不思議洞穴【第二階層】
マスター名:如月 春
シナリオ形態: シリーズ
相棒
難易度: 不明
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2010/06/07 15:44



■オープニング本文

前回のリプレイを見る


●とある村
 今日も平和に洞窟探険に出かける開拓者やら旅人やら冒険者やらでごった返す村の中。
 少し前のことを考えればとても賑やかになった。
 この間やってきた開拓者達によって作成された地図、他の個人で探索した地図等を合わせ第一階層の完全踏破をされたのは真新しい出来事であった。
 そしてその事を聞いて数日した後、遂に第二階層の探索を始めたらしい。
 
「ふむぅ‥‥連絡してみるかのぅ‥‥」

 村に活気が出たお陰か妙に元気になってる村長が手紙をさらさらと書き始める。
 勿論内容は不思議洞穴(村長命名)の深部についてお話。
 一度調査をしてもらったのに、はいお疲れ様でした、とは申し訳ない。
 のんびりと椅子に腰をかけ、窓を眺める。
 今日も稼いだなぁ!と言う声や次は倒すぞーと言う意気込んだ声。
 若い者は何事も経験が必要なもんだ。と言いながらお茶を啜る。
 
「ワシもたまには洞窟探険などしてみたいものだのぅ」

 若かりし頃の自分を思い出しほっほと笑う。
 そして何を思ったのか昔使っていた大剣を取り出し構える。
 と、同時に砕ける腰。

「あたた‥‥ワシも歳じゃなぁ‥‥」

 とんとん腰をたたきながら大剣を仕舞うとまた椅子に座ると、手紙の続きを書き始めるのであった。

●ギルドにて
 やはり前と同じように商隊から手紙が届けられる。
 何処からかは言わずも、と言った感じに手早く手紙の中身を確認する夢。
 今度の手紙も洞窟についての調査‥‥と言うよりは第一階層が踏破されたので第二階層への本格的な探索が可能になりました、と言う内容であった。
 他には洞窟からのアヤカシの流出は個人で潜っている者のおかげで出てこない。
 さらには村お輿にもなってると言う事で、お祭りの宣伝等が上げられている。
 何だかんだで洞窟自体の存在が容認されてきている。
 勿論何時問題が起こるかはわからないが、今のところ問題も無い為かギルドも軽視している。
 そんな穴を見つけて夢はニヤリと笑い。

「次は深部まで潜りたいものだな」

 そういいながら依頼書と有休届を作成していく。


■参加者一覧
ルーシア・ホジスン(ia0796
13歳・女・サ
ロウザ(ia1065
16歳・女・サ
玲璃(ia1114
17歳・男・吟
海神・閃(ia5305
16歳・男・志
ペケ(ia5365
18歳・女・シ
朱麓(ia8390
23歳・女・泰
ロック・J・グリフィス(ib0293
25歳・男・騎
ユーフォリア・ウォルグ(ib1396
16歳・女・騎


