お届けものです
マスター名:KINUTA
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/06/29 01:54



■オープニング本文



 ごぉおおおおおおおおお



 現在アル=カマル某所の砂漠では砂嵐が吹き荒れている。
 現地の人に聞けば、昨日から休みなくずっとこの調子なのだそうだ。
 ここはキャラバンルートにかかる場所。
 今回の依頼主である商人アリー氏は言った。今晩までに目的地であるオアシス都市へ入り、太守の姫君へ品を届けねばならないと。

「日にちについては余裕を見てもらっていたが、途中で盗賊など出たりして手間を食ったでな。これ以上遅れるわけにはいかんのだ」

 護衛のために雇われている開拓者としては、当然この現象も収めねばならない。
 これが自然現象でないことは明らか。こんなことが出来るのはアヤカシくらいしかいない…。



 開拓者たちは途方にくれていた。
 砂嵐を起こしているのだろうアヤカシが、どんなに探しても見つからないのだ。
 風の吹き荒れている範囲を全て探し回ったのだが、影も形もない。

「おかしいな。たとえ姿を隠す能力があるアヤカシだとしても、こう、存在を察知すること自体は可能なはずだろう?」

「だよな…どこかに見落としがあるのかもしれない。もう一度手分けして探してみよう」

 天地に満ちている砂のせいで、真昼間だと言うのに太陽が見えない。
 あたりはどんよりした黄色い薄暗さに満ち満ちている。呼吸がしづらくてたまらない。

「もしかして本体はここにいるんじゃないんじゃないか? 遠くから術なりなんなりかけているという可能性は――」

 足元の砂が急に崩れ始めた。
 皆はっとし、その場から離れる。
 砂はますます崩れていき、大きなすり鉢状の穴が出来上がった。
 底から鋏状の顎がにょっきり突き出す

 巨大なアリジゴク。

「こいつか!」

 漫然と吹いていた風が一気に寄り集まる。すり鉢の斜面に立つ開拓者たちの上から、叩きつける。
 落とそうとしているのは明らか。




「やれやれ、早く片付くといいのだが」

 砂嵐を前に腕組みするアリーに、部下の1人が言った。

「しかしアリー様、そこまで急がなきゃならんもんですか、この荷…天儀から取り寄せた絵巻本ばかりでしょう。それも全部衆道がらみ」

「言うな。姫君が御所望なのだからしょうがない。『本当なら私も春とか夏とかのイベントに行きたいが地理的条件がそれを許さないから通販するしかないではないか可能な限り速やかに速達で寄越せ』と仰っておられた」

「なんのことですか」

「さあな。わしには若いもののことはようわからん」






■参加者一覧
羅喉丸(ia0347
22歳・男・泰
笹倉 靖(ib6125
23歳・男・巫
アムルタート(ib6632
16歳・女・ジ
アルバルク(ib6635
38歳・男・砂
ケイウス=アルカーム(ib7387
23歳・男・吟
伊波 楓真(ic0010
21歳・男・砂
草薙 早矢(ic0072
21歳・女・弓
サライ・バトゥール(ic1447
12歳・男・シ


■リプレイ本文


 羅喉丸(ia0347)は前傾姿勢を取り、向かい風に対処する。

(盗賊の次はこれか。よくよく問題続きだな)

 ガチガチ鳴る顎の音を耳にしつつ、もろい砂の斜面を上へ、上へ。
 ジプシーであるアムルタート(ib6632)は、悪い足場にも余裕しゃくしゃくだ。

「おおおー!? すっごい落ちるメチャ落ちる! やっぱアリジゴクこわいねー♪」

 戯れながら、一気に穴の縁まで跳躍する。
 その背にバシッと砂の塊が投げ付けられてきた。アリジゴクが飛ばしてきたのである。
 砂粒といっても速度がついているので、当たれば痛い。

