039
28歳・男・騎
ロック・J・グリフィス(ib0293
25歳・男・騎
アレーナ・オレアリス(ib0405
25歳・女・騎
オドゥノール(ib0479
15歳・女・騎
シルビア・ランツォーネ(ib4445
17歳・女・騎
ネプ・ヴィンダールヴ(ib4918
15歳・男・騎


■リプレイ本文

●踏みしめるは駆鎧
 計十八機、都から少し離れた平原にて駆鎧が対峙する。一つは足並み、隊列、行軍速度、駆鎧の色、大きさまできっちりと揃っている。そしてその反対側には機体の姿も武装も大きさも違う駆鎧の軍団が一つ。
「おや、やっと対抗勢力が現れたな、意外と対応が早いじゃないか」
 葉巻を咥えて胸部部分を開けっ放しにしている軍人風の騎士が一人、向こう側に見える開拓者の駆鎧群を見て一息と一服、なんとも楽しそうな顔をしている。
「村を破壊しながら行軍か、気に入らないな」
 愛機「ヴァーチュー」に乗り込んでいるシュヴァリエ(ia9958)が苦虫を噛み潰したような顔をして怒りをあらわにしている。意外と熱くなり易い性格なのか、まだまだ未熟なのかは分からないが。
「之もアーマーの暗黒面にとらわれた人の末路でしょうか、何があってこのような凶行に走ったのやら‥‥」
 サーシャ(ia9980)が遠めに見える駆鎧群を眺めてから一息、自身の駆鎧「ミタール・プラーチィ」を立ち上げて乗り込む。装飾の多いこの機体、残念ながら現在では飾り以上の物ではないのが悔やまれる。
「なんにせよこれ以上被害を出すわけにはいきません、ここで食い止めますよ」
 「ロートシルト」の胸部搭乗口を閉めて龍馬・ロスチャイルド(ib0039)が一つずつ駆鎧の様子を確かめていく。ぎゅっとアーマーソード「ケニヒス」を握り締めて感触を確かめ、ゆったりと立ち上げていく。
「己の欲望の為に、罪もない村々を潰して回るその行い、決して許しておくわけにはいかんな‥‥共に生き共に死ぬと誓った、このドクロの紋章に賭けて」
 胸部の髑髏と頭部の口の部分が一度光り「X(クロスボーン)」が起動し始める、ロック・J・グリフィス(ib0293)が足元を踏みしめしっかりと相手を確認する。事前に調べておいた部分ではあるが、丁度此方開拓者側は雪も解けてしっかりとした地盤、向こうはまだまだまばらに雪があるのを確認済みだ。地の利は良し。
「このような時期に駆鎧を使った乱行とは寒心できませんね‥‥きちんと仕置きするとしましょう」
 「ヴァイスリッター」にアレーナ・オレアリス(ib0405)が夢に聞いておいた情報をもう 一度確認し始める。これまで被害にあった物や戦闘をしたという人からの情報を聞いておいたのだが、基本的に統制の取れた陣形に臨機応変な対応、殲滅戦に電撃戦に打撃戦に防衛戦に包囲戦に突破戦に退却戦に掃討戦に撤退戦、ありとあらゆる戦闘行動に精通している。一概に指揮官のカリスマ性の高さに加えて狂信的なまでに従順な兵士、考えるだけでも頭が痛くなってくる。とは言え、これ以上は都に被害が出る。
「どこでアーマーを手に入れたのかは知らん。しかし、人を守る事に使われるべきだ。間違いは此処で‥‥」
 オドゥノール(ib0479)が「トマーヴ」の画面越しに駆鎧群を見つめて奥歯をかみ締める。彼女の立派な騎士の像に反しているのだろう、心構えから少し違う気もする。ともかくハンドカノンを構えて狙いを定め始める。
「今まで色んなろくでなしを退治してきたけど‥‥これほどの大規模のアーマー部隊ってのは始めてね。‥‥アーマーとは文字通り騎士にとっての鎧。即ち己がもう一つの自身、騎士としての誇りの証明ってパパが言っていたし」
 と、言った後にシルビア・ランツォーネ(ib4445)がぽつりと「長い話って嫌いだし」と呟く。とっても脳筋、立派なレディなのに。
「壊していいのはリア充の家だけなのですよ!無差別は許さないのです!」
 何を言っているのだという顔で眺められているネプ・ヴィンダールヴ(ib4918)がそう叫ぶ。指揮官にとってはどうでもよさげであって何の事かしっちゃこっちゃないという風ではあるが。

