【HD】首都崩壊
マスター名:如月 春
シナリオ形態: ショート
EX
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/11/14 20:43



■オープニング本文


※このシナリオはハロウィンドリーム・シナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません

●首都にて
 少し今よりも時代が先に進んだ世の中。
 機械や人工物の増えたり、体に機械を入れたりと高度に技術が進んでいる。
 民間医療や、一般的な生活にも使われている。
 勿論軍事関係にも使用されている。

「出来た、出来たぞ‥‥最強の戦略兵器が!」

 少し首都から離れた郊外にある研究所でどこぞのマッドサイエンティストが一体の兵器を完成させて高笑いしている。
 その機体は青い髪に、赤い目、所々が機械と思える箇所がある。
 しかし何処か禍々しくもあり、胴体部に光っているライトが其れを物語っている。

「そう、これで腐った世の中を粛清するんだ!」

 そう叫び上げているところにギルドの開拓者が扉をぶち破って突入してくる。

「悪いがそれは無理な話だ」

 カチャっとそれぞれの獲物を構えてマッドサイエンティストを追い詰める。

「ふふふ‥‥粛清されてしまえ、ゴミ共め!」

 兵器の起動シークエンスを開始、そしてごりっとこめかみに銃口を突きつけて。

 ――ドン――

 真っ赤に辺りを染めながら絶命、そして起動を始める絶望。
 一斉に開拓者がそれを止めようと攻撃し、一撃で返り討ちにされる。
 一人は胸を撃たれ、一人は首を飛ばされ、一人は貫かれ。
 
 歩く絶望はゆっくりと首都に向けて歩き出す。


●ギルドにて
 数十分後‥‥慌しくギルドの中が騒いでいる。
 先程起動された兵器が自爆するという情報を何とか引き出して、それの対策をこうじている。
 とりあえず首都まではまだ数十キロあるが、日没までにはそこへたどり着き自爆するだろうとの事。

「とりあえず、止めなければな」

 ゆっくりと上空から撮影されている兵器のモニターを見ながらぽつりと呟く。
 確実に首都に向けて我が物顔で歩き、ぶつかった物をぶち壊しながら進んでいる。

「データまで消してなかったのが幸いでした、対策も取れるかと」

「よし、至急対策チームを結成して叩くぞ」

 ちらりとデータを眺め、兵器の名前を確認する。
 タケミカヅチと書かれ、見るほどに嫌な気分をかもし出す搭載武器の数々。 
 愚痴っていてもしょうがないといいながら開拓者を集め、兵器を止めることになるのだった。


■参加者一覧
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
仇湖・魚慈(ia4810
28歳・男・騎
雲母(ia6295
20歳・女・陰
エグム・マキナ(ia9693
27歳・男・弓
劉 星晶(ib3478
20歳・男・泰
レティシア(ib4475
13歳・女・吟