「あいたっ! 何すんの!」

 アムルタートが飛ばした『鑽針釘』は、硬い音を立て跳ね返る。
 身を覆う甲殻は、ちょっとやそっとの丈夫さでないらしい。

「アリジゴクなんていそうで見なかったヤツがよくぞ出てきやがったもんだ」

 うそぶくアルバルク(ib6635)は口に入った砂を、ぺっぺと吐き出した。

「やれやれ、こんな所にアヤカシが居たらキャラバンや近くの町にも迷惑だ」

 ケイウス=アルカーム(ib7387)は親友である笹倉 靖(ib6125)に顔を向けた。
 靖は手持ちの水を地面にかけ、足場を確かにしようとしているが、なかなかうまくいかないようだ。

「歩くときはあまり足を持ち上げないほうがいいよ。泥と一緒で潜ったら手がつけられなくなるから」

「分かってるって。しつこく砂かけやがって畜生、腹立つ虫だなおい」

 草薙 早矢(ic0072)の悲鳴が聞こえてくる。

「ひやあああああ足元があああ! 足があーーー!」

 彼女は酷熱の地に不慣れである。暑さでグロッキーになりかけていたところ流砂も加わり、悪戦苦闘。抜け出そうと焦れば焦るほどずるずる下へ滑り落ちて行く。
 こいつが最も狙いやすそうだと見たのだろう、アリジゴクが集中的に砂飛ばし攻撃をしかけてくる。

「こ、このっ、おのれ卑怯もぶほっ!」

 前方から砂、後方から砂。そして更に底へと後退。
 前にいた伊波 楓真(ic0010)とサライ(ic1447)が急いで早矢の手を取り、引っ張り上げにかかる。

「体重をかけ過ぎたら駄目です。こう、泳ぐように足を動かして」

「む、難しいことを…あわわわ滑る滑る」

「姿勢を前のめりにしてください、落ち着いて」

 サライは『苦無』を穴底へ投げ付けた。倒すというより注意をそらすために。
 それはアムルタートの鑽針釘と同じく遮られ、跳ね返り、砂の中に落ちる。

「頑張って、もう少しですから!」

 上にいた靖たちが、穴の縁から手を伸ばす。

「早く早く! 掴まれ!」

 どうにか全員穴から脱け出した。
 アリジゴクは回転するように身を動かし始める。
 細かな砂は風と振動によっていともたやすく姿を変えた。穴の縁が崩れて行く。

「おっとっと、こいつはおっかねえな」

 と言いつつアルバルクは、相手から見えるポジションを保ち続けている、
 理由は簡単。向こうがこちらを諦め逃げて行ってしまっては、もともこもないからだ。作戦が纏まるまで気を引き続けていた方がいい。

「それにしても、何だか見た顔がよく集まったモンだ…ま、積もる話なんかは任務を終えてからだな。まずあれをどうやって倒すか考えようぜ」

 ケイウス、アムルタート、楓真が苦笑した――全員、小隊『カマリアンステッド』のメンバーだ(ケイウスの場合は元メンバーであるが)。

 穴の縁で相手をからかい続けているアムルタートは、ズルリと下へ落ちて行きそうになるたび、軽やかな跳躍で後退りする。

「捕まらないもんねー♪」

 羅喉丸はふと、依頼主の荷について思った。

(あの文化は他儀に輸出してしまっていいものだろうか)

 個人的な疑念は大きいが、依頼の成功と目の前の敵の対処が先だと頭を切り替える。
 風の音に負けぬよう、意見を述べる。

「ひとまず巣を降りていってやりあうのは、足場が悪そうな事もあり不利かと思う」

 皆はそれに賛同した。この条件下相手と同じ土俵で競うのは、いかにも危険が大きい。砂に引き込まれたら窒息しかねない。
 そして問題はもう一つ。

「外から飛び道具で攻撃した場合、仕留めきれなかったら逃げるかも知れない。それもまずい。後顧の憂いがないように、ここで息の根を止めるべきだ」

 サライは砂が入らぬよう、兎耳をぴったり頭部に張り付ける。

「あの、その辺の対策についてなんですが…あそこから引き摺り出してみてはどうでしょう。待ち伏せタイプのアヤカシは、テリトリーから出されると、戦闘力が落ちることが多いですし」

