不思議洞穴弐【第四階】
マスター名:如月 春
シナリオ形態: シリーズ
危険
難易度: やや難
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2011/01/16 02:51



■オープニング本文

●不思議洞穴壱、弐から離れたとある村。
 何時もの様に畑を耕している青年が一人。
 鍬を振るって、今日も何時もの様に畑を耕し、野菜の世話をし、家に帰って飯を食う。
 そんな一日になるはずだったのだが、何時もとは違った。
 異様な振動に気がつき、手を止めて地面に手をつけてじっとする。
 
「‥‥ん?地震かぁ‥‥?」

 田舎特有の少し間のぬけた声で首をかしげながら振動がおさまるのを待つ。
 が、一向に待っても小さく震えているような感触が手に残る。

「なんだぁ‥‥?」

 手拭で汗を拭いて立ち上がると振動のするほうへ少しずつ歩いていく。
 少しずつ、少しずつ振動の強くなるほうへと歩く。
 いつしか畑から村を出て山道へ、山道から横に反れて川沿いに、さらにその上流へと。
 上流へと歩いている最中に振動は止んだが、この上から来ていると言うのは確かだ。

「滝があったかなぁ」

 と、鍬を肩に担ぎながら滝の裏側へと歩いていく。
 よくよく見ると滝の裏側にぽっかりと開いてある。
 いかにも辛気臭い嫌な感じの洞窟だが、少しだけ覗き込み中の様子を探る。
 ぽっかりと開いた穴、と言う感じだ。
 じっと覗き込んで音を聞いてみるのだが、ケモノの遠吠えのような、何かのうめき声のようなものが聞こえてくる。
 とにかくそこから感じ取れるのは「やばい」という概念だ。
 慌ててそこから走り出して村に戻り、事情を説明する。

 ‥‥その日からだろうか、夜な夜な何かのうめき声が村を襲うようになったのは。
 猫でも犬でも狼や鳥でも熊でも何でもない、気持ちの悪い声が鳴り響く。
 どうにも締め付けられるような、そんな感じの声だ。
 
 村人はそれに震える生活が続くと流石に苦しい。
 農作業もはかどらない‥‥だから。


●ギルドにて
 ギルド宛の手紙を受け取り、中身を見る。
 滝の裏側に出来た洞窟の調査依頼‥‥安全確認もろもろの事について書かれている。
 村の安全もこのままでは保障できもしない、どうにか原因を調べてくれ、と言う内容だ。

「ふむ、新しい洞窟ねぇ‥‥」

 ナイフをくるくると回しながら夢が手紙を読みすすめていく。
 地図を広げて場所を確認し、前回前々回の洞窟の場所から線を引いていく。

「後二つくらい、発生するかもね」

 自己満足して地図を仕舞うと洞窟の探索依頼の依頼書を書き始める。
 
「また、忙しくなるわねぇ」

 随分と楽しそうな顔をして。


■参加者一覧
風雅 哲心(ia0135
22歳・男・魔
ペケ(ia5365
18歳・女・シ
朱麓(ia8390
23歳・女・泰
フレイア(ib0257
28歳・女・魔
ルーディ・ガーランド(ib0966
20歳・男・魔
楠 麻(ib2227
18歳・女・陰
鳳珠(ib3369
14歳・女・巫
御影 銀藍(ib3683
17歳・男・シ


