特に理由はない
マスター名:KINUTA
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: やや易
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2014/05/23 01:14



■オープニング本文


 パンダをご存じだろうか。
 ずんぐりした体格。愛らしい白黒模様。あざといほどの不器用な動きで見るものの心を癒す動物であるあの…パンダを。
 どこの儀においても人気の高いあの…泰国産の生き物を。




 昼下がりの町角。
 子供たちが白墨で道に落書きし遊んでいる所に、モコモコ生物がやってきた。

「あっ、パンダさん」

「パンダさん」

 まだ常識というものが育っていない彼らは無邪気に喜び、パンダを遊びに迎え入れようとした。

「いっしょにおえかきする?」

 パンダは穏やかな表情で白墨を受け取り、地面に叩きつけた。
 その後落書きを踏み消し倒し、ほかの子供たちが持っていた白墨も奪い取り粉砕、最後にぺっとツバを吐き立ち去って行く。
 それが、第1の悲劇。




 公園。
 老女が編み物をしているところに、ふっと影がさしかかる。
 誰かと思って見上げれば、パンダ。

(なぜこんなところにパンダが…)

 白黒生物は編み物の端を掴み、一気に引いた。
 老女の手元には編み棒しかなくなる。
 続けて毛糸玉を手に取り、地面に置き、思い切り蹴っ飛ばした。
 毛糸玉は弾んで噴水の中へ落ちる。
 それが第2の悲劇。



 レストラン。
 楽しげに食事を取る恋人たち。
 ワインの入ったグラスを打ち合わせ、女が言う。

「どうしたのよ、急にこんなところに誘って。何かあったの?」

「今日君の笑顔がとても輝いていたから…それが理由だよ。君と出会ってからは毎日が僕の記念日さ」

「もう…ばかっ」

 いい雰囲気のそこに、のそのそやってくるパンダ。
 次の瞬間恋人たちは、顔面にパイを叩きつけられた。
 テーブルが引っ繰り返され、乗っていた料理も飲み物も床にぶちまけられる。
 パンダはどしどしその上を踏み付けた後、去って行った。
 それが第3の悲劇。




「そして第4の悲劇…」

 まだまだ続けようとした友達に、口だけ女番長アリスは待ったをかけた。

「いや、もうええわ。大体なんとなく察しがつくわ」

「そう? 現在のところ第66までバリェーションが出来てるんだけど」

「多いんやな…何ではよ退治せえへんの、開拓者も」

「それが本当に神出鬼没らしくて。なかなか居場所を特定出来ないんだって」

「ふーん。ま、ええけど…あ、来た来た」

 彼女らは本日カフェに訪れていた。目当ては季節限定いちごのタルトだ。
 頼んだのは特大サイズ。皆で分けて食べよう、ということで。

「ほしたらうち切るわ」

「ちゃんと等分にしてくださいよ、アリス」

「分かっとるがな」

 いざ、とナイフを入れたそこに、ぬうっと影がさす。
 顔を上げてみればパンダ。
 そいつは噛み砕いた笹交じりのツバを、ぺっぺっぺっとタルトの上に引っかけた。
 そして、すっと姿を消す。
 彼女らの前に残ったのは、もう食べられない状態となったタルトだけ。

 第67の悲劇である。




■参加者一覧
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
水月(ia2566
10歳・女・吟
叢雲・暁(ia5363
16歳・女・シ
プレシア・ベルティーニ(ib3541
18歳・女・陰
ファムニス・ピサレット(ib5896
10歳・女・巫
ラグナ・グラウシード(ib8459
19歳・男・騎
サエ サフラワーユ(ib9923
15歳・女・陰
草薙 早矢(ic0072
21歳・女・弓


■リプレイ本文



 プレシア・ベルティーニ(ib3541)は憤慨していた。
 ちょっと遊びに出ていた間に、おやつの鯛焼きが消えてしまったのだ。探しても探しても見当たらない。たいちょーに聞いたら「自分が食べたんじゃないのか」と痛くもない腹を探られる始末。

