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■オープニング本文 ここはジルベリア首都、ジェレゾ。 とあるカフェの一角。 ジェレゾ城北学園の言うだけ番長ことアリス・ミッシェルとその仲間たちは、聖マリアンヌ女学院の口だけ番長ことアガサ・クリスティンとその仲間たちを相手に、抗争という名の女子会を開いていた。 年頃の女の子たちということもあり、話題はいつしか恋の話に。 「そういえばアリス、つい先日騎士学校のイケメン君に告白されたじゃん?」 「ああ、あれな…違うねん。あいつ言づて頼んできただけやってんよ。ほら、3組におるアガーフィヤと知り合いやろ、うち…」 「ああ、あの地上に舞い降りた精霊と名高い…」 「ぶはっ! ださっ、アリスださいっす! 伝書鳩状態っすよ!」 「なんやこらアガサ! 笑うとかどういうこっちゃ! あんたかて彼氏おらへんやないの!」 「へへーん、あたしこの前殿方からお茶に誘われたっすよ。そんでデートしたっす」 「実質的に変態アヤカシから嗅がれた痛手を慰める会ですけどね」 「大体団体で行くのはデートにカウントされないと思うわよ。以降付き合ってるわけでもなんでもないし」 「何故内実をばらすっすか皆! チームワークはどこに行ったっすか!」 「ぶほっ。そんなこったろうと思うたわアガサ! あんたみたいな性悪女に告る男なんかおらへんもんな!」 「その言葉そっくりそのまま返すっすよアリス! 頭が筋肉すぎて会話の成り立たない女を相手する男なんかいないっすからね!」 「やんのかこらあ!」 「まあまあ落ち着くでちよ」 危うく取っ組み合いになりかけていた少女2人は声のした足下をみる。 いつのまにやらそこにはぶちもふら、スーちゃんがいた。両前足でクリームソーダーを抱え込み、もふふふふと笑っている。 「心配せずとも大丈夫でち。アガサたんもアリスたんも立派に魅力的なレディなのでち。相手が見つからないなんてことないでちよ。あのガサツで乱暴でザルなご主人たまさえ数多くのしょっぱい武勇伝が作れたのでちから…」 ちゅーとソーダを吸ったスーちゃんは、またもふふふと笑った。 「…詳細聞きたいでちか?」 少女2人はお互いの襟元を掴んでいた手を離し、興味津々身を乗り出す。 「聞きたいわー。野獣番長の恋バナ」 「教えてほしいっす。すごく面白そうっす」 スーちゃんはえへんと咳払いをし、早速暴露し始めた。 「えっとでちね、これはロータスたま経由から入手した情報なのでちが…ご主人たまがみなたまくらいの年頃のこと…とある他校の男子がご主人たまを校舎裏に呼び出しこう言ったのだそうでちよ。『僕はキミと同クラスのアリーが好きなんだけど、あの子は繊細で優しすぎて壊しちゃいそうで近づけない…その点キミなら音に聞こえた頑丈さ。何したって壊れるなんてことはまずないよね。だからちょっと今から物置で相手してくれな」 いいところでスーちゃんの頭にブーツがめり込む。 少女たちは恐々顔を上げる。 予想通り、怒りの形相をしたエリカがいた。 「…あんたは…仕事帰りに寄り道したと思ったら…一体べらべら何を話してるのよ…」 「ぐおおお…虐待でち…」 そこへエリカの仕事仲間なのか、複数の開拓者たちが寄ってくる。 |
■参加者一覧 / ユリア・ソル(ia9996) / ヘスティア・V・D(ib0161) / マルカ・アルフォレスタ(ib4596) / リンスガルト・ギーベリ(ib5184) / リィムナ・ピサレット(ib5201) / エルレーン(ib7455) / フリスト(ic0775) / 花藍(ic0822) |
