不思議洞穴参【第三階】
マスター名:如月 春
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: 難しい
参加人数: 5人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/03/22 20:28



■オープニング本文

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●不思議洞穴第二〜三階間
 数人の冒険者が傷だらけになった自分達を治療しながら煙管をふかしたりと一服する。
 第二階、ほぼ一人じゃ多勢に無勢であえなく仲間入りすると言ういやな階層になっていた。
 しかたがない、と言うわけではないが命あっての宝物、山分けという話で第二階層を強行突破し今に至る。

「何ていうか、きついなぁ」

 煙管を吹かしながら包帯を巻いていた一人がぽつりと呟く。
 今までの第二、第一洞窟を考えてみるとやけにここだけアヤカシが多い。
 
「アヤカシの巣に潜っている感じ、か?」

「それそれ、第二の時はそのまんまアヤカシん中だったけどな」

 ゲラゲラ笑いながら思い出話、命がけが基本のこの職業。
 
「死んだのがアヤカシになって、それでまた死んで、嫌な悪循環だよ」

 二階の事を思いながらその先を眺めて考える。
 この洞窟は基本はアヤカシが多い、つまるところこの先もアヤカシが数多くいると予想される。
 そして最後はずっと聞こえる唸り声からかなりの大物がここにいるというのも予想できる。

「開拓者に感謝しないとな」

 地図を眺めて色々×やら○やら印をつけているのを眺める。
 ここまで軽微でこられたのはこの地図のおかげだ。

「まー、ちょっとは貢献しないとな」
 
 そういって立ち上がると第三階層へと足を進めていく。
 階段から降りると大人二人分ほどの通路が続いている。

「何と、大変だなこりゃ」

 刀の鞘で地面を叩きながらゆっくりと進んでいく。
 狭い通路を進んでいき、まずは十字路。
 そこを進んでいくと曲がり角。

「‥‥失敗したかな」

 煙管を吹かして一息、目の前の行き止まりと罠を見つけてそんな事を言うのだった。

●ギルドにて
 毎度、何時もの様に夢が依頼書を作りながら鼻歌を奏でる。
 深度が高くなるたびに機嫌がよくなる、どう見ても洞窟狂い。

「これでよし、っと」

 掲示板の方へと依頼書をぴっちりと貼り付けて何時もの様に机の上に足を乗せて一息。
 三階の未完成の地図と手紙を眺めながらうんうんと頷く。

「あぁ、楽しくなってきたなぁ」

 上下に煙管を揺らしながら開拓者を待つのだった。


■参加者一覧
雲母(ia6295
20歳・女・陰
朱麓(ia8390
23歳・女・泰
フレイア(ib0257
28歳・女・魔
鳳珠(ib3369
14歳・女・巫
御影 銀藍(ib3683
17歳・男・シ