「むぅぅ〜! 犯人は絶対に許さないんだからねぇ〜!!!」

 背中にはオーラがしゅいんしゅいん燃えている。
 というわけで彼女は、依頼に向かったたいちょーを追う。

「一緒に探して、ボクの濡れ衣を取り払うんだからね!」




 パンダ愛好少女の異名を持つ水月(ia2566)は怒りに震えている。

「まさか……パンダさんがそんなひどい事するはずがないの。きっとそいつは偽者なの。背中にチャックとかついてて、なかに正体を隠してるとかに決まってる……正体を暴いて、こらしめてやるのー」

 事実パンダでなかろうと叢雲・暁(ia5363)も思う。被害を受けたのが一般人だけなら、着ぐるみを着た暇人の仕業と思えなくもないが、開拓者までもがやられているのだ。

「くだらないっちゃくだらない内容だけど、塵も積もればなんとやらだからね〜〜〜」

 サエ サフラワーユ(ib9923)はこう証言する。

「…そういえば、私こないだから一日に七回は変な失敗があって…えっとその、いつもよりちょっと多いかなってくらいで、いつも五回くらいはそーいうことあるんですけど――ほかにも10や20は類似の事が起きてて…」

 リアクション芸人のような日常を送っている彼女の言葉であるから、内容については差し引いて聞かねばならないだろうが、それにしても多すぎる。

「…それって全部パンダさんの仕業だったんですねっ! 私はどんな目にあっても許しちゃうけど、みんなにイタズラするのはちょっとヒドイかなって思う!」

 先程道端でパンダに泣かされた子供達に慰めの言葉をかけ、必ず仇をとることを誓い、彼らから「ありがとうお姉ちゃん」と声をそろえて言われたばかりの天河 ふしぎ(ia1037)(男)が拳を握る。

「…子供達の目を節穴にするなんて、許さないぞ極悪パンダ!」

 そこは濡れ衣であろう。

「人々を泣かす彼奴を、正義の空賊団長としては放っておけないから! …けっ、けっして、大事に隠しておいたおやつが無くなったのも、彼奴のせいだって恨んでるわけじゃ無いんだからなっ!」

 篠崎早矢(ic0072)の被害状況は以下のごとし。

「そう、あれは一週間前のこと…彼氏にキスしようとしたら、いきなりわいてきた笹の葉に邪魔されたのです。その翌日、親友のおしりを触ろうとしたら、なぜか木製のマネキンとすりかえられており…さらに翌日、弓矢の稽古をしようとしたら矢が笹の葉っぱになってました。しかもまた翌日、鎧櫃の家紋を確認したらパンダのイラストに…ペンキで書き換えられていて」

 笹。そしてパンダのイラスト。アヤカシの仕業だという証拠は揃い過ぎている。
 早矢のこめかみに筋が浮かんだ。

「アヤカシ許すまじ、必ず殺す」

 ラグナ・グラウシード(ib8459)は、心中複雑であった。
 彼はかぁいいもの好き男、たとえアヤカシであってもそのような外見を持つものに対しては、格段に戦闘意欲が低下してしまう。

「ぱんださんか…ぱんださんはかわいいのになあ、なあうさみたん」

 一番の親友であるぬいぐるみに対し、綿々と語りかける。

「しかしアヤカシ…なんということだ!」

 そこにお習字バッグを手にしたファムニス・ピサレット(ib5896)が駆け込んできた。

「今、先程、私、パンダを見ました!」

 彼女いわく、パンダは帰宅途中の彼女らから筆と墨汁をひったくり、壁に落書きをしたのだそうな。

「一番上の姉さんの似姿と「ブスゴリラ」「オナラ連発女」という添え書きをしていました…すぐ上、双子の姉さんは上手いと褒めてました。そこに運悪く一番上の姉さんが…既にパンダの姿は無く、しかし絵は残ったまま…私は恐ろしさの余り無我夢中で、一緒にいた姉さんがやりました、と…こういう時、普段の行いが物を言うんですね。お尻叩き五百回位かな…まだ悲鳴が耳に」