 そして此方にいる、指揮官。少しふくよかではあるが葉巻を咥えて一部始終を聞いてからぶはぁっと葉巻の煙を吐き出してため息交じりに話し始める。
「いやはや、聞いていて反吐が出る考えばかりでね、少々眠りそうだったよ‥‥で、その騎士特有の正義を我らに振るうわけだな、んん〜‥‥そんなもの糞を拭く価値すらない物でどれほど持つか楽しみだな、うむ」
 嫌味たっぷりにそういうと自身の駆鎧以上に大きい巨剣を突き出し、号令一つ。
「さて、蹂躙するとしようじゃないか、諸君」
 その一言で前面に配置されていた小型(とは言え通常機と一回りほど小さいだけだが)が一斉に起動をし始め、頭部の単眼が唸りを上げて光り始める。
「さぁ、戦争だ!」
 揃った足並みで開拓者へと迫り、戦闘が始まる。

●小型一般兵機
 敵方六機、開拓者方四機。
 既に行動は決まっているのか指示はないのだが確実に前進してくる敵小型機。まずは挨拶代わりと言うことでオドゥノールがハンドカノンを一発ぶっぱなす。轟音と煙を派手に撒き散らしながら砲弾が一直線に敵小型機群に到達。爆音と土煙、雪煙を巻き上げ一旦静寂が訪れる。
「計築けとハッタリ程度だが、正しい使用方法だろう?」
 そんな事をいいながら煙が晴れるのを待っていると、飛んでくるのは直径約五十センチ程の岩。人間が投げる程度の石では特にたいした問題ではないが、駆鎧の平均体長の三分の一の大きさがまともに当たれば装甲が凹むと言う話ではない。しかしゴスっ、ゴスッと大き目の岩が直線上を遮るように手前に落ちる。
「やりづらくなりましたか‥‥」
 煙が晴れて敵軍が姿を現すと陣形が矢型になり、より戦いやすいように一定間隔を保ったまま歩いてくる。とにかくハンドカノンを捨てて鋸刀を構えて前進、目の前にいる小型機と戦闘を開始する。先手の迫激突は既に投げられた巨石によって封じられはしたものの突き崩す姿勢は変えずに接近してきた敵機に一撃、右腕に鋸刀を食い込ませて一気に引き抜くと同時に相手からの迫激突、火花を散らしながら相手の右腕を切りながらも吹っ飛ばされる。
「くぅ!カウンターだと‥‥」
 踏鞴を踏みながら体勢を整えて構えなおす、と眼前に敵機。丸い肩当てにトゲが付いたどう見ても接近仕様の機体が肩を突き出したまま二回目の迫激突。操縦席で衝撃に顔を歪ませながら均等を崩したところをポジションリセットを使用して持ちなおす。
「嫌な相手に当たったか‥‥」
 腰から一振りの斧を構えてにじり寄ってくる敵機。相手の隊列的に一対一に持ち込めるように距離も取られている、さらに貼り付けにされているとなるとまずは目の前のを倒すしかない。加えて問題なのはトマーヴの装甲と練力が半分程でやってきた所にもある。既にこの状態でスキルに回せるほどの容量はない。どうにか一機倒すのが関の山だ。
「せめて一機は‥‥」
 機体が軋みながらもしっかりと構えて戦闘を続ける。

