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■オープニング本文 「ほんま外あっついわ…何度なんや」 ジェレゾ城北学園やんきい番長のアリスは、夏休みの宿題に手もつけず仲間とぐだっていた。 「今年は特に異常気象らしいですからねえ」 「このジルベリアで連続26度越えとか普通じゃないわ」 「そういや風の噂で、天儀全体に異変が起きているとかなんとか」 「なんでや」 「さあ。アヤカシに関係しているらしいけど」 「あれ? 大規模作戦は勝ち越してるんじゃなかったですか?」 「まあそうらしいんだけど…なんでも天儀の朝廷から滅びの大予言書が発見されたとかなんとかでー」 「何それこわーい」 「そんなんどうでもええがな。それより涼しくなる方法てないのんかいな」 「ないわねえ、特には」 冷房のきいたカフェでクリームソーダーなどたしなみながら、いつ果てるとも知れないだべり会。そんな女学生たちの至福の時間は、唐突に終わりを告げた。 「登校日のはずなのに、こんなところで何をしているんですあなたたち…」 凍りつくような声に一同腰を浮かす。 振り向けば彼女らの担任、女教師のトマシーナが立ちはだかっていた。 もともと吊り気味の目が更に吊り、狐耳と尻尾がびりびり震えている。 これは相当機嫌が悪い。当たり前だけど。 ● 「ふふふ、あんたたちも来たっすね…」 アリスのライバル、聖マリアンヌ女学院やんきい番長のアガサは、仲間たちとともに震えていた。吐く息が真っ白だ。 「ちょお、なんやこれ…どうなってんねや、あんたの学校凍りついとるやんけ!」 「アヤカシの仕業っすよ。まあそれはいいんすけど、昨日の登校日フケてたのがバレちゃって、今日はここで補習やらされる羽目になったんすよね、あたしら」 教室の床は雪が積もっている。 コートを着た屈強な夜叉のオネエ教師がやってきた。アガサたちの担任であるアキ先生、通称アキママである。 「はーい、みんな。今日は一日アタシたちがつきっきりで補習させてあげるわー♪」 その後から同じくコートを着たトマシーナ先生が入ってきた。 生徒達にとって悪いことに、勤務校は違えどもこの教師たちはお互い顔見知りであり、知り合いであり、友人なのである。 「分からない事があったら、何なりと聞きなさい。徹底的に分かるまで教えますから」 寒さだけでない寒気を覚え、ぞっとするやんきい一同。 後悔先に立たずというのは、きっとこういう場面に使う言葉なのだろう。 ● 「ああ、いたいた」 雪の積もった廊下をぽてぽて歩く小さな雪だるまを、エリカは剣で叩き切る。 雪だるまは瘴気に戻り、消えた。 しかしそれで終わりではない。まだまだたくさんいる。廊下のみならず階段にも教室にも、数を頼みにわらわら動き回っている。 辺りを冷やし雪景色にしてしまう以外、取り柄のないアヤカシ。足はのろいし攻撃力もほとんどない。 といっても数が数。駆除は一日仕事になりそうだ。 彼女の相棒であるぶちもふらが、憂鬱そうに言った。 「ご主人たま、滑って転ばないように注意するでちよ。そんなことになろうものなら、スーちゃんロータスたまから怒られるでち」 「ちょっとスーちゃん、あんたの主人はあたしでしょう。ロータスに怒られるとかいうのは筋が違うんじゃないの?」 「そりゃ確かにそうなんでちがね、お腹出てきてるのにいっこうに静かにならないご主人たまにヒヤヒヤする気持ち、分かるでちからな。もうちょっと気を使ったらどうでちか?」 「だから気を使ってるじゃないの。攻撃力の低そうなアヤカシ選んで相手してるのが分からないの?」 「…それで気を使ったことになるってのが、ご主人たまのすごいとこでちな」 |
