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■オープニング本文 ●港の一室にて 何時も以上に油の匂いと金属の鳴り響くその一室で関係者一同、新しく導入されたアーマーを眺めている。 少し前の合戦で見たもののこうして目の前にあると色々弄りたくなるのが本音。 離れた場所にはばらばらに分解されているのやら、手だけ、足だけ、はたまた胴体だけ等色々と横たわっている。 しかし何故この一室に集まっているのかと言う話だが。 「やっぱり、やるんですよね?」 「勿論、私達は何時もやってきたじゃーないか!」 ばん、と机に一枚のチラシをたたきつけて何時もの様に高らかに。 「第一回、アーマー大戦!いやぁ、男の浪漫だよなぁ」 何が浪漫なのかは分からないがグライダーが新しく入ったときと同じような物で、今回もアーマーだけをあつめて宣伝をするようだ。 「毎度イベント好きですねぇ‥‥準備はどうするんですか?」 「うむ、牧場の一角を使って派手にやろうじゃーないか」 その場しのぎで使った牧場であったが、色々と改築やら増築で今じゃグライダーも飛ばせるほどになっている。 とにかくがしゃがしゃと動くさまが見たくてしょうがないのが本音だ。 「あっしら、整備は出来るけど操縦はねぇ」 んだんだ、といいながら一同首を縦に振りつつ賛同。 専用の運搬だけのための船が密かに作ってしまったのは秘密だ。 「とにかく、アーマーを動くさまがみたい!戦っている姿をみたい!いいねいいね、弾け飛ぶ装甲に油の匂い!」 一人が拳を掲げて他のも一斉に拳を上げる。 相変わらず港は平和です。 |
■参加者一覧
シュヴァリエ(ia9958)
30歳・男・騎
サーシャ(ia9980)
16歳・女・騎
レヴェリー・ルナクロス(ia9985)
20歳・女・騎
龍馬・ロスチャイルド(ib0039)
28歳・男・騎
ロック・J・グリフィス(ib0293)
25歳・男・騎
アレーナ・オレアリス(ib0405)
25歳・女・騎
風和 律(ib0749)
21歳・女・騎
シルビア・ランツォーネ(ib4445)
17歳・女・騎 |
■リプレイ本文 ●牧場はずれ、特設会場にて 何時しか巨大になりつつこの敷地にアーマー用の特設格納庫を仮設して各々が此処で港の関係者やらとアーマーの調整を始めている。唸りが上がる歯車の音、軋む金属音、漂う油の匂い。どれもが今までの天儀にはなかったものだ。グライダーもあるといえばあるが、アレはどちらかと滑空機なのでまた動力部分が違う。 「なんとも重々しいねぇ」 夢が煙管を吹かしながら面子の確認を行い、試合をくみ上げていく。一応ギルド側の代表として何時も借り出されるのだが。そうして夢が確認し終り、いつもの実況席に座ると拡声器で試合の順番を声を出してあげていく。 ●第一試合 「最初は、えーっと‥‥シュヴァリエ(ia9958)と龍馬・ロスチャイルド(ib0039)、格納庫から出てこい」 そうアナウンスされると二機のアーマーが重々しく前へと現れる。一応準備運動やら動作確認のために増槽が詰まれている。 両者前に出て定位置まで歩いてくると対峙し、一息。 「不備がないか確認」 夢がそういうと両者暖機運転を始める。 シュヴァリエがゆっくりアーマーを稼動し、動きを確認する。まずは腕の駆動域、脚の駆動域、何度か剣を振って反応速度を、軽く跳躍するとずしんと重々しく地面に沈み込む。 「おっと、少し危ないか」 ぐらついたアーマーを立て直して獲物を構える。四百程もあるのが跳躍すれば簡単に脚は歪みと悲鳴を上げて、修理員をなかせるだろう。 「シュヴァリエさん、対戦相手としてご指名ありがとうございます」 龍馬も獲物を構えて相手を見据える。 「ふむ、では早速始めるか‥‥外せぇ!」 夢の声と共に独特の空気音を発しながら増槽が外される。ここからが戦闘開始だ。 初動、まず動いたのはシュヴァリエ、操縦席で雄たけびを上げながら上段構えで迫激突で一気に距離を詰める。それを読んでか右斜め前方へと移動し回避する。振り下げられたクラッシュブレードが唸りを上げ、龍馬の機体の左肩を吹き飛ばすかのごとくたたきつけられる。