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■オープニング本文 ※このシナリオは初夢シナリオです。オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。 『●△◇◎△』 某所でささやかな忘年会をしていた開拓者たちは、突然の珍入者にすっかり困り果てていた。 全く聞いたことがない言語、見た試しがない姿形。 背丈1メートル弱。大きな逆三角形をした顔にこれまた大きな、白目も睫もない真っ黒な目がくっついている。 鼻はぽちぽち開いた二つの小さな穴。口もこれまた小さくて、単に切れ目を入れたよう。 全身裸。すべすべぬるっとした灰色の皮膚をしている。 「…こいつはなんなんだ」 「アヤカシか?」 「それにしちゃ瘴気の気配がないぞ」 「新手の精霊じゃないか?」 議論しあっていたところ、また変なのが座敷に入ってきた。 やけに長く細い無数の足で直立歩行。 頭部は平べったいきのこのよう。 目はまん丸で、口は管状。 「おい、タコがなぜここに…」 『:***:****』 「何か喋りましたよ」 ひそひそやる開拓者たちにあまり注意を払わず、タコ(仮)は先にいた灰色の小人に話しかけた。 『*****』 『◎◎○△△』 どうやらお互い言葉が通じているようだ。 意味が分からないからほうっておこうか。 皆がそう思い始めたときである。またもう1匹乱入してきた。 エビと人間を組み合わせたような代物だ。 「フォフォフォ」 そいつは席につくやはさみ状の手でビールジョッキを取ろうとし、バリンと割ってしまった。 「フォー!」 はさみを持ち上げぐるぐる振り回しアワを吹くエビ人間。 ビールが飲めなかったことに対し、逆ギレしているらしい。 |
■参加者一覧
北条氏祗(ia0573)
27歳・男・志
ルオウ(ia2445)
14歳・男・サ
銀雨(ia2691)
20歳・女・泰
ルンルン・パムポップン(ib0234)
17歳・女・シ
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
ナキ=シャラーラ(ib7034)
10歳・女・吟
御影 紫苑(ib7984)
21歳・男・志
草薙 早矢(ic0072)
21歳・女・弓 |
■リプレイ本文 座敷で泡を噴くエビ。細い無数の足を動かしているタコ。なんかよくわからんつるぱげ小人。 「ああ? 何だこいつら?」 以上を確認したナキ=シャラーラ(ib7034)は、ぼきぼき折ったカニの足を齧りながら、リィムナ・ピサレット(ib5201)に聞いた。 「リィムナ、知ってるか?」 タコのぷよぷよ頭をつついていた彼女は、素直に首を振った。 「ううん、あたしは知らない。ナキちゃんは?」 「お前が知らねえのにあたしが知ってる訳ねーよ」 「そっかー。でもなんか、ひょうきんな格好してるし、面白いね♪ 瘴気も精霊力も感じないからケモノかな?」 御影 紫苑(ib7984)は酒をすすりながら、油断なく周囲の気配を探った。 取り敢えず感じられる限りでは、近くに3匹の仲間はいないようだ。 「…何者だ、こいつらは…?」 というかどうやって騒ぎを起こさずここまで入ってこられたのか。 北条氏祗(ia0573)にとってはそこが一番の疑問である。 いくらどの席も忘年会の真っ最中で、酔っ払うのに忙しいからといって、こんな面々をすらっと入れてしまうとは。 「面妖なアヤカシ? よな…」 警戒しながら様子をうかがう大人をよそに、ルオウ(ia2445)は早速接触を始めた。とりあえず自己紹介から。 「よっす! 俺はサムライのルオウってんだ、よろしくなー」 小人とタコは顔を見合わせ、何事か言い合い、握手に応じる。 小人の手はカエルの手のようにしっとりひんやりしていて、タコの手(足?)は意外と乾燥していた。 残るはエビだけだが、なんだか静かになったと思ったら座敷の隅で丸まっている。怒ったあげくいじけているらしい。 「よお、元気出せよ。ほらほら!」 そちらにも愛想よく手を差し出すルオウ。直後彼は、ハサミ型の手に握手を求めるのが間違いだったことを悟る。 「ぎぃいいやあああ!」 一連の展開を見て耳打ちしあうナキとリィムナ。 