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■オープニング本文 アル=カマルのとある町は、現在大混乱に陥っている。 アヤカシの群れが現れた。 奴らは何の前触れもなく、突砂漠の彼方から転がってきた。 形は球体。口だけがついている。何重にもなった牙がついた大きな口だ。 そいつらは食う。ただひたすら食う。とりあえず食う。とにかく食う。 その貪欲さたるや人食い蟻も敵わない。 何しろ満腹するということがないのだからして、攻撃の手を緩めるということがない。 すでに犠牲者が多数出ている。 まずは不幸にも群れに行き当たってしまったキャラバン。 続いて群れの進路方向にあったオアシス村。 町の守備隊。逃げ遅れた一般人。 アヤカシは現在町の城壁を攻撃している。 このままで行けば城壁内に隠れた人々も同様の憂き目を見ることは明らか。 開拓者に速やかな殲滅をお願い致したい。 ● …という切羽詰まった依頼を受けて現地に到着した開拓者たちは、異様な光景を目撃した。 アヤカシが城壁に体当たりしたり齧ったりしながら壊そうとしている。 そこまでは確かに報告の通りなのだが、一体どんな次第なのか、周囲に素っ裸の老若男女がうようよ。 公衆道徳上大変良からぬ光景である。 ヌーディスト大会でもやっているのか。こんな時にこんなところで。 不可解さに打たれ呆然とする彼らに、一人の老人が近づいてきた。 オアシス村の長老ハッサンだと名乗った彼は、髭がとても立派なので、体の前半分が完全に隠れている。 「もしやあなた方は、開拓者の方々ですかな」 「あ、はい、そうですが…あの、何が起きたんですか?」 その質問に老人は、渋い顔をした。 「…戸惑うのも無理はありません。わしらも最初はわけがわからんかったのです。アヤカシに食われてもう駄目だと思った後、気が付いたらこのような格好でほうり出されておりまして…村の衆も皆似たような有り様でしてな…どうやら――」 悲鳴が聞こえた。 見れば城壁の上から矢を射かけていた兵士が足を滑らせ、そのままアヤカシの口の中へ。 アヤカシはぱくりとそれを飲み込み、ついでもぐもぐ口を動かした後、ぺっと吐き出した――素っ裸になった兵士を。 老人は途切れた台詞を続ける。 「――奴ら、人間ではなく、人間が着ている服を食っとるようなのです…」 |
■参加者一覧
水鏡 絵梨乃(ia0191)
20歳・女・泰
葛切 カズラ(ia0725)
26歳・女・陰
荒屋敷(ia3801)
17歳・男・サ
叢雲・暁(ia5363)
16歳・女・シ
浅葱 恋華(ib3116)
20歳・女・泰
綺咲・桜狐(ib3118)
16歳・女・陰
八条 高菜(ib7059)
35歳・女・シ
雁久良 霧依(ib9706)
23歳・女・魔 |
■リプレイ本文 「服だけを食べるアヤカシとは、面白い個体もいたものだ」 水鏡 絵梨乃(ia0191)の意見に叢雲・暁(ia5363)は、頷きで答える。 「うんうん。アル=カマルって割と真面目な連中ばかりで、こういう色物系はあまり見たことなかったんだけど、いる所にはいるんだね〜〜〜」 八条 高菜(ib7059)も羞恥プレイ製造機をじっくり観察。 「いやはやどうしてこんなものが出てきたのか…まあ、私がヤることはひとつなんですけどねー…それにしてもきりちゃん遅いわね」 綺咲・桜狐(ib3118)は半眼で浅葱 恋華(ib3116)を見た。 『アル=カマルにアヤカシの集団が出現!』という以外何も聞かされず同行しこの有り様。苦情の一つも言いたくなる。 「どんな依頼かと来てみれば…恋華、聞いてないですよ…」 「あら〜? 言ってなかったかしらね♪」 恋華は満面の笑顔。確信犯の匂いがぷんぷん漂ってくる。 「冗談じゃないですよ。こんな依頼だなんて知らなかったから、私、着替えとか持ってきてないんですよ!」 「まぁまぁ、怒らないで桜狐。終わったらお詫びはするから♪ 大体着替えなんて私も持ってきていないわよ♪ というか服そのものもないわ♪」 今回の依頼はどういうわけか男女比が非常に片寄っている。8人のうち男は荒屋敷(ia3801)1人。 彼にとってオイシイことこの上ない展開だ。 とはいえ鼻を伸ばしてニヤついていただのエロい目で見ていただの、彼女らから言い触らされるのも具合が悪い。