■参加者一覧
マルカ・アルフォレスタ(ib4596)
15歳・女・騎
リンスガルト・ギーベリ(ib5184)
10歳・女・泰
ファムニス・ピサレット(ib5896)
10歳・女・巫
シマエサ(ic1616)
11歳・女・シ |
■リプレイ本文 夏の盛りに聖マリアンヌ女学院は一面冬景色。校舎が雪を被っている。周囲に植えてある木々もまたしかり。 リンスガルト・ギーベリ(ib5184)は目を細めた。 「涼を誘う光景じゃの。ともあれ今は夏休みで休校だそうじゃな、マルカ殿」 頷くのはマルカ・アルフォレスタ(ib4596) 「はい。でも確か、補習は行われているはずですわ。なんでも夏は遅れを取り戻すのに一番いい時期であるとか…」 ファムニス・ピサレット(ib5896)は、早速正面玄関の扉を開こうとした。 しかし普通に引いただけではびくともしない。 「あれっ、ちょっと…凍りついてるのかな…」 ノブからいったん手を放し、手のひらを擦り合わせはあっと息をかけ、気合を入れ直し再挑戦。 シマエサ(ic1616)が尻尾を振り、協力を申し出た。 「手伝いますにゃ♪」 「あ、ありがとうございます。では息をそろえて、せえのっ!」 渾身の力により扉が開かれた。 内側から扉を塞いでいた雪が、雪崩となって2人の上に落ちかかる。 「ひゃああ、背中入ったあ!」 「寒いにゃー!」 リンスガルトとマルカは雪を乗り越え、屋内がいったいどうなっているのか確かめようとした。 奥から次のような騒ぎが聞こえてくる。 「んぎゃああ! スーちゃんもういやでちー! なんで何度も何度もご主人たまの重いお尻のクッションにならないといけないでちかー!」 「あのね、さっきから言ってるけどあんたが足元うろちょろするから私、滑るのよ! ちょっと離れてなさいよ!」 「何でちかその言い方は! なんたる暴言でちか! もふらクッキー10袋でも償い切れないくらいの犯罪行為でちよ!」 両者、顔を見合わせる。 「…百発百中エリカ殿じゃな」 「間違いないですわね…相変わらずとても妊婦とは思えない行動を取っておられるようですわ」 中に入ってみれば廊下も階段も雪化粧、天井にある照明器具からツララが垂れ下がっている。雲もないのに時折宙に、ちらちら雪が舞う始末。 通路をふさぐ形となっているそこここの小山を撤去しつつ、ファムニスがぼやいた。 「すごい量ですね…くしゅん! 余り冷えすぎると風邪を引いてしまうかもしれません…」 リンスガルトは荷物からかんじきを取り出し、装着する。 「思うたより深い雪じゃな…足が潜りそうじゃて」 見習ってファムニスも、携帯袋からかんじきを取り出した。 ひとまず自分の分。それからマルカ、シマエサの分。 「あの皆さん、これどうぞ使ってください」 「まあ、有り難うございます」 「ありがとにゃ、助かるにゃ♪」 かくして全員雪山装備。 先を急ぐ。 「屋内で雪合戦出来そうだにゃー♪ カチンカチンにゃー♪」 『バグナグ』の爪で凍りついた柱を鳴らしていたシマエサは、職員室の窓をのぞき込み、眼を輝かせた。 「にゃにゃ! ちっこい雪だるまいっぱいですにゃー!」 なるほど彼女が言うように、小さな雪だるまが10匹ほど、室内を動き回っている。 そこにエリカがやってきた。よれぎみのスーちゃんが後から追いかけてくる。 「あら、あんたたちも来たの」 「おお、天の助けでち。ご主人たま、この人たちが来たからにはもうここにいる意味ないでち。帰るでちよ」 「なんで。やるわよ私は。斬らないと剣がなまるのよ。こいつらの場合斬ってもすぐ消えるだけだから物足りないけど」 「そのアマゾネスの血、妊娠中くらいは封印しといてくれまちぇんかね…」 苦笑したマルカは自分の首にかけていた襟巻きを外し、エリカに手渡した。 