「知性は高そうだね♪」 「まあ敵って訳じゃなさそうだが」 闖入者に戸惑っていたルンルン・パムポップン(ib0234)も、未確認生命体が知的生命体であると判断。 ほろ酔い加減で気が大きくなっているという理由もあり、ルンルン忍法でのコミニュケーションに挑戦し始める。 「私にいい考えがあっちゃいます、すべての基本は挨拶だもの…馬ーウィップグラーキWiiビニ本! 消えて腰斬れ斬れ手!」 一体何を言わんとしているのか見当もつかない挨拶だったが、実際相手側にも意味が通じていなかったらしい。 変な沈黙が訪れた。 「あ、くそ。もう酒がねーや」 一切を気にせず呟くのは銀雨(ia2691)。丈夫な歯でするめを噛んでいる。 「ここ二年ほど、正月に芝居小屋で変身ヒーローものやらないんだよなあ。なんでかなあ、あれ」 傍らには飲み干された酒ビンがごろごろ。 明らかに彼女は一同の中で、最も飲んでいる。 「まつげがないようですが…ゴミとか虫とか入りませんか?」 篠崎早矢(ic0072)は黒目を見開いたままの小人をしげしげ見つめていた。 膠着状態を打開せんと、ナキたちが再度挑戦する。 「よし、歌おうナキちゃん! 言葉が伝わらずとも、友好の心は伝わるはずだよ!」 「おう、分かった! 皆、あたしの歌を聞けえ!」 ナキはマイクを取り出し、リィムナのオルガネット伴奏に乗せ、語りを始めた。 「今年の憂さは今年で忘れ、新たなる気持ちで新年を。歌は世につれ世は歌につれ、お聞きください。この静けき夜の日に――『恋の☆ふぉーちゅんくっきー』」 やたらポップで軽快な曲だった。 歌い終えてナキがペコリと頭を下げたところ、3匹が拍手らしきものをしてくる。 「おお、掴みはオッケーだったらしいぜリィムナ!」 「やったねナキちゃん! この感触いける、いけるよ!」 「ハサミマンはビール飲みてえ様だな。うし、あたしが飲ませてやるぜ!」 ビールを手にしたところでナキは、はたと動きを止めた。 「…そういやどんな味がすんだ?」 未知への好奇心のまま、一気にビールをあおる。 顔半分を泡だらけにしてジョッキを置いたときには、既に目が据わっていた。 「ぶっはー! こいつは最高だぜ! 大人はこんなうめえもんを子供に隠して飲んでやがったのか! 許せにぇえぜ!」 その合間にルンルンも、再度コンタクトを試みていた。なんとなくシンパシーを感じるエビ人間に。 (ニンジャの言葉は世界共通だもの…ルンルン忍法ニンジャ語なのです!) 側に近寄り五色のお米を取り出し、並べる。 加えて喉を手で叩きながら、米文字の内容を口にする。 「ワレワレハ、カイタクシャダ、ソシテワタシモニンジャ、ジョッキヲモテナイナイナラ、ストローデノメバイイトオモウノ」 紫苑が気を利かせ、ビールジョッキを差し出した。 「…そういえば、先程あなたこれ飲みたがってましたよね?」 そこにルンルンがストローを。 「ドウゾ」 暗号文がきいたのか語りかけがきいたのかジェスチャーがきいたのか不明だが、エビは彼女の言わんとするところを理解した。 「フォフォフォ」 ストローを咥える。吸い込む。そして盛大にむせる。 「ブフォフォフォ! ブフォッフォ!」 握手の痛みがようやく収まったルオウは、タコに視線を移した。 触手をさわさわさせ焼き鳥皿をいじっている。 「これ、食べてみたいのですかねぇ…」 またもや気を利かせた紫苑が皿を持ち上げよこすと、丸ごと体の下に入れ込んだ。 どうやらそこに口があるらしい。 ますますタコにしか見えなくなってきた。 「お、お前はなんか旨そう…じゃなかった、美味しそうだな! 蛸と親戚なのか?…食えんのかなあ。これ一体で一体いくつタコ焼きが…」 不穏な空気をまといながら話しかけるルオウから、タコがゆらゆら後ずさる。 氏祗は一番人間に近そうに見える小人に、ジェスチャーで会話を試みようとした。 そのときである。早矢がいきなりこう言い出した。 「へえーっ、グレイ殿とおっしゃるんですか、つぶらな瞳ですね。私なんてちょっと目が細くてかわいくないなーと思ってるのでうらやましいです」 「!? 早矢殿、今どうやってこの小人と会話を…」 「ああ、この方念話が使えるみたいですよ。