■リプレイ本文

●洞窟前にて
 いつものように村長が開拓者達を出迎える。
 村のほうでは人が前よりもあふれお祭り騒ぎになっている。
「わはは! おまつり! おまつり!」
 ロウザ(ia1065)が手を広げ愉快に走り回っている。
 とは言え、流石に洞窟前になると鬼気迫るものがちらほらと見える。
 しかしそんな事はロウザには関係なく、屈託のない笑顔で情報交換をし始める。
「ロウザは元気ですねぇ」
 ルーシア・ホジスン(ia0796)がロウザの行動を目で追いながら松明の用意をする。
 流石に二回目となると手早くなるものである。
 そして夢見るは金銀財宝、目が「文」の形になっているようにも見える
「流石に手馴れていますね」
 玲璃(ia1114)が松明をさくさくとつけている様を眺める。
 前回の報告書にも一応目を通したのだが、やはり百聞は一見にしかず見てやってみないとどんなものか分からないものだ。
「どんな場所なんだろう‥‥」
 洞窟の前では海神・閃(ia5305)が「じーっ」と洞窟の中を眺めている。
 相変わらずのきちっとしたレンガ造りを思わせる通路がちらほらと見えている。世の中不思議だ、と思いながら。
 反対側ではロック・J・グリフィス(ib0293)とユーフォリア・ウォルグ(ib1396)がなにやら洞窟についてやら王についてやら話している。
「ユー嬢、今回はミイラ女にならないようにしてくれよ?」
「いや、王たるもの皆を護らないといけません!」
 ぐっと拳を空に掲げて意気込むユーフォリア、そんな行動を見ていると次第に協力してみたくなるのは素質か何かだろう。心の中で「ユー嬢は俺が護る!」なんて意気込むロックの気持ちは伝わるのかどうかは分からないが。
「んしょ‥‥今日こそ失敗しないようにしないといけませんね!」
 そして今回の罠解除役として大いに期待されているペケ(ia5365
 前回は危うく体と首が分かれるところであったので、しっかりと褌を締める。
 次は失敗しないように!と此方もぐっと拳をかかげ‥‥てる傍から褌が緩むのであった。
「ほっほ‥‥では、今回も頑張ってくだされ」
 相変わらずほわほわしている村長が手を振り見送る。
 そして第二階層へと開拓者達は歩みを進めるのであった。
 ‥‥そんな中、朱麓(ia8390)が何かの気配を感じる。そこらの開拓者や旅人なんて秘にもなら無いくらいに熟練された気配をだ。ぐるりと辺りを見回すが、特に問題はない。
「奴、かな」
 ぽつりとそう呟くと駆け足で皆の後を追いかけるのであった。

●第二階層前
 ‥‥ルートの確定がされているのか、第一階層から第二階層までの道のりは楽にやってこれた。とは言え、少し外れて部屋に入れば相変わらずのゲル状の大軍がお出迎えをしてくれる。まだまだ経験の浅い旅人やら開拓者達は修練ついでに遠回りしていると、ロウザが言う。しっかりと情報交換をしていたのでルーシアに撫でられるロウザ
「ろうざ! えらい!」
「流石ですねー」
 ほんわかした空気で第二階層までやってくる。
 とは言え、今回が始めての海神と玲璃は驚いてばかりであった。
 中に入れば殆ど人工物、やってくる化け物は増えに増えてぷるぷる動く。
 本当に現実にこんな場所が出来るなんて予想もできないからだ。