「とにかく倒すのです!」
 そう、ネプが言うとフレイルを振り回しながら接近、一番先頭の小型機に対して鎖の軋む音を鳴らしながら振り下ろすガイン!と金属のぶつかり合う音、そこからさらに同じように飛んでくるフレイル。大きく同時に装甲を凹ませながらぶつかり始める。
「同じ獲物なのです‥‥」
 蹴りを浴びせて一旦距離を取ったところで対峙。無機質な単眼がネプを睨んでぎろっと光る。それに軽く冷や汗が垂れる。並みの相手ではないという事を再認識。そうしているとじゃらじゃらと鎖を鳴らしながら相手のフレイルが飛んでくる。
「ちぃ‥‥!」
 ギガントシールドで其れを受けると同時に衝撃が伝わり操縦している手がびりびりとする。本気で殴りにかかってきている、それも相手がどうなろうが知ったこっちゃない。本気でがしがしとたたき付けられている。
「こ、のぉ!」
 相手のフレイルを絡めとる為にフレイルをぶつける。じゃらっとフレイル同士が捩れ絡むと引き合いになる。がちがちと鎖を軋ませながら隙をうかがう。フレイルの特性上勢いをつけなければいけない点がある。たとえば刀の場合このまま滑らせて斬るなり叩く事は出来るが、フレイルの場合は違う。一瞬だけ引き合う力を弱めて解けるようにした瞬間に一気に引き戻し、振りかぶって一撃。頭部、右側面に当たったのを確認してからもう一度殴りつけるところを盾で押し出されて距離を取る。
「なかなかやるのです」
 ぜいぜい息をしながらしっかりと相手を見据えてもう一度ぶつかり合う。

「うるあぁあああ!!」
 その隣ではシルビアが鎖明星「甲龍」を上半身を丸ごと使って叩き付ける。並みの鉄球ならまだしても現時点で最大のこの武器。ゲートクラッシュを使っての一撃、地面を陥没させ辺りに軽い地震を起こさせるほどだ。一瞬たじろいだ敵の隙を狙って屈んだ状態から気合で上半身を起こしながら甲龍を横に振るように捻りこみあげ、半月薙ぎを繰り出す。が、当たらずに『ゴウッ』風きり音が虚しく響く。
「おかしいわね、気合入れて殴っているのに」
 むすっと頬を膨らませながらぶんぶんと振り回す。かすっただけでも装甲がひしゃげそうなのでかなり威圧的ではある。現に敵機は最初の一撃のおかげですっかり攻撃の手を緩めて防御に回っている。その間にも何度も「甲龍」を振り回しているおかげで掠めているだけで相手の盾の一部が吹っ飛んでいる。
「いい加減、潰れなさいよぉおおお!」
 気合の入った叫び声を上げて機体が軋むのも構わずに「甲龍」を振り回してからのたたきつけ。アーマースラッシュだが、この場合インパクトとかそういうのが似合っている気もする。とにかく気合に押し負けた敵機の頭部から胸部にかけて思い切り鉄球型にひしゃげる。ご愁傷様。
「つぎぃ!」
 奥に待機していた一機が前にでてシルビアと対峙、単眼が不気味に睨むように光りながら此方にやってくるのを眺めて自然と頬が緩む。

