羽伸ばし
マスター名:如月 春
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/03/04 23:53



■オープニング本文

●いつもの都から外れた牧場にて。
 相変わらずの面子が集まってぼんやりとあたりを眺めて一息。
 雪がつもり、真っ白になった牧場を眺めている。

「夏は緑色だったんだがなぁ」

 雪かきしているこれまたいつものマッチョがそんな事をいいながらかまくらを作るかなぁ、といい始める。

「いや、一時期は茶色でしたよ」

 その反対側で雪球を作って投げながら一人が言っている。
 駆鎧のおかげかどうかはしらないが、一部のところは芝生が抉れて茶色になっていたのだ。

「そういえば、新しいのが港に入るそうですけ、どっ!」

 マッチョに雪玉を投げてぶつけて遊び始める。勿論マッチョは半裸だ。
 裸体に雪玉がついてびっちょりと濡れるが、てかてかと油で水滴が落ちる。気持ち悪いの一言だ。

「って、言うわけでだ。此処は一つ牧場の増設をしようとは思うのだが」

「思うのだが?」

「何かと金がいるということで、開拓者にまた宣伝してもらおうと思うのだよ」

 あぁ、また何時もの手段なんですね、と言うことでギルドのほうへと連絡がいく。

●ギルドにて
「で、またやるわけね」

 一枚のチラシにでかでかと牧場の冬季開放と書かれたものを眺めて一息。
 相変わらずの守銭奴だねぇ、といいながらも其れを貼り付ける。

「たまには私もいくかねぇ」

 煙管を吹かした夢が掲示板にチラシをぴっちりと貼り付けてから外を眺める。
 まだまだ春は遠いようだ。


■参加者一覧
酒々井 統真(ia0893
19歳・男・泰
輝夜(ia1150
15歳・女・サ
嵩山 薫(ia1747
33歳・女・泰
浅井 灰音(ia7439
20歳・女・志
宿奈 芳純(ia9695
25歳・男・陰
シュヴァリエ(ia9958
30歳・男・騎
フェンリエッタ(ib0018
18歳・女・シ
九条・颯(ib3144
17歳・女・泰


■リプレイ本文

●牧場にて
 相変わらずの守銭奴な港関係者に連れられて中へと入っていく開拓者八人。その殆どが迅鷹であるが、妙にぎすぎすした状況である。
「なんとも堅苦しいなぁ、そうだろう?」
 わらわらとマッチョに群がる迅鷹、流石と言わんばかりだ。
 そんなこんなで開拓者八人と相棒による戦闘(と、言う名の交流)が始まるのだった。

 一人目の開拓者、酒々井 統真(ia0893)そしてその相棒の風剋と一緒にやってくる。宣伝に使われるのは何となく気に入らないが広い場所で思う存分できるならまぁ、いいだろうといいながらここに。
「しかし、相手もいないってのに連携の戦闘訓練なんざ持ち掛けてもなぁ」
 そう呟いて風剋と向き合ってすっと構えて。
「よし、対戦形式ならどうだ、俺に勝ったら今後はもう逐一干渉しねぇぞ、それなら文句ねぇだろ?」
 と、言い「しゅっしゅ」と拳を出しながら風剋を見やる。
 しばし見詰め合ってから‥‥一瞥して少し離れた木の方へと飛んでいく。
「‥‥正面きられて無視されると、結構堪えるな‥‥まぁ、あれがあいつなりの距離ってことか‥‥いなくならないだけましなんだろうが」
 拳を下ろして一息、一瞬にしてやることがなくなったのでどうしようかなぁ、と呟き始める。あっさりと手持ち無沙汰、どうしようかぼうっとし始めたところにむこうから人が。

