渓谷SOS
マスター名:KINUTA
シナリオ形態: ショート
危険
難易度: 普通
参加人数: 8人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/12/09 23:31



■オープニング本文



 皆さんお元気ですか。アヤカシの隙間女です。
 ジルベリア北部にあるアーバン渓谷に来ております。
 一面すっかり雪に覆われ、麓のスキー場開きももうすぐ。
 今年もここでたくさんの泡沫カップルが生じ、跡形もなく消えて行くことでしょう。



 それはともかく私、ちょっと困ったことになっております。

「…行けエマ!…私がこいつの相手をしている間に逃げろ…麓まで行ってくれ…」

 ほどなく出血多量で死ぬんじゃないかなって位にずたぼろな赤毛娘が、刃毀れしまくりな山刀をこちらに向けております。
 ただの刀です。精霊の力とかなんとか全然宿ってない、ただの作業用山刀です。

「いやだ、いやだ、私はあなたを置いて行かない、一緒に行くの、ミーシカ…!」

 もう一人の金髪娘が涙ながらに首を振り、足元ふらふらの彼女を支えております。
 こっちには傷とかほとんど無いですね。
 私がこの暗くて狭くて雰囲気のいい谷間の細道で彼女らに行き会ったのはただの偶然です。一期一会の精神でさよならするのがよいでしょう。
 どうせ向こうから触れないのだから無視して行くべきか。
 そう思ったときです。彼女らの背後、暗い木立の間からわらわら小鬼たちが出てきました。
 豚鼻で目が小さくてかわいい顔ですね。
 手に手に斧を握っており、口元が真っ赤です。ブキブキ言ってます。人を食べてきたようです。
 なるほど、これに追われていたんですか。私的にはこっちに突っ込んできてくれて全然大丈夫なんですけど。私は見えてるだけで実体ないんだし。大体人を食べるタイプのアヤカシではないし。
 …挟み撃ちになったとでも思ったのでしょう、すごくいい絶望感が2人から発散されています。
 ごちです。
 ごちになったお礼はしておきましょうかアヤカシ的に。







 ふう。特大ラップ音を出したのは久しぶりです。
 衝撃で雪崩が起き、道が全部埋まってしまいました。
 豚鼻さんたち揃って雪の下です。
 彼女たちも雪の下ですが、先に上に出てこられれば、逃げきる時間的余裕も作れるのではないでしょうか。
 多分。
 ついでだから2、3花火のラップ音も上げておきますかね。聞いてれば誰か来るでしょう。
 多分。
 …あ、また雪崩が起きた。


 とにかく先に行ってみます。廃墟となった村が見られるかも知れません。
 観光です、観光。




■参加者一覧
北条氏祗(ia0573
27歳・男・志
天河 ふしぎ(ia1037
17歳・男・シ
ルオウ(ia2445
14歳・男・サ
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
マルカ・アルフォレスタ(ib4596
15歳・女・騎
ファムニス・ピサレット(ib5896
10歳・女・巫
アルバルク(ib6635
38歳・男・砂
迅脚(ic0399
14歳・女・泰


■リプレイ本文


 アーバン渓谷。
 白銀に輝く峰峰、粉砂糖をかけたように見える針葉樹の森。
 アルバルク(ib6635)はストーブに当たりながら、そんな窓の景色を眺めていた。
 彼がいるのは麓の村の小荷物集配所。周囲では忙しげな仕分け作業が行われている。

「すいませーん、ザルツ村の分が終わりましたー」

「おー、ご苦労さん。次はスミ村の分頼むべ」

 年末近いこの季節、どこの市町村の集配所もこんなふうに沸き立っている。
 とはいえアルバルクは手伝いに来たのでない。立ち寄っただけ。忙しくて皆の注意が向かないのをいいことに、ストーブに当たっていこうと。
 そこに迅脚(ic0399)とルオウ(ia2445)が入ってくる。