「何というか、伊達でやっているわけではないですか」
 サーシャが小型機と対峙しながらクラッシュブレードを振るいながら状況を把握し、本気を出さないとまずいと思い始める。たかが烏合の衆と言うわけではなくしっかりとした統制が取れており。自分の役割を知っているといった感じだろうか、がっちりと張り付かれているにもかかわらず一定の距離を保ち打ち合いをしている。相手の武装は同じような巨剣に盾と一般的な駆鎧の装備ではあるがべた足かつ腰を落として盾を地面に突き刺してと完全に盾として役割を果たしている。
「やりづらい、なぁ!」
 隙を見計らっての上段斬り。どちらかと言うと叩き潰すというのが合っているのだが、それを軽くしゃがみ盾の上部で受けるとべた足状態からの振り上げ。攻撃後の硬直を狙われてもろに装甲に当たり剣の形に凹む。
「痛っ‥‥やるじゃない」
 剣を構えなおして仕切りなおす。よくよく見ればまだ一機後ろに待機しているのが見える。数の利と言うのは中々に苦しい。とにかく目の前のをさっさと倒して同じ数にするのが重要だ。小型機が振りかぶった所へと胴体へと半月薙ぎを食らわせる。ゴリゴリと硬い物を削る感触を手に伝わらせながら一度振りぬいた所を切り返し。うまい具合に片腕と胴体を不能に。
「さって、もう一機!」
 盾と剣を構えて最後の一機と戦闘を始める。

●隊長機
 敵方三機、開拓者方三機。
 角が特徴的な隊長機、シュヴァリエ、龍馬、アレーナが各一機ずつ担当する事になる。小型機との戦闘はまだまだ続いているようだ。
 とりあえず隊長機と小型機を分断する事には成功しているので横並びで等間隔に相手と対峙している。物言わぬ単眼の駆鎧がやけに威圧的だ。
「何時までもこうしてはいられない、行きます!」
 龍馬が迫激突交じりに一番近い相手へとぶつかり、戦闘を開始。先手は取れたので後はどう自分の流れにするかどうか、残念ながら挟撃するように動くのは難しいが。とりあえず自分の前に貼り付けるにする。基本は盾を使っての迫激突で押し込むように戦いを進めていく。とは言え相手も伊達に隊長機の角をつけているわけではなく、何度か迫激突による攻撃を受け、数度目には其れにあわせた防御行動をし始める。
「流石に、並みではないですか」
 相手の攻撃を盾を使い受け、カウンター気味に押し込み返し、また防御の繰り返しだ。確かに相手を分断するときに剣を振るってはいるものの基本は防戦、それもスキルの使用頻度は高いとなるとジリ貧、泥沼のような戦いになるのは致し方ない。それでもしっかりと小型が片付くまでの時間は稼げるだろうが進展もしない。

「と、こっちはこっちでやるとするか」
 相手を見据えてクラッシュブレードを構える。目の前にいる隊長機に狙いをつけてそのまま突進、下段から上段に、そこからさらに振り下ろす形で一気に攻め始める。しかし棒立ちでやられるほどに相手ものん気ではない。がっしりと盾を構えて攻撃を受けてから懐へと潜り蹴りを放つ。
「ぐあ!?」
 体勢の崩れた攻撃後を狙われた為かうめき声を上げつつ、少し後退。体勢を戻しているところへ肩を突き出した突撃。すぐさまナックルコートを上げて防御に回る。破損しやすい上に今回はヴァーチューが万全ではないのもあり、かなり押し込まれていく。

「向こうも大変のようで」
 キッと自分の目の前にいる隊長機を睨み、鋸刀を構える。相手は基本とも言える槍に盾を構えて胴体の三分の二を隠した隙間からアレーナを睨み続ける。盾一枚あるだけで何ともやりにくい。足元はがっちりと固められ、槍持ちの半身はそれなりの距離からじっくりと攻められる。勿論べた足でじっくりと此方へと接近している。愚突はしない定石通りの相手だ、無駄に拘っていたり変則的な相手より厄介である。
「よく仕込まれていますわね」
 じっとりと汗ばむ手を握りなおして右回りで相手と対峙する。囲まれる心配はないので一対一に専念できるのは好都合でもある。数十秒相手とにらみ合いを続けてからはじけるように動き始める二機。身を屈めた状態で何度も突きを繰り出し肉薄。装飾や吹っ飛び装甲が傷塗れになりながらも相手の攻撃を避けながら下段に鋸刀を構え、相手の足元から膝にかけての振り上げを中心に攻め続ける。
「くっ、やりにくい‥‥!」
 被弾部分を最小に、攻撃範囲を最大にしている相手にとってはかなりやりにくい。とは言え、損傷と言うのは蓄積していくものだ。傷塗れの装甲と引き換えに相手の機動力は診る目にも分かるほどに落ちてきている。
「これで‥‥!」
 ポジションリセットによる粉塵を巻き上げて一瞬の隙を狙ってから一撃。砂煙の中火花を散らしながら下段から切りあげた鋸刀を振り上げる。その後、ガクンと膝から崩れ落ちる敵機を確認し、次の相手へと向き直る。

