不思議洞穴【最終階層】
マスター名:如月 春
シナリオ形態: シリーズ
相棒
難易度: 難しい
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/08/09 00:19



■オープニング本文

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●洞窟前にて
 村長が相変わらずの様子で洞窟の中を覗いている。
 やっとの事で第三階層の地図も完成し、それなりに開拓者や旅人が入り込んでいる。
 が、第四階層・・・・そこには未だ村長が進入を許していなかった。

「やはり、最後は彼らの出番じゃからなぁ」

 ほっほと手紙をいつもの商隊に手渡しにいく。
 今までも一番最初に進入していったのは彼ら、開拓者だ。
 それを踏まえてか、誰にも第四階層への道を進ませずに、そこまでの道のりが確保するまで待っていたのだ。
 万全の態勢で攻略してほしい、そんな村長の心遣いであった。
 それを踏まえてであったので第三階層から帰還したときから既に手紙を用意していた。
 
「では、宜しく頼むのぅ」

 もうすっかり馴染みとなったこのやりとり。
 快い返事一つすると、ギルドに向けて商隊の馬車が走っていく。
 うんうんと頷きながらそれを見送ると空を仰ぐと一言。

「人生、何が起こるかわからんものじゃのぅ」
 
 すっかり洞窟のお陰でにぎわっている村の中をのんびりと歩く。
 あの旅人はこの間やられていたなぁ、と。
 向こうの開拓者は新しくここにやってきたのかな?と。
 既に自分もいい歳だが、新しい出会いや若かりし頃の情熱が溢れたり、何かといい影響があった。

「ほっほ・・・・今回もどうなることやら・・・・」


●開拓者ギルドにて
 手紙を預かった商隊が夢へと手紙を手渡す。
 もうこのやり取りも既に四回目だ、すっかり顔なじみにもなった。

「さって、今回はどうかな」

 手紙を受け取り、商隊を見送った後に素早く開封。
 いつもと違いどういう洞窟かはかかれておらず、初めて送ってきたときと同じような調査依頼。

「・・・・未開の地って事か」

 手紙を読み進めていきながら、いつもの如く未記入の依頼書と休暇届を取り出し一息。

「いや、無粋だな今回ばかりは」

 休暇届を丸めてぽいっと捨てると依頼書を作成し、張り出す。
 ぴっちりと角に合わせて張り出した依頼書を眺めて一言。

「思う存分楽しむ事だ」

 そういい開拓者を待つべく煙管を吹かしながら受付に戻るのであった。


■参加者一覧
ロウザ(ia1065
16歳・女・サ
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
赤マント(ia3521
14歳・女・泰
ペケ(ia5365
18歳・女・シ
贋龍(ia9407
18歳・男・志
オラース・カノーヴァ(ib0141
29歳・男・魔
ロック・J・グリフィス(ib0293
25歳・男・騎
ユーフォリア・ウォルグ(ib1396
16歳・女・騎