「おお、お嬢に坊主。年末バイトか?」

「はい、歳末は忙しいですからね」

「依頼の合間の骨休めってとこだな――おっさんは?」

「ああ、俺はな――」

 ドン

 前触れなく空気が炸裂した。
 ガラス窓が悲鳴を上げ、壁と床が揺れる。積まれていた荷が崩れる。
 迅脚が目を白黒させる。

「な、なんですか今の音!」

 彼女を含め皆が外に出る。
 ご、ご、ごとくぐもった音がしてきた。

「なんだあ!? 地震?」

 それも終わらぬうち今度は、どぱあん、どぱあんと花火が上がる――音だけだ。空には煙一つ上がっていない。
 その後また振動。

「あいや、何事だんべ」

「まあた変なものが落ちて来たじゃあんめえな」

 地元民の声を耳に、健脚は青い尾根を指す。

「あっちじゃなかったですか?」

 アルバルクは目をこらし、彼方を眺める。

「多分な。あそこだけ、雪が滑り落ちちまってる」

 どうやら雪崩が起きたもようだと睨んだ彼は、職員に声をかけた。

「おい、向こうに集落とかあったかね」

「おお、あんべ。ヤーチつう炭焼きの村がよ。はあ、えらいこんた。見に行かねばなんね」

 ルオウはいち早く雪駄を取り出し、足につけ始めた。
 雪崩が起きたとなると道は塞がっているだろう。乗り物は使えまい。

「しかしなんだ、どっかで聞いた音だったかもしれねえな…」



 御伽噺のような木造建築が並ぶ村を、まるごとねずみの着ぐるみを着た少女と、コートを着た少女が歩いている。
 当地への旅行の下見に来ているファムニス・ピサレット(ib5896)とマルカ・アルフォレスタ(ib4596)だ。

「へえ、マルカさんもスキー旅行される予定なんですか」

「ええ、今度お友達の方と一緒に…ファムニス様はどなたとですか?」

「えーとですね、憧れの人と言いますか…えへへ。小さいからミニマウスだね、ってあの人が…ふふっ、一緒にスキーして…転んだ私を優しく抱き抱えてコテージまで運んでくれて…キスしてくれて…服を一枚一枚…きゃー! どうしようっ!」

 歩きながら話していた彼女らは、土産物屋の前で足を止めた。知り合いの顔を見かけたので。

「あら、透子様ではありませんの」

 店頭販売されている『アーバン渓谷:空から落ちて来た物体Xクッキー』の箱を興味深げに眺めていた鈴木 透子(ia5664)は、体を反転させる。

「あ、マルカさん、ファムニスさん。これは奇遇――」

 その瞬間、地をも震わすほどの轟音が響き渡った。

 ドン 

 通りを歩いていた人々が立ち止まり、どよめく。
 マルカはつーんと鳴る耳を押さえ、目をしばたたかせる。

「まさか、今の音…」

 隙間女という単語は彼女の口の中だけに止まった。
 ご。ご。ご。という鈍い振動。
 続けて大きな花火の音が轟きわたって来る。



 炸裂音の後に響く気味悪い地鳴り。

「!?」

 渓谷の村に荷物を配送して回っていた天河 ふしぎ(ia1037)は足を止めた。
 取るものとりあえず音がした方に向かう。時間を短縮するため道なき道、傾斜のきつい木立の間を跳ぶように上って行く。
 ほどなく現場に着いた。

「これは酷い…」

 貧弱な細道がここにあったはずだが、上から滑り落ちてきた雪で完全に埋没してしまっている。
 崩落に飲まれ折れ落ちてきた木も、幾つか見受けられた。

(ひょっとして、雪崩に巻き込まれた人が居るかも…)

