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■オープニング本文 皆さんおはこんばんちは。アヤカシの隙間女です。最近色々色々あって苦心惨憺の末、やっとジルベリアに帰ってきたところです。 知り合いが暗き森の混沌から物見遊山に這い出てきたので、その仕事の見学をするついで、発生する負の感情をおいしくいただく所存です。 私の知り合いはどんなアヤカシかというご質問ですか? そうですねえ、「悪夢」とでも申しましょうか。 実際私、悪夢さんと呼んでますし。 私以上に実体のない方です。人には触ることはおろか見ることすら出来ません。存在すら察知出来ないことでしょう。少なくとも、その中に取り込まれているとき以外は。 ● なんでしょう、ジェレゾの町に巨人型アヤカシがうようよ侵入してきて、人間を追いかけ手足を引き千切り貪り食っています。 ここにおいて人間はやられっぱなしです。開拓者であっても。だって斬ろうが突こうが式に食わせようが石火矢でぶっとばそうが、早い話どんな武器で攻撃しても、敵は何食わぬ顔で即再生するんですから。 ご都合主義きわまれり。でも当然ですね、だってここは夢の中。見せる側のやりたい放題なんです。 とはいえ悪夢さんの悪夢は本格的なので、誰もこれが夢だとは分かりません。全員がこの状態を自明のものとして受け止めています。 攻撃を受ければ現実通り痛いし苦しい。死ぬときの気分は最悪です。しかも醒めてからいやーな余韻が半日ほど続くという念の入れよう。 いい仕事してますね悪夢さん。 悪夢さん? おや、あそこにゲスト出演してらっしゃる。ちょう大きい巨人ですね。60メートルくらいあるんじゃないですかね。人が虫けらのように足の裏で潰されていきますね。 すでに皆さん心が折れそうな状態ですが、はてさてどうなることやら。 ● ベテランである古参兵は巨人の胃袋に消えた。指揮官であるエリカもロータスもファティマも死んだ。 巨人は次々破壊された城壁の穴を通り、外から街の中に侵入している。 その数がどれほどになるのか勘定出来ないし仮にしたところでより一層の絶望にかられるだけだ。 首都防衛のため急遽かり出された新兵たちは、我先にと戦線を放棄し始めている。 「うわあああ! もういやっす!」 「待ちいやアガサ、どこに行くねん!」 「こんなことしてたってあたしたち死ぬだけっす、アリス! 逃げるんすよ!」 「逃げるて…無責任やろ!」 「無責任? 何がすか! ここにいて戦ったってどの道何の役にも立たないっすよ! たったこんだけの人数であの数の巨人止められるわけないっす! 銃も大砲も陰陽術も魔法も一切合財きかないじゃないっすか! 食われ損っす! あたしたちは負けたんすよ、アリス! 素直に認めて…」 両手を忙しなく動かし言い募っていた学徒兵アガサは、ふいに口を開けたまま沈黙した。紙みたいに真っ白な顔色となって。彼女の視線をたどって振り向いた学徒兵アリスもまた、全く同じように血の気を引かせる。 「うそや…あの城壁50メートルあんねんで…なんで頭出せてんねんあの巨人…」 |
■参加者一覧
羅喉丸(ia0347)
22歳・男・泰
北条氏祗(ia0573)
27歳・男・志
鈴木 透子(ia5664)
13歳・女・陰
エルディン・バウアー(ib0066)
28歳・男・魔
トゥルエノ・ラシーロ(ib0425)
20歳・女・サ
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
ベルナデット東條(ib5223)
16歳・女・志
キアラ(ib6609)