グレイ殿、氏祗殿にもなにか語ってあげてください」 彼女が促した途端、氏祗の頭に声が響いてきた。 『ヘロー。アイムファイン。アンジユー?』 予想外な気さくさに戸惑う氏祗。 早矢はぐいぐい相手に話しかけている。 「それで、あのエビの方は…へえ、エビではなくて実はセミなんですか?…バルタ…謎のシノビですか。シノビ? セミ人間が人気がなかったから? 作り変えてリメイクしたら人気が…え、それはまた別の星の話? 星ってなんですか、そらの星ですか? 儀じゃなくて?」 グレイは小さな玉を出し、星空の映像を浮かび上がらせる。 「おお、すごい魔法ですね。はあ、これがセミエビ殿の星…え? 爆発して今は存在しない? それはお気の毒に」 ところでそのエビ、ちょっと目を離した隙にトラ化したナキから襲われていた。 「ひゃははは! 今飲ませてやるぜー!」 彼女は相手の口とおぼしきところに飲んだビールを吐き出し、一層むせさせている。 「やべ、唇奪われちまったぜ♪ あっちー! あたしの体…燃えちゃうじぇ!」 勢いで上から下まで全部脱ぐ。 「あっ! いけないよナキちゃん映倫に引っ掛かる!」 すかさずリィムナが焼き餅の海苔をはがして応急処置。 しかし胸だけで下を貼らなかったので、あんまり意味がなかったりした。 「あそれ♪ あそれ♪ えっさっさー♪」 盆を二つ手にし、始める裸踊り。 銀雨は膝を叩いて拍子を取る。 「おー、いいぞいいぞ! でも凹凸なさ過ぎて今一つ盛り上がらねーな…よし脱げ氏祗さん」 「断る」 「…俺の頼みじゃ脱げねえってのか、ああ? 上等じゃねえか!」 「止めろ服を引っ張るな! 拙者はやらん! 止めろ!」 「かまととぶんな脱げオラァアー!」 ルンルンはそれらについて、エビとタコに説明している。 「アレハエンカイゲイトイウ、カンゲイノギシキデス イッパンテキニオジサントヨバレルシュゾクガヤリマス。シンジントヨバレルシュゾクガスルコトモアリマス。ロジョウデヤッタラツカマルヨ」 「そうだ脱げおっさん、脱げー!」 「脱ーげ、脱ーげ、脱ーげ、脱ーげ!」 便乗したリィムナとナキにたかられ絶体絶命の氏祗。 同じ男であるルオウは加勢など全くせず、珍客の相手に努めていた。 意志疎通が可能そうだと分かった小人に、まず質問をぶつけてみる。 「んで、お前ら名前は?」 『ワタシグレイ。アチラカセイジン。アチラ◎◎◎◎セイジン』 「…なんでエビんとこだけはっきり言わねんだ?」 『オトナノジジョウ。アエテヨブナラウチュウニンジャトデモヨンデダサイ』 「ふうん。いったい何しにきたんだ?」 『ワタシカンコウ。カレラハ…』 そこに当のタコエビが近寄ってきた。 『***********』 「フォフォ。フォー。フォー」 何か言ったが相変わらず意味不明。 「アットイチマイ! アットイチマイ! ヌーゲ、ヌーゲ、ヌーゲ!」 「ルンルン殿までなんのつもりだ止めろ! 年頃の娘なら恥じらいってもんがあるだろう!」 裸踊りの騒ぎを背景にした紫苑は、解読をグレイに頼んだ。 「すみません、彼らの言ったことを訳してください」 『オマエノホシハオレノモノ。オレノホシモオレノモノ』 実に分かりやすい翻訳だ。 侍として男子として、このまま見過ごすわけには行かない。 ルオウが今、立ち上がる。 「よーしっ、そんなら俺と勝負だハサミマン! いくぜぃ! フォーフォーフォー! 乗っ取りなんざ俺に勝てなきゃ夢のまた夢なんだぜぃ!」 両手をチョキチョキさせながら挑むと、向こうも意味を解したらしい。同じくチョキチョキハサミを動かし、威嚇するザリガニみたいな姿勢を取ってくる。 「フォフォフォフォ!」 今ここに地球の命運をかけた戦いが始まった。 「種目? やっぱしあんまり野蛮なのはダメだよな。ここは知性的にいかねーと。だから…ジャンケンにしようぜ!」 「フォ!」 「もちろん俺はグーな! ずっとグー!」 ルオウにとって引き分けもしくは勝ちしかない試合が幕を開ける。 「じゃんけんほい! ほい! ほい!」 その間火星人がナキから攻撃を受けていた。 「あたしの酒が飲めないってのかーっ!」 銀雨は氏祗のふんどしを持って座敷を走り回っていた。 「返せ、それだけは返せえええ!」 「返さねーよひゃははは!」 早矢はグレイと異文化交流。 