■リプレイ本文 エルレーン(ib7455)は、きょとんと通りを見やった。 「あ、スーちゃんだ。おさんぽちゅう?」 遠目にも目立つぶちもようのもふらは、見られていることに気づいてないらしい。足取り軽やかにこじゃれたカフェへ入店。窓側の席にいる女学生とおぼしき集団に近づいて行く。 話をし、盛り上がっている様子。 なんだろうと眺めていたら、今度は早歩きのエリカが現れた。 「あれ、エリカさん?」 相棒の姿をすぐさま察知しこれまたカフェへ――入るなり相手の後頭部を踏みつける彼女。 ただ事で無さそう。 ますます興味を引かれたエルレーンは、早速店内に足を踏み入れた。 「なにしてるのー?」 恐らく別のところから見ていたのだろう、リィムナ・ピサレット(ib5201)もやってくる。 彼女はエルレーンとアガサたちを見るや、大きく手を振って呼びかけた。踏みにじられるスーちゃんは比較的無視して。 「あっ、みんなー! やっほー! ひさしぶりだねー!」 「あ、こちらこそ、リィムナさん。このまえのおしごとでは、おせわさま」 「うん。こないだの変態アヤカシ退治、楽しかったね♪ あーいう面白いのだったら、また戦いたいね! あははっ」 「いや私はああいうのもうかんべんしてもらいたいかな…」 いやな記憶を掘り起こし盛り下がるエルレーン。 アガサも同様だったようで、著しく額を曇らせる。 「…忘れさせてほしいっす…あれはあたしの人生一番の黒歴史っすよ…」 そんな彼女の背をアリスの背と一緒に、ポンと叩くものがいた。 振り向いてみれば、マルカ・アルフォレスタ(ib4596)。 「アリス様もアガサ様も、すっかり仲良しですわね。いい事ですわ♪」 「ちゃうちゃうちゃうよ? うちこいつと仲良しなことあらへんで」 真っ向否定をマルカは笑って受け流し、続ける。 「そうそうアリス様、以前貸した授業のノート、そろそろお返しくださいね」 うぐ、とアリスの喉が詰まる。彼女の仲間たちが口々に言った。 「アリス、まだマルカに返してなかったです?」 「ただの丸写しにいつまでかかってんのよ」 「いや、その…」 「アリスの字はきったないっすからね。1文字に1時間かけないとまともに読めるものにならないんじゃないっすか?」 「なんであんたが参加してくんねんアガサ! ええと、すまんこっちゃけど後2日貸しとってマルカ。頼むわ。何かおごるさかい」 「仕方ありませんわねえ…ではマドレーヌお頼みしてよろしいですか?」 女子同士の手打ちが行われる背後から、ひょこんとリンスガルト・ギーベリ(ib5184)が頭を出してくる。 偶然後ろの席で新作ケーキを頼んでいた彼女は、好奇心を押さえ切れず、伏しているスーちゃんのもとに忍び寄った。 幸いエリカは店内に入ってきたユリア・ヴァル(ia9996)とヘスティア・ヴォルフ(ib0161)に気をとられ、こっちを見ていない。 「あれ、野獣番長。後輩集めて集会でもしてるのか?」 「その呼び方止めて。私は生まれてこのかた一度も野獣番長とか名乗ってないし」 「通り名というものは周囲からつけられてこそ価値があるものよ。この際素直に受け取ってもいいんじゃないかしら、その二つ名」 「そうそう。自分で名乗って浸透しないほどハズいことないからな。いたよなー、ユリア。あたしらと同年代でさ、『漆黒の竜』とかなんとか気負ってつけたはいいけどさ、結局通り名が『黒豚』で終わった不良」 「ああ、いたわねそういう人。なにしろ豊満だったから」 今ならいける。 リンスガルトは悪い大人の顔で、スポッティの丸い肩に腕を回す。 「ほほう、スポッティよ、それからどうなったのじゃ? 最後まで話してみよ、気になるでな」 リィムナもくっついてきた。 「ここだけの話にするからさ、教えて」 「…むむ、そこまで乞われてはスーちゃん口をつぐんで見て見ぬふりは出来まちぇん…しかしリィムナたん、今日はいい匂いがするでちな」 「ああ、今日は妾がちゃんと風呂に入れてきた。リィムナの風呂嫌いにも困った物よ…毎晩の様に同じベッドで寝ておる妾の身にもなってもらいたいのぅ」 「おのろけご苦労たまでちリンスガルトたん。