■リプレイ本文

●毎度おなじみ
 滝の裏の洞窟から少し離れた空き地に開拓者八人、その他個人的に探索しにきている冒険者やら旅人がそこにたむろして勝手に野営をしながらどうやって攻略しようか話している。
「結構、人がいるもんだ‥‥それはさておき、これが噂の洞窟か。今回はどんな感じになってるんだろうな」
 あたりをぐるりと見渡して風雅 哲心(ia0135)洞窟の入口から戻ってくる。今回が初洞窟の風雅、とは言え彼の彼女が常連なので下手なことをするとどうなるかわからない。
「ま、いつもこんなもんさね、寧ろ少ないくらい?」
 がちゃがちゃとギルドから借りてきた駒下駄やら馬下駄を持ってい来る朱麓(ia8390)流石に何度も洞窟探険をしているだけあって準備は万全だ。
「んー‥‥うめき穴ですか。大きいのがいそうですねー、空気の流れでうめき声がしている、なんてオチかもしれませんが、冒険してのお楽しみ?」
 ペケ(ia5365)が入口のあたりで耳をすませて「うめき声」を聞く。確かに犬猫のような声ではない、そのままケモノと言った感じのうめき声が聞こえてくる。
「洞窟の出現した位置を考えると何かの封印でしょうか、まぁ、それはさておき新たな洞窟を何とかする事に専念いたしましょうか」
 朱麓から下駄を受け取った後にこれまたギルドから借りてきたハンマーと鉄釘を出しやすいようにポーチに入れて腰につけるフレイア(ib0257)。何だかんだで彼女も結構前から洞窟を探査している面子だ。
「とは言え、前の洞窟は壮絶な崩壊オチが待っていたからな、まぁ今回がどうなるか‥‥」
 毎度のおなじみの地図作成係ルーディ・ガーランド(ib0966)相変わらずいい地図を作るので夢から「マッパー」と言われるようになった。勿論今回もしっかりと手帳と筆記用具は持参している。
「場所は違うようですが、何か関係性があるのかも?気持ち悪いうめき声もアヤカシかもしれないですし、早めに安全確認できると、いいですね」
 此方も前回の引き続き参加している御影 銀藍(ib3683)。何時もの様に胸やらポーチに小瓶を供えている。また、ギルドから借りてきた滑り止め、ランタンを確認しつつ同じように縄と苦無をすぐに使えるように細工をしている。
「おれの求める陰陽道はまだ遠い!!」
 と、洞窟の入口で楠 麻(ib2227)が声を上げている。まぁ、何かと厳しい戦闘があると睨んでいるのだろう。
「推測ですが、洞窟から聞こえるうめき声は洞穴内に風が通っていてそれが何かを通る際に共鳴して出る音かもしれません。突風などに注意したほうがいいかもしれません」
時折聞こえる「うめき声」に鳳珠(ib3369)が予想をしながら相談する。とにかく中に入らないと何があるか分からないのであくまで推測だ。
 そんなこんなで今回集まった開拓者八人、半分程が前回、前々回から洞窟探索をしている経験者、問題はないかと思われていた‥‥が。

●第三の洞窟
 滝の裏側に発生した洞窟、水飛沫が跳ねているせいで入口は岩が変色し黒くなっていたり、苔のようなものが生えていたりと中々に滑りやすくはなっているのだが、多少奥へと進むと半球状になった意外と整地されている通路にたどり着く。横幅は大体大人二人分、天井までは大人一人と半分ほどの高さだ。一応ペケがぺたぺたと天井や床を注意深く見ながら罠を目を凝らし、棒で突いたりしてある程度確認してからゆっくりと中に進んでいく。
「ふむむ、今までとはちょっと違うようで‥‥?」
 罠解除専門の彼女としてはちょっと退屈そう。
「とりあえず、索敵してみるか」
 風雅が心眼を使ってしばらくすると冷や汗が一つ。
「‥‥なんとも、いつもこんな感じなのか?」
 あまりのびっしりとした反応に多少苦笑いを浮かべ、刀を抜いて警戒し始める。うめき声は確かに聞こえるが、奥から風が吹いてくるというよりは瘴気が吹き付けてくる感じでなんともいやな感じだ。
「とにかく奥に進んでみますかねー」
 暗視を使ってじっくりと奥を見るペケ、ずーっと奥のほうまで通路が続いているのがよく見える。色々ごそごそと取り出して罠解除の準備を進めていく。ちなみに今までの解除率は大体二割くらいだ。(発見率は八割強)
「ふむ、入口だけは大体同じだな」
 前回の洞窟と見比べながら進んでいくルーディ、相変わらずのマッパー具合。
「では、失礼して」
 鳳珠が前衛と殿の各四人に付与をしていく、中々の消費ではあるが、とにかく前に進む準備はこれで出来た。松明を取り出して数人が火をつけて灯を確保すると進んでいく。