「…そうだな。縄を使って巣から引き上げられれば…」

 逃がさない。この場で確実に始末する。以上が開拓者たちの総意だ。
 ケイウスは不適に言う。

「それは面白そうだ」

 靖が頷いた。

「やっぱり吊り上げるのがいいかね、くっそ砂が服の中入ってきた」

 アルバルクは愉快そうだ。

「ブツが何だろうと受けた以上は運び抜く。それが仕事ってもんよ、なあ? それがどんな危険物だったとしても――」



 開拓者たちは、穴の周囲に展開していく。



 相棒が居れば心強かったのだがと、楓真は悔やむ。

(兎に角遅れを取らないよう頑張らないと…)

 サライは荒縄を3本用意している。
 1本の先は自分に結び付ける――アリジゴクの巣へ入るに当たっての命綱だ。
 両手には残り2本――先に鎖分銅『大蛇』 が結びつけられている。取り付けたものを食い千切られないようにという、羅喉丸の配慮だ。

「釣りってのも酔狂なもんだが、引っ張りあげは任せとけ。まあ俺は滅多に大物をつれないんだがよ」

 アルバルクは横目で穴底を確認した。
 アムルタートが刺激し続けている甲斐あって、こちらをまだ諦めていない。盛んに砂を飛ばしてくる。
 靖は準備体操と称し、肩を回している。

「さぁて、ぶっつけ本番だが、失敗する訳にもいかねぇしタイミング合わせて行こうぜ」

 相変わらず視界が悪く、アヤカシもおおざっぱな輪郭しか見えない。
 ケイウスにとってそれは、たいした問題とならない。視覚に頼って位置を把握しているのではないのだから。

(まずはある程度、ダメージを与えておかないとね)

 穴底へ強烈な重低音が響き渡る。
 何が起きたか分からないままアリジゴクが動きを止めた。一種のマヒ状態に陥ったのだ。
 隙をついてサライが降りて行く。
 近づけば、湾曲した顎の細部が確認出来た。内側に一面ギザギザがついている。

(挟まれたらただではすみませんね…)

 ショック状態に陥っていたアリジゴクが我に返った。
 目と鼻の先に獲物がいるのを発見し、大顎を開いて襲いかかる――その姿勢のまま止まる。時とともに。ほんの3秒だけ。
 サライは大急ぎで鎖分銅の輪を相手の頭から通し、胸部との透き間にはめ込んだ。体の構造上、これで外れなくなるはずだ。

「結べました! 皆さん頼みます!」

 叫ぶと同時に退却にかかる。
 時間が再び動いた。アリジゴクも動き出す。
 大量の砂がサライの上にかかってくる。

「おいおい、なんでお前が落ちそうになってんだよ!」

 靖は命綱を楓真と共にめい一杯手繰り寄せ、『精霊』を翻した。
 光弾が直にアリジゴクの目を焼き怯ませる。
 早矢が雨あられと矢を浴びせた。
 どれもやじりに返しが入り、細目のロープが結び付けられている。

「下手な鉄砲ではないですが、ね!」

 外皮に阻まれ幾つも折れたが、何本かは見事突き刺さった。
 獲物として手ごわいと感じたアリジゴクは、尻から砂に沈み始める。
 逃げるつもりだ。
 いち早くそれに感づいたアルバルクは、早矢が打ちこんだロープの端を掴む。