だからつとめて普通に振る舞おうとする。顔中が緩んでいては説得力もないが。 「ど、どういう意図だが分からねえが、花も恥じらう乙女にこんな所業するたあ、許せねえ!」 アヤカシの分類について葛切 カズラ(ia0725)は、少々悩んでいる様子。 「これは…面倒なアヤカシと見るべきか、単純にネタ要素に突っ走った色物系と見るべきか」 満を持し、雁久良 霧依(ib9706)が現場に到着した。 ビキニの上に日除けのマントのみといういで立ちで、大欠伸。 高菜が声をかける。 「きりちゃん、遅かったけどどうしたの」 「いえ、夕べあんまり寝てなくて。昨晩ショタっ子を引っ掛けちゃって」 「相変わらず辻切りしまくってるのねぇ」 「ええ。この分ならほどなく万人斬り達成出来そうよ♪ にしても、あたり一帯こぞってありのままの姿なんてあまりに素敵すぎるパラダイスよね。来る道々お触りしまくってしまったわ」 遅れてきたのは寝坊に加え、寄り道も原因であるようだ。 …あれやこれやはさておき、一応仮にもアヤカシが出ているのなら、開拓者として退治しなくてはならない。 荒屋敷は事前情報を集めることにした。 「おい、何もすっぽんぽんで俺ら待ってた訳じゃないだろ? こいつ等固ぇの? 素早い? 何か習性あるの?」 「うーむ、固いは固いですが、こう、なんだかゴムのような――」 彼があれこれ聞き出していたその時、霧依がいきなり脱ぎ始めた。上も下も。 「なぁんだ。それなら最初から服を脱いでおけばいいじゃない♪ なら捕食対象として認識されないだろうし♪」 エロマスター称号者にタブーなどない。 豊満な裸身には強く吸われた様な赤い跡が散っていた。手足や胸、腰の辺りには縄が食い込んだ跡。腹と太ももには「雌豚」「一回五文」等の落書き。 繰り返すがエロマスター称号者にタブーは存在しない。 誰しもの目が悪い意味で釘づけ。それを受けた霧依は、なにやらうれしそうだった。 「あら…起きた時には気付かなかったわ♪ 顔に似合わずマニアックだったのね、あの子♪ 兎はHって本当ね。ああん…見られてるわ♪ 昂ってきちゃう♪」 たゆんたゆん胸を揺らしアヤカシに向け走って行く姿に、カズラは思った。とりあえずこの依頼は不真面目に対応してもよかろうと。 (念の為に装備品は失っても痛くも痒くもない物にしてあるから問題なし。バッチコイ!) 暁が、フッとニヒルな横顔を見せる。 「当たらなければ如何という事は無い…当たった所で如何という事は無い!」 彼女の服装といえば頭に鉢巻き下には白褌、胸元は『投扇刀』で隠しているだけという大胆不敵なもの。実質として霧依と大差ない。 カズラは布胸当てだけで股間に護符。恋華に至っては厚手の足袋のみで尻尾を体に巻き付けているという有り様。 こうして『ドキッ! ほぼ女だらけのアヤカシ退治(おっぱいポロリもあるよ)』が始まった。 ● 「うし、まずは小手調べ」 絵梨乃は手近にいたアヤカシに蹴りを入れる。 「せいやっ!」 アヤカシの体はへこみ反発した。 勢いで彼女は元いた位置以上に後退する。 「うーん、なかなか弾力に富んでいるんだな。こういうおもちゃどこかで見たことがあるぞ…」 今度は助走をつけ力を増し、再度の挑戦―― 「せーの…おととお!」 ――をしようとしたところで、蹴ったアヤカシが転がり向かってきた。 後ろに避けようとしたらそちらからも転がってきた。 壁に飛び上がり、よじ登って避ける。 球体はお互い同士ぶつかり弾ける。 暁は笑った。 「あはは、なんかビリヤードみたい。体が真ん丸だから踏ん張りききにくいのかな」 かくいう彼女もアヤカシに追いかけられ中。褌だけでも十分捕食衝動を催させるものらしい。 なんにもつけてないので全く目をつけられない霧依は、フォローするつもりで『アゾット』を閃かせる。 「出でよアイヴィーバインド!」 地面から蔓草が出、たちまちのうちに巻き取られる――暁が。 「あらごめんなさい。寝不足のせいかしらね、手元が狂っちゃった♪」 そのわりには芸術的なまでに正確な亀甲縛りである。 「いやぁっ、これとってぇ、変なところに食い込むぅ!」 身もだえする少女の姿に、霧依はすぐさま反応した。 「あはぁん♪ 今すぐもっときつくしてあげるぅ♪」 近寄ってきた相手の腰を、暁すかさずカニ挟み。 