尻を守れ
マスター名:KINUTA
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2012/12/27 01:05



■オープニング本文

 とある町の集会場。

「おお、よく来て下さいました…」

 町長は尻を押さえていた。居並ぶ関係者一同も同じくである。
 というかこの街にはやたら尻を押さえて歩いている人間が多い。薬局には「ぢの薬あります」の張り紙が数多く出され、雑貨屋にはドーナツ型クッションが並んでいる。
 アヤカシ退治に訪れた開拓者たちとしては、なにほどかいやあな予感がしてくるところだ。
 その予感の裏書は、早速町長がしてくれた。

「実は…この町には尻を狙ってくるアヤカシがいるのです」

 帰ろうかなと何人かが思ったが、すがるような目を向けられてはそうするわけにもいかず。諦めの表情を浮かべ追加情報の開示を促すしかない。

「あの、尻を狙うとはどういうふうに……」

 そこで雑巾を裂くような悲鳴が聞こえてきた。

「んぎゃー!!」

 皆大急ぎで外に出る。
 雪の積もった道に倒れているおっさんをすぐさま発見。

「おいどうした、しっかりしろ! 傷は浅いぞ!」

「うう、だ、駄目だ…なにしろオレはこれでもう3回目だからな…」

 そう言い残しがくりと首を落とすおっさん。
 をひとまず関係者たちに任せた開拓者たちは、視線を発生したアヤカシに向ける。
 それは宙に浮く手首だった。右左両方揃い、カンチョウの臨戦態勢をとっている。
 なんとなくほっとする開拓者一同。尻を狙うといってもこの程度のことならまだしも容認出来なくもない。
 と、宙に浮いた手首が方向転換、逃げ出した。

「あっ、こら待てー!」

 追いかける開拓者たちを、町長の声が追いかける。

「あ、気をつけなされー! アヤカシは1体ではないようですのでー!」



■参加者一覧
雪ノ下 真沙羅(ia0224
18歳・女・志
ネオン・L・メサイア(ia8051
26歳・女・シ
賀 雨鈴(ia9967
18歳・女・弓
エルディン・バウアー(ib0066
28歳・男・魔
リィムナ・ピサレット(ib5201
10歳・女・魔
ラグナ・グラウシード(ib8459
19歳・男・騎
雁久良 霧依(ib9706
23歳・女・魔
津田とも(ic0154
15歳・女・砲


■リプレイ本文


「……って、何ですかこのアヤカシはーーー!?…こ、こんなアヤカシは早急に退治するに限ります…っ!」

 アヤカシの内容を知らぬまま参加してしまった雪ノ下 真沙羅(ia0224)は、困惑し狼狽えるばかり。
 そんな相棒を楽しげに眺めているのは、依頼に誘った張本人ネオン・L・メサイア(ia8051)――彼女は無論最初から色物キメラの詳細について知っていた。でも黙っていた。この瞬間を体験したい、ただそれだけのために。

「やぁ、すまんな真沙羅。お前の其の顔が見たかったんだ。ふむ。何とも奇っ怪なアヤカシが出たものだな…」

 頭を抱えているのはラグナ・グラウシード(ib8459)。

「う、うわああああ…な、何故私はこんな依頼を受けてしまったんだ…ぜ、絶対にやられん…うさみたん、私を守ってくれ!」

 ガクブルしながら背負ったうさみたんに呼びかける。

「失ってたまるものかッ、くそッ!」

 急遽頑丈な中華鍋を尻に装着し始める。動きには支障が出るが、後方の操を守るためにはやむを得ない。
 賀 雨鈴(ia9967)も彼と同じ戦法を取り、荒縄で鍋蓋を装着する。しかし見た目に気を遣い、上からロングコートを着用。

(しかし変なアヤカシも居るのねぇ…常に怯える恐怖心が糧なのかしら? それとも感触が好き…とか?)

 攻撃法が攻撃法であるだけに、卑猥な方へ連想が飛びかけ、慌てて首をぶんぶん振るう。

「いえ、駄目よ。あんなはしたないアヤカシ、早く倒さないと」

 リィムナ・ピサレット(ib5201)は、近くに頼もしく優しいお姉さん(彼女視点)雁久良 霧依(ib9706)がいるので、安心してしまっている。

「また変なアヤカシだね〜やっつけちゃおう♪ あれ、霧依さん、どうしたのその長葱」

 ほかほか湯気を上げている長葱を手に霧依は微笑む。驚くほど裾上げしたローブを着て。

「いえ、ちょっとそこで戦いの前に体をほぐしてきたのよ。いわゆるウォーミングアップね。楽しくなりそう、ふふっ♪」

 しかし、今回の依頼は格段と女性開拓者の割合が多い――エルディン・バウアー(ib0066)も憂うところだ。

(ここは私が囮を引き受けて、アヤカシから女性を守らなければ!!)