「この歳ともなると運命的な出会いなんてないわね」
 普通に港で購入した迅鷹、楊雲を連れてやってきたのは嵩山 薫(ia1747)、嵩山ほどの歳にもなると色々人生悟るものです。寧ろそんな事気にならなくなるとも言う。運命的なのは旦那だけ。さておき、この楊雲とっても従順な子。港でしっかり調教されたとも言える。
「あら、統真じゃない?暇そうね」
 肩に楊雲を乗っけながら近づいていってゆったり微笑む。ここら辺も大人の余裕。
「いや、どうも嫌われているようで」
 そういいながら先ほど飛んでいった木の上を指差して納得。
「そうねぇ、暇なら久しぶりに手合わせでもしてみる?」
 扇ぐのをやめてぱたんと閉じて胸に収納、余裕たっぷりに微笑んで構える。願っても無い話と言う感じで酒々井も構える。
 ふぅっと一息、一度頭をからっぽに、そこから思考を切り替えて前進。何時もの様にただ大きく突き崩す動きではなく、じっくり、しっかりとした戦法で嵩山に攻撃しに行く。脇を締めて身を小さくした状態で相手の攻撃を見定めるようにし、一撃。その捻るように拳を打ち出すのを確認してから状態を反らして回避、ちょん、と頭を突いて少し距離を取る。少し突かれたおかげで軽く均等がぶれるが、しっかりと足を付いて元に戻す。
「とと‥‥慣れねぇな、やっぱ」
 いつもと違う攻撃方法に四苦八苦しながらも嵩山を捉えなおす、ところに瞬脚での接近、煌いた右一指し指と中指がちょこんと額に、そこから脳味噌に直撃するような振動が走り、ぐらついたところへと足を払われてすっころぶ。
「あら、いつもと違うわね、試行錯誤できる若い頃っていいわよ」
 同化から離れたのを確認して「ふむ」と一言。中々面白いようでじっくりと手を眺めている。
「‥‥そのようで」
 頭を振って意識をしっかりさせてからもう一度構えて接近、細かく拳を打ち出しながら距離を詰めていく。
「いいわねぇ、若いって」
 とは言え、嵩山も伊達に歳は食ってないわけで一つ一つ避けながらカウンター気味に極神点穴を打ち、後ろはねたところを同化解除後の楊雲が追撃。

 ‥‥数十分後に見事にボロボロにされた酒々井がぜいぜい息を切らしながら寝転がる。
「あー‥‥相手が悪かったな」
 そんな事をいいながら風剋の留まっている木を眺めると視線が合う。一部始終見ていたようで、またぷいっと向こう側へと。
「あらあら、素直じゃないわねぇ」
「‥‥ですねぇ」
 くすくすと笑っている嵩山に見下ろされて一息ついたのだった。

 その反対側で一人ぼうっと輝夜(ia1150)が光鷹閃輝を飛ばして遊んでいる。なんとも微笑ましいというか、まったりとした空気があたりを包んでいる。とりあえず何もしないのはどうかと思い、ちょっと声をあげて指示をとばしてみる。
「行け、ママハハ!‥‥ん?思わず口から出てきたが、ママハハとは一体‥・・?」
 んぅ?と頭をかしげているところに光鷹閃輝が頭の上にのって同じように頭をかしげる、残念ながら北方民族とのつながりは無い、そしてさらに残念だが狼もいない。
とにかく、なんとも平和なひと時。軽く間抜けだが。ともあれ、それなりに飛んで疲れたのか頭の上に留まってのんびりとしているところでぽんと手を叩いて、同化について思い出す。
「ふむ、試してみるかの」
 刀を抜いて二度、三度振るって一息、頭の上の光鷹閃輝に軽く刀を見せるとそれに呼応してか同化し、輝き始める。
「ほう、これが同化というやつか」
 そのまま構えて少しだけ振るう。びゅんびゅんと心地よい音と煌いた光を放ちながら線を描いて、一息つくと、また頭の上に留まる。
「うむうむ、いい子じゃのう」
 餌をあげながらのんびりと牧場を散歩し始める。多少重さで頭がぐらぐらしているが問題はなさそうだ。
「しかし、我が死ぬと他の人に刀を授けにいくのかのう?」
 まったりと文字通り鷲掴みされている頭の上を眺めてぽつり、地味に足がめり込んできている。

 また、同じように迅鷹を連れてきた浅井 灰音(ia7439)がのんびりと木々のあるほうへと足を運んでいく。その周りを旋回しながらレギンレイヴが緩やかに飛んでいる。しばらく歩いて中のほうへと足を運んでから一息。
「この辺で丁度いいかな?」
 一度レギンレイヴを呼んで、右腕に乗せて少しだけ撫で。
「好きにしておいで、故郷の山とは勝手が違うかもしれないけど、ね?」
 右腕を上げるようにして飛ばすのを促してやると翼を広げて木々の合間を飛び始めていく。ゆったりと大きく翼を広げて縫うように素早く飛びぬけていく。その光景を楽しそうに見つめながら餌の用意をし始める。大きい翼を器用に畳んだりしながら滑るかのごとく、飛んでいるのは美しいともいえる。その軌道が目を少し細めて追いかけてみるのだが、流石に時速300kmを超える速度を目だけで追うのは厳しい。多少疲れた目を押さえて休ませているとゆったり滑空してきたレギンレイヴが右腕にとまりに戻ってくる。
「楽しかったかい?あまり自由に飛べない思いをさせていると思ったけど」
 と、そういうと右腕に軽い痛みが走る。ちょっと機嫌を損ねたようだ。
「っ‥‥ふふ、冗談だよ」
 軽く頭を撫でてから用意していた餌を口元に運んで餌付けし始める。なんとも奇妙な友情と言うか絆と言うか、大人しく浅井が出した餌を食べて満足気な顔をする。
「ん、もう少し時間があるから好きに飛んでおいで」
 また軽く腕を上げると上空に飛び上がる。
「頼りになるね」
 大きく飛んでいるのを眺めながらそっと笑う。