とりあえずご主人たまは勇気ある他校の男子の申し出をお断り申し上げたのでちよ。ビンタで。なにしろ言語能力が不足した方でちからな。まあそういう失礼なことをしたのでその男子ご立腹でちて、翌日友達呼んで下校帰りのご主人たまを馬車で拉致ってでちな、車内で色々やりかけたのでちが大暴れされ、全員グーで殴りまくられ沈められてでちな、そうこうしてる間に馬車大暴走。これが例のジェレゾ大通り爆走事件の真相…」 「スーちゃん! あんたは性懲りもなくまた!」 「だってスーちゃんウソついてないでちよ! ロータスたまがそう言ったでちもの! 信憑性100%でち!」 「…あんのクソ男ぉ!」 「いたたた! スーちゃんの頭絞らないでくだちゃい! 虐待でち虐待でち!」 大騒ぎになっているところ、フリスト(ic0775)と花藍(ic0822)が扉の鈴を鳴らし、ご入店。 「なんだ、向こうは随分賑やかだな。オレたちも行ってみるか、花藍」 「そうですねー…行ってみましょうフリストさん。楽しそうですし」 ● 成り行き任せにして数十分後。場はすっかり打ち解けていた。 「さて、オーダーを…やっぱこの季節はパフェか…ババロアってのもいいけどな」 メニューを片手に思案するヘスティアの隣で、ユリアがお喋りに興じている。 「あら、なに。学生時代の恋愛話?」 「そうでーす。ユリアさんは経験おありですか?」 「もちろんよ。ええと確か…」 彼女は指を1、2、3と折った。片手では足りなくて両手を使うがそれでもまだ足りない。 折った指をすべて順繰りに戻したところで、意味深な微笑みが浮かぶ。 「まあ、数は問題ではないわ。あの頃はころころ付き合う相手を変えてたのよね。一年持たなかったし、飽きちゃうのよ」 ヘスティアが「懐かしいよな〜」と言いながら、顔を上げる。 「騎士学校時代を思い出すぜ。ユリアは、いい男より取り見取りだったな…って、一年どころか一日持たなかったこともあったじゃないか?」 「そうだったかしら」 「そうだって。俺に嫉妬する馬鹿もいて、俺が何故か決闘してたり…」 ユリアをじっと見つめる荒くれ騎士の瞳には、限りない優しさが詰まっている。ただの友情とは一味違う何かが、そこには含まれていそうだ。 「…ヘスティアのはともかくとして、男って独占欲と競争心が強いから、よく揉めるのよね。頼んでないのに喧嘩しあうの」 「そうそう、まだものにもなってない女を、俺のもんだとか言い出してな」 リンスガルトとリィムナはうむうむと、知ったかぶって頷く。 「あるある、あるのう」 「あるよねえ。ありがた迷惑な好意」 「とはいえ、愛のために戦えぬような男は男ではないでな」 「女として一度は体験してみたいよね。『私のために争わないで』ってシチュエーション。ところでその決闘の後はどうなったの、ユリア?」 「競争の結果? 大抵両方振ったわ」 その潔さに、番長たちは驚いた。 「ええー、勿体ないやん!」 「そうっすよ。一人くらいキープしといても…」 黄色い二重奏にユリアは、ひらひら手を振る。 「いちいち拾ってられないわ。キリがないもの。スーちゃんも」 「なんでちか?」 「あ、いえ、もふらのあなたじゃなくてヘスティアのことよ…とにかくスーちゃんもあの時期は恋人が沢山いたわよね。例の教官恋人事件の時はちょっとびっくりしたけれど」 「俺の場合、相手は女性の方が多かったぜ? あん時、教官の恋人になった人の恋人だっただけなのに…つか二人引き合わせたのは俺だ、んで先教官と相談して、学校巻き込んで情報戦したのは楽しかったが」 盛り上がる場を横目にワッフルを食すフリストは、感心仕切った様子である。 「伝説を作るとか、アンタ達凄いんだな。恋愛かぁ‥‥オレはそういうの縁が無いからなぁ」 エルレーンもまた、いちごのショートケーキをもぐもぐしながら、眼を輝かせ聞いている。