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■オープニング本文 瘴気。 それを誰しも目にすることは出来ない。アヤカシという形を取って、現れるまでは…。 ● ジルベリア、ジェレゾ。 お嬢様学校聖マリアンヌ女学院では、騒ぎが持ち上がっていた。 「やだっ、あなたも?」 「そういう貴女もでございますか?」 「いやだ、気持ち悪い…」 ここ数日の間に近隣で、下着泥棒が頻発しているのだ――何故か十代の使用品に限っての。 近隣住民が当局に捜査を依頼し、また自分たちでも警備強化をしたが、盗難は一向になくならない。 「これは事件すよ、事件! あたしらの出番すよ! 下着泥棒を捕まえるっす!」 お嬢様学校の口だけ番長ことアガサ・クリスティンの怪気炎に、仲間たちは怪訝な顔を向けた。 時刻はお昼。庭園の東屋でランチの時間。 とりあえず見た目と行動様式だけなら彼女らも、他の生徒とあまり変わらない。 「…なんで?」 「何でって、分からないすか」 「うん、わかんないよ。うちらが出ばらなきゃいけないことじゃないじゃない、それ」 「なんという志の低いことを言うすか。学園周辺の平和を守るのはあたしたちやんきいの役目すよ?」 「はいはーい、それ違うと思うのね。ワタシたちは不良として、近隣一帯の癌になるべきだと思うのね」 「癌ではないっす。管理社会に異を唱える反体制グループっす」 「言う割にあんまり唱えてないけどね…というかさ、そんなことよりアリス組との月例対校試合に専念しましょうよ。この前の編み物勝負の結果、散々だったじゃない」 「だからこそここででかいことして、あの子らを恐れ参らせてやろうというんじゃないすか。なあに大丈夫っす。うちには野獣番長がいるっす。やばそうだったら即尻拭いをお願いするっす!」 「アガサ、他力本願なの」 「失敬な。コネというのは使うためにあるんす!」 ● 下校時間も過ぎた頃。宵の初め。ジェレゾ住宅街の裏通り。 「お久しぶりでちな、アガサたん」 ぶちもふらスーちゃんは居並ぶアガサとその仲間たちに、やっ、と前足を上げた。 「…あの、エリカ番長は?」 「ゼブラたんとお仕事でち。今頃は天儀で牛鬼アヤカシ相手に血煙上げて暴れまわっているのでちょう。というわけでスーちゃん急遽代理で来まちたのでち」 アガサは集中してくる仲間の視線に対し、えへんと咳払いをした。 「どうしたどうした元気がないすよ皆! こう見えてももふらは格が高い霊獣すよ! 頼りにならないなんてことがあるわけないじゃないすか!」 「その通りでち。スーちゃんはお約束するでちよ。皆さんを最後まで暖かく見守ることを」 後ろ足で立ち上がったスーちゃんは、えへんと胸を反らす。 そこに「ふぉふぉふぉふぉ」と怪しげな声が。 一同がはっと声のした方に顔を向ければ、3メートルはあろうかという筋肉隆々の人影が、屋根の上に見えた。 「な、何者すか!」 人影はその大きさにも関わらずふわっと宙に跳び、彼女らの前に着地する。 ぱつんぱつんに張った足に黒いストッキング。 股間は危険なほど食い込んだハイレグ。 胸にブラジャー。 顔に女物のパンティ。 強烈な変態臭に頭が真っ白となる少女らは、次の雄たけびで我に返る。 「ふぉー!!」 あっと思った瞬間、アガサがいきなり太い腕にホールドされた。 そして。 くんくんくんくんくんくん 思い切り匂いを嗅がれた。 悲鳴が裏道に響き渡る。 「いいやああああ! きもいっすー! いやあああああ!」 彼女が泣き叫ぶその時、スーちゃんは。 「がんばるでちよアガサたんー。敵はたったの3メートル級でちー」 本当に見てるだけだった。 |
■参加者一覧
神町・桜(ia0020)
10歳・女・巫
エメラルド・シルフィユ(ia8476)
21歳・女・志
ラシュディア(ib0112)
23歳・男・騎
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
エルレーン(ib7455)
18歳・女・志
クリストフ・ローラン(ib8775)
25歳・男・騎
姫路 佐保(ib9739)
16歳・女・吟
戸隠 菫(ib9794)
19歳・女・武 |