 こちら牧場入口にて一人と一匹が到着。
「陰陽師の宿奈芳純(ia9695)と申します。今回はよろしくお願いします。宣伝に必要な行動などございましたら、ご遠慮なくお申し付けください」
「まぁ、別にないんだがなぁ‥‥」
 と、一言言われたのでどうしようか考える。とにかく自分の連れてきた相棒、霊騎の越影の休める場所をきいみてみる。
「あー‥‥兼用しかないからな、向こうにあるから勝手に使ってくれや」
 と、指差した方にごろごろともふらが転がっている小屋(他にも色々いるが)の方へと越影を連れて歩いていく。そうしてのんびりと歩いていった小屋の中にいたそこの管理人、もふらに巻き込まれて倒れていたりしているのに話し掛ける。
「すいません、霊騎の世話の仕方はどうすればいんでしょう?」
「霊騎か、馬と同じでいいんだろうけど専門外ですね、ここだと」
 ぐるっと周りを見ると龍やらもふらやら、果てにはアーマー(半壊)などが結構いる。とりあえずどうしようかと考えてぽんと手を一つ。同じように飼われているもふらについての世話の仕方を教わる。無駄ではないだろう、きっと。
「さて、とりあえず世話の仕方も教わったので」
 早速越影に乗り一息、初めてにしてはちゃんと乗れたので中々幸先がいい、そしてゆっくりと歩かせるために話しかけたうえで手綱を使う。そうするとゆっくりと歩き出し牧場の中へと歩いていく。多少危なっかしいがしっかりと乗りこなし徐々に歩く速度を速めていく。
「これは、なかなか‥‥」
 特に変な癖も見当たらず、良くも悪くも馬といった感じだ。と、しばらく早歩きから次第に速度を上げて牧場を駆け回り始める。開拓者といえば龍が基本のせいか地上をこの速度で走るのは新鮮な感じがある。
 一通り走った後、小屋の前に戻ると越影から降りて一息。意外と乗っている方が疲れるもので越影はまだまだと言った感じだ。とりあえずもふらと同じでいいのかはわからないが、もふら用の櫛を借りてきて毛並みを揃え始める。短毛ではあるが櫛を掛けるたびに艶が出てくる。しっかりとこれから世話になる意味も込めて丹念に櫛をかけていくのだった。

 そして此方の方では少し前にアーマーを操って色々と無茶をしたシュヴァリエ(ia9958)がエクスシアを連れてやってくる。ちなみに今日の牧場、迅鷹率が九割。
「さて、ここら辺で練習でもするか」
 エクスシアに軽く視線を向けてから持ってきたヴィルヘルムを構えて軽く振ってから同化するように言うとそのまま吸い込まれるようにヴィルヘルムが煌き始める。そしてそこから武器を振り回してどれくらい保てるのかを調べるように振るっていく。
「ふむ、中々いいな」
 体の中から力が溢れてくる、と言いながら周りに気をつけながら武器をしっかりと握る。単に高揚しているためでもあるのだが、エクスシアの鼓動が手に響いてくるのは分かる。仄かに感じる鼓動と高揚で何時もと違う力が沸いて出ているようだ。しばらく振り回しながら感触を確かめていると、同化が解けて少し離れたところで滞空する。
「よし、もう一度だ、やれるな?」
 そういうともう一度同化して煌き始めるヴィルヘルム、同化しているのは特にエクスシアが体力を消耗している感じはなく、数回同化した後に演舞もやめて一息つく。
「ふう‥‥頑張ったな、後は好きに遊んでいいぞ」
 そういうと少し離れたところへ飛んでいったり、他の迅鷹を覗きにいったり