恋に恋するお年頃なのだ。 「いいなあいいなあ…どーして、私にはそうゆう出会いがないのかなー」 ニンジンジュースを飲む花藍はそんなエルレーンに、若干シンパシーを感じた。自身も恋愛未経験、奥手な性分であるので。 だものでフリストからこう振られて、おたおたする。 「花藍は、そういうの‥‥無いか。興味はあるんだけどな」 「はわわ、恋愛とか、あのその、私には早いのです」 そこへ急に、リィイムナが割り込んでくる。 「そーんなことないよ! だってあたし10歳だけど、えへへ、もう相手いるもんね♪」 驚きの宣言をしリンスガルトの首ったまに抱き着き、頬をすりすりさせる。 「ね〜リンスちゃん♪ あたし達は恋人同士だもんねー♪」 リンスガルトは照れながら、リィムナの頭を撫でる。 「う、うむ…そう、妾とリィムナは恋人同士じゃ。うむ…うい奴…」 見るからにかわいらしい光景だったので、フリストはつい吹き出した。 とたんにリィムナの頬が膨れる。 「あっ! 今子供がじゃれ合ってるだけ、微笑ましいなとか思ったでしょ! 失礼しちゃうなぁ、ちゃんとやる事はやってるよ? 夕べなんかリンスちゃん、泣きながらおねだ「…ってリィムナ!いきなり何を言い出すのじゃっ!」 聞き逃せないような台詞の続きを、脳天拳骨で遮ったリンスガルト。頭からしゅうしゅう煙を出し伏したリィムナへ、真っ赤になりながらお説教だ。 「そそそんな事は人に喧伝する事ではなかろうっ!」 涙を目に溜めたリィムナが、がばっと起き上がった。 「痛ったー! 今本気で殴ったー! 仕返しっ!」 拳を振り上げられリンスガルトは、条件反射的に、腰をひいて身構える。 「むっ…」 しかしそれはフェイントだった。リィムナが狙ったのは頭ではない、唇だ。 顔と顔とが急接近し、くっつき、そしてざっと2分くらいそのまま。 リンスガルトがくたくた膝から崩れ落ちる。 テクニックの勝利。 「…ご馳走様っ! あははっ!」 勝ち誇ってぴぃんぴょん跳ね回るリィイムナを、ふらふらなリンスガルトが追う。 「リ、リィムナぁ!」 一部始終を見ていたマルカは、にっこりした。 「燃えるような恋。憧れますわね」 「近ごろの子は早熟でちなー。これはマルカたまもうかうかしていられないでちよ。学校とか職場に、気になる人はいないでちか?」 やじ馬根性丸だしなスーちゃんの視線を、エリカに話しかけることではぐらかす。 「まぁわたくしの事はともかく、エリカ様はロータス様とその後どうなのでしょう? 口では色々仰っておられますがやはりロータス様とご結婚なさるのでしょうか?」 「えっ。いやー…どうなのかな」 アイスコーヒーを飲んでいたエリカは困ったような顔をし、襟後ろをかいた。 「もし本当にその気が無いのでしたら、わたくしの兄なんてどうでしょう? 兄も志体持ちで、妹のわたくしが言うのもなんですが強くて優しくて、わたくしの憧れですわ。年はエリカ様より少し下になるのですが…そうですね、エリカ様がお義姉様になってくだされば、きっと面白いと思いますわ♪」 「止めておくでちよマルカたま! ご主人たまを身内にした日には毎日が暴走トロッコでち。憧れとなるほど真面目な方では、正直身がもちまちぇん! 面白いと思えるのは離れて見ている間だけ、ロータスたまくらいゆるくないと、付き合えるたまではないでち。正直これまで関係が駄目になった原因の全てが、ご主人たまの荒ぶる血にあることは疑いの余地なしでちて…クズ男さえも疲れさせる才の持ち主でち、ご主人たまは。まあクズしか掴まないんでちけど」 「いい加減にしなさいよあんた! どんだけ私をくさしたら気が済むわけ!」 「だってほんとのことではないでちかー。なんでスーちゃんばっかり怒られるのでちかー」 「あんたがいらんことばっかり言うからよ!」 鼻をつままれ、ぷんぷん両前足を振り回すぶちもふら。 