 彼は隠れているであろうアヤカシに呼びかける。

「さあさあ、アヤカシども、聖職者のお尻を狙えるなんて、そうそうありませんよ!」

 男としてなかなか天晴れな心意気。
 雨鈴は彼に近づき共闘を持ちかける。

「囮役をするのならエルディンさん、私と組みませんか。この通り遠距離攻撃が可能ですし」

 聖職者スマイルがきらきらっと発動する。

「雨鈴殿、私のお尻の安全を貴女に託しました!」

 あからさまに攻撃を恐れているラグナも加わった。

「すまん、私も組ませてくれ! 一人では心細すぎる!」

 ともかく敵は5体もいる。分散し個別撃破して行くほうが効率としていいだろう。というわけで開拓者一同は3班に分かれるとした。内訳は。

 第1:リィムナ、霧依
 第2:真沙羅、ネオン
 第3:ラグナ、エルディン、雨鈴

 である。組み合わせが決まったところで、さあ探索開始。
 と、その前に。

「町長さん、討伐が終わるまで、町の人には外に出ないように触れてください。危険ですので」

「あ、はい。分かりました。繰り返しになりますが、どうぞお気をつけて。痔は長引きますでなあ…」



 雪の町。
 リィムナは霧依の前、右に左に注意しながら進んで行く。

「…むむ、奴は近くに必ずいるですよ。なんだかさっきからお尻に熱い視線を感じます」

「まあ、気をつけないとね…いつ見ても可愛い子ね…」

 少女の尻をガン見しているお姉さんは、それが自分の熱視線ではないかということを一切口にしない。きょろきょろあたりを警戒している様子をただ見守っているだけだ。

「ちょっと止まって様子を見ましょうか」

「そうね、ムスシュタイルに何かかかるかも知れないし」

 かような会話を交わした直後霧依は殺気を感じた。
 現れた。
 彼女がその意をリィムナに伝える前に、カンチョウアヤカシは物陰から飛び出し、可憐なお尻に容赦のない突っ込みを入れる。

「あぎゃー!」

 一撃食わせた後、猛スピードで逃走。倒れ臥す被害者を置き去りにして。

「リィムナちゃん、大丈夫? 第三関節までは入ってなかったように見えたけど」

 駆け寄る霧依。
 リィムナは涙目になりながらも立ち上がり、強がった。

「うう…だ、大丈夫です! こ、このくらい姉ちゃんのお尻百叩きに比べれば!」

「立派よリィムナちゃん,偉いわ。その分ならもっと強烈な拡張攻撃にも耐えられるわね…それにしてもなんていうスピード、あなどれ」

 言った瞬間今度は霧依の臀部にキメラが突き刺さった。
 逃走したと見えたが、通りを回って戻ってきたのだ。解放感溢れる生尻の誘惑に耐えきれず。

「んほおお!」

 それは確実にリィムナより深く突き刺さっていた。

「ああっ! 霧依さん!」

 悲痛な声を上げるリィムナ。
 だが霧依は倒れる事なく、余裕の表情を浮かべている。

「私のお尻、舐めてもらっては困るわね♪」

 なんということだろう。アヤカシは彼女の尻に捕らえられてしまった。激しくもがいてその身を引き抜こうとするが、全く抜け出せないでいる。
 リィムナは目を見張り、感嘆の声を上げた。

「霧依さん、すごい…お尻鍛えてるんだね♪」

「ふふふ。攻めるも守るも日々ぬかりなく訓練していますからね。さあ、今よリィムナちゃん! やっておしまいなさいな!」

「はーい!」

 リィムナの「如月」から聖なる光があふれ出し、身動きが取れぬアヤカシに向かって行く。
 呼子笛による勝利宣言が、町へ高らかに響き渡った。



「あ、ネオン様。1体消滅したようですね」

「おお、そうだな。我々も早いところ見つけなくては。これ以上奴らの好き勝手にさせるわけにはいかん」

 頼もしげなポーカーフェイスを貫くネオンに文字通りの後方を託し、囮の真沙羅は率先し通りを歩いて行く。
 不意打ちで尻を狙われてはかなりきついものがあるので、心眼を使用。
 しばしの後彼女は、あやしい気配を感じた。

(…はっ)

 前方に控える子供が作ったとおぼしき雪だるま数体。
 背後に何かが潜んでいる。物音もさせずじっとこっちを伺っている。

(警戒しているのでしょうか…)