 そして此方には悪戦苦闘しながら交流しているのが一人、既に色んなところが切り傷、擦り傷、引っかき傷、とにかくボロボロになっているフェンリエッタ(ib0018)が迅鷹のアスカと一緒にやってくる。何とか牧場の中にいれたらいれたですぐに向こう側へ行って完全に無視されている。はふっと一息ついて此処まで来たことに感動する。
「んぅ‥‥ないてないですよ」
 誰に言うわけでもないがとりあえず呟く。目をごしごし擦ってからアスカのほうへと歩いていき、呼んでみる。一度此方に気が付いたのか軽く見つめてからぷいっとそっぽを向く。此処まで来たらどちらかが折れるまで、と言うことで近づいていくと容赦なく風斬波が飛んできて頬やら服やらに切り傷を作る。
「む、むぅ‥‥」
 一瞬たじろいでめげずに走りこんで飛びかかり捕まえる。事は出来るわけもなく「ずしゃあ」と雪面に突っ込む。雪塗れの顔をあげてほふっと一息ついたところでクロウの一撃。もう一度雪面に顔を突っ込むハメになる。
「痛くなんかないですっ」
 思い切り涙目だが。
 とにかくこのままではどうにも出来ずに指を咥えているだけしかないので気分転換にフルートでもと取り出して演奏する。勿論演奏に集中しているところに抉りこむような泰辺りを受けて悶絶。
「うぐぐ‥‥もう、どこぞなりといきなさい!」
 虚しく避けられる雪球を眺めてしょんぼりと野生に一度返せば慣れているとは言え、こうなるものだ。ごろんと仰向けに倒れてはふっと一息。色々疲れたなぁ、と思っていると近くに降りてコツコツ頭をつついて立ち上がらせる。
「んんっ!なによ!」
 突かれたところを抑えながら立ち上がるとするりと剣を器用に抜いて足元へ落す。それを渋々拾い上げて構えたところへアスカが同化していく。白っぽい銀色の光を放ちながら
それを眺めて見とれる。ちょっとだけ、といいながらひゅんひゅんと二度三度振るった後、同化が解けると先ほどの様に向こう側へ飛んでいく。とは言え、じっと此方を見つめて様子を見ているようで。
「む、もう1回ー!」
 そんな子供みたいな事をいいながら近づいていってクロウのカウンターを受けて‥・・そんな交流。

 そしてもう一人迅鷹を連れてきたのは九条・颯(ib3144)文字通り自分の羽と相棒の羽を伸ばしにきたというところだろうか。
「最近何かとあるけど、こういうときくらいゆっくりしないとな」
 ブライと一緒に羽を伸ばしてからとりあえず腹ごしらえ、と言うことでミカンを取り出して早速食べようとしているところを横から矢が飛ぶようにブライと其れをひったくって食べ始める。
「あれ、ミカンがないなぁ」
 あまりの反応速度に頭が付いていかずにぽかんとしながら手をわきわきと。そしてひったくった張本人(鳥)に視線を向けると皮だけ綺麗に剥がして中を突いて満足そうにしている。こいつ、できるといいながらもう一つミカンを取り出すと
「まて、オレの分は渡さんぞ!」
 そういいながら背中を向けてミカンを、と思っていたところへ鋭い角度でミカンを奪い去っていくブライ、時速300kmは伊達じゃないという事か。すっかり満足気にミカンを突いてるブライにため息を付きながら持ってきた夕飯用の動物を数匹取り出す。今日は兎と雀4羽、肉が少なめではあるが、いい練習にもなるだろうと思い。
「じゃあ、まずは」
 と、言いながら雀を一羽逃がして捕まえるように指示する、前に他の迅鷹が雀を咥えて何処か遠くへいってしまう。そう、今日の牧場は迅鷹率九割。そんな中獲物を逃がせば隙あらば捉えていく物である。
「これは、ちょっと予想外だったなぁ‥‥」
 取られた夕飯を見送りながらもう一羽雀を逃がして指示を飛ばす。ブライとまた別の迅鷹がそれを狙って高速で飛んでいき、距離的にブライが雀を咥えて戻ってくる。
「よーし、いい子だな」
 飛んでいる最中に剥いて置いたミカンを一切れ放り投げて食べさせる。何故か柑橘系が好きなちょっと変わった奴だなぁ、と思いながらもう一羽‥‥はさすがやめておく、なにやら鋭い視線が突き刺さるので。
「ほら、少し散歩しよう」
 そのまま歩き出すと平行飛行しながら付いてくる。それに少し笑いながら。
「今度の合戦、よろしくな」
 そう言って牧場をのんびりと歩いていく。

●帰り支度
 日も傾いて夕暮れ、各々が帰り始めている。
「おかげさまで新しい相棒との付き合い方を学ぶことができました。本当にありがとうございます」
 と、言って越影にまたがり颯爽と帰っていく宿奈。すっかりなれたものだ。
「十分にお前は戦えそうだし次は実戦だな」
 そういいながらエクスシアを肩に止めながらのんびりと帰っていくシュヴァリエ
 見送っていると一人涙目になりながら走りかえるのが一人、何やら来たときとは逆に頭にクロウを食らいながら「痛くない!」と言いながらフェンリエッタが通り過ぎていく。しかし多少笑顔で嬉しそうだ。
「それにしても、まだ飛べないのね‥‥」
 人もまばらになって酒々井と並んで帰ろうとしていた嵩山が楊雲の目の前で荒鷹陣のポーズをとってみる、勿論港関係者一同と開拓者に見られているのもお構いなし。手をぱたぱた振ってみたりしているのは無意識だろう。
 
そんな平和な一時が終わり、今日も一日が終わるのだった。