 急いで五感を研ぎ澄まし、生物がいないか探る。
 悪い予感を裏付けるかのように、ざっと9ほどの気配が感じられた。

「確かに雪の下に反応が…助けなくちゃ!」

 下手をすると身動きが取れなくなりそうな雪の上、反応がある方向に向け、ふしぎは足を進める。範囲が広いので1人では手に余りそうだが、やるしかない。
 覚悟を決めたところ、視界の隅で雪がもこもこ動くのが見えた。
 続けてずぼっと斧を持った短い手が突き出、ふごふご鳴く豚面。
 全身抜けだし雪をぶるぶるっと払った小鬼は、ふしぎの姿を見るや、猛然と襲いかかってきた。

「ブギィ!」

「君らには用はない!」

 『御雷』が、斧の一撃を受け止め弾き飛ばす。
 軽く吹き飛ばされた小鬼が雪の上を転がり、体勢を立て直そうとし――消し炭になった。
 背後から透子の火炎獣が襲いかかったのだ。
 彼女の後ろからスコップを持った男たちと、それを護衛する開拓者たちが上ってくるのが見えた。
 人手は十分足りるようだと考え、ふしぎは胸を撫で下ろす。
 小鬼は消えたが、手にしていた斧だけは残った。どうやらこれは彼らが人間のところから盗むなりなんなりしてきたものらしい。
 透子はそれを見下ろし、血がこびり付いているのを確認した。
 色の鮮明さからするに、ことが起きてからそう時間は経っていない。
 アルバルクが脇から顔を出す。

「どう見る。お嬢ちゃん」

「人を襲っていたんだと思います。」

 ルオウは憮然とし、頭を掻いた。

「俺たちアヤカシを掘り出しに来たつうことになるわけか?」

 こんなに急いできたのに、埋まっているのはアヤカシ。迅脚も釈然としないものを感じる。不審そうに周囲を見回す。

「鬼が埋まってるんですか?」

 とはいえ人を襲う奴らなら危険なので、掘り出してでも駆除しておかねばならない。道々聞いた話によればこの先に集落があるそうだ。そこにいる人々の安否が、マルカは気掛かりである。

「血が付いていたとなると、誰か襲われたかも知れませんわ。ここが片付いたら、上に行ってみましょう」

 とはいえ掘り出す手間はいらなさそうだった。小鬼は次々自力で這い出してくる。

「あ、そこの雪から何か出てきた…」

 迅脚がやる気満満で近づいて来るのを見るや、さっと頭を引っ込める。
 蹴りは空振りに終わる。
 ブキキキキという笑い声を響かせ、小鬼は雪の上に出てきた。
 足の潜るような新雪の中追い回しても分が悪そうなので、彼女は待ち受け戦法を取り、ゆらゆらと体全体をしならせる。鎌首を持ち上げる蛇のように。

「雪が深くて蹴りが出しにくい…ならばこうするまでです! んん〜〜〜〜!!」

 手の平から光が生まれ、渦巻き、大きく膨らんだ。

「気功掌!!」

 掌は小鬼の腹に命中した。革鎧を突き抜けた光は背中側に抜ける。小鬼は叫び声を上げ、瘴気となって飛び散った。斧だけを残して。

「蹴りとちがって、やりにくいですね!!」

 見た限り小鬼は小回りがきく。が、力はさほどでないらしい。

(これなら始末もすぐつけられそうですね)

 里人たちの警護に回るマルカは、視界の端に光るものを見つけた。
 足で探ってみれば刃毀れしている山刀。握り手にべったり血が付いている。
 彼女は無言でそれを取り上げ、ふしぎに尋ねた。