「おい、刺さったの引け引け、潜らせるな!」

 アムルタートが別のロープに取り引いた。早矢も一旦弓を休ませ、綱引きに転じた。
 アリジゴクの砂潜りが止まる。

「逃がさないよーっ!」

 ピンと張ったロープが、引っ張りに耐えかねささくれ始める。
 サライが安全圏に入ったのを確認した楓真は、アヤカシに結ばれた荒縄の一端を、穴の対岸に飛ばした。

「そっちからも引いてください!」

 羅喉丸がそれを受け取り、力いっぱい引く。
 踏ん張りを確かにするため足元に盾を敷いているが、それでもつり込まれそうだ。
 向こう側ではサライ、楓真、靖、ケイウスが綱引きをしている。

「なるほどな…一筋縄ではいかんようだ。ではこちらも本気を出させてもらおう」

 彼は丹田に力を込める。

「押して駄目なら、引いてみろってな」

 筋肉が膨張し、全身が赤く染まった。

「よーし、いいぞいいぞ。これがホントのデザートウルフってな。おっと、俺らがデザートになるのは御免…」

 アルバルクたちの引いていたロープが、とうとう中程から切れた。
 反動で彼と早矢、アムルタートが尻餅をつく。

(これはもっと弱らせる必要があるね)

 ケイウスは歌を切り替えた。仲間を鼓舞するものから、敵に対する攻撃へと。

「逃がさないよっ!」

 アヤカシの魂をメロディの一節一節が削り取って行く。
 開いた顎の間から大量の泡が漏れてきた。苦痛のあまりなのか怒りの現れなのか定かでないが、兎にも角にも力が緩む。

「いいぞ引けー! 開拓者一同心を込めてーオーエス、オーエス!」

 アムルタートの音頭に合わせ、右左の荒縄が動く。

「さぁて、全身お目見えだ」

 靖はせせら笑った。
 引きずり上げてみて分かったのだが、アリジゴクの下半身は非常に貧弱なものだった。
 顎のある頭部とほぼ同じ大きさしかなく、ついている節足もか細い。

「なるほど、これじゃあ砂の中から出てきたがらないはずだね!」

 アムルタートは穴の縁から出てきた前半身の脚部目がけ、『ゴールドバインド』を振るう。嫌と言うほど打ちのめす。
 頑丈な前足が先のほうからもぎ取れた。
 アリジゴクは火花の散る勢いで顎を開閉し噛もうとするが、すべて避けられてしまう。

「ふふー、当たったと思った? 残念!」

 別方向からサライの攻撃が加わってくる。
 甲殻の隙間を狙って『苦無』が滑り込んだ。
 粘い体液が滲みだし、刃を伝って砂に落ちる。
 アリジゴクが頭部をねじり、甲殻と甲殻の間に刃を挟み込んだ。
 危うく指も挟まれるところだったが、そこはなんとか回避する。

「くっ!」

 力ではもぎ取れそうにない。一旦離れる。
 楓真が『エル・ティソナ』を使い、『苦無』を挟み込んだ反対側から討ちかかる。
 頭部を傾けているため、そちら側の繋ぎ目はがら空きになっていた。
 体液がまた吹き出す。
 アルバルクと早矢が後方から近づき攻撃した。
 普段隠している部分だけに、他より装甲が弱く出来ているらしい。早矢の放つ矢も彼の『ベネトレイター』も貫通する。
 続いて爆発。
 飛び散る内蔵物。
 アリジゴクが長く苦悶することはなかった。人間で言えば眉間の位置に、羅喉丸の重い拳が襲いかかったのだ。

「我が絶招にて砕けぬものなし」

 拳は分厚い殻を突き破り内側を粉々にし、反対側まで突き抜けた。
 アリジゴクは2、3度びくびく動いた後、瘴気となって空中に溶けて行く。
 風がぴたりと収まった。
 舞い上がった砂は徐々に沈下し、底無しの青と強烈な太陽の光線が露になる。
 早矢はげんなり頭を下げる。