 挙げ句逃げられてはもともこもないので真沙羅は、一か八かおびき出しにかかるとした。
 少し恥ずかしいがアヤカシがいるっぽい方向にお尻を突き出し、後ろ歩きで歩み寄る。
 ネオンは目立たぬようゴミ箱の陰に隠れ、「黒閃」の鉄線を張り、臨戦態勢に入る。
 雪だるまの影から何かが飛び出した。
 「朱雛」を反射的に振りかざそうとした真沙羅は、あわてて止める。
 出てきたのは単なる猫だったのだ。

ミャー

「なんだ、脅かさないでくださいよう…危ないですからね、向こうに行っててくださいね」

 つい気が緩んだその瞬間、狡猾な敵は攻撃してきた。隠れていた別の雪だるまの背後から飛び出し、彼女の下へ滑り込み、垂直急上昇。

「きゃひぃんっ!?」

 食らうまいとしていた不意打ちの衝撃で変な声が出る。
 アヤカシは彼女へ更なるダメージを与えようとしているのか、指を突っ込んだまま回転し始めた。

「ゃ、お尻、そんなぐりぐりしたらぁ…っ♪」

 悲鳴に交じって気持ちよさげな声が上がっている。
 本来颯爽と駆けつけなくてはいけない囮の窮地なのだが、ネオンは焦らず騒がずじっくり様子の確認を行っている。

「…おぉ、アレはまた激しいな…ふむふむ…」

 相棒が背徳的快感を覚えている様を見て楽しんでいるだけではない。敵の動きとかなんとかも観察しているのだ。一応。

「って、ネオン様見てないでお助け…あふぅ…♪」

「とと、いかん」

 救援要請を受け物陰から飛び出したネオンは、真沙羅の尻に侵入していたアヤカシを「黒閃」でからめ、合わさっていたひと指し指を切り落とした。
 続けて本体に鉄線をからめる。
 左手は捕まえたが、右手にはすんでのところでかわされる――このアヤカシは応用をきかせるくらいの知恵は持っているらしい。なにしろ消失した人差し指に代わり突き立てた親指でもって、ネオンに攻撃してきたのだから。
 真沙羅だけに請け負わせるのは潔からずと考えていた彼女は、むろん己の尻もノーガード。自身でもイケナイ快感をちょっと覚えてしまう。

「んくふぁっ!! …あふっ…!」

 それはともかく真沙羅は尻の痛みに耐え、「朱雛」を振るう。
 まずは「黒閃」に捕まっている左手を斬り、消滅。
 するとネオンに刺さっていた右手も急に力を失った。雪の上に落ち、もがきだす。
 どうもこいつは右左併せて1つのアヤカシであり、片方が受けたダメージは同じくもう片方のダメージにもなるらしい。
 止めの一撃を与え消滅させた真沙羅はお尻を押さえつつ、任務完了合図の笛を吹く。
 そこでものすごい叫びが聞こえてきた。

「うぎゃぉぉぉおおぅぅぅうう」




 通りの陰に身を潜め、背を壁につけている雨鈴は舌を巻く。アヤカシの神出鬼没ぶりに。

「速い…なんて速さなの」

 探索もかけていたはずなのだが、引っ掛かった瞬間にはもう尻まで接近し攻撃を食わし退いている。反応する暇もなくだ。
 幸いこちらは鍋蓋をつけていたので直接被害は受けなかったが、にもかかわらずかなりの衝撃が来た。
 あれが刺さっていたらと思うとぞっとする。
 まあ庇ってくれたエルディンは、もれなくそうなってしまったわけだが。

「あんな輩に後れを取るなんて、屈辱だわ…」

「サルンガ」の弦をめい一杯引く雨鈴の目に、よろよろ立ち上がるエルディンの姿が映る。

「せ、せめて、指一本で勘弁を……」

 共闘しているラグナは「カーディナルソード」を構え、敵を威嚇している。

「くそおお! 寄るな貴様ら! 近づいてみろ手打ちにしてくれるわ!」

 言いながらも汗だくなのは、敵が1体ではないせいだ。そう、どういう理由知らないが3班の前には、3体同時にアヤカシが現れたのである。
 先程攻撃が成功した1体は退いたが、まだそれがやれていない2体が虎視眈々と彼らの隙を狙い、連続攻撃を続けている。