■リプレイ本文

●不思議洞穴入口にて
 いつものように‥‥とは行かないが少し人数が減って開拓者五人が準備をしている。
「洞窟探険か‥‥幾つになってもこういうことをするのは好きだな、私は」
 今回初の参加者、雲母(ia6295)が煙管を吹かしながら洞窟を覗き込みながら満足気な顔ですぱすぱと煙管の煙を洞窟に入れている。
「今回はちょっと寂しいさねぇ‥‥」
 同じように煙管を吹かしている朱麓(ia8390)が調理器具と材料をがちゃがちゃと整理しながら一体を眺めて一息。流石に今回は成功させたいのか、色々と腹持ちのいい物を選択している。
「しかし洞窟に泊まるのは考えてなかったねぇ」
 けらけら笑いながら依頼書を眺める、相変わらず無愛想な事でといいながらくすくすと笑う。
「今回の洞窟は少々毛色が違うようですわね、色々と考えられますが、中々に興味深いですわね」
 フレイア(ib0257)が扇をぱたぱたと揺らしながら、第三階層から戻った冒険者を探していく。今回の洞窟、先ほども言ったように経路が違うので情報を貰うのはかなり大事だ。少し歩いていくと包帯塗れの冒険者を発見するので話を聞いてみる。
「三階層か、そうだなぁ‥‥とにかく迷うのと罠が多めだったな、アヤカシの遭遇率はそこまでないが、一匹一匹がそれなりに強いから、危ないってところか」
 顎に手を当てて考えながら一つずつ思い出すようにいい始める。其れを聞きながら手帳に書き込んでいく。今回はマッパーがいないのでフレイアが担当だ。
 その反対側では鳳珠(ib3369)が事前情報を整理しながら道具に節分豆を詰め込んでいく。
「今回は拠点確保が重要とのこと‥‥了解です」
 松明に手帳、筆記用具、寝袋としっかりと道具を確認しつつ袋の中へと詰め込んでいく。今回は全体把握ではなく、階段と拠点の設営に重点をおいて、そこからと考えている。手帳に書き込まれている事前の地図などを見ながら最適な道や、奇襲されやすいところを考え始める。
「第二階はいけませんでしたが、大変だったようですね‥‥今回も大変そうですが」
 ふぅっと息を吐いた御影 銀藍(ib3683)が洞窟の方を眺めてから一息、予め借りておいたランタンの不備がないかを確認してからそれを置いて道具袋の確認を始めていく。今回は流石に一気に、とは行かないようだ。天幕も準備し万全の体勢で挑む。

 そんなわけで開拓者五人、今回の第三階層へと進んでいくのだった。

●第一、第二階層
 既に踏破済みのこの階層、いるのは狩り目的や残党殲滅の開拓者が多くなってきている。いつ、ここから飛び出してくるから分からないというので、近隣の村がこういう依頼も出しているとの事だ。
「無駄な消耗は避けてささっと進みましょう。階段で休憩すれば素早く移動もできますでしょうし」
 地図の書き込まれた手帳を眺めながら指をさして進行方向を指し示す。
「では、奇襲警戒ということで」
 瘴索結界を発動し、周囲のアヤカシを警戒しながら第一階層を進んでいく。陣形はいろは通り事前にきめていた状態で、前に朱麓と御影、中衛にフレイア、鳳珠、最後尾に雲母と言う風になっている。流石に何度も人が入り、討伐もされているのでアヤカシの数はそれほど発生もせず、瘴気の反応も第一階層はそれほどなく、さっくりと第二階層へと足を踏み入れている。
「ん〜‥‥こう、進んでいく感じがたまらんなぁ」
 楽しそうに煙管を吸いながら楽しそうにあたりを眺めている雲母、腰にマスケット「シルバーバレット」を備えて弓で遊んでいる。それくらい余裕はまだあるという事だ。
「さって、消耗もないし二階も進むかねぇ」
 朱麓がそういっている間にも一階階段へとたどり着く。全員頷いてそのまま先へと進んでいく。
 第二階、此方は第一階と違いまだそれなりの数のアヤカシと瘴気が蔓延っている。現状では自分の階層だけ動いているようなので問題はなさそうではあるのだが‥‥やはりいかんせん、数が多い。
「こんな、ところだったんですね」
 御影が近くに沸きあがってきた骸骨を粉砕しながら尋ねる。前回来ている開拓者は「楽しいだろう?」と冗談交じりに言っている。
「と、囲まれ始めているので突破しましょう」
「道順は、こっちね」
鳳珠がアヤカシの接近を感知し、フレイアが道を示しながら進んでいく。
「運動の後の食事って、美味しいんだっけ?」
 がちゃがちゃと調理器具を揺らしている朱麓がそんな事をいいながら人参銃の弾丸を叩き込む。
「頭百点、胴体五十点 カス当たり零点」
 楽しそうに雲母が後続の骸骨を撃ちぬきながら点数を数えている。深刻に考えるよりも楽しんでいる雲母が一番堪能しているようにも見える。とにかく屍(元々そうだが)の山を築き上げながら第三階層の階段へとたどり着くのだった。
「流石にこの辺までは手馴れましたね」
 階段を降りながら扇いで一息ついている。伊達に此処まで何度も攻略を進めてきたわけではない。とにかくここまで何事もなく、順調にやってきたのは経験の積み重ねだ。
 