 そっと涙を拭った彼女は、汚れなき眼を輝かせる。

「…可哀想な姉さん、真犯人は必ず倒します!」

 可哀想にさせたのはファムニス当人ではあるまいか。
 その場にいる誰しもがそう思った。



 プレシアは、町を1人でてこてこ歩く。
 ふしぎを追いかけてきたのだが、まだ見つけられていない。

「どこかなたいちょー…ふに?」

 白黒生物が向かい側から歩いてきた。

「パンダ‥‥? パンダさんだ〜!」

 喜び勇んで駆け寄ったプレシアは、たまたま持っていたトマトを差し出す。お食べ、と。
 パンダはすんなりそれを受け取り――思い切り彼女の顔に叩きつけた。

「ぷにゃ!?」

 そしてどこへともなく去って行く。
 やられた当人は別に落ち込むでなく、きれいに手で拭い舌でなめ取って後を追う。
 しかし、すぐさま見失う。

「ふにゅぅ〜、消えちゃったの〜。あれ普通のパンダじゃないね〜。アヤカシかもなの〜」

 再度歩きだしパンダの行方を尋ね回る過程で、数々の悲劇を知る。
 きっと鯛焼きをとったのも奴に違いない。
 プレシアは吠えた。

「パンダアヤカシぃぃっ‥‥!! ボクの怒りは‥‥爆発寸前なの!!」




「こう、人々の気が緩むよーな場所に出る気がするのだな」

 目測をつけたラグナは目抜き通りに行ってみた。
 予想通りの賑わいだ。チュッチュやってるカップルたちがあちらにもこちらにも。
 見ていると心が黒く染まってくる。
 そのときだ。カップルの真上にある窓が開いて、雑巾バケツを抱えたパンダが出た。
 上下にひっくりかえされるバケツ。使用済みの水を浴びるカップル。

(よし! そこだ、もっとやってしまえッ!)

 期待に違わず雑巾が女の頭の上に、バケツが男の頭の上に落下。
 晴れ晴れした気持ちで場を立ち去りかけたラグナだが、すんでのところで使命を思い出す。

「くっ…愛らしい姿の敵は本当に勘弁してもらいたい! 私の大剣を握る手が鈍るではないか…」

 狼煙銃を上げ、窓から飛び出し屋根伝いに逃走して行くパンダを追う。

「くぬぅ、早いっ! 忍みたいなのだぞっ!」

 追いかけているラグナに気づいたかアヤカシは、姿をさっと消してしまう。
 目測をつけラグナは、希儀産オリーブオイルを投げ付けた。
 残念ながら体には当たらなかった。
 だが足元で割れた瓶から出た油に足を滑らせ、屋根から派手な音を立て転がり落ちた――ラグナの真上へ。

「おげ」

 潰れるラグナ。
 彼を踏み付け、また逃げて行くパンダ。

「ま、待つのだ…」

 ちょうどそこへ、暁が駆けつけてきた。

「どっちに行ったの!」

 ラグナが指さした方向へ、彼の体を踏み越え走って行く。

「逃がさないよっ! 僕自身には特に恨みないけど近所の犬達の餌を奪ったのは許せん。お蔭でウチのハスキー君が思いっきりたかられて、すごい涙目になってたんだからね!」

 オリーブ油のついた足跡は市場の方で消えていた。
 彼女は注意深く、喧噪に含まれる音を聞き分け進んで行く。



 パンダを捜し棒倒しを繰り返していた水月は、いつの間に市場の通りに舞い込んでいた。

(さっき確かに狼煙銃が上がったの。集合急がないと)

 思いながら先を急いでいた鼻に芳しい香り。
 ふと顔を向ければホットドッグのスタンド。いい感じに焼けているソーセージ。

「美味しい匂いには逆らえないの…」

 食べながらでも探せるはず。
 自分に言いわけしながらスタンドへ立ち寄った水月は、ひとつ買い入れ口に運んだ。
 その途端崩れ落ちる。ソーセージの下に隠されていた大量の練りワサビによって。

「%ybkk(&)%k>!?」

 涙で曇る視界に、何食わぬ顔でいる白黒模様の塊が映った。

(ぬかったですの…仕込み系統の嫌がらせしてくるとは思わなかったですの!)