■リプレイ本文

●いつもの洞窟前
 最初に出会ったときよりも元気になった村長が開拓者を一人ずつ眺めている。思えば最初はすぐ終わるだろうと思っていたこの洞窟。村長は感謝する、この洞窟にひたすらにもぐり続けた開拓者を。
「お、ロウザ(ia1065)・・・・第四階層か?」
 開拓者達を見つけた一人の若い冒険者がリンゴを持ってロウザに近づいてくる。第二階層に潜ったときに知り合った少し古い馴染みにもなった人だ。
「ろうざ かならず もどる! もどて みたこと みんなに はなす!」
 きゃっきゃと元気よく嬉しそうにその開拓者に近づいていく。
「おう、頑張れよ?ほら、これ食ってけ」
 ぽいっと投げ渡されたリンゴをわたわたと受け取ると、手を振り冒険者を見送る。そうするとまた他の旅人が声を掛ける。すっかりアイドルのようになっているのはロウザが純粋だからだろう。
 ロウザが人の波に流されていった後ろでマントを靡かせながら準備運動をしている赤マント(ia3521)。今回が始めての洞窟のせいかしっかりと屈伸したり、足首を伸ばしたり、いつでも速度が出るようにしている。
 「うんうん、今日も調子がいいな」
 とんとんと軽く跳ねながら洞窟の入り口を見つめて、にこやかに笑うと懐(あるのか?)からおはぎを取り出して食べ始める。仕事前の一服と同じような感覚なのだろう。
 そしてその隣ではペケ(ia5365)同じようにおにぎりを頬張りながら今までを振りかえる。一番最初は褌が解けたせいで頭と体が分離しそうになった。次に起きたのは手元がくるって大岩に潰されかけた。三回目は塩を持っていったら意味が無かった。そして今回の洞窟探険・・・・流石に最後と言うだけあって最大級のドジを踏まないようにぶつぶつとイメージトレーニングをしているのだった。
 また此方では相変わらず手帳を携え、いつもどおりに探索の記録をしようとしている玲璃(ia1114)。思えばこの手帳も数冊目、意外と書くことは多く、発見や驚きも多い。何だかんだで一番収穫しているといえば収穫しているのだろう。同じくマップを作っていたオーラス・カノーヴァ(ib0141)もそれなりに感慨深い物があるのだろうかぱらぱらと手帳をめくり、洞窟を見やる。
 また、洞窟前では王様と騎士の二人が「えいえいおー」と叫びを上げている。最初に比べてどちらも背中が一回りほど大きくなったようにも思える。
「これが最後の探索ですか・・・・短かったような長かったような・・・・とはいえ、最後の攻略張り切って行きましょう、うむっ!」
 腕を組んで大きく頷くユーフォリア・ウォルグ(ib1396)とそれをしっかりと見つめるロック・J・グリフィス(ib0293
「未知なる場所への飽くなき好奇心が俺を刺激する(それに、ユー嬢の目指す王道の力にもなりたいからな)」
 と密かに闘志を燃やし、決意をするロック。彼もまた、洞窟のおかげかかなり成長のした人物の一人だろうか、特にユーフォリアとの距離的な関係で。騎士と王様、お似合いといえばお似合いなこの二人。周りの開拓者が泣きながら洞窟に入っていく光景がちらほらと見える。
「ほほ・・・・相変わらずですなぁ・・・・」
 ひょこひょことそんな光景を後ろから見つめていた村長がのらりくらりと此方へとやってくる。「ザッ!」という効果音が似合うように洞窟前に立ち並ぶ開拓者の背中を見つめる。思えば長い付き合い、その大きくなった背中をしっかりと見つめ、見送るのであった。

●第四階層
 相変わらず第一階層から第三階層までは他の開拓者、冒険者がいるため、被害もすくなく進んでいけた。そして第四階層の入り口、前回の大型アヤカシのいたところはセーフハウスのように開拓者が屯している、どうやら待っているようだ。「頑張れよ、あんた達!」「俺の分の宝も残しておけよ」などといいながら背中を押していく。