「…ふしぎ様、アヤカシは後何匹いますか?」

「ええと、そうですね、後…7匹だと思います」

 ファムニスが怪訝な顔をし、異論を唱えた。

「えっ。後5匹ではないんですか?」

 開拓者たちは数が食い違う理由について考える。
 心眼が察知するのはアヤカシ含む生物全般。瘴索結界に引っ掛かるのはアヤカシのみ。ということは、余った2は。

「やべえじゃねえかおい!」

 ルオウは里人たちからスコップを借り、大急ぎで掘り出しにかかった。

「いや、ほんとに丁度よく開拓者がいて、ラッキーだったな」

 アルバルクもスコップを動かす。透子は大声を上げる。

「助けにきましたー! 音をたてて!」

 呼びかけながら必死に耳をすませるところ、雪をかき分け小鬼が出てきた。

「邪魔。」

 小鬼はその一言の元、蛇の式に食われる。

「おーい、生きてるのか死んでるのか答えろー!」

 無茶を言うルオウの手が止まる。
 雪の下から突き出た短い手が、スコップをつかんだのだ。
 その後豚の顔が出てくる。
 すかさず脳天を素手で殴りつける。

「お前は探してねーよ!」

 めげない小鬼は素早い動きで飛び出し、ルオウに切りかかってきた。
 そして今度は『稲見星』で頭をへこまされ、止めをさされた。

「返事してくださいませー!」

 マルカも呼びかける。
 背後の雪がもそもそ動いて、また小鬼が。

「…あなたがたは呼んでおりませんわよ?」

 『オーガスレイヤー』は小鬼が受けるには、荷が重すぎる逸品である。
 頭から股にかけざっくり二等分された小鬼は煙を上げて霧散。
 そこでようやく小さな声が聞こえてきた。

「…たすけて…」

 今度こそ間違いなく人の声。
 皆は一丸となって返事が聞こえたとおぼしきところを掘りまくる。
 ほどなくして赤い髪が見えてきた。

「大丈夫か!?」

 さらに掘ると、ずたずたに切られた少女の背が見えてきた。
 しかし声を出していたのは彼女ではない。その体の下から顔を出した金髪の少女だ。
 がちがち震えながら泣いている。

「助けて…助けて…ミーシカが…ミーシカが死んじゃう…」

 ふしぎはとりあえず、赤毛の少女を引っ張り出した。

「わぁ、酷い怪我…もう大丈夫だよ」

 続けて金髪の子を助け起こす。こちら、外傷はほとんどないようだ。
 どちらも雪の中に閉じ込められていたせいで、体が冷えきっている。
 取り急ぎふしぎは保天衣をかけた。

「これで少しは楽になると思うけど…誰か、治療を」

 それに応じてファムニスが、双方に治癒をかけた。
 赤毛娘の傷口がふさがるのを確認してから、マルカは、気付けのヴォトカを飲ませる。

「さぁ、これを。強いので少しだけですわよ」

 その間に透子は持ち込んできていた松明を組んで火をつけ、即席のたき火とした。毛布を2人にかけ、エマに甘酒を飲ませる。クッキーも手渡す。

「食べられるようなら、食べてくださいね。」

 ファムニスもチョコレートを渡す。

「あ、よかったらこれも…とにかく、一体何があったんですか?」

 聞いていたところで残りの小鬼2匹が、雪中から自力で飛び出してくる。

「きゃああっ!」

 脅えたエマは身を縮めるが、決着はすぐついた。

「静かにしててくれ。大事な話の最中だからな」

 アルバルクの『アル=カマル』が、剛毛の生えた喉笛を切り裂く。

「もう他にはいませんね?」

 残り1匹はふしぎが一刀の元に切り捨てた。
 ミーシカが小さく呻き、薄目を開けてくる。



 ミーシカたちを救い出した勢いのまま、急遽山道を駆け登ってきた開拓者たちは、とりあえず村人たちがまだ生き残っていることを知った。

「ブギッ!」

「ブギイイイ!」

 小鬼たちは斧を振るい、人々が立てこもる石作りの倉庫を襲っていた。
 村人たちもただ黙って閉じこもっているわけではない。果敢に応戦している。小窓から弓を放ちアヤカシの顔に当て、侵入してこようとする輩を干草用のフォークで突いて押し返している。
 数はおおよそ10匹程度。倉庫周辺のほかに気配はない。
 偵察情報を仲間に伝えたふしぎに、迅脚が聞いた。