 『太陽針』を投げ付ける。
 相手が素早く逃げ出したのを察知し、探索結界を発動する。

「たとえ姿が見えなくても、その邪悪な気をごまかせるなんて思わないで……」




「音がしたのはこっちでしたでしょうか」

 人通りをかきわけながらサエは歩き回っている。ビクビクソワソワキョロキョロと挙動不審に。

(み、見えなまま近くに居る、なんてことはないですよね…)

 周囲を見回し続けていたら、妙な毛っぽい感触が尻に。

「ひゃうっ!? な、なにかお尻にさわっ…?」

 すわチカン。
 思ったらいきなりヘッドロックされた。
 首を上にねじ向ければ、まごうかたなきパンダ。
 その手にはどこからとってきたのか化粧道具が。

「やぁ〜〜〜っ! 顔に落書きしないでぇ!」

 バタバタ暴れる彼女の顔にしこたま塗りまくり、書きまくる。

「って、錫杖とらないでーーーっ!!」

 それから錫杖を投げる。犬のフンが落ちている上に。

「いやあああああ!」

 パンダは手を放した。悲鳴に臆したのではない。耳の後ろを虫にちくっと刺されたのだ。
 大きな手のひらでばちんと叩くと虫は、一筋の煙となって消滅した――式だったのだ。
 それを送ったのはふしぎである。

「そこかっ、極悪パンダ!」

 すぐさま現場に駆けつけ、泣き濡れるサエの姿を発見。

「も、…もぅ! いくら私でも許せない…ってゆーか、なんで私ばっかり…!」

 彼女の顔は見事なおてもやんになっていた。
 彼は悪いと知りながら、ついつい吹き出してしまう。

「ぷっ」

 待ち伏せして壁と一体化していた早矢もまた、同様の反応を示す。

「んぶっ」

 それほどおてもやんだったのだ、サエは。

「うぅ〜〜〜、篠崎先輩も天河先輩もなんで笑ってーって、みんなっ!?」

 そう、よく見たら皆もいた。
 理不尽さに泣きたくなるが、ぐっとこらえて袖で化粧を落とし、改めて元凶に敵意を向ける。
 符を取り出し、指に挟んで翻す。
 小さな式がわらわら湧き、パンダに取り付こうとする。
 パンダは跳ね上がり足を取られるのを避けた。
 ふしぎが墨汁入りの水袋を投げ付ける。
 白黒がたちまち黒黒に。

「お前には、その真っ黒な姿がお似合いなんだぞ!」

 透明化しても墨汁の色だけは消えない。
 早矢は砂袋をつけた矢を地面に向けて打ちまくった。
 弾けた砂を撒き散らしながらパンダはまたも逃走して行く。
 今度は姿と足跡が見えているので、追跡する側もやすやすと見失うことはない。
 ただやたら足が速いので、なかなか囲めない。

「往生際が悪いぞっ!」

 追いすがる暁は、手裏剣ばかりでなく、葡萄酒のビンも投げつけた。

「パンダさんの姿を騙ったことを全力で後悔させてやるのー!」

 水月は針だ。目印になるかと、それぞれに糸を結び付けている。
 そんなこんなで皆して公園へ乱入。
 葡萄酒の匂いをぷんぷんさせている不完全透明パンダは、草と草とを結んだ罠に足を突っ込んでこける。

「そっちだ!」

 追っ手の声に起き上がり走りだすと、今度は胴が輪になったロープに引っ掛かった。
 引きちぎって、また走る。
 罠を仕掛けた張本人の早矢は、敵が己の思惑どおり引っ掛かっていることに満足しつつ、音がする方へ矢を放つ。
 噴水近くでは、先日パンダに邪魔された編み物を老女が再び行っていた。
 そこにどすどすという足音と振動。
 顔を上げた老女は、次の瞬間頭から水を被る。
 噴水の水盤から、突如水柱が上がったのだ。