「このような胎教をされたお子様は勇敢なお子様になりますわね。とりあえず、お腹は冷やさないようご注意を。暖めるのにお使いください」 ファムニスも荷に詰めていた有り合わせの布を引っ張り出し、エリカの腹に巻き付ける。 「そうですよ、赤ちゃんにも悪い影響があるかも。エリカさん、お腹を冷やさない様にしてくださいね」 「え、ちょっと、あんまり巻くと息苦しいんだけど」 「その程度は我慢せねばならんぞエリカ殿。転んでは大変じゃからな、妾たちのようにかんじきも使うたほうがいいかも知れぬ」 「そんなの持って来てないわよ」 「あ、ファムニスが持って来てます。まだ余ってますから、お貸ししますよ」 「何から何まで有り難いでちな。ところでそのかんじき、当然スーちゃんのもあるんでちよね?」 「え? ないですよ。だってスーちゃんさん四足歩行で滑りようがないじゃないですか」 「差別でち、もふら差別でちいいい! スーちゃんもふら愛護会に訴えるでちいいいい!」 猫そのもののように手を動かしながら、シマエサがみゃあ、と鳴く。 「みんなやっつけちゃいますにゃ♪」 とりあえず職員室で跳びはねているのから始めるとしよう。 ● 範囲攻撃を使えば一網打尽も可能だが、学舎を壊すわけにもいかない――なのでリンスガルトは、地道なローラー作戦を行う。 「それにしても雪だるまめ、うじゃうじゃいるのう」 あっちこっち目につくように歩き回っている奴には、『秋水清光』の斬撃をお見舞い。 「せいっ!」 雪だるま、弾けて消える。 雪に埋もれ周囲と区別がつかなくなっている奴については、足で雪を払いのけたり剣でつついたりして捜索。発見次第『瞬風』で蹴りを食らわす。 雪だるま、また弾けて消える。 「何とも手応えのない奴らよのう」 調子よくうそぶくリンスガルトだったが、急にもじもじし始める。 自然の摂理が彼女をせっつきだしたのだ。 「いかん寒くなってきた」 だが慌てることはない。トイレの場所は先刻確認ずみだ。念のため前以て聞いておいたのだ。 「ふふ、妾に死角なしじゃ…ええい、積もりまくって歩きにくいのう」 手摺りをしっかり支えとし階段を上り切った先で左に曲がる。 そこで彼女は、うっと固まった。どういう次第かトイレの入り口から奥まで、びっしり雪だるまが詰まっていたのだ。 従ってそこは周囲にも増して氷室のよう。しんまで冷える。 ぶるっと身震いしますます高まる欲求を感じつつ、殲滅を開始。 「は、早くいなくならんかっ!」 まず荒ぶる鷹のポーズ。それから体中に黄金の気を漲らせ――重ね合わせた両手から放つ! 「波−っ!」 雪だるまたちは景気よくぽんぽん弾け、跡形もなく消え去った。 その結果に満足する余裕もなく急いで個室に入り――大声を上げるリンスガルト。 「うほおう!?」 声を聞き付け、シマエサがやってきた。 「リンスガルトさん、どうしたにゃー」 閉じたドアの向こうから、うめくような嘆き。 「便座が凍りついとる…尻がめちゃくちゃちべたい…」 そういえばこの状況下で水ってちゃんと流れるのだろうか。 疑問を抱くシマエサは直後その疑問を忘れ、トイレから飛び出す。雪だるまの物音を聞き付けたので。 「にゃんにゃん!」 階段の踊り場にいた雪だるまに飛びつき、雪にまみれて転がり落ちながら猫ぱんち。 猫じゃらしともぐら叩きを同時にしている気分で、なんだか楽しい。 ● ファムニスはエリカと一緒に行動している。 「倒れそうになったら全力で支えますよ! スーちゃんさんもエリカさんのサポートをお願いしますね。後ろにいて、いざと言うときはクッションになってください」 「スーちゃんもういやでち。