「ところで倉庫の屋根に座っているアレはどうしましょうか。多分ミーシカさんたちが言っていたアヤカシだと思うのですが」

 ルオウが言う。

「スルーしとけよ」

「襲ってきません?」

 この問いにはアルバルクとマルカが応じる。

「それなら問題ないぜ。やっこさん人間は食わねえから」

「ですね。しかし、やはり隙間女様でしたか…」

 ファムニスがうんうん頷く。

「ピンク頭の猫おじさんも、そんなようなことを言ってました」

 話がまとまったところで、ふしぎが物陰から打って出た。

「これ以上、好き勝手はさせないんだからなっ!」

 小鬼たちは彼の怒号に意識を向ける。

「まず1!」

 仲間が肩口から切り捨てられたのを目に、優先すべきは餌よりこちらとすぐ理解したようだ。子鬼たちはきいきい声を上げ方向転換、斧を振り回し襲ってくる。
 ルオウは倉庫側へ向かった。『稲見星』の分銅を頭上で振り回し、小鬼の後頭部を狙って当てる。離れて行った小鬼がまた近づいてこないよう脅しかける。

「おらおら、脳天砕かれたくなかったら離れろ、もっと!」

 ファムニスも浄化の炎で牽制しつ、倉庫の中へ話しかける。

「救援です! もう大丈夫です! 負傷者がおられるなら後で治療致しますので!」

 侵入を図った1匹が、迅脚の飛び蹴りを食らった。
 相手を4メートルほど吹っ飛ばした彼女は、雪の踏み固められた地面をとんとんと踏み、満足げに言う。

「これなら、蹴りも運足も使える!」

 改めて向かってきた小鬼に、技を繰り出す。

「アーーチャァ! ホアタア!! そこっ! セェイ!!」

 つま先が突き抜けそうなほどの蹴りを受け小鬼が消滅する間に、アルバルクもまた1匹相手にしていた。
 斧を鉄の手袋で受け流しつつ、間合いの内側に誘い込む。

「よいしょお! せめてもう後10センチくらい背が伸びてから、出直すんだな!」

 相手の頭を脇に挟み込み、革鎧の継ぎ目、首後ろに『アル=カマル』の刃を入れる。
 形勢不利を悟った小鬼たちは浮足立ち始める。
 1匹が背を向けると、ほかのも次々その真似をし背を向ける。しかし今更逃れられるわけがなかった。

「誰も返しませんよ!」

 透子は蛇を逃走して行く彼らの行く手に現出させた。
 マルカが重い太刀を振りかざしたたき伏せる。
 ファムニスが『ローズウィップ』を足に巻き付け、転ばせる…



「もう残党はいないようですね」

「だな」

 境の隅々まで回り、もうアヤカシがどこにもいないと確認したふしぎとルオウが、村の中に戻ってきた。
 透子とファムニスにより、犠牲者の弔いが行われているところだ。
 食われたのは2人。小鬼が隅々まで引き裂き貪っていったため、遺体はほとんど残っていなかった。
 これを少ないと取るか多いと取るか。

「少なくとも村人にとっちゃ、軽微とは思えねえだろうな」

 一人ごつアルバルクは、仕事を終えての一服をくゆらせる。
 村での掃討が終わるまで麓に預けられていたミーシカとエマも戻ってきて、弔いに参加していた。ぴったりと寄り添って。

(オシドリみてぇだな…いや、つっても娘っ子同士だったか)

 迅脚とマルカの姿もそこにある。

「結局なんだったんですかね隙間女って。いつのまにか消えちゃいましたけど」

「さあ…何しろ気まぐれなお方ですから」

 ざわざわ人の声がし始めた。連絡を受けた麓の役場から、調査隊がやってきたのだ。
 アルバルクはタバコをもみ消し、立ち上がる。
 これから彼らに一通り説明するという仕事を、こなさなくてはならないようだ。