■リプレイ本文

●接近中
 タケミカヅチを止めるべく集められた開拓者が一台の装甲車に乗り、がたがたと悪路に揺られながら接近を始める。今のところ攻撃した開拓者、ギルド側以外に被害は出ていないのだが、首都まで辿りつくと結局は全滅してしまう。心なしか車内の中も重苦しい雰囲気、さらには落ち着かないのか誰しもがそわそわとしている。
「何だ‥‥びびってるのか、貴様等」
 車内で一人愛用の弓の手入れをしながら煙管をふかす雲母(ia6295)が口を開く。流石といわんばかりか彼女自身はこの状況を楽しんでいる。彼女だけは嬉しそうに、そして楽しそうにくすくすと笑っている。
「‥‥私は皆様の支援ですから」
 その問に玲璃(ia1114)が自分のなすべきことを簡潔に伝えると、ちらりと外を見る。タケミカヅチが通って其れを防ごうとした軍隊やらギルドやら兵器の残骸があたりに散らばり黒煙をあげている。なんとも言えないが、どれ程の火力を持っているかが嫌でも分かる。
「流石に無限に戦闘できるわけではないでしょう‥‥多分」
 雲母と同じ弓術師であるエグム・マキナ(ia9693)が外の状況を見つめながらゆっくりと分析を始めていく。一応タケミカヅチが作られた例のマッドサイエンティストのパソコンから引き出せるだけの情報を眺めて装備の確認を始める。そしてさらに進行方向上の遮蔽物のある地点を何個かピックアップする。
「高性能ロボットとか浪漫の塊ですね。とは言え、近所迷惑になるようなら壊さないといけませんか」
 仇湖・魚慈(ia4810)が軽くロボットと言う点で興奮しながらも外の現状を眺めて首を傾げる。予想以上らしく感嘆の声を上げてはいるが。
「随分面白そうな、と物騒な物が動き出しているものですね」
 劉 星晶(ib3478)もそんな事をいいながら、定食屋の話を始める。新しく見つけたところのメニューを全て食べていないから、と言う理由で今回のタケミカヅチ破壊作戦に参加したと言う。人間食欲には勝てないというところだろうか。
「明日、孤児院の子供たちに歌をきかせないといけないので、約束は守りませんといけませんしね」
そして後ろに座っているレティシア(ib4475)がぱたぱたと足をばたつかせながらのんきな感じを演出はしているが、じっとりと手に汗をかきながら少し震えている。
 
がたがたと荒れた道を走りながらギルドの関係者が声をかけてくる。
「そろそろ標的が見えるはずだ、これ以上の支援は出来んから後は自分達でやってくれ」
「あの、避難勧告とかはどうなってますか?」
 レティシアがはっと気が付いたように尋ねる。しかし‥‥。
「首都がまるごと吹っ飛ぶうえに何万人いると思っているんだ?逃げる間にドカンだよ」
 皮肉たっぷりに言い放たれて暗い顔をする。顔は見えないが関係者の方も相当悔しいのかハンドルを握る手に力がこもっている。
「データを見る限り追加ユニットが多すぎてよくわかりませんね、飛ばれると厄介ですか」
 エグムがデータをカタカタ弄っていると、キッとブレーキ音とともに停車する。
「こっからは歩いてくれ、車は破壊対象らしいからな」
 そういわれ開拓者が降りると、さっさと来た道を戻っていく。丁度降りた位置は目標の進路上数百メートル先だ。とりあえず各々が破棄された兵器や建造物に身を隠しタケミカヅチを待ち構える。陣形的には雲母、エグム、仇湖、劉が前衛、その後ろに玲璃、レティシアと基本に忠実だ。
 待ち伏せしてから数分し、一歩一歩重音な足音を鳴らしながら一体のアンドロイドが此方にやってくる。遠目から見れば人間ではあるが、目や関節部をよく見れば生身ではないのは分かるが、それ以前に装備の量が異常に搭載されている。
「ああいうのは、一人くらい私もほしいものだな」
 そんな風に軽口を叩きながら煙管を仕舞い、弓を構える雲母。
「では、支援を」
 玲璃が神楽舞を使い、雲母とエグムに「脚」「瞬」をかける。レティシアも楽器を取り出して支援を出来るように。仇湖はマンホール下に、劉は奇襲できるように。
 