21歳・女・ジ |
■リプレイ本文 羅喉丸(ia0347)は『火尖鎗』で迫り来る巨人の目を貫いた。 槍で刺した目は煙を上げ即座に再生していく。 「クッ!」 持ち上がる右手が足がかりを粉砕する前に、隣の屋根に飛び移る。 追いかけようと方向を変える巨人が急に地響きを上げ、倒れた。 小柄な人影が『墨風』を使ったワイヤー移動を経て、羅喉丸の隣に着地する――白い翼のエンブレムが入ったマント――精鋭部隊「光翼天舞」隊長、リィムナ・ピサレット(ib5201)だ。 彼らは片時も休まず動く。捕まらぬように。 巨人たちを引き離したところで後方に首を曲げた羅喉丸は、リィムナの攻撃にやられた個体が、再度立ち上がろうとしているのを確認した。 「不死身か奴ら。状況は不利、まるで悪夢のようだな」 一際高い塔に上り、ジェレゾ全体の様子を確かめる。 大小無数の巨人が市街地を闊歩し手当たり次第人を食っている。民間人の盾となるべき防衛軍は壊滅に近い状態。 「いや、不死身のアヤカシなど存在しない。きっと何かタネがあるはずだよ」 リィムナは再び移動しようとし、急いで動きを止めた。 遠くにある城壁から蒸気とともに、頭が出てきたのだ。 ● アガサは今度こそ全力での逃亡を図った。 アリスはタックルをかけ阻止した。 「待ちいて言うとるやろ!」 「ええい、離すっす! エリカ先輩は食われロータス先輩は掴み潰されファティマ先輩に至っては飛び蹴りで昇天、そんで止めはあの超大型っすよ!? あたしは現実ってやつを知ってるっす! あんなでっかいのに勝てるわけないっす!」 近くにいた鈴木 透子(ia5664)は彼女の台詞に、知り合いであるファティマの死に様を今一度思い出す。 (いい男だの好かん奴だの、巨人相手に最後まで軽口を叩いていたっけ…) 胸の痛みを覚えながら、アガサを励ます。 「しっかりしてくださいアガサさん! トゥルエノさんを見るんですよ! こんな目に遭っても心は気高いサムライのままじゃないですか!」 透子がそう言った途端トゥルエノ・ラシーロ(ib0425)が、ぐああと呻いてしゃがみこむ。 「あの…みんな…! お腹痛くなったんで負傷兵扱いにして貰っていいかしら…!?」 アガサは一層力を入れ暴れだした。 「離せえええ! 死に方くらい選ばせるっすう!」 「今のは冗談ですよ冗談! そうですよねトゥルエノさん!」 紛糾する場へキアラ(ib6609)が歩み寄ってくる。 浮足立っている人々を前に『終華』を掲げ、注意を集める。 「あたしは開拓者のキアラ…特技は肉を削る事…巨人を叩きます、一人でも」 ベルナデット東條(ib5223)が、息を切らせて戻ってきた。 血のついた『秋水清光』を下げ超大型を見上げ、桁違いな大きさにため息をつく。 「驚きを通り越してもはや呆れる…しかし、やるしかないな」 アガサを筆頭とした戦意喪失組が悲鳴を上げた。 「冗談じゃないっすよ、火薬も弾も尽きかけてるのにこの上何をやれっていうっすか!」 キアラは冷ややかに返す。 「あなた達は臆病で腰抜けばかり…とても残念」 にべもない台詞にフォローを入れるつもりか、エルディン・バウアー(ib0066)が微笑み、付け足した。 「…生き残るには戦わなければなりません。世界は残酷ですから」 彼は『ド・マリニー』の針の動きを注意深く見守る。 先程から幾度となく通常巨人を相手してきたのだが、どれもこれも攻撃を受けた際、瘴気の動きがほとんど見られなかった。いかにも不自然である。 あの巨人たちはいわば手足のようなもの。核は別の場所にいるということなのか。 そう考えていた矢先の異質巨人出現とあれば、注目せざるを得ない。 (もしやあれが、「それ」なのか) 確証の持てない推測だが、命を賭け試してみる価値は十分ありそうだ。 思っている所に急遽帰還してきたリィムナの声が聞こえてきた。 「私は光翼天舞隊長リィムナピサレット!」 彼女は屋根から跳び、石畳、土のう、壊された家屋の廃材などで急ごしらえされたバリケードに降り立つ。 「兵士諸君、君達の奮闘が敵の本体を引き摺り出したのだ! その本体とは…あの超大型だ!」 回復能力を司る個体がいるとすれば、攻撃による事故死を防ぐ為最も堅牢な形を取るはず。目下その条件にかなうものと言えばあの超大型以外にはあり得ない。 一か八かの望みをかけ彼女は、叱咤激励を続ける。 「無駄死にした者など一人もいない。皆よく耐えてくれた。今こそ反撃の嚆矢を放つ時だ! あの超大型へ、残された精鋭の戦力全てを集中する。一般兵の諸君らにはその妨げにならぬよう、他の巨人共を引き付けるという任を負ってもらいたい! この作戦さえ成功すれば、人類は巨人からジェレゾを奪い返せるのだ!」 本当にそうなるかどうかは不明。単なる皮算用の可能性大。だが他に思いつける手もない。 超大型巨人に打撃を与えられればアヤカシが撤退するかも知れない。撃破が無理だったとしても、他の者が撤退できるだけの時間を稼げるかもしれない。 一縷の望みをかけ、羅喉丸も呼びかけた。頭から熱気避けの水を被りながら。 「巨人どもを倒す必要はない! ただ俺たちが動く少しの間、引き付けておいてくれさえすればいい!」 「いやだからあ、引き付けてる間にあたしら死ぬっすよ…」 愚痴るアガサを、北条氏祗(ia0573)が諭す。 「相手が強大な事は承知しているが、武士故に闘わず退く訳には行かぬだろう」 「あたし武士じゃないんすけど」 もっともな答えだったが彼は歯牙にも欠けず本営から出て行く。今まさに食われて行く人間を一人でも助けんと。 見送ったトゥルエノは改めてアガサの両肩に手を置き、目と目を合わせる。 「アガサ、怖いなら逃げればいい。貴女の仲間や舎弟達を同じ目に遭わせたいのなら。それが出来ないのなら…私達は余所で死ぬ訳にはいかない…どうか、どうかジェレゾで死んで頂戴!」 ようやく覚悟を決めたのかアガサは、やけくそ交じりに叫んだ。 「分かったっすよ! でも勝利出来なかったらどうなるんすかね!」 キアラはその脇を通り過ぎざま、こう言い捨てた。口ほどには冷淡でない表情をして。 「できなければ死ぬだけです。でも…勝てば生きる」 ● 超大型の居場所は確定出来ても、近づくまでが容易でない。巨人はあちこちにいるし、なお増え続けている。壁に空いた大穴から続々侵入してきている。たださえ頭数が減らないのに。 大きさは3メートルから15メートルくらいまでとまちまちであり、たとえ高所を伝っていても、陰に隠れている分を見落とす可能性が大いにある。 それを避けるため透子は式で作った鳥を前方に飛ばし、死角を作らぬよう心掛けた。 精鋭班は一丸となり、壁までの強行突破を狙う。 「作戦の成否は、『いかに巨人と戦わないか』に懸かっていると思います。」 彼女の言い分は正しい。だがそうは言っても巨人共は、人間と見れば反応してくる。ぶざまな走り方で体ごとぶつかってきて建物にめり込み足場を崩してくる。 キアラがまず班から外れた。 「必ず追い付きますから先へ」 言って彼女は、羽が生えたように軽い所作で宙を舞う。 (人類の為に…私にできる事、それは…全ての巨人を魅了する!) 『銀鱗裂牙』が宙を切り、『終華』がきらめく。 蠱惑的に舞う踊り子の足元にあるのは醜い巨人の顔。顔。顔。 死のすれすれを彼女は蝶のようにかすめていく。 