対人戦とは違うありえない衝撃と動きの遅さに戸惑いながらも体勢を何とか維持したまま横から迫激突で突っ込む。 迫り来る龍馬のロートシルトを確認すると、同じように迫激突を使い真正面からぶつかり合う。金属のぶつかり合う独特な音が鳴り響きながらクラッシュブレードとアーマーソード「ケニヒス」がぎちぎちと擦りあわされる。 「まだまだ、甘いな」 人間のときと違うのは力の入れ具合。一定の力加減を維持できるならば出来る芸当と言うべきだろうか。片手でケニヒスを受けながらもう片方でナックルコートでの一撃。鉄塊とも言えるものが装甲をへこませる。一度距離を取り、一息つくとさらにシュヴァリエが迫激突で攻め立てる。 「流石に、まずいようで」 ガードを使い、盾を構えると正面から激突、人間と違いべた脚なのが幸いしてか少し後ろに足跡をつけながら耐え切る。 「(そろそろスキルにまわす練力がきつい、か)」 ガンガンとクラッシュソードをたたきつけてくるのを耐えながら状況を判断していく。予定だと迫激突は残り一回、後は地力での勝負になるだろうと思われるが、向こうはそんなものを気にせずに攻めて来る。本人にはダメージがないとは言え装甲が凹んでいくのはいやな物だ。攻撃の合間を狙ってさらに迫激突を使い距離を詰めるが、同じように迫激突を使い装甲をぶつけ合う。鍔迫り合いから距離を取ると、シュヴァリエのボルトアームが鎖をじゃらじゃらと言わせながらロートシルトの頭部を捉えてアッパー気味に頭をかち上げる。さらにそこからボルトアームの鎖を無理やり叩き付けるように動かし、追撃。そしてそのまま踏ん張りもきかずにずしんと大きく倒れる。 「勝負あり、だな」 夢がパタパタと白旗を振り決着。倒れたロートシルトを立ち上がらせて握手を一つ。中々いい勝負であった。 ●第二回戦 「っと、次はサーシャ(ia9980)とロック・J・グリフィス(ib0293)だな」 格納庫からサーシャのミタール・プラーチイとロックのクロスボーンが現れる。勿論背中には増槽が乗っかっており、暖機運転用としている。サーシャの獲物はクラッシュブレード、ロックの獲物は獣騎槍「トルネード」、獲物の違う物同士、どうなるか見ものだ。 「今は亡き先代船長より受け継いだこのアーマー、空賊騎士の誇りにかけて、いざ勝負!」 と対峙早々にロックが声を上げると、ばさばさとマントから胸の髑髏が睨みを利かせるように現れる。空賊らしい。 「‥‥一号機なのか二号機なのか‥‥はたまた三号機なのか‥‥それとも全十字なのか」 夢が煙管を吹かしながらそんな事を呟いている。 「さて、坑道に閉じ込められた縁もありますが、本気でやらせてもらいます」 クラッシュブレードをガシャっと構えて開始の合図を待つ。 「さって‥‥んじゃぁ、外せぇ!」 先ほどと同じように増槽が強制排除されると同時に両者が迫激突を使い、距離を詰める。ガシャンと金属音を鳴り響かせる。唐竹割りからのクラッシュブレードはギガントシールドで抑えられ、トルネードの一撃が腹部装甲を抉っている。軽く冷や汗をかきながら一旦距離を置いて一息。その隙に。 「これが空賊のやり方だ!」 迫激突で突撃速度を上げたままトルネードを構えて突撃。先ほどの一撃からまともに食らえば装甲が吹っ飛ぶところの話ではない。自分の射程外から飛んでくる槍に驚きつつも右構えで鉄壁防陣を使い受け流すように攻撃を受ける。地面に深く突き刺さったピックのおかげで転倒はしなかったものの脳味噌が揺さぶれるほどの振動が襲ってくる。すれ違い、少し距離を取ったところで捻るようにブレーキをかけて振り向く。と、同時に各部から発される蒸気が髑髏を際立たされる。 「中々ですね、まだ!」 迫激突を使って一気に間合いを詰めると左拳を握りこみ、クロスボーンへと叩き込む。体勢を崩した、と思われたところで鉄壁防陣によるピックで押さえ込まれ、左拳が頭部に抑え込められたままになる。勿論ひしゃげてこれ以上は使い物にならない。 「まだまだ!」 そこからボルトアームでの一撃が発射され、大きく後ろへと仰け反る形にクロスボーンが転倒しかけるが倒れない。ダメだと判断しすぐに後ろへと後退したところへ、体勢を低くし、ギガントシールドごと発射されたボルトアームが眼前に迫り来る。