お家に帰りたいでちよー」 丸々した体で雪をかき分けついていく、恨めしげなもふら。 エリカは視界に入った端から雪だるまを、バサバサ切って捨てている。 「懐かしいわー、私がいた頃とほとんど変わってないわね」 天井へ逆さまになり張り付いている雪だるまが、『ゴールデングローリー』から放たれた白霊弾で弾け飛ぶ。 「あれ、エリカさんここの卒業生なんですか?」 地面にいるのは『ローズウイップ』で叩かれ弾け飛ぶ。 「そうよ」 「さぞや不審に思われるでちょうが冷酷な事実なのでち。在学中は数々数え切れないほどの不祥事を起こし、大いに伝統ある学院の名を貶めたそうでちよ。全く途中で退学にされなかったのが奇々怪々な七不思議…虐待でち虐待でちいいい!」 もふらの頭を脇に挟みげんこつでごりごりやるエリカは、すぐ手を放した。顔をしかめて。 「あー、やっぱりお腹が出てきたら、なかなか重い物持てなくなるわね」 ファムニスは彼女の愚痴に少し笑い、腰を後ろから叩いてやる。 「さ、早くやっつけましょう! 敵はまだまだいますから!」 ● 階段の下にたまっていた雪だるまたちが、各個撃破されて行く。 「ここは大体片付きましたから、次に行きましょうか」 『闇照の剣』をふるって残り雪を払ったマルカは、通りがかった教室の前で足を止めた。 窓についている霜を手のひらで拭えば、補習が行われている。 「あら…?」 アガサたちがいるのは予想通りだとしても、学校の違うアリスたちまでも席を並べさせられているのはどういうわけか。 (そういえば登校日にいらっしゃいませんでしたわね、あの方たち…ついでだからということで、こちらに連れてこられたのでしょうか) そんな予想を立てながら、お行儀よく扉をノックし開く。 「アガサ様、アリス様、他の皆様方も、しっかりお勉強してくださいましね」 「おおマルカちょうどええところに来たわ。な、この補習打ち切るよう先生方に言うたって」 「凍え死ぬっすよ。校舎がこんなんなってるときに無理くり補習する必要あるんすかね」 アリスもアガサも、よく見たら唇が紫色だ。 「我慢なさいな。この程度の寒さで情けないわねぇ」 「アキ先生たちめっちゃ厚着してるじゃないっすか!」 「だってアタシたち年だもーん。でもあなたたち若いでしょ? 子供は風の子」 マルカの足元を擦り抜け、シマエサが教室内に滑り込む。机の下に潜り込む。 「ちょっと、あなた何をしているの、補習中ですよ」 トマシーナの注意に彼女は、尻尾を振って答えた。 「学びの場に紛れ込んだアヤカシ退治ですにゃ。すぐやっつけるのでどうぞお勉強続けてにゃん…にゃにゃん? 可愛いの穿いてますにゃ♪」 「何勝手に見てんすか!」 自分も褌だけでなく、ああいう可愛いの履きたいな。 思うシマエサはスカートの中に続き教科書をチラ見、首を傾げる。 『8√3+6√3−9√3+4√5−√20+(√5+√3)(√5−√3)=?』 「これは暗号ですかにゃ? まったく訳が分かりませんにゃ♪」 「奇遇やな。うちもや」 どんよりしたアリスの言葉に、トマシーナ先生が教卓を叩く。 「平方根については一学期に習ったはずでしょう!」 (アリス様、数学の時間はよく寝てましたから…) 自業自得とはいえ少し可哀想になってきたマルカは、助け舟を出す意味で、尻尾を逆立てているトマシーナに話しかけた。 「トマシーナ先生、エリカ様がいらしているのですが、お会いになりまして?」 噂をすればなんとやらと言うのだろう、抜群のタイミングで当のエリカが、騒々しく現れる。 「あれ、あんたなんでここにいるの、トマシ−ナ」 トマシーナは彼女の姿に苦虫を噛み潰す。 