――そうして数歩ずつ近づいてくる歩く爆弾に開拓者が攻撃を始める。

●生きるか死ぬか
 タケミカヅチは極めて性能が高かった。進路上に位置する排除対象は捉えていた。左右に二、下に一、後方に二。しかし今は最優先事項がある。無視するのが懸命と判断したが、相手は戦闘の意思がある。
「ターゲット、確認‥‥排除します」
 ガシャっと右腕に装着された口径14.5ミリの対戦車ライフルを構えると発射、瓦礫を破壊し始める。銃口から光と硝煙、銃身から空になった薬莢をばらまきながら開拓者を撃ち続ける。
「流石に、マッドサイエンティストが作るだけあるな」
 不意に瓦礫の奥から聞こえてきた声の方を見ると、貫通力に特化させた矢が一本飛んでくる。咄嗟に腕で防御、血は出ないがみしみしと腕が軋む。
「‥‥損傷軽微、今までの雑魚とは違うようで」
 瓦礫を破壊した際にできた土煙で見えないが温度で感知できる。内部センサーを切り替え、索敵をし始めたところに横から不意を付く蹴りが飛んでくる。
「気休め程度ですが、まぁいいでしょう」
 ガンと金属質な音が鳴り響き、軽く対象を捉えられなくなる。完全な不意打ち、神技の使用だろう。今まで相手したきた連中とは違う事を再認識させられる。
「‥‥少々、侮っていたようで」
 此方側一人は弓術師であることは確認した、正確性、威力、その他において完璧ともいえる程の戦闘力を持ったもの、そして今攻撃しながら撹乱し続けているシノビ。予想外の敵に対応を切り替えていく。そういいながら防御をしつつ相手に対しての行動を切り替える。と、また一つ矢が飛んでくるのを叩き落し、状況分析。
「中々、素早い敵のようで‥‥データよりも武装が減っていますね、楽と言えば楽なのでしょうが」
 土煙にまぎれて瓦礫から瓦礫に移りながら出方を伺う。現状の弓術師の武器はかなり強化されている。特に射方を気にせずに撃てる上に銃よりも隠密性が高く音がしない点はかなりのものだ。
 雲母とエグムは土煙と瓦礫に隠れながら攻撃を続ける。が、タケミカヅチは二人は捕捉しながら銃口を構え発砲。螺旋を描きながら瓦礫を貫きエグムの頭を正確に貫く軌道を描いていくのを仇湖がマンホールから飛び出るとそれを防ぐ。
「はは、すげぇ威力だなぁ」
 びりびりと痺れる手を見ながら怯まずにタケミカヅチに突撃していく。しかし所詮は杖、
タケミカヅチは防御もせずに其れを受け止める。
「期待はずれ、ですね」
 そのままガチャンと銃口を突きつけ、発砲‥‥するところにレティシアの支援、怠惰なる日常が響き渡る。タケミカヅチの視界が暗い雪景色のような幻影を目の当たりにするが。
「子供だましとは」
 ある程度戦意が削がれたのか、銃口をどちらに向けるか一瞬迷う。
「流石に、あんまりききませんか」
 物陰から演奏を続けているが効果が現れていないように見える。人間やアヤカシとはまた違う存在であるからだろう。
 多少動作に迷いが生じたタケミカヅチの一瞬の隙をついて。
「神楽舞「瞬」、神楽舞「脚」‥‥何時でもどうぞエグムさん」
「教導弓術、奥儀『デウス・エクス・マキナ』」
 土煙に紛れ、神楽舞を踊り続けている玲璃が、ひたすらに仲間を癒し支援を続けている。そしてその支援を受けてエグムが精神を集中し、己の神技を撃ち放つ。
 空気の壁を貫き、土煙や銃弾、瓦礫に一筋の線を横に引くようにまっすぐと脚部の付け根、股関節の辺りをえぐるように貫く、ように見えた。一瞬だけ体がぶれ、素通りし、後ろにある戦車を粉みじんに破壊する。
「‥‥神技、離脱を使用‥‥続けて、連続使用」
 両手に構えた大口径の銃身が唸りを上げて動きの取れなくなったエグムへと。あがらなくなった腕を庇いながらゆっくりと自分の死が近づいてくるのが分かる。脳内麻薬
の過剰分泌、さらには死ぬ間際などに起きる現象だ。
「ここまで、ですかね」
 ゆっくりとした時間から開放され、目を伏せると同時に轟音と共にエグムの脳天が吹き飛ばされる‥‥事はなく。
「こんな弾丸では‥‥負けるか‥‥ッ!」
 神技を使い弾丸を真正面から何十発も食らいながら歯を食いしばり耐え抜いていく。硝煙と空薬莢、さらに先が潰れた弾丸がぱらぱらと落ちる。
「マッサージにしては強すぎだなぁ」
「驚きです、庇う必要はなかったというに」
 ガシャンとマガジンを落し、すぐさまにリロードをしているところに。
「そうだなぁ、その何も出来ない状況じゃ無理だろ?」
 物陰から滑るように飛び出ると膝立ちの姿勢から雲母が神技を放つ。彼女の色である紫色の線が丁度ど真ん中、両手同士首から下に一本の線を引き交わった部分ところをあっさりと貫いていく。ゆったりとうつ伏せに倒れ、ぴくりともしなくなる。
「ざっと、こんなものか?」
 雲母が近寄り、動作の停止を確認するために脚で仰向けにすると同時にタケミカヅチの目が光り心臓の横を弾丸が貫き、辺りを真っ赤に染める。
「くそ、がぁ‥‥」
 衝撃によって吹っ飛ばされ、瓦礫に突っ込む。慌てて玲璃がかけより閃癒を施し始める。
「‥‥流石というべきですか、ここまでするのは」
 神技を使ったのかうねうねと体内の機関が結合していく。
「死ぬ前に定食、食べきりたかったですね」
 断続的に攻撃を繰り出し劉がタケミカヅチを止めるべく善戦するものの、いかんせん相手の装甲と火力のせいで懐にもぐりこめない。仇湖も加勢するものの足りない。
「出血量が、多すぎる、まずいかもしれません」
「ちぃ‥‥あそこの、腑抜けに、もう一度撃たせろ‥‥」
 血染めの指でエグムを指差し、ぐったりとする。
「今のうちに、ふぁいとですっ!」
 レティシアが歌を奏でる。冬から春に、ぽつぽつと花が咲き乱れていくように辺りが明るくなっていく。
「これで、終わりですッ!」
エグムの腕は使い物にならないはずであったが、自然に構え静かに「シュ」と風切り音だけが辺りに響く。もう一度タケミカヅチの同じ部分を貫くと静かに目から光りが消え、その場に止まる。
「くっ、今こそ使うべき」
 玲璃が閃癒を使うのをやめ、静かにぽつりぽつりと詠唱を始める。人間には何を言っているのかさっぱり分からない神の三言を言いながらゆったりと手をかざすと傷が塞がり血色がみるみるうちに良くなっていく。