●第三階層、一泊二日の洞窟探険
 ひとまず何時もの様に拠点を作り始める、松明を周囲につけて明るさの確保、安全の確保を済ませると一息。御影が持ってきた天幕を張りながら通路では雲母が警戒、軽く開けたところで朱麓が持ってきた調理器具を下ろす。鳳珠は瘴索結界を張りなおして雲母の隣で警戒にあたり、フレイアが地図を確認して今後の攻略方法を考える。とりあえず此処で寝泊りする準備は完了した、あとは階段を探す事に集中すればいい。
「最後までこの洞穴を調べるって決めたんだ。一泊二泊それ以上の覚悟位とうの昔に出来ているさね」
 思い入れの強い朱麓にとっては平気なことだ、寧ろかかって来いといわんばかりの意気込みだ。
「楽しいなぁ‥‥あ、何でもないからな」
 心地よく鼻歌を奏でている雲母がそんな事をいいながら否定的に話している。随分楽しそうにしている。
「楽しそうですねぇ、本当に」
 くすくす笑いながらフレイアものんびりとしている。興味深く洞窟の壁を叩きながら何が違うのか考えている。
「とりあえず、周囲にアヤカシはいないようですね」
 瘴索結界を使い、一旦周囲を索敵し一息。節分豆をぽりぽり食べながらゆったりとする。
「罠も特になさそうですね」
 御影の周囲探索も終わり、全体的に一息ついたので早速三階層の探索を始める。
 
「何て言うか、前二つがアヤカシがいたせいで何か拍子抜けねぇ」
 こつこつと刀の鞘で床と壁を叩きながら周囲をしっかりと確認しながら進む。
「と、曲がり角のようですね」
 朱麓と御影が後ろの三人を止め、地図を書く時間を作る。今回はフレイアと御影が地図担当だ。手帳に書き込んでいる間に朱麓と雲母が曲がり角の確認をしている。鳳珠も瘴索結界を使ってアヤカシの感知をしておく。
「特にはいないようですね、罠の危険くらいでしょうか」
「ふむ、右側は特にないさね」
「同じく左側も特になしだ」
 死角となっている部分をじっくりと調べてから大丈夫、と言うのを示してから先に進んでいく。曲がり角が多く確かにかなり迷いやすいそうして歩き続けたところで行き止まりに差し掛かる。鞘で叩きながらじっくりと調べると、変な空洞音が響く。
「ちょっと、下がってください」
 御影が地面に耳を付けてこつこつと叩きながらゆっくりと調べ始める。地面を手探りで調べながら当たりを引いたのか強めに叩く、と同時にガコンと音がして穴が出来る。
「もうちょっと進んでいたら第四階層へ直通だったなぁ」
 楽しそうに穴を覗いて何発か撃ち込む雲母。
「あの世に直通っぽいな」
 発砲時の発光で軽く下を眺めたらしい。軽く冷や汗をかいて御影が立ち上がり「結構怖いなぁ」と冗談めいて言う。またその反対側の道へと行くと行き止まりで同じように
「進展しませんね‥‥かなり複雑のようですし、一泊は確定ですかねぇ」
 手帳を眺めながらめんどくさそうな顔をしているフレイア。日の光を浴びたいものだ。
「怖いくらいにアヤカシは反応しません‥‥と思いたかったんですけどね」
 鳳珠が曲がり角の先にアヤカシの反応があったのを言い全員身構える。曲がり角からそれなりに大き目のアヤカシが爪をふるって飛び出してくる。其れを受けたのかぺたんと尻餅をついて朱麓が転ぶ。それを狙って爪を突き出したところへと座敷払の反撃とフレイアのブリザーストーム。動きの鈍くなったところへ抉るように刀が突き刺さり、ついでに御影の苦無やら雲母の銃弾をぶち込まれている。何とも哀れだ。流石に第一、第二での集団戦闘のおかげで下手なアヤカシ程度では即蒸発する、これも経験。
「何とも、拍子抜けだねぇ」
 お尻についたほこりをパンパンと払ってから朱麓が立ち上がり、またこつこつと地面やらを叩きながら進んでいく。何度か行き止まりと罠に引っかかり岩が転がってきたり地面から棘が飛び出してきたり落盤が起きたりと色々あって拠点に戻っていく。フレイアと御影が書いた手帳には罠塗れになった通路に×印やらメモが書かれている。
 とにかく階段下の拠点に全員が戻ると一息つき始める。がちゃがちゃと材料やら調理器具を取り出して朱麓が料理を始める。
「あ、悪いけどこれから料理するから誰か火貸してくれない?」
 と、言うと雲母が煙管の火を使って焚き火を起こす。
「ほれ」
 そっけない感じではあるが内心ではかなり楽しいらしい。とにかく火は出来たので料理を始める朱麓、その間に雲母と鳳珠が通路前で警戒し、フレイアと御影が地図の誤差を無くしたものを作る。
「ほら、出来たよ、気休め程度かもしれないけどないよりマシだろうさ」
 炒飯を作って人数分を皿に入れて配る。いい感じに干し肉と油の焦げた匂いが当たりに漂う。食事中はお静かに、といいながらフレイアが通路への道をアイアンウォールとフロストマインでかためてから全員食事をし始める。意外と歩いた後などはお腹が減るものだ。さっくりと全員が食事を終わり、一息。
「お粗末様」
 皿を片付けながら朱麓がホットチョコレートを作る。今日は此処で一泊するの決定済みなので見張りの順番を決めてから寝泊りする事に。消耗の激しい鳳珠とフレイア朱麓が先に寝ると、雲母と御影がホットチョコレートを啜りながら見張りをする。一応アイアンウォールでかためられているので当分は安心であるが。
 と、アヤカシの発生率的にそれほど面倒な事も起こらず、数時間が立った後見張りを交替してからもう数時間、第三階層の探索を再開する。
 