すると、背後から声が。 「でも内容は大体当たってますよね。正直エリカさんは、男の目利きがなってません」 「まあロータス様、これはお久しぶりです」 「ああ、こちらこそマルカさん。相変わらず可愛らしいことで」 「どうしてロータスがここにいるのよ」 椅子にかけたまま振り向いて来たエリカに、へらへらしながらロータスが言う。 「いえ、帰りが遅いんで散歩がてら見に来ただけですよ」 その襟首を掴み、エリカは睨みつける。 「あっそう。ちょうどいいわ。とりあえず聞きたいんだけど、あんたスーちゃんに一体何を吹き込んで」 ロータスは、ひょいと身をかがめた。見事に合わさる口と口。マルカはぽっと頬を染める。 「あらまあ」 ひゅっと飛ぶ女の裏拳。を絶妙なタイミングで避ける男。 「くっ…避けることばっかりうまくなってるわね本当に!」 「そりゃこういう時はね、どうしても。いい思いさせてくれる時は別ですけど」 「…!」 ガタンと椅子を蹴り立ち上がったエリカは剣を抜く。怒涛の勢いでロータスを追い店の外へ出て行く。 「仲、およろしいようですわね」 「そのようでちな。あ、そういえばマルカたま、お兄たまの件については、スーちゃん心当たりあるでちよ? エリカたまの弟たまの婚約者の姪ごさんが、結婚相手を探しているそうでち。黒髪ストレートの天儀美人でちよ」 「まあ、その方はおいくつです?」 「数えで6歳でち」 「…それはちょっと…」 一部始終を見ていたエルレーンは、大きなため息をつく。 「いいよねー、ああいうの」 本当にあれでいいんだろうか。 多少戸惑いながらも花藍は、兎耳をてれてれさせる。 「…ちょっと、羨ましいというか…憧れます、けど。でも、そういうのは、御縁がないというか」 「私もそのてんさっぱりだよ…フリストさんは?」 「オレは鍛冶一筋だったし、開拓者になってからは、やっぱ仕事が楽しいわで…ないな」 三者三様にたそがれたところ、ヘスティアとユリアが口を出す。人生の先達として。 「肉食女子はいかがかな? 攻める所は攻めねぇと、近頃の男は受身が多いぜ? 引っ張っていくぐらいじゃないとだ。押し付けるだけじゃなく、引くところは引いて『こんな気遣いもできるのか』と思わせるのも大切だ」 「男って女心に鈍いのよね。悪気なく地雷を踏んだりするし…付き合い始めが肝心よ 女心が判ってない時は軽く拗ねるのお勧めね。本気で拗ねると揉めるから可愛いで済む範囲で拗ねて、どうして欲しいのか伝えておくの。例えば寂しい時は抱きしめて欲しいとか、ね」 ベテラン勢の投下した燃料により、現役女学生たちがきゃいきゃい盛り上がった。 「深いです−」 「いいなあ、抱き締めてもらうとか」 「やっぱ自分で攻めていかんとあかんかー」 「攻める当てでもあるっすかー、アリス。好み相当うるさいじゃないっすか」 「それはあんたやろ。結婚すんなら伯爵以上がええとかほざきおって」 つられてエルレーンも夢を見る。初恋もいまだ未経験な彼女は、求めるところも大きい。 「かっこよくて強くて」 から始まりたっぷり50は条件を並べた後、憂いを帯びて締めくくる。 「素敵なおとこのひと、この世のどこに転がってるのかなー。あ、ちょっとごーいんな感じの人もいいよねっ」 オレンジのグラニテを口に運び、フリストが呟く。 「…そんだけ理想が高い相手となると、なかなか転がってはないよなあ」 「えー、私そんなにりそうたかくないとおもうけどな〜花藍さんはどう?」 「えとえと、誠実な人、でしょうか。浮気とかしない人がいいです。後その、モテすぎる人は、気が引けちゃいそうです…フリストさんはどうです?」 「うーん、そうだなあ…鍛治に興味のある奴かな。後オレより筋肉ある奴。絶対にそこは譲れねえ」 カフェの中ではリンスガルトとリィムナ、外ではエリカとロータスが追いかけっこをしている。 女子会はまだまだ続きそうだ。 |