 途中からは既に足元は乾き、薄暗く乾いた通路に下駄の音がからからと鳴り響く。またこつこつと御影が洞窟の壁を削ったりしている音、ぱちぱちと松明の燃える音、と今のところアヤカシの気配がする音はしない。
「どうも嫌な予感がしますね‥‥」
 急勾配の坂があったので鉄釘と荒縄を使い簡易的な手すりを作り降りていくフレイア。彼女もルーディと一緒にマッピングを進めていく。
坂を下りてしばらくすると、ぽっかりと開けた場所が目に付く。一先ずペケがこっそり中を調べながら全員息を潜めて報告を待つ。
「何がいますか、ねー‥‥」
 手鏡を使い部屋を見回す。とにかくアヤカシが直立不動で眠っている。厳密には眠ってはいないのだろうが、特に此方を見ているのもいるが特には反応はない。とりあえず問題がなさそうなので手で合図を出して全員が部屋の前で待機する。
「寄り道って、あったっけ?」
「いや、ここまで殆ど一本道だ、突破するしかなさそうだが‥‥果たして鬼がでるか蛇がでるか‥‥」
「鬼型のも蛇型のもいるっぽいぞ」
 覗きこんだ風雅が目をこらしてみると、色々敷き詰まっている感じだ。その隣でルーディが「はぁ‥‥」とため息をついている
「化け物部屋とは‥‥なかなか」
 採取も終わった御影がぽつりと、よくよく聞けばうめき声のようなものが目の前の部屋から聞こえる。
「風のほうが良かったですね‥‥」
 残念そうに鳳珠が言っている。確かに突風の方が消費的にも数倍マシだっただろう。
「とにかく倒せばいいんだろう」
 と、楠がいいながら手前にいたアヤカシに向けて火輪を発動。体半分ほど燃えながら此方に近づいてくると、部屋全体のアヤカシが此方に視線を向けて動き始める。
「体勢を立て直しますか」
 フレイアが部屋の入口にアイアンウォールを発生させて相手の進行を止めると共に開拓者達が獲物を構えて迎撃の体勢に。一先ず此処までくる間にアヤカシは見られはしなかったので少し陣形を変える。前衛に風雅、朱麓のカカア天下に切り替え他の六人は適宜交代するようにする。通路での迎撃なので射線が通りにくくはあるが部屋に入るよりはよっぽどましだ。
 ガンガンと何かをぶつけたり叩いたりしているうちにアイアンウォールが破壊されてアヤカシがぞろぞろと通路へと流れてくる。それは様々な種類がおり小型のものから通路いっぱいの大型のものも奥のほうに見える。
「部屋びっしりにいるみたいですね‥‥気分が悪くなるほどに」
 瘴索結界を使ってざっと見てみるがあまりの数に少しくらっとくる。とにかく数が多いのでどうしようかといったところだ。
「とにかく倒すしかないだろう、まだ初めの部屋だぞ」
 詠唱しつつルーディがそういうと通路に流れてきた一匹を風雅が斬り捨てる。
「こいつは少し、骨が折れそうだな」
「なーに言っているのさ、さっさと片付けるよ」
 とりあえず向かって来る小型のアヤカシを二人そろって迎撃し始める。近づいてくるのを叩き斬り、初めて持ってきた人参銃の銃口をぐりっと押し当てて一撃。雷鳴が鳴り、音と煙と共にアヤカシが霧散する。
「ひゅぅ‥‥これ、なかなかいいじゃない」
 くるくると銃を回している姿を風雅が眺めて軽く思案
「(相変わらず頼りになるな)」
 そうして前線は維持し危なくなったらアイアンウォールで道を塞ぎ、すぐさま閃癒によって回復をする。以降繰り返し――正直埒が明かない。
「松明でも投げ入れてみますかー」
 といいつつ二度目のアイアンウォールが破壊されたと同時にペケが松明を投げ入れる。ダメージ的には皆無だが中の様子を見られるのはなかなかいい、暗視も使って中を覗けばまだまだみっちりと敷き詰められているアヤカシ。
「これは‥‥どうしましょうか」
 射線が通る大型の鬼アヤカシの頭に苦無を投げつけながら思案する御影、通路で前衛二人が頑張っているとなると前には出るのは難しい。
「もう一度塞いで、その後ブリザーストームで蹴散らそう」
 後ろのルーディが提案すると同時に是認が頷いて行動開始。
 一先ずまた破壊されたアイアンウォールから突撃してくるアヤカシに二連雷鳴剣、さらに火輪、おまけに苦無と雷火手裏剣の波状攻撃。
 ボン!とはじけ飛ぶように部屋入口が開けると風雅、朱麓がまず突撃し道を開く。
「雷撃纏いし豪竜の牙、その身に刻め!」
 そう叫びながら部屋入口を制圧、朱麓も其れにあわせるように紅蓮紅葉で蹴散らしていく。
「先程よりは大分減りましたね」
 瘴索結界の持続効果で報告しつつ、閃癒での戦線維持を勤める。
「アヤカシは消毒だー!」
 火輪を投げつけてそういい続ける、勿論燃えてはくるが奥からやってくるのに押されて少々手が足りない。
「合わせろ!」
「わかりましたわ」
 そういいながら大体部屋の隅を見るようにルーディとフレイアがブリザーストームを使う。さすがと言わんばかりの冷気があたりを包み込み、アヤカシを凍りつけていく。
「うぅ、さむいですー」
 ペケがそんなことをいいながら手近なアヤカシを砕く。範囲攻撃の素晴らしさが此処でひしひしと感じられる。とにかく全員が凍りついたアヤカシを殴り始めるとあっさりと部屋が制圧できる。この面子だと雑魚ばかり、数だけ多くて消費がきついといったところだろう。