 ‥‥そして第二階層に到達する。
 今までとは打って変わって自然に出来た洞窟のようになっている。
 鍾乳洞といえば分かり易いだろうか、いたるところに水場や岩が転がっており、何があって何が出るのかさっぱりと言う現状だ。
 前衛にいるユーフォリアとペケが通路を確認しながら、しっかりと進んでいく。
 今までとは違って、部屋と通路の分類が全くと言っていいほどないせいか、かなりやりづらい事になっている。
 少しずつ通路を確認していくと微妙にだが、スイッチらしきものをペケが見つける。
 皆を少し下がらせて、解除するべくダガーを構えて解除を試みる。
 ‥‥まずは周りの土を削り取りスイッチの全貌を明らかにする。
 そしてその次に起動装置を外すべく、ピンを外すのだが‥‥
 「カチャ」っと音が響く。
「あ、やっちゃいました」
 その場にいる全員が「何!?」と声を張り上げる。
 そして静かにだが、確かに「ゴゴゴ‥‥」と地鳴りのような音が響き渡る。
「うえ! いわ ごろごろ!」
 ぱっと全員が上を見上げると大きな岩が此方に転がってくる。
「逃げろぉぉぉぉ!」
 ほぼ同時にといっていいほど全員で声を上げて走り出す。
 まさにどこぞの黄金像を取った場合に転がってくるような状況になっている。
 迫り来る巨石を走り、走りに走りぬいて逃げ延びる。
 どれくらい走っただろうか丁度左右のくぼみに飛び、巨石を避ける。
「し、死ぬかと思いました〜」
 ペケが相変わらずのドジっこぶりを発揮したのだが、素晴らしい効果であった。
「全滅するかと思った‥‥」
「ぺらぺら! あぶない!」
 ぜいぜいと息を荒げている玲璃、流石のロウザもあの巨石は危ないと思ったのか逃げていた。
「ある意味神業だ‥‥と、なんだこの石版は」
 じーっと壁を見つめて思案するロック。
「何か見つけたのですか?」
 それと一緒にユーフォリアも覗いて確認をする。
「これは、きっと古代の石版に違いない!‥‥多分、もしかしたら、きっと!」
 ぐっと拳を握りながらロックと一緒になってあーだこーだと石版について話し始める。
 何とも夢のある話だが、そこまで大層のしろもんかどうかははっきり言えばさっぱりわからない。ただ、そんな夢も膨れるのが洞窟のいいところ。数分前にひき肉になりかけたというのに、平和にそんな事を話す。
 その隣では玲璃が手帳に石版の模様を書き込んでいる。中々のうまい絵を書くもんだと、覗いていた海神が呟く。二人は見るのも聞くのも全てここでは初めて。何かしら興味が沸いたりするものだ。
 と、そこで一息ついていた所に何か毛玉のような生き物がわらわらとやってくる。
どうやら二階層のメインとなるアヤカシのようだ、傍目から見ればもふらと言ってもおかしくないのだが、毛質的には此方の方が上だろう。
「もこもこ! ふさふさ?」
 ロウザが武器を構えながら毛玉を触ろうとする、すると突然毛が逆立ち、針のように高質化しロウザを襲う。咄嗟の攻撃にロウザは反応できず、腕に大きく裂傷をうける。
「もふらのほうが可愛いな!」
 ルーシアが抜刀を繰り返し、一撃必殺の如く毛を刈り取っていく。
 確かに高質化されているが、断ち切れないわけではなかった。
 それを認識すると皆毛狩りを開始し始める。
 ユーフォリアとロックは背中を合わせて、死角ができないように。
 玲璃は手早くロウザの腕の治癒に専念。それを援護するように前に立ち塞がる海神。
 ペケと朱麓は素早い動きで翻弄しながら毛を刈り続ける。
 さほどの強さではないが、不意を付かれたり、転がってくる攻撃がかなり厄介だった。
 とは言え、この程度開拓者の相手にならないといえばならない。
 治癒の終わったロウザが力任せの回転切りを何時もの様に放つ。
 どうやら怒ったらしく何時にもまして回転力が高いせいか巻き込みながら毛玉を刈り取っていく。
 ‥‥回転が終わると、二周りほど小さく毛が刈られた玉が転がっている。
 どうやら毛の部分が長かった為あのような攻撃が出来たのだろう。
 玲璃がひと段落着いたのを確認し、手帳にアヤカシの情報を書き込む。
「中々、意外な敵だったな」
「取りあえず、たいした事がなくてよかった」
 ふぅ、と皆一息付く。そして何時もの様に小銭を拝借‥‥と思っていたが今回は何もなしである。その代わりに丁度回転切りの余波で壁に傷がついたところから何かの原石がぽろりと転がり落ちる。
「む きらきら たから?」
 ロウザが其れを拾い上げ、大事そうにポケットに仕舞うともう少し皆で休憩がてら探索するのであった。