クラッシュブレードで捻るように盾をはじくと後ろに迫激突を使い追走していたクロスボーンがトルネードを構えている。 「なんとおぉぉぉ!」 ガシャンと開いた頭部から宝珠の光を発しながら右側装甲を抉り飛ばす。眼前に迫り来る髑髏が目に焼きつくほどの威力であったのは言うまでもない。 「‥‥勝負ありだな」 夢がぱたぱたと先ほどの様に旗を振りながら終了を告げる。抉られた装甲から覗かれるクロスボーンのマントがバサバサと風にたなびいている姿が空賊らしい。 ●第三試合 「さってサクサク進めていくか‥‥次はレヴェリー・ルナクロス(ia9985)とアレーナ・オレアリス(ib0405)だな。素早く起動して出てこい」 試合表だか組み合わせ表を眺めて×印をつけておく。 まずはレヴァリーのメサイアが格納庫から現れる。頭部、両側面に羽が生えているのが特徴だろう。また、各部に家紋が刻印されている。その隣から出てたアレーナの機体、純白で、肩の部分に銀色の薔薇が刻印されている。どちらとも騎士らしい機体だ。そうして増槽を抱えたまますっかり荒れ果てた戦場に両機体が並んで獲物を構える。 「メサイア‥‥お父様、お母様、如何かお力を」 ゆっくりと目を伏せてから呟き、相手を見据えて獲物を振り始める。アーマーフレイムの鉄球が鎖をジャラジャラと言わせながら風をきり、地面を軽く掠めて抉りあげる。 「嫌に恐ろしい武器なことで‥‥」 と、騎士の礼儀に沿って一礼し、駆鎧の鋸刀を構える。どちらも一撃食らえば酷い事になるのは目に見えている。 「さって、いいかね?では、外せぇ!」 バシュっと増槽が外されるとレヴァリーが迫激突による先手必勝、振り回しからのアーマーフレイムがじゃらじゃらと鎖を軋ませながらヴァイスリッターへと鉄塊が迫り来る。それをサイドステップで避け、きれずにほぼ直撃の形で頭部の装甲をへこませる。人間同士ならば避けきれる機動なのだろうが、まだ慣れていない操作には少々難しい。とは言え只でやられる訳ではない、鋸刀をメサイアの装甲にあて、思い切り引きながら転倒する。黒板を思い切り引っかいたような耳障りな音が盛大に辺りに鳴り響く。 「ぐぁああ‥‥!」 一番近い夢の鼓膜がぶち壊されそうにはなっているが戦闘は続行される。転倒したヴァイスリッターを追撃するように振り下ろされる軋む鎖が唸りをあげ鉄球が装甲をひしゃげさせる為にえげつない威力のまま。 「砕けちれぇぇぇ!」 とは言え、やすやすとやられる訳には行かない。すぐさまポジションリセットによる緊急回避と目くらましを行い、一旦距離を取る。あたり一面にオーラ噴出時の粉塵が巻き上がり視界が塞がる。仮面の下の目をこらしてあたりをじっくりと見ていると横から鋸刀が装甲を削り抉る機動で装甲を削り飛ばす。 「まだまだ、ですわよ」 粉塵が収まるとがっちりとメサイアの装甲に鋸刀の刃が食い込みぎちぎちと言っている。 「はぁ‥‥またやるのか」 夢が耳を塞いだと同時に火花を散らしながら「ギィィィ」と金切り音が辺りに響きながらさらに装甲を削っていく。そしてそこからナックルコートをガンガンと殴りつけ、ギガントシールドを凹ませていく。が、流石にそれでやられるわけにはいかない。防御姿勢のまま先ほどと同じようにぶんぶんとアーマーフレイムを振り回すと盾のように構えて刃を弾き、そのまま遠心力を生かして関節部分をぶん殴る。半球とおまけの棘の形に装甲と関節の機関がひしゃげり踏鞴を踏む、そして衝撃に頭が揺さぶられる。が、それでも怯みませずに鋸刀を思い切りたたきつけメサイアの装甲と夢の鼓膜を破壊し続け、ヴァイスリッターの装甲をアーマーフレイムが之でもかと言う位凹ませ、がしゃがしゃと金属音を豪快に辺りに響かせる。 「まだ、まだぁ!」 「いい加減、倒れ、なさい!」 見る影、と言うわけではないが辛うじて原型があるぐらいに装甲やら武器が凹んでいる。見た目を優先にしているとなるとかなりの衝撃になってしまうが、今回はそんな事を気にしないでいいのが今回の戦い。 「も、時間だな、引き分けだ引き分け!」 バタバタと旗を振って試合終了。関係者が増槽を取り付けて格納庫に両機を戻す。レヴァリーはぜいぜいと息を切らしながら何かいつもと違う結構ぶっ飛んだ顔で叫びを上げているのは気のせいだろう。 ●第四試合 「さてと、最後は風和 律(ib0749)とシルビア・ランツォーネ(ib4445)だな、準備して前に出て来るんだ」 最後の組み合わせだな、といいつつ参加表の欄にチェックをつける。 風和のアダマンタイトとシルビアのサンライトハートが格納庫から出てくる。アダマンタイトは見るからに重量級の駆鎧。そしてサンライトハートは水牛風の角付き頭部と馬鹿でかい腕と脚。完全に殴り潰す感じのアーマーだ。どちらも重量級のごついアーマー同士といっただろう。 「装備、性能、技能、そんなことよりアーマーを乗るのにいるのは‥‥」 戦場の中心に対峙。 「気合じゃああぁぁ!!」 増槽が外されると同時にクラッシュブレードを思い切りたたきつけるべく両手持ちにして土煙を上げながら迫激突で接近していく。それを潰すべくギガントシールドを構えて防御をする。とは言えシルビアの思考ではそんなものはただの壁にしかならない。クラッシュソードを上段からたたき付け、ギガントシールドをひしゃげさせる。それも一度や二度ではなく何度も何度もガンガンとぶつけまくる。 「くっ、きつい‥‥」 ギガントシールドで視界をふせぎながら押し込むように盾を使って押し込んでいく。ガンガンと装甲にギガントシールドをぶつけまくり腕やら胴体の装甲が盾の形に凹んでいく。が、どうしてもシルビアの性格から何発食らおうが一向に構わない全く怯まず、とにかく自分の前方に見える盾をひたすらぶったたく、ひたすた、ぶち壊すべく叩き付けるのみ。嗚呼素晴らしき脳筋。 「うらぁああああ!」 がしがしとグローブを動かしてゆがみ始めたクラッシュブレードを叩き付ける。力任せに技術も無しに気合で動かし続ける。歪み始めて本体が見え隠れし始めたところにアーマークラッシュがねじこまれる。 「――ッ!」 装甲ごと機体を持ち上げ数メートル後ろに下げるほどだ。しかし冷静に着地をするとひしゃげた盾を構えなおしてじりじりと近づいていく。ゆったりとべた脚で気合で攻めて来るシルビアをじっくりと見据える。形の気にしない武人と言うのが一番恐ろしいというのが嫌と言うほど分かる戦いだ。とは言え風和も騎士としてのプライドの前に一人の人間として自分の信念を曲げるのは嫌なものだ、自分の戦闘スタイルを変える気はない。 「受けるばかり、防御するばかりと言われても、私は自分のプライドを貫き通す」 何度もたたきつけられて変形したギガントシールドを構え、デーモンズソードをさらに構える。一撃当てれば勝てる、そういいながらシルビアとサンライトハートの動きを目を凝らしながら追い続ける。迫激突とポジションリセットによる粉塵を巻き上げまくりながら突撃してくる。相手の攻撃を後一撃当てれば練力切れで此方の一撃。耐えられなかったらギガントシールドごと装甲をへしゃげられる。 「あんたに足りない物、それはぁ!」 ガシャンと両手持ちにしたクラッシュソードを下段構えにして迫っていくシルビア。 「操縦のうまさでも、自分の力量でも、プライドでも、何よりもぉ!」 「(――くるッ!)」 身を半分程捻り、重量と速度をたっぷりと乗せて――振り下ろす。 「気合だぁぁああ!」 真っ直ぐとは言えないクラッシュソードが信じられない速度で迫り来るのをひしゃげたギガントシールドで受けた瞬間に手を離す。ごりごりとシールドごと装甲をひっかき、振りぬけられると同時にデーモンズソードを相手の胴体を向けて思い切り突き出す。 「うあぁあああ!」 アーマーの目が一度鈍く光ると同時に黒い線が一本胴体をなぎ払う。 そして粉塵が収まるとぼこぼこになったアダマンタイトが一人夕日に照らされていた。 ●全て終わり 全行程が終わり、後片付けをしながら夢がゆっくりとあたりを眺める。 地面はピックの跡やらブレーキ跡やら足跡でしっかりした畑の様に耕されて踏みしめられている。格納庫の方を見れば各々がアーマーを労いつつ、港の関係者とともに修理と凹んだ装甲を直す為にハンマーを振るっている。 「なんとも、不思議な光景だねぇ」 煙管を吹かしながらゆったりと全員の格納庫を眺めて一息。 天儀も新しい物が増えたものだと呟いて今回の試合が幕を閉じるのだった。 |