「…グレイ殿の弓はどういったもので? へえ、これが…火縄銃、ではないですね。変わった武器ですね。光線銃? え、チキュウのオクレタブンメイのデントウテキなブキにワレワレはカチをミイダシテイル…? はあ、交換ですか? いいでしょう、私の弓と交換です」 5分後。エビ忍者もついに何かがおかしいということに気づく。 ジャンケンを中断し、グレイに向けて言った。 「フォフォフォフォフォ?」 『◎』 「…フォーーー!」 グレイから戻ってきたのがどういう言葉だったにせよ、著しく己に不利な条件下の試合だったという点は理解したらしい。 1匹の大エビは、いきなり幾つもの小エビに分裂した。 それぞれハサミで障子を破ったり皿を叩いて割ったり転げ回ったり暴れまくる。 その狼藉をルンルンが阻止しようとした。 「やめるです! ルンルン忍法で時を止め返……そっ、そんな、分身がそれぞれ時間止めるなんてっ」 たじろぐ彼女の次に、酔っ払い銀雨が吠える。 「ルァッテメー! カタギに迷惑かけてんじゃねっぞコラー! やるなら表出ろッラー!」 言いながら彼女はホウキを使い、細かい忍者を次々庭に掃き出した。 「さあかかってきやがれ!」 腕まくりした銀雨を迎え撃つ小エビたちは再び合体し、唐突に巨大化する。 「フォーフォーフォー!」 キャー、ワー、とおびえ逃げ惑う町の人々。 銀雨はふっと笑み、謎の掛け声を唱えた。 「シュワッチ!」 なんということだろう、彼女までもが巨大化した。全身タイツ姿となって。 2匹の怪獣は市街地で殴り合う。 マッパで寝込んでしまったナキを除いた皆は目を見張り、その光景を眺めた。 「くらえ! スペなんとか光線!」 銀雨が膝をつき、腕を十文字に構える。 まばゆいばかりの光がエビに当たる。 「フォー!」 エビはこんがり焼き上がってしまった。 「あ、なんだかとてもいい匂い」 ルンルンの独り言が終わらぬうち、エビの背中がバリバリ割れた。 中から一回り縮んだエビが出て、羽根もないのに空へ飛びあがった。 「フォー!」 銀雨も負けじと飛び上がる。 「逃がすか! ジュワッ!」 両者は星となった。 どれだけ待ってみても帰ってきそうにない。 何事もなかったように、早矢がグレイと会話する。 「どうです、いい馬でしょう、夜空というんですよ。とても早く走れるうえに空だって飛べる…」 リィムナ、ルンルン、紫苑は火星人を口説いている。 「大丈夫、多分開拓者と一緒なら、新しい相棒だと思ってくれるから♪ 天儀の名所、案内してあげるからさ」 「ノットリヨリソッチノホウガタノシイヨ」 「そうですとも。何ならうちの屋敷に遊びに来ませんか? 色々と調査もとい歓迎致しますよ? 無理ですか…、残念ですねぇ…」 どこからか円盤が飛んできた。 円盤の真下から光が差してくる。 火星人とルンルンたちがその中に入ると、体がふわり浮き上がった。 リィムナの歓声が聞こえる。 「えっ、光より早く飛ぶから、アンドロメダまでひとっとび!? すごい! 帰ってきたら旅行記書こうっ!」 彼らを収容した円盤は一瞬強く発光したかと思いきや、あっと言う間に億光年の彼方へ飛んで行った。 続けてまた、変な形の浮遊体が出てくる。 両端が細まった円筒形。それはまるで…。 「…葉巻型? なんでタバコの姿にしたんです? え、交換ですか? まあいいですよ…夜空ー、この方たちの自宅までちゃんとお送りするんだぞー!」 灰色の小人は馬に乗り、これまた大気圏の向こうへ。 馬と交換した宇宙船を前に、早矢が「あっ」と声を上げる。 「しまった…操縦法聞いてなかった」 そこでようやくナキが、くしゃみをして目を覚ます。 「…ほへ? あたし何で裸なんだ?」 考えたけど分からなかったから、問題を放置し服を着る。 「まいっか。おい、今さー、変な奴らが乱入してきた夢見たぜ♪」 座布団で股間を押さえ隠す氏祗は、夜空を見上げて言った。 「この星の平和は保たれたということか…」 ルオウが拳をぐっと握りこむ。 「いや、これが最後の遭遇とはわからねえ…いずれ第2第3の奴等と遭遇することがあるかもしれない…」 … …… ……… 1月2日の朝。 銀雨はまだよく開かない目を天井に据え、一人ごちた。 「なんだこの初夢…」 しばしそのままでいてから、もいちど布団に潜りこむ。 「寝なおそ」 |