「んー‥‥時間の感覚が分からないのは、面倒さねぇ」
 朝?の一服をしながら通路を進む、寝泊りする前に大分通路の選定をしていたのでさくさくと進んでいく。罠、之も大きなものも見当たらずゆったりと進んでいくと行き止まりの先に階段を見つける。
「さって此処から戻るのか」
 煙管を拭かして周囲を警戒する雲母。
「道は大体分かっていますから、面倒なのは片付けくらいでしょうか」
「アヤカシ自体は少なくて良かったのですけど」
 ほふっと一息、何だかんだ階段までの道のりはかなり長い。
「とにかくここから戻るのが大変ですね」
 階段付近の罠を調べながら特に何ともないので胸をなでおろす。
「じゃあ戻るかね」
 余ってたホットチョコレートを全員が飲んで一息つくと、来た道を戻り始めるのだった。
 
●脱出
「日の光っていいもんだなぁ」
 煙管を吹かしている雲母が伸びながらそういっている。
 戻るのも特に問題もなく、やはり一日泊まって体力を回復させたのがおおきかった。下手に焦って攻略するよりも余裕があり、ゆったりとした感じで脱出。特に怪我も被害もなくあっさりとも言えるくらいだ。
「流石に一日寝苦しい場所だと布団が恋しいさねぇ‥‥宿は?」
 朱麓が何時もの様にやってくるもう一人の煙管愛好家に尋ねる。いつもの療養の宿、報酬とは別のご褒美みたいなものをねだってみる。
「しょうがないねぇ‥‥ま、ゆっくりしな」
 宿の場所を書いた紙を渡すと洞窟へと入っていく。
「相変わらずの人ですね‥‥」
 久しぶりにやってきた御影がその光景をみながら苦笑い。
「まぁ、温泉にもつかれますしね」
 扇で口元を隠しながらさっさと行ってしまうフレイア。
「何時もどおりですねぇ」
 あまった節分豆を食べながら鳳珠も後についていく。
 
 楽しそうに全員が温泉に浸かったのはまた別の話。