●指揮官機
 通常の駆鎧よりも一回りほど大きい隊長機とロックのXが戦闘をしている。
「行くぞX‥‥これ以上村を潰され泣く人を出さぬよう、力無き者の剣となる、この胸の証に賭けて!」
 そう叫びながら胸部の髑髏部分が光る。そうして相手を見据えて状況を確認。機体差的にはそれほど大きくない、武装もこちらの方に分がある‥‥問題は性能の違い。とは言え目の前のこの敵を倒さない限り何時までも都が安全にはならない、覚悟を決めて獣騎槍を構えて突撃。大きく振り込んでくる巨剣を受け、大きく地面に跡を付けながらもひたすら前に出て指揮官機を自分に集中させる事を意識していく。確かに一撃の重さは計り知れないが耐えられないほどではない。何発か攻撃を受けてからどうにかなると思いながら先頭をし続ける。たたきつけ、突き、斬りつけながら相手の装甲を一枚ずつ破壊するように動き回る。
「くそっ、並みの装甲じゃないのは知っていたが‥‥!」
傷は付いているが貫きはせずに、削っているといった状況に軽く舌うちをする。
「まだまだ甘いですねぇ‥‥」
 一撃を貰って軽く離れた所を見計らい、滑るように巨剣を振るい、Xへと攻撃が飛んでいく。唸りと風を切る轟音を放ちながら向かって来るそれは恐怖ともいえる。
「くっそ!」
 咄嗟に防御とマントで視界を防ぎ、直撃を免れる。そして次の瞬間に迫激突による攻撃。完全に不意を突いたその攻撃で大きく体を傾け、倒れようとしたところを踏ん張り維持する。
「ふふふ、楽しいぞ開拓者、これを待っていたんだ」
 にやりと笑い、ロックへの攻撃を続け、攻防が続く。


●決着
「こぉんのぉ!」
 最後の小型機の頭部ごと鉄球で吹っ飛ばしたシルビアが汗を拭って一息。結局の所小型、隊長機を落すのに時間が掛かりすぎた為練力切れ、咥えて数の関係もあってかかなり苦戦した。小型機のほうは散々たる惨状だ。鉄球に潰されているわ、トゲの形に装甲が貫かれているわ叩き潰されているわ、切り刻まれているわで。ちなみに開拓者にも言える事だ。胸部ハッチを蹴りあけてたり、練力切れですっかり沈黙している。
 隊長機に当たっていた三人も同じ事が言える。こちらはアレーナが先に仕留められたおかげでどうにか此方もなったがやはり練力切れ、騎士だとこれ以上の戦闘はとてもじゃないが不可能という事だ。
 そして指揮官機、半壊したロックのXが丁度巨剣を叩き折ったところで沈黙。それを眺めて指揮官は胸部を開けて楽しそうに葉巻を吸いなおしている。
「いいだろう、今回は我の負けを認めよう、その糞の価値にもならない正義を立ててやろう」
 そういうと一人叩き折られた巨剣を持ち、来た道を引き返していく。
「簡単に引き下がったのは良かったのやら悪かったのやら」
 サーシャが叩き潰された敵機の駆鎧から犯人を引きずり出しながらため息。
「何とも‥‥いえませんね」
 村のほうへと黙祷を捧げながら此方も一息。とりあえず犯人の一味は捕まえたので後はギルドの仕事だ。被害はここだけですんだのが幸いだろう。