それを見てベルナデットが、地上に飛び降りる。 「私も囮になろう。皆、先に行ってくれ」 着地した彼女はキアラに注意が向いていた巨人の足を、『秋水清光』でそいだ。 「これ以上好き勝手はさせん、木偶人形…」 ズシッと膝をついた巨人はベルナデットに注意を向けた。もともと歪んでいる顔を更に歪め、手を伸ばしてくる。 彼女は焙烙玉を投げ付けた。爆発が起き、振動が生まれる。物音に反応したか、近隣にいた巨人たちまでもゆらゆら寄ってきた。 「どうした…? 片目が見えない隻眼の小人に惑わされるか? 木偶人形」 嘲弄を続けながら壁の反対側に走る。増加してくる巨人を少しでも仲間たちから遠ざけようと。 (それにしても、外には一体何匹控えているのだ…これでは穴を塞がない限りキリがないぞ!) 素早く目を走らせた彼女は、はたと違和感を覚えた。 壁の外に巨人の気配を感じないのだ。一切。続々入り込んできているのが見えているにもかかわらず。 (気配を殺しているということなのか…? い、いや…ちょっと待て…そもそもジェレゾにこれ程の規模の城壁、存在していたか…?) 迷いの後叫ぶ。頭上に向けて。 「キアラ殿、キアラ殿−!」 ● 防衛軍を盾にする形で民間人が避難している。 彼らが目指しているのは城壁の反対側にある門だ。人間が大勢集まっている故か、巨人もうようよたかってくる。 そうする必要性もないというものだが、氏祗はいちいち名乗りを挙げて戦っていた。 「やぁやぁ我こそは北条氏祗! 天儀の国、伊豆に生まれしもののふなり!」 砲撃が当たらなかった分を『ズル・ハヤト』と『朝日丸』で切って切って切りまくる。あまりそうしたので刃がなまくらになってきた。徐々に腕すら上げていられないようになっていく。 多勢に無勢。こちらはダメージが蓄積されていくのに、向こうはそうでない。 「えっ!? ちょっと何やってるっすか!?」 「まだ人がおるんやで!?」 アガサたちの絶叫と轟音に振り向くと、城門がまさに今閉じられたところだった。 壁の一隅に追い詰められた人々目がけて殺到する巨人たち。 深呼吸して氏祗は前進した。 「武士道とは、死ぬることと見つけたり!」 切り裂いた喉から迸り出る血。 それを浴びた大きな手が彼を捕らえて引きちぎる。 続けて最後の部隊に襲いかかる。 「や…やぁだああああ!」 「やめてえええ!」 ● エルディンはひっきりなし加護を唱えている。 「神よ、全ての聖霊を統べる我らが主よ。人類に勝利を与えたまえ」 リィムナは大口を開けてくる巨人の目に『鑽針釘』を投げ付けた。 巨人は声を上げ、目を押さえる。 頭部を踏み越え彼女は、弾丸のような早さで移動して行く。 引き続いたトゥルエノが『リベレイターソード』で、その首後ろ目がけて切りつけた。 血が吹きうなじの肉が切れ飛び、頭部が地響きを上げ落ちる。しかし体は倒れない。無くした頭部は再生して行く。 式が蠢く手に挟まれ潰された。 一瞬足を止めた透子に向け巨人が伸び上がってくる。 羅喉丸は咄嗟に彼女を小脇に抱え、跳んだ。足元に生まれた白壁を踏み、走る。 「すいません、お世話かけてしまいまして!」 「気にするな! お互い様だ!」 城壁はもうすぐそこだ。 先ほど離脱したラキアが追いついてきた。 「皆さん、ベルナデットさんからの伝言を――別の世界にあたしたちが取り込まれている可能性が――」 台詞が途切れた。 屋根を越え天高く飛ばされるベルナデットの姿が、彼女の目に映る。 ● 吹き飛ばされたと思った時には、はるか高みの空の上。 急転直下引きずり下ろされ、壊れた家屋を突き抜け地に叩きつけられる。 五感が急速に失われて行く中ベルナデットの脳裏に浮かぶのは仲間の顔、義兄――そして大切な義姉の顔。 