 戦闘が終わり、あたり一面瘴気になっているところに一つの箱を発見してペケが近づいていく。今のところドジはしていないのでそろそろだろうと本人も思っているので慎重に。鍵穴らしき部分にΩ型にした針金を差込、何度かかちゃかちゃとと弄る。何度か弄っているうちにはまったので一本、少し長めの針金を差込捻る。そうすると、箱が開いてペケの腕に噛み付く。
「うにゃああああ!!」
 ボコっと蹴りを入れ奥の通路へと飛ばすと、箱から手が生えてわたわたと通路の奥へと消えていく。罠と言えば罠なのだろうが、なんとも言えないペケがぶーぶーといいながら傷を手当する。
「砂金、と言うよりは砂の塊だなぁ」
 ルーディが前回の洞窟の事を思い出して足元を見つめる。松明の光を近づけてじーっと目を凝らしても何もなし。世の中甘くないってことかと苦笑いを浮かべる。
「まぁまぁ‥‥」
 フレイアがそうなだめながらくすくすと笑っている。
 とりあえずは一段落し休憩もいれたので先にへと進んでいく‥‥。

●とりあえず脱出し
 その後、数部屋のアヤカシ詰め合わせと遭遇。回り道はあるのだが、とにかく部屋に当たる。地図の出来はほぼ完璧に近いのだが、階段がある部屋へたどり着いたときは既に全員が三割ほどの体力しかなく。結局階段を見つけたもののその部屋の先まではいけず、体力消費が激しいせいもあって途中で方向転換、なんとか全員がぼろぼろになりながらも地上へと脱出する。うめき声の正体はひしめくアヤカシの群れと言うことは分かったが中々今回の洞窟は戦闘が厳しいため、今までどおりとはいかないようだ。
 勿論脱出するときには一度一掃した部屋にアヤカシが沸く、さらには後ろからの追ってと言うか徘徊しているアヤカシにばったりと遭遇。殿を務めている、また前線に立っていたものはかなり消費する事になった。

 とにかくアヤカシの数が異常であり瘴気の濃さも今までのとは桁が違うようで他に潜った物も大体ボロボロになって帰ってくる。次からはいかに効率よく倒すかが問題になりそうだ。

 そんな中ぼろぼろになりつつも一人、いつものように洞窟の入口あたりを調べながら朱麓がいつものように人を待つ。少し大きめの地図を壁に広げて線をつなげていく。
「あ〜‥‥これって、今まで洞穴が出現した場所を線で繋いでいくと何かの紋様になる、とかそういう感じかねぇ?」
 後ろに気配を感じてそれに尋ねるように話を続ける。
「残念、紋様ではないんだなぁ‥‥まーだまだ甘いなぁ」
 くすくすと笑い声が後ろから聞こえるとそのまま洞窟の奥へと足音が消えていく。
「相変わらず、だねぇ‥‥」
 煙管を吹かして、朱麓もくすくすと笑うと野営地に戻っていく。

 その後、夢や他の開拓者、旅人等により開拓者八人が切り開いた道をさらに切り開き第二階層へはどうにか進める様になった。