「何がどうなってこんなふざけたアヤカシが生まれたのか知りませんが、神の聖なる矢で清めてしまいましょう」

 そのうち1体が「ウンシュルト」の光に手傷を追い退く。
 そうでない1体、そして戻ってきた1体が彼の尻目がけ突進するのを予測し、雨鈴は天に向け矢を放つ。

「ぎゃぁぁぁ、いくらなんでも二組ぶんは無理ですーーー!! 広がってしまいますよーーー!!」

 穴に刺さった手首を、落ちかかってきた矢が貫く。
 1体が消滅。
 残り1体は手傷の1体と共に電光石火、裏通りへ入り込んだ。
 すかさずラグナは笛を吹く。討伐報告と、それから、救援要請のために。



「あっ、呼んでる。早く行かなくちゃ!」

 もがくリィムナは塀の穴にはまり中。
 アヤカシが潜んでいるかもと体を突っ込み確かめていたところ、抜けなくなってしまったのだ。

「わー、体引っ掛かっちゃった♪ じゃなくて、霧依さーん助けて〜」

「はいは〜い。またドジっ子属性発動させたのねリィムナちゃん…きゃーアヤカシが出たわー」

 危険を聞かされたリィムナは焦った。

「…えっアヤカシ!?」

 とはいえ塀に刺さっている身ではどうにもならず。
 間を置かずして強力な一撃が。

「あんぎゃああああ!! 霧依さん早く倒してー!」

「分かったわ、このー離れなさーい」

 塀のこっち側では霧依その人がハアハアしながらカンチョウしていたりするのだが、そんなことリィムナには分からない。
 ひとしきりぐりぐり攻撃を受けた後、ようやく引っ張り出してもらえる。

「うう…逃げられちゃったの…? いたたた…」

「ごめんなさいねー。でも大丈夫よ、後でちゃんと治療するから♪」



 エルディンは一時再起不能で場から動けなくなっている。目下鋼の意志で攻撃によって感じたダメな気分を振り払っているところ。これ以上彼に登板させるのは無理。
 そうと悟ってラグナは、怖いけど単独で裏道へ乗り込む。

「ええい、虎穴に入らずんば虎児を得ず、だッ!」

 そこに真沙羅とネオンが駆けつけてくる。

「うわああ2匹もいるですよお!」

 裏通りに逃げたアヤカシたちは、まず無防備な相手に向け攻撃を開始しようとした。潜んでいた家陰から飛び出し、各々真っすぐ彼女らへ向かう。

「やらせはせんわあ!」

 ラグナはその前に飛び出し己の尻(中華鍋つき)を突き出す。男の矜持として。

ごぎん

 アヤカシの1体が雪の上に転がった。変な方向に曲げた指を回復しようというのか、しゅわしゅわ瘴気を発散させる。
 もう1体はすんでのところで急ブレーキをかけ、衝突回避。
 彼はすかさず「カーディナルソード」を転がっている上に振り下ろし、消滅させる。
 自爆を免れた残りもう1体は――。

「遅れましてすいませえん」

 駆けつけてきたリィムナのアイヴィーバンドとネオンの「黒閃」により、無事捕まえられた。
 霧依の「砂漠の薔薇」からの光が命運を断つ。

 こうして住民たちの尻に平和が取り戻された。




 町の肛門科待合室。開拓者たちが一般人に交じり座っている。

「ああ…なんて恐ろしいアヤカシだ。でも、無事でよかったお…なあ、うさみたん?」

 指の形に跡がくっきりついている中華鍋を眺め、縫いぐるみに語りかけるラグナ。

(もう一撃同じ攻撃されてたら、私、危なかったわ…)

 戦闘直後真っ二つに割れた鍋蓋を手に冷や汗をかく雨鈴。
 この2名は付き添い、後は患者だ。

「…ネオン様ぁ、何であんなアヤカシだってお教え下さらなかったんですかぁ…」

「大丈夫だったか真沙羅。いやぁ、済まないことをしたな」

 涙目な真沙羅のお尻をなでなでするネオン。

「いやあ、信仰を試される依頼でした」

 キラキラスマイルを浮かべつつ、はやドーナツクッションを尻に敷いているエルディン。
 その前を通り過ぎ診察室に消えて行くのは。

「うう…お尻ズキズキだよ」

「だいじょぶだいじょぶ、すぐ治るからねー♪」

 何故か看護婦姿になっている霧依に手を引かれるリィムナ。
 ほどなくして魂を振り絞る叫び声が。

「…ひぎいいいいいい!」

 びくっと身をすくめる覚えのある人々。
 ほどなくしてリィムナが出てきた。すっきりした様子で。

「痛みが消えたよー♪」

 その後、にこにこ顔の霧依が出てくる。

「次の方、どうぞー」

 とりあえずその時、即立ち上がる気になれる患者は…誰もいかったそうな。