 そして、遂に第四階層に足を踏み入れる。
 鍾乳洞型の第二階層と同じく、自然発生した洞窟になっている。但し、第二階層と大きく違っていたのはしっかりとした道があったということだろう。それなりに安定した足場であったので、移動は苦ではなかった。
「さて、何が出るのかなぁ」
「さ、護りますよー!」
 赤マントとユーフォリアが前衛について足元や天井を確認しながら前に進んでいく。大した罠は無く、あったとしても分かり易い、沈み込んでいくスイッチや、鍾乳石が発生のきっかけになっているなど、今まで散々痛い目やら合ってきたペケにとってはおもちゃ同然のように解除はできた。
「これが私の実力ですよ!」
 上手に刀を使い、罠を解除していくさまは流石シノビというところだろう。忍眼も冴えて罠は難なく解除していく。
 その後ろ、ロウザはすんすん鼻を鳴らしながら、玲璃は瘴気結界を使いながらアヤカシを警戒する。流石に手馴れてきたのか、徐々に確認の速度もあがり、効率よく進んでいく。とは言え、出てくるのは低階層に出てきた粘性のアヤカシ、毛玉のアヤカシ、子鬼・・・・たまに大きめの蜥蜴のアヤカシなどがちょくちょく出てくる程度だ。流石にここまでやってきた開拓者達、ちょっとやそっとのアヤカシ程度では動じない。
 前からくればユーフォリアが盾となり耐えている途中でロウザ、赤マントが素早くしとめる。側面、背面から来ればロックが盾となりオーラス、ペケが応戦する、そしてしっかりと援護する玲璃。中々バランスの取れた構成で先に進んでいく。
「大丈夫ですか?けが人はいないですね?うむうむ」
 しっかり一人一人の顔を確認しながらユーフォリアが頷く。王様としての風格だろうか。それとなく大きく見える。
「何が潜んでいるか分からぬ以上、用心しておくに越した事はないからな」
 その隣でうんうんと頷き同意する。こちらもキザな感じが薄れてきた。
 そして亀裂や天井の低い通路、たってあるけない通路、水没している部屋・・・・色々とあったが、そこは身軽な赤マント、軽やかに安全を確認していく。そうしてうまくバランスの取れた作業分担のおかげで大した被害も大きな消費や痛手もなく。最奥へ。途中で黒いかさかさしたのを赤マントが見つけて高速で接近するも逃げられたりはしたが順調に奥へと進んでいくのだった。

●対峙するは壁
 そうして大した被害もなく先に進んでくると軽く開けた場所にたどり着く。無機質な茶色の壁に囲まれた部屋。一同がそろそろと中に入っていくと、一つの塊が大きく動き始める。石巨人、ゴーレムといわれる奴だろう。素早く展開し、相手を包囲する形になる。
「ここで、ボスっぽいのが来るとは・・・・予想はできたかな?」
 赤マントが相手との距離をじっくりと計り始め、その後ろで松明をあたりに投げて明るくしながら神楽舞「護」を踊る玲璃、ユーフォリアとロックは後衛を護るように前に、そしてロウザとオーラスは。
「ぐるるる・・・・!」
 牙を向きながら早速と言わんばかりに槍を持って突撃。その隣でオーラスも詠唱を始めて初撃を狙う。
「全く面倒な相手だな!」
 ロウザが跳躍し、頭と思われる部分に槍を叩き付ける。それと同時にオーラスのアークブラストを放つ。いつもの回転斬りとアークブラストの一撃、常人ならば耐えられない一撃ではあるが石巨人は微動だにせずに、ゆっくりと腕をあげ、ロウザとオーラスに狙いをつけて振り下ろす。「ゴウッ!」と大きな風きり音と共に陥没する床、間一髪避けた二人ではあったが、それなりに余波をもらい体勢を崩す。
「僕の速さについてこれるかな!?」
 その隙を狙って素早く石巨人の腕を駆け上がり、顔面に向けて泰練気法弐による超連打を繰り出す。ガスガスと岩のかけらが飛び散りその一つ一つから瘴気があふれ出していく。石巨人はほら貝を吹いたときの音を発しながら、赤マントごと腕を挙げ、一気に振り下ろす。目標は玲璃達、後衛組だ。
 先程と同じく風きり音を発しながら振り下ろされた腕は玲璃の目の前で止まり、みしみしと音が響く。振り下ろしの下ではユーフォリアがみしみしと骨を軋ませ、奥歯をかみ締めながらしっかりと護っている。
「ぐっ・・・・王様、こんっじょぉぉぉ!」
 軽く陥没しているためか、しっかりと足と地面が接地、深く踏み込み振り下ろされた腕を思い切り返す。大きく腕を跳ね上げられたためか後ろへと踏鞴をふむ。其れを見逃さず、すかさずにロックが前に出ると大きく叫ぶ。
「悪いが俺達は最深部の真実を目にする必要があるのでな、立ち塞がるなら貫くのみだ…オーラドライブインストール!」
 全力のカミエテッドチャージをユーフォリアの後ろから飛び出して放つ、後ろへ後ろへと後退させるように何度も撃ちつける。ペケ、玲璃はというと、素早くロウザ、オーラス、ユーフォリアの体勢を持ち直させ、攻撃に転じさせる。素早く治療もし、しっかりと前衛の壁を維持させる。直接戦闘が苦手な分別の場所で頑張っていた。
 そして大きく後ろに倒れかけた石巨人に赤マントが二回目の泰練気法弐を放つ。
「くらぇえええ!」
 赤褐色の肌があまりの速さに一筋の赤い線を作る。そして連打。胴体部に馬乗りになって何度も連打を加えていく。ズシン・・・・と大きく音を立てたところに鬼腕を発動し、大きく隆起させた右腕を使いそこらに落ちていた大岩を叩き付けるロウザ。
「がおおおお!」
 爆裂音と同時に粉々に吹っ飛ぶ、そしてトドメにオーラスがアークブラストを放ち粉々になっていった石巨人を消失させていく。