■リプレイ本文 大量に焼いた手作りクッキー(まずい)のおすそ分けにエリカ宅を訪れたが、あいにく本人が依頼で留守。 でもせっかく来たのだしということで、スーちゃんを捜すことにしたエルレーン(ib7455)。 「えっと、たしかごきんじょのぱとろーるしてるとか…」 そこに突然の悲鳴が。 「いいやあああああ!」 反射的に『黒鳥剣』の柄を握り締め、声がした方へまっしぐらに走って行く。 濃密な得体の知れない気配。これはアヤカシか。 緊張し角を曲がった彼女はしかし、場に立ち尽くした。 「うわぁ…いくら、アヤカシ、って言ったって…なんていうか、こうも、その…きもちわるいのにならなくていいのに…き、斬ったら私の剣がけがれそうだよ…」 姫路 佐保(ib9739)は駆けつけてきたエルレーンの気配にも気づかず、地面に落としてしまった風呂敷包みもそのまま、ガクガクしっぱなし。 ジルベリアの市場で珍しい布を買い込んでの帰り、運の悪いことに真正面から未知との遭遇をしてしまったのだ。 顔に被った可憐なパンティ、黒ストッキング、股間の盛り上がったハイレグ――蝶よ花よとまではいかないまでも大事に育てられてきた娘が腰を抜かすに十分なほどの変態力。 「やっ、駄目、ち、ちかよらないでくださいっ」 生理的な嫌悪感に駆られ、脇差を振り回す佐保。 その行動が萌えを誘ったろうか、変態が変態な目を向けてきた。アガサの髪を思い切りふがふがしながら。 「いいやああああああきもいいい!」 「まずい、このままでは」 助けに飛び出そうとするエルレーンは突如膝から崩れ落ちる。 佐保もうっと息を詰まらせ我に返る。 顔を向けるといつのまにか近くに、リィムナ・ピサレット(ib5201)がいた。 「何か変なの出てきた♪」 変態に免疫があるのだろう、彼女だけは全く動じていない。 「りぃむなさん…どしたの…そのかっごう…」 「はえがどんでまずよ…」 「えっとね、ジェレゾ在住の生物学者の依頼でね、珍しい蝶を採集してたの。泰国の森で。すぐ見付かる筈が2週間かかっちゃってえ。食物は現地調達出来たし大蒜の辣油漬けもあったから食べるには困らなかったんだけど、入浴とか着替え出来なくて♪ ま、あたしはお風呂入らなくても平気だけど♪」 残りの援軍は逆方向、アヤカシの背面から来た。 まずは変態出現の報を受け天儀風湯屋から巫女服を乱し駆けつけてきた、神町・桜(ia0020)。 「どんな変態かと来てみたら予想以上の変態じゃな。しかもアヤカシとは…ある意味新しいのぉ。いや、感心してる場合ではないか」 それへ合いの手を打つのは、両親の知人へ依頼ついでに頼まれものを渡しに来たら泥棒退治をお願いされた戸隠 菫(ib9794)。 「何処をどう見ても変態の塊、ついでに瘴気の塊よね、アレ」 ただの泥棒なら(それも悪いことだが)いざしらず下着泥棒。放置しておけないと巡回していたらこれである。世の中乱れているなと実感する次第だ。 エメラルド・シルフィユ(ia8476)もやってきた。 なぜこの場にいたかの理由が定かでない彼女もまた、変態に衝撃を受ける。 「お、お、お、お、おのれっ! 女子の下着を身に纏い、あまつさえ匂いを嗅ぐなど畜生にも劣る天魔外道! この私が成敗してくれるわ!」 勇ましく『クラレント』を構えるエメラルドであったが、その実相手に引き気味。死んでも触られたくないと心から思う。 「し、しかし女子に抱きつき匂いを嗅ぐなど…くっ、大アヤカシよりも恐ろしい…」 ラシュディア(ib0112)が建物の屋根を伝い、身軽に飛び降りてくる。 「……なんだこの事態は。こっちはろくな装備をしてないってのに、ついてないっ」 出奔した実家の様子をこっそり確認、土産も買っての帰りだから、当然そうなる。 最後に里帰りついで、かわいい子ぞろいと評判の女学院視察を終えてきたクリストフ・ローラン(ib8775)が、現場に到着した。 「なんやけったいなヤツが現れてるんやな…ま、腕試しにはちょうどええ。パパッと倒して、学園の女の子らの信頼をゲットや」 桜が『藤家秋雅』を手に駆け出した。 「まずはあ奴を助けねばならぬかのぉ。では行くのじゃ!」 浅黒いしまった臀部に、薙刀の先端が突き刺さる。 尻から血を吹き出した変態は気持ち悪く吠えた。 「おほぅん!」 肩越しに振り向き桜を見て、鼻の穴をはすはす膨らませた。 「ふぉおおおおおふふふふうううう」 「うっ…」 本能的嫌悪感に負け、桜が一歩ずり下がる。エメラルドは急いで加勢に回った。 「く、く、来るなっ! 近寄らば斬り捨てて…」 菫は彼女らの反対方向に回り、『ノルン』の切っ先を向け、牽制を試みる。 「変態、こっち見るな!」 言ったとたん変態の鼻息がかえって荒くなった。罵倒に対し無駄に抵抗力が高いばかりか喜んでいる風情。 ダメだこいつ。 確信した菫はひとまずアガサの子分達に場を離れるよう、促す 「あななたち、さっさと逃げなさい」 リィムナが不敵な笑みを浮かべた。 「ここは変態ソムリエのあたしがやるしかないようだねっ」 袴のスリットに手を突っ込みぱんつをちら見せしつつ、かつ袴が脱げないように脱ぐという、超難易度の高い技を披露。 