「あなたこそなんでこんなところにいるんですか、エリカ」 「依頼があったからだけど」 「依頼があったってそんな体なら、普通断るでしょう!?」 反応からするとどうやらこの先生、エリカの現状を知っていたようである。 ついでなのでマルカは聞く。 「エリカ様は結婚前に子供が出来てしまった訳ですが。それについて先生の見解は?」 「全く感心しませんね。無分別もいいところです。まあ、彼女は昔からそうですけど」 「そういうお堅いこと言うてはるから、先生男がよりつかんのと違うの」 トマシーナの魔法によって生じた落雷が、茶々を入れたアリスの席を直撃する。 「大丈夫ですかー?」 早速アリスの治癒にかかるファムニスは、きらきらした目でアガサたちに話しかけた。 「私、開拓者になる前、リンスお嬢様のお屋敷で一番上の姉さんが働いていた頃――お嬢様と一緒に勉強させてもらってたんです。双子の姉さんは、初日に家庭教師の先生を泣かせてすぐ勉強からは外されました…でも、勉強って楽しいですよね。昨日分からなかった事が今日、今日分からなかった事が明日分かる様になるって素晴らしいです! 皆さんもそう思いますよね?」 かくいう殊勝な気持ちがあるなら、誰もこんな補習になぞ出ていない。 それはともかくマルカはオネエ教師と、恋愛談義の真っ最中。 「えっ、先生にはボーイフレンドがおられるのですか?」 「ええそうよ。彼の肖像画ロケットに入ってるんだけど、見る?」 「まあ、これが…」 スーちゃんがひょいと脇から覗き見し、すっぱそうな表情となった。 「ふおお…アキたまに負けず劣らずムキムキマッチョな殿方でちな」 聞き耳を立てていた少女たちは復活したアリス含め、大いなる食いつきを見せる。 「見せて見せて、見たいがな!」 「うわあ、超ガテン系ですの!」 「年上、年下?」 「どっちが右側なのじゃな? 教えてたもれ!」 いつのまにかその輪の中にリンスガルトが交じっている。 「リンスガルトたま、アヤカシ退治はどうしたでちか?」 「む? いや、大体大かた片付けているでな。後は隠れたものを狙い撃ちと言うわけで、各方面探索しておるところだ。教室や校庭や屋上、体育館の倉庫など片っ端から開け中を改めくまなくチェックしておった。更衣室のロッカーに至るまで」 その言葉を聞いた途端、女学院生徒数名の顔色が青くなる。 「ああ、安心してたもれ。薄い本や倫理上好ましくない本等は読んだ後ちゃんと元の場所に戻しておいたでな…べ、別に恋人と会った時に役に立てよう等と思ってはおらぬぞ? 後体育館の倉庫でこの学校の生徒とおぼしき者たちによって怪しき事柄が行われておったとしてもそこはプライバシーを尊重し避難誘導に止めておいたのじゃ」 「ちょいちょい待ち、一体誰なんすかそれ」 「いや、名前までは分からぬのう…ただこっそり聞いた会話からすると、両者テニス部のようじゃった」 「ならフラニーとゾエですの! 間違いないですの! 前々からあやしいって言われてましたもの!」 「やっぱりあの子たちガチだったんだわ!」 かくいう話にあまり興味のないシマエサは、机の上で丸くなり、うとうとしている。 彼女を夢見心地から飛び起きさせたのは、トマシーナが豪快にバインダーをへし折った音だった。 「アキ先生脱線はいい加減にしてください…あなたたちも出て行きなさい、授業の邪魔です」 威嚇を受けた開拓者たちは回れ右して教室から出て行き、アヤカシ退治を再開し始めた。 むろん、シマエサも。 「1匹ぐらい御主人様のお土産に持って帰りたいですにゃ。あ、でもアヤカシだから食べられないですにゃ…」 雪だるまが減ったおかげで、窓の霜はなくなっている。外がきれいに見える。 鮮やかな夏空――快晴。 夏休みはまだまだ続く。 |