●さらに・・・・?
 アヤカシが霧散していく。
 思えばこの長くて深い穴も終わりだと思うと開拓者一同感慨深い物がある。
 ゆっくりと確実に消えていくアヤカシを見終わると、かつんと丸い宝珠のような宝石がおっこちる。古来より宝石や力のある石には力が宿る物といわれていた。きっとこの宝石に瘴気が集まってこの洞窟やアヤカシが出来たのだろう。
「何か落ちましたねぇ」
 ペケがとてとてと歩いていくと褌がズレ落ちる。ずだーん!と思い切り転がり、慌てて立ち上がり褌を直すが、問題は宝石だった。転んだ拍子にぶつかったのか奥のほうへところころと転がっていく。それを慌てて追いかけるペケ。松明の火の届かないところまで走っていくと一つの衝撃音が響く。どうやら壁に激突したようだ。
 皆が慌てて音の方向にいくと、おでこを抑えてしゃがんでいるペケと小さな穴が開いた壁に出くわす。取りあえずユーフォリアがおでこをさすってよしよししているのは置いておいて。
「ここまで着て収穫なしか・・・・」
「・・・・残念です」
 オーラスと玲璃も肩を落とし、赤マントやロック、ユーフォリアも「はぁ」と大きなため息を付く。ロウザはというと穴に手を突っ込んだりして、取れないか模索している。そんな事をしていると。
「うぅ、私はやっぱり駄目な子なんですね!」
 ぶつかった壁に頭をゴンゴンとぶつけるペケ。まさかここで最大級のドジ・・・・と思っていると、ガラガラと壁が崩れ始める。そして崩れた壁からは色とりどりの宝石が松明の光を反射してキラキラと輝いている。
「また、やっちゃいました?」
「これは、綺麗ですね」
「しかしこのお宝は持って帰れないです、うむ」
 それを唖然と見ていたが「何をやっているんだ」から「よくやった」といった感じにペケを見つめる。
 どじっことは恐ろしいものです。
「でも、これどう説明するの?」
 赤マントがぽつりと呟き、固まる一同。
 説明が大変そうだ、といいながら着た道を戻り始めていくのであった。

●脱出すれば
 何とも言いにくい状況になり、気まずい雰囲気を出しながら開拓者達が帰ってくる。いつもだったらすぐにでも宝の話や洞窟の話になるがそれがない。おかしいな?と思いながら村長が近づいていくとぴょんとロウザが飛び出て。
「ほうじゅ おとした! おく いける!」
 頭に「?」の疑問符を出しているかのように村長が首を傾げる。
「ええ、実はですね・・・・」
 玲璃が分かるように説明をし始める。だが、村長は楽しそうな顔を浮かべるばかり。
「ほほ・・・・いいじゃないか、人生、何事も刺激がなければ退屈なものじゃよ」
 そんな事をいいながら「お疲れさま」と一人ずつ声を掛けるその顔は、楽しそうであった。

 ・・・・開拓者の洞窟冒険はここで一度幕を閉じるのであった