「あっ、あいつ墨を落としてる! どこまで往生際が悪いんですか!」

「その程度の小細工で僕らを誤魔化せると思わないことだねっ!」

 弓矢が飛んできて砂が舞い散る。魔槍砲が炸裂する。
 老女はハンカチで顔を拭い、座っていたベンチから立ち上がり、場を離れて行った。 賢明な判断だと言えよう。
 目下の状況を鑑み、ファムニスはこう判断を下す。

「やっぱり体の外に色や匂いをつけるのでは、不完全なのです…」

 のたまう彼女の手には、墨汁の一杯詰まった大型浣腸器――見た目だけでも相当危険な代物だ。
 ふしぎは恐る恐る聞いてみる。

「ファムニス君、そんなものどこから…?」

「ここに来る前に、一番上の姉さんの荷物から抜いてきました。これを使われたら、さすがに姉さんがかわいそうかなと思いましたので」

 もうそれ以上聞く気がしなくなったので、黙るふしぎ。

「性根にふさわしく、真っ黒にしてあげます! お腹を! 皆さん足止めそのままお願いします!」

 雄叫びを上げ少女は突撃して行った。
 飛沫が上がっている中に飛び込み、手探りで見えない相手にしがみつく。
 尻の穴を探り当てるが早いか、そこに浣腸器を突き刺し、一気に液を送り込んだ。
 零れ出ないよう墨汁入れの竹筒をねじ込む念の入れよう。
 かくして宙に浮かび上がる大腸の形。

「苦しいでしょう…私も経験あるから分かりますよ…ふふっ」

 嗜虐的にほほ笑んだファムニスはパンダの体を掴み、燃え盛る『ゴールデングローリー』をたたき込んだ。

「ファムニス炎情拳っ!」

 腸がよろめき噴水の中に倒れ、大きなしぶきを上げた。
 もうここから逃がすわけには行かない。
 ほかの開拓者も噴水へ飛び込んで行き、それぞれに止めを指す。

 ふしぎの『御雷』。

「これは子供達の分、そしてこれはお婆さんの分だ!」

 ラグナの『ラ・フレーメ』。

「すまないな、ぱんださん…だが、この世にお前の悪辣を野放しにしているわけにはいかぬ!」

 暁の『風也』。

「迷惑千万許すまじっ!」

 水月の『太陽針』。

「後悔するがいいのっ!」

 早矢の『十人張』

「これが嫌がらせの報いだっ!」

 遅れて間に合ったプレシアの『アラハバキ』。

「よぉぉぉし、ボクの式神ぃ〜! あんなアヤカシ、はもはもしちゃえぇぇぇぇっ!!」

 見習いの符で足止めしていたサエは、パンダの腸が弾け墨汁が飛び散るのを、瘴気が霧散して行くのを見た。

「…か、勝てた!  もぅ! イタズラされない私に絶対なるんだからっ」

 全員びしょ濡れだが、とにかく勝利。
 もうパンダがちくちく小出しな嫌がらせをしてくることはなくなったのだ。
 万感の思いを胸にファムニスは、青空を背景に浮かび上がる顔に報告する。

「姉さん…仇は取りました!」

 素晴らしきかなアヤカシ退治。思いつつ彼女は家に帰る。
 玄関を開ければ長姉が微笑んでいた。
 その手には荷物に入っていたものより大きい浣腸器が。
 この後ファムニスのお尻がどんな悲惨なことになったかは…当事者たちだけの秘密としておきたい。

「うさみたん…ぱんださんに悪いことをしてしまったお」

 ラグナはうさみたんを抱き締めしょんぼりしている。
 今回の依頼、彼にはちょっぴりつらいものだったようだ。





 ちなみにプレシアの鯛焼きの件。

 家に帰った彼女は、ちゃぶ台に置いてあった妹の書置きを読む。

『鯛焼きは、戸棚に入れといたよ』

 探してみれば、確かに目当てのものは戸棚の中。

「にゃ♪ ボクのたい焼きあった〜♪」

 かくして、遅ればせながらはもはも。
 ひとまずその件に関してだけは、パンダも無実だったのである。