 こうして、全員無事にタケミカヅチをとめ、首都崩壊の危機は去った。

●全て終わり
 数日して、首都は平和そのものになっていた。

 劉は狙っていた定食屋に毎日通い、メニューの制覇に燃えている。
「ふむ、これはなかなか‥‥こっちも‥‥」
 もし止められなかったと思うとかなり寒気がする。
「おいしい物が食べられないのは、辛いですからね」
 ぴーちくぱーちく鳥が鳴いているのを聞きながら、箸をすすめるのだった。

エグムは使い物にならなくなった腕のため、教師に専念している。
死闘といえば死闘であった、今回の事件について本をだしたら当たったとかどうとか。
「もう少し、現役でいたかったですねぇ」
 飾ってある弓を見つめて一息。
 駆け寄ってくる生徒の方がいいかな、と言いながら相手をし始める。

 相変わらずのんきにおかしはなにかと考えているレティシア。
 怖くは合ったが、いい経験だと言う事にして、ちょっとした昔話にしている。
「おやつ、何にしましょうかね」
 そう言いながらお店に立ち寄り物色を始める。

 仇湖は自分の主人と暢気に何時もの生活をしている。
 何だかんだで楽しそうにしているのはいい事だ。
「いやぁ、死ぬかと思ったが、どうにかなるもんだ」
 ぼろぼろになった杖を買いなおしてため息一つ。
 修行でもするかーと言いつつアジトに戻っていく。

 巫女の仕事をこなしている玲璃も日常に戻りのんびりと。
 ギルドに向かって負傷者の治療などを行っている。
「なかなか大変です、ね」
 巫女不足なのか色々と引っ張りだこだ。

 そして一度死んだ雲母。
 ゆったりと穴の開いたところをさすり、一息。
「また一つ、傷が増えてしまった、なぁ、そうだろう?」
「そう、ですね」
 改修を施したタケミカヅチを自分のものにしてご満悦なのか煙管をふかして笑う。
 何だかんだで覇王という事だろう。


 そんな夢を見ながら開拓者達のハロウィンが過ぎていく。