「ふふふ、NINJAが1人で果てると思ったら大間違いだよ!」 かくて後方から迫ってきたアヤカシに、2人とも食われてしまう。 中から声が。 「もう、お芝居なんて悪い子、おしおきしちゃうからっ♪ ここをもっときつく、きつくされたいのねっ!」 「そ、そんな辱めに屈しは…あはぁ…いやぁ、らめぇっ」 一体中で何が行われているのか。 興味の尽きない荒屋敷、つい討伐の手を止め耳をすませてしまう。 その背に、後衛を務めているハズの高菜がぶつかってきた。 「おっとと、ごめんなさーい♪」 不意をつかれて体勢を崩す荒屋敷。 「荒屋敷さん危ないっ!」 何故か飛んでくるカズラの呪縛符。 群がる式に足を捕まれ動けなくなる荒屋敷。 危ないと言いつつこれはどういうことなのか――突っ込みをする暇も無く彼はアヤカシの口に飲み込まれた。 「ぎゃああああ! ヤダぁぁぁぁぁ!!」 悲鳴を他山の石とし、桜狐は気を引き締める。 「流石に服を食べられるわけには行きませんし…気をつけていきましょう」 背中合わせの恋華は、手にした天儀酒をラッパ飲み。 「あははぁっ♪ 楽しいわねぇ、桜狐ぉ〜っ♪」 「…って、恋華酔ってますね?」 酔拳を使用しているとしても実際に飲む必要はないはず。ちらちら思いつつ桜狐は、火焔獣を放つタイミングをうかがう。 「そんなことないない私酔ってなーいー。ふふふ、気をつけないと私達もああなっ――」 恋華の声が急に途絶えた。 不審に思って振り向けば、背中合わせに共闘していた相棒が、忍び転がってきたアヤカシにぱっくりいかれている。 桜狐は大急ぎで尻尾を掴み、引きずり出しにかかった。 「あ、恋華、直ぐに助け…ぇ、きゃぁ!?」 そしていっしょくたに飲まれる。 「ふふふふ。これで2人きりだよ桜狐〜♪」 「あ、やめ、ひゃっ、どこ触って…きゃぁぁ!?」 絵梨乃は仲間たちが次々犠牲になって行くのを、手近な家屋の屋根から眺めていた。すぐ援護には向かえばいいものをそうしないのは、一にも二にも女の子が飲まれて剥かれて出てくるという場面を堪能するためである。 真っ先に飲まれた暁と霧依が、真っ先に吐き出されてきた。 双方一糸まとわぬ姿――飲まれる前もそれに近い感じだったので、あまり変化はない。 「くっ、NINJAともあろうものが寝技で3度も土をつけられるなんてっ…」 「ふふふ、そう悔しがらないで。高菜ちゃんもなかなかやるわよ。この私のツボをたちどころに押さえるなんて、なかなか出来ないことよ♪」 話の内容はさておき、裸体はいいものである。 目を細めてそれらをためつすがめつした後、絵梨乃は屋根から降り、持参してきた水着を提示した。 「使いますか? 念のためにと思ってたくさん持ってきてるんです、僕」 ずっとそのままで歩かせるのが可哀想というのが建前で、恥ずかしがらせるというのが本音なのか。そんな邪推をさせるほど水着は紐であった。これだけ紐だとつけてもつけなくても大差ない。 霧依と暁は、申し出を真っ向辞退する。 「大丈夫よ! 何もかもさらけだしているというのがむしろ快感だから!」 「全裸になるだけなら僕にとっては影響なし! なぜなら! 真のNINJAは全裸の状態で罠たっぷりの迷宮を踏破するからだ!」 両者堂々としすぎているが気にしないようにし、引き続いて吐き出されてきた荒屋敷に視線を向ける絵梨乃。 「このヤロー! もうこうなったら血祭りあげてやらあ!」 残った鬼の面を股間に装着し直した彼は、恥ずかしさのあまりキレ気味だった。 「どうです? 水着。隠れる面積は若干でも増えますが…」 「お、おおそうか。助かるぜ」 勧めに従い水着も装着する荒屋敷。 結果はカズラが口にしてくれた。 「ヤダー、荒屋敷さんすごく変態っぽい」 「あんたに動きを止められてこうなったんだよ俺は! くそおお、見るな、皆見るな! 俺は変態じゃねえー!」 溢れる怒りを彼は、すべてアヤカシに転化した。転がる球体を追いかけ『連昂』と『風魔手裏剣』を振り回す。 そこに地響きと緊張感のない悲鳴。 「あ〜れ〜絵梨乃様、カズラ様、お助けを〜」 走ってくる高菜。 その後ろを追いかけてくるひときわ大型の球体。 「実は私、高名な皆様が往来で素っ裸にされてどんな顔をするのかとっても興味がありまして…」 どさくさ紛れなカミングアウトをしながら、前方にいた2人にタックルをかます。 