口から血の混じった泡と呟きが漏れた。 「ほと…お義姉…ちゃ…、ご…め…、もう…」 涙の滲んだ瞳から光が消える。 ● 「――悪夢か、夢ならばいつか覚めるはずだ」 羅喉丸は大型巨人の足に挑む。 高温に耐えながら『火焔槍』を剥き出しの爪の間へ差し込み、火焔を噴出させる。 城壁が崩され登攀が無理と判断したエルディンも、地上からアキレス腱を狙う。氷の刃が目標に突き刺さり、破砕した。 「おろかな巨人め。私に視認されたら、放たれた刃からは逃げる術なんてないのですから」 でろりと生黒い液体が漏れてくる。 その時点で、確かにこの巨人が他の巨人と違うということがはっきりした。回復速度が遅いのだ。 続けて『片鎌槍』で踵を突こうとした途端激しく蒸気が吹き出された。遠ざけようという意志がはっきり見られる行動だ。 トゥルエノの双眸に暗い影が差す。 「なるほど。あなたは本体だから、他のと違ってダメージを食うわけね…私たちの仲間を色々なやり方で殺していたけど、楽しかった?…出来るだけ苦しんで死ぬように努力してあげるわ…!」 彼女は蒸気の当たらぬ位置から『リベレイターソード』で地をえぐり、衝撃波とひっくるめてぶち当てる。 「たまらず抜きにくるかもしれません!」 透子は手持ちの武器――『姫切』から『サバイバルナイフ』から『四神剣』からとにかくあるもの全てを羅喉丸に投げ渡した。蒸気に阻まれて見えにくいが、確実に全て刺さってしまったらしい。超大型巨人は身をかがめ雄叫びを発する。 巨人が一斉に全方向から集まってきた。 トゥルエノが舌打ちする。 「…あなた、今何かしたわね」 超大型の巨大で長大な右手がぶわああと持ち上がり、首と後頭部全体を覆う。 透子が築いた防御の白壁にリィムナが乗り、寄せてくる巨人たち目がけて指を鳴らし、歌う。 羅喉丸と透子は、それでもまだ押してくる相手を退けようと必死だ。 キアラは巨体の壁を上り、剣を食い込ませる。 「人類の力を、思いしれ!!」 右手の腱が深く切り込まれた。 暗い影が差してきた。キアラはハッとする。が、遅かった。続けて被さってきた左手の下に潰される。 エルディンは『デル』を手に、その左手の指を、腱を削ぐ。 「私の力が尽きようとも、人類は何度でも立ち上がる!」 左手もずるずる落ちて行く。 露になった箇所にトゥルエノが剣で、リィムナがナイフで仕掛ける。 「そのうなじ――」 「――貰ったあ!」 ● 翌日。 開拓者ギルドではエリカ、ベルナデッド、トゥルエノ、キアラ、羅喉丸、透子、エルディン、氏祗、リィムナが揃ってどんよりしていた。 「どしたの皆…今日は暗いわね」 「夢見が悪かったんですよ…夢の中とはいえ己の不甲斐なさに腹が立つ…」 「うう、おねしょしちゃってお尻ペンペンされた…」 そこにアガサとアリスも来た。 「聞いてくだせえ野獣番長。アリスのせいであたし人生最悪の気分を味わったっすよ、夢の中で」 「あんたの夢になんでうちが責任持たなあかんの…大体あんたが自分のことしか考えんと動くから全滅したんやろ!」 「はぁ? 指揮力のなさを棚に上げてよく言えるすねこの死に急ぎ!」 続けてロータスとファティマが来る。両者さえない顔色だ。 「やー…みなさんお揃いで…」 「ごっつ寝苦しかったわ…」 くすんだ空気が支配する場。に、ぼそぼそ声。 「…昨晩はごちになりました…」 一同聞き過ごしかけ、一斉に身をかがめる。視線は同方向、集っているテーブルの下に集まる。 そこには体育座りした隙間女の姿が。 「「……」」 絶句する人々を置き、彼女はのたのた去って行く。アヤカシ的に晴れ晴れした気持ちで。 |