 ‥‥しばらく休憩して、ペケのおにぎりを頬張りながら歩いていると。階段らしきものを見つける。どうやら遂に第三階層への階段を見つけたのだ。鍾乳洞のせいか、階段と言うよりは下り坂であったが、かなり奥の方へと続いている。
「どうやら、ここが第三階層の入り口ですね」
 海神が覗き込みながら呟く。
 ルーシアが松明の一本を投げる、ころころと落ちていくと、大分深いところで松明の明りが見えるようになる。
「かなり深い‥‥」
 松明の火を確認した玲璃が率直な感想を述べる。
「おぉ、遂に次の階層!」
「しかし、とりあえずは引き返すのが賢明だ」
 ロックが興奮するユーフォリアを抑えながら、撤退の準備をし始める。
 流石に一気に行くわけにも行かず、着々とルートを開拓していく。
 この作業が中々面白いようで、地図を作成するのを生業としているのも最近では現れたとか。
「と、私は用事があるから先にいかせてもらうさね」
 朱麓がそう告げると、さっさと来た道を戻っていく。
 皆は何があったのかはさっぱりではあったが、道が出来ているし大丈夫だろうといい、見送るのであった

●例の犯人
 一人、前回の犯人の心当たりがある朱麓がそっと皆から離れて来た道を戻っていく。
 戻っていくと一つの影が朱麓の前に現れる。
「ようやくおいでなすったか、夢さんや」
 影に向けてそう告げる。だが、影は答えない。朱麓はそのまま会話を続ける。
「村長と村人が協力して、硬貨を盗んだのなら『どこぞの女性』というはずが無い。『女性限定』にしなくても「賊に襲われた」でも良いわけだからね。だから村長は犯人候補から外れ嘘をついてない事が分かる」
 自分の推理をいいながら、ゆっくりと抜刀をし影を見据える。
「前にあの洞窟を知っていたのは一部の開拓者と村人達、そしてあんた‥‥候補から外れている村人達はまずありえない‥‥そして前に私達がここにきたときにあんた、休暇届を出したそうじゃないか‥‥そして現場の残された煙管の匂い‥‥証拠は十分だろう!」
 気力を消費し、敏捷を上げて一気に接近する。
 下段に構えた刀の切っ先が地面に線を描き、そこから救い上げるように刀を振り上げる。
 影はそれを軽く仰け反り避けると、後方に飛び距離を取る。そして何も言わずにその場でとんとんとリズムを取り始める影。
 朱麓の背中にじっとりと汗が滲む。一度刃を向けたのだ、やられても文句は言えない。
 勿論物的証拠は無く、決定的とは言えないのが問題だろう。それでも確実に犯人だというのは明白だ。
 取りあえず捕獲するべく、雷鳴剣を飛ばすと同時に騎士の銅貨を投げつける。
 銅貨の投げつけを速めにしたため、丁度額の辺りで電撃が銅貨に直撃、閃光と衝撃を放ち、影を明るく照らす。長い紅い髪と其れの奥にあるぎらついた目。
「ふふ、面白い答えだ‥‥だが、証拠は何一つないだろう?」
 そのまま銅貨が額に‥‥当たらずに通過していく。
「なっ‥‥開き直るってのかい?」
「悪いのは貴様等だったのだよ、誰も見ていないむき出しの宝を取らない方がおかしいだろう?まだまだ、洞窟探検者としては甘いな!」
 煙玉を足元に投げつけ、あたりに煙が立ち込めていく
「くっ、まだ話はおわっちゃいないよ!」
 煙が晴れると帯電している銅貨が回っているだけであった。
「‥‥次はこうはいかないよ」
 そうポツリと呟くと銅貨が静かに倒れるのであった。

●脱出し
 少し日が傾き始めた辺りで開拓者達は脱出する。
 各々今回の洞窟の反省をしたり、宝を開け始めている。
 収穫はぼちぼちと言った所だろうか、各々「こんなもんか」とある意味で納得はしている。
「ほっほ‥‥どうでしたかな、今回の冒険は?」
 村長が相変わらずの調子でやってくる。
 何とか三階層への道を見つけたので、成果は上々と言った所だろうか。
 流石に罠が派手なだけあって皆、ぐったりとしてはいるが充実した顔をして洞窟を眺める。‥‥次の第三階層は一体何があるのだろうか、そんな事を思いながら次なる階層に思いをはせるのであった。
 そしてその傍ら、夢がどのような事を考えているのか、それもまた気がかりとなるのであった。