「是非、皆様の恥ずかしい姿を記憶に焼付けさせてくだ」 全員ぱくり。 もごもごするアヤカシの中から「ほらほら、諦めが肝心ですよー?」という声が続けて聞こえた。 そこで恋華と桜狐が吐き出される。 「あ、足袋とか髪紐とかは取られないんだ」 冷静に考察している恋華とは異なり、ねちょりとなった髪を地面に垂らした桜狐は、体中真っ赤にし怒りに震えていた。 変態は滅すべしという言葉が頭をぐるぐる駆け回る。 彼女は立ち上がった。尻尾で股間を隠すことさえ忘れて。 「く、この変態アヤカシは滅殺です。即滅殺なのですっ…」 食べる部分がもうない彼女らを無視し転がり回っている球体をはったと睨みつけ『稲荷神』をかざし呪を唱える。 右手に巨大な太刀魚が現れた。 「私の前から消え失せろー!!」 身体を隠すことも忘れ、生きのいい魚でアヤカシたちを叩き切って行く。 恥じらう顔を見せながら、ボインのガード皆無な恋華は、『武林』をまとった拳でアヤカシを殴打。 暁は家屋の屋根を走り抜け、アヤカシを見つけ次第『時』で一時停止をかけ、斬りかかっていた。NINJAらしく飛んだり跳ねたり三次元な動きはどこもかしこも丸見えにさせるのだが、一向に頓着する様子もない。 更に上を行く霧依は、明らかに必要のない開脚をしていたが、急に動きを止めたかと思いきや、茂みに隠してあったマントを着用。服を狙い襲ってきたアヤカシの口の中へ自ら飛び込み――すっきりした顔で吐き出されてきた。 直後アイシスケイラルをかけ、敵を消滅させる。 一体何をしていたのかと気になった荒屋敷は、理由について尋ねた。 そしたらこんな答え。 「いえ、ちょっと催しちゃって。プレイ中なら全く困らないんだけど戦闘中でしょう? だからお花を摘ませてもらったの♪」 憎き相手とはいえかような利用のされ方をしてしまったアヤカシが、彼は少し気の毒になった。 高菜、絵梨乃、カズラの3者も、遅れてようやく吐き出される。 「履物だけというのも、なんだかかえっていやらしいわねー」 高菜は全く隠そうとしない。 「そうだな。全裸に靴下というのと相通じる何かを感じる」 絵梨乃は紐水着を粛々と着直している。 「いかにも途中経過といった雰囲気が萌えを誘発するのかしら」 カズラは左手で長い髪を股間に当て、右手で胸を隠すという、どこかの名画のようなポーズ。見えそで見えない。 彼女らは三位一体で攻撃を開始した。 高菜の影縛りによって停止した球体を、絵梨乃の絶破昇竜脚、峻裏武玄江、酔仙人骨拳――そしてカズラの斬撃符、白面式鬼が次々に滅し始める。 序盤のグダグダぶりは一体なんだったのだろうと言うほどの、速やかな殲滅作業が続く。 ● 「はぁ〜スッキリしたわぁっ♪」 素っ裸で伸びをする恋華は、桜狐の元に歩いて行く。 我に返って状況を理解した彼女、茂みに飛び込んだきり動けなくなっている。 (着替え、持ってきてなかったですしどうしましょう) この際例の紐水着でもいいから借りて帰ろうか。 思っていたところ、後ろから抱きつかれる。 「あらあら、桜狐〜可愛いわね♪」 「…って、恋華!?」 「ほら、私が隠してあげるから大人しくしなさい。一緒に帰ろ♪」 「ん、隠すのはいいですが手を動かさないで、はぅっ」 こうして彼女らは帰って行った。 城門の近くではアル=カマルの男性衣装を身につけたカズラと、水着姿の絵梨乃、荒屋敷が話している。 「アル=カマルの殿方は気前がいいわよ。下着も上着も全部お持ち帰りさせてくれたわ。白い粉を入れたお酒で潰れてくれた後に」 「なるほど、その手がありましたかー」 「…なあ、それ犯罪なんじゃ…」 視点を変えて中央広場の泉に行けば、アヤカシに食われた人々が瘴気を落とすためにと水浴びの最中。 「いやー眼福でしたねえ、周囲の皆さんも多分そう思うのではないかなと」 「ええ、素敵な依頼だったわ」 ヤシの葉を身につけた高菜とハイレグ水着の霧依がそこに交じっている。 前者は脱がされていた一般男性の介抱、後者は子供たちの入浴手伝い――と称した行為を行っている。 「…え? いやほらやられた人たちの救助もしませんとー」 「そうそう、洗い残しがどこにもないように、綿密に丹念に♪」 頭から水を浴びていた暁が体をふるい水気を切り、気持ち良さそうに言う。 「あー、面白かった♪」 太陽の下、彼女の裸の尻は、眩しいほどに白かった。 |