「暑い…眩しい…」

 楓真は体についた砂を払いながら、一人ごちた。

「このメンバーなら怖いもの無しって感じですよね。僕も皆の様に強くなれたらなぁ…」

 アヤカシが退治されたと見たアリーが、一行を連れ砂丘から降りてくる。

「皆さんご苦労様です」

「いえいえ、どういたしまして…積み荷は大丈夫ですか? 風で飛ばされたりなどは」

「ああ、大丈夫です。しっかり封をしておりましたからな」

 ラクダたちの背に食い込んでいる包みに、羅喉丸は再び思った。正直、お姫様には渡さない方がいいんじゃないかと。

(…まあ、首を長くして待っていて、楽しみにしているとなればしょうがないか)

 気力を無茶使いしたせいか、頭が重い。任務完了の暁には休息がたっぷり必要であるようだ。



 かくしてキャラバンは再び歩きだす。オアシス都市を目指して。



「いやあ、生き返るようですね」

 そびえ立つ城門。緑麗しき巷。
 砂漠の荒涼とした風景に飽き飽きしていた早矢は、うれしそうである。
 楓真も上機嫌。

「さっきの戦闘で服や靴の中が砂だらけですよ。あぁ…町に着いたら一杯やりたいですねぇ。どんな酒があるか楽しみですよ」

 大通りを抜け、そのまま大守の館へ。
 ここまで見届ければ任務完了ということで、楓真と早矢、羅喉丸が一行から離れた。

「どうですお2人とも、一緒にカフェに行きませんか」

「あ、いいですね。本場のアル=カマルコーヒー、飲んでみたいです」

「あー、お誘いはありがたいが、俺はこれから宿で少し休むとする。力を使いすぎてな」

「そうですか。残念ですねえ…」

 残りは興味もあって、そのままアリーについていく。
 立派な門から入れば、アル=カマル装束をしたエルフのお嬢さんが、弾丸のように飛び出してきた。
 黒い巻き毛に黒い目のかわいい娘だ。
 彼女はアリーにとびつき、頭が外れそうな勢いで揺さぶり倒す。

「来たかやーっ! 待っておったぞよアリー! はよ、はよ荷を解いてたもれ! 注文の品に間違いはなかろうの! 新刊はひとつ残らず買ってきておるの! のうのうのう!」

「大丈夫です。間違いはございませんです姫様…」

 ケイウスは同情の眼差しを商人に注いだ後、靖に言った。

「人の趣味にどうこう言うつもりはないけど、あの荷物全部それってのは…その、すごい、ね?」

「…俺たちが大変な思いをして守って運んだ荷物がなぁ…まー立場が立場だから息抜きも必要か」

 お姫様は何の頓着もなくその場で荷を解き、中を確認し始めた。
 薄い本また薄い本。
 書籍刊行の最先端を行く天儀多色刷の破廉恥な表紙絵がめくるめく。
 その中にちらっと自分と師匠との表紙が見えた気がして、サライは汗をかく。
 それが乾く暇も無いうちまた新たに自分と友との新刊が出てきた。

(世界って狭いんだな…)

 諦観を覚える彼の脇から、アルバルクが覗き込む。

「…おい、ケイ。何か知らんがお前もネタにされてるっぽいぞ」

「うそでしょ隊長!?」

「いやウソじゃねえよこれ見ろよ。お前と靖じゃねえか?」

「ぎゃああ! なんで俺だよ! 誰だよ断りなくこんなもん描くなよ!」

 悲鳴を上げる靖。
 アムルタートは馬鹿ウケ。

「あはは、描いたもの勝ちだよねこういうの――あっ、これアルバルク本じゃないもしかして?」

「マジかよ…俺についてどういう需要があんだよおい…」

 購入物のチェックをしていた姫様が、急に振り向き目を丸くし、サライに詰め寄ってきた。

「そそそ、そなた、もしや生サライ! 生サライかの!」

(いやそんな、生野菜みたいに言われても…)

 思いながらもサライは頷く。

「はい、確かに僕はサライです」

「ぬおおお! 是非生BLを見せてたもれ見せてたもれ見せてたもれー!」





 割と流されやすい彼はこの後、ちょっとだけリクエストに応えたそうである。