「ちょっとだけよ〜♪ お兄ちゃあん…リィムナをくんくん、して…? ほ〜ら嗅ぎたいでしょ♪」 彼女が掲げる使用済み下着からエルレーンと佐保は目を背ける。遠目であれば控え目に『使い古した雑巾』とも見えようが、至近距離で直視するにはダメージが大きすぎる代物だったのだ。モザイク必須と言って過言ではない。 スーちゃんはそれの直撃を食らわぬよう、すでに風下に移動している。 「目眩がしそうな少女臭でちなリィムナたん。正直変態じゃなくても天国に旅立てそうでちよ」 いくら変態でもこれはさすがに無理だろう。 内心思うエルレーンであったが、予想は裏切られた。変態は全身の筋肉を怒らせ猛っている。 「ふぅううおおおおおおおおおお」 「…」 汚物を見るような目をする佐保。 エルレーンはついさっき買いこんできた新品さらしを振る。 「ほうら! このぷりてぃーかわいいえるれーんちゃんが、ついさっきまで身につけてたほかほかなのっ」 アヤカシはばっと顔を向けてきた。が、なかなか近づいてこない。 リィムナが言う。 「だめだめ、ちゃんと使用済みでないと。変態さんはそういうところ敏感なんだから」 エルレーンは激しく葛藤し、苦汁の決断をした。胸元に手を入れ、さらしを抜く。 「ううっ…おぱんつより、こっちのほうがマシだよっ」 変態大喜び。マッハの速度で汚ぱんつとともに掠め取る。 あまりの早さにリィムナも飛びかかるすきがなかったほどだ。戦利品をいそいそハイレグの膨らみの中へしまい込んだ。 (…あれもう使えないな) 乾いた笑みを浮かべるエルレーン。 ラシュディアはタイミングを逃さず、硬い筋肉で守られた脇腹目がけ鎧通しを突っ込んだ。 「いいかげんその子を離せ!」 続けてクリストフが『ナイトソード』を、太い首後ろにたたき込む。 「ふぉう!」 変態は振り向きざま拳を振り回し、クリストフに当てる。 「わっ!」 防御の姿勢を取ったので大事には至らなかったが、それでも数秒は動けなかった。 桜が取り落とされたアガサとアヤカシの間に、割って入る。 「さあ、今のうちに脱出するがよいのじゃ! 主がいては攻撃もしずらいしの?」 クリストフは腰を抜かしたままのアガサを抱き上げ、一目散に場から離脱する。ウインクなどしながら。 「もう大丈夫やで、ナイトが来たさかいな」 変態が怒りクリストフを追おうとする。 ラシュディアがタックルをかけた。 「やらせるかあああ!」 エメラルドが意外そうな顔をする。 「ラシュ、そのアヤカシに親近感をもっていたのではなかったのか? どうやら見る限り、貴公と似たような性質をもっているらしいんが…」 安全な距離を保ったままのスーちゃんが、外野から一言。 「いわゆる近親憎悪という奴ではございまちぇんか?」 「…わけないだろっ! お前のような奴がいるから、謂れなきロリ○ン疑惑をかけられて苦しむ人がいるんだ、さっさと消え」 台詞が終わらぬうちアヤカシが起き上がり強烈なアッパーをくらわせ、彼をスーちゃんのいる方向へ吹き飛ばす。どうやら男に対しては容赦しない方向らしい。 思わずラシュの安否確認をしようと駆け寄るエメラルド。 そのとき変態が向き直ってきた。 より間近にした異様な姿に、彼女は思わず悲鳴を上げる。 「きゃああっ!?」 だが変態は、息をするほど自然にエメラルドの横を通り過ぎた。 別にその気はないのだが巫女服の前をはだけ下着をチラ見させている桜に、熱い視線を向ける。 「ふ、捕まっている者がおらねば後は全員で袋叩きにするだけじゃ!」 半泣きの佐保にも潤んだ眼差しを注ぐ。 「ひぃいい! こっち見てるぅ…」 「ふぅうおおおおお」 全身をビクビクさせ咆哮を上げ傷つけられることなどものともせず、可憐な少女たちに襲いかかる。 「…て、ぬ?ぬぁ!? な、何をスルかー!?」 「きゃあああっ!? 嫌っ! か、嗅がれてる…!? やだ、やだやだやだぁっ! 離してぇ…!」 桜から薙刀でグサグサ刺されても、あまり意に介してないようだ。うっとりした様子で腰をくねくねさせている。 暴れる佐保の裾から、ちらちら純白のおぱんつが見えるせいかもしれない。 「ふぉおおおおあっふううん」 「あのアヤカシたん、えむの気ありかもしれませんでちな」 万年傍観者スーちゃんは、起き上がったラシュディアから尻を蹴られた。 「女の子のピンチに見てないで働け!」 「あう、なにするでちかひどいでちよ! スーちゃんもふらとしてきちんと見守ってるでち!」 エメラルドはそんなやり取りなど聞いてはいない。ゆらりと剣を抜き、自分を無視していったアヤカシの背に尋ねる。 「…おい、貴様、それはどういうリアクションだ…?」 アヤカシは顔も向けずにたどたどしく答えた。 「…B…B…A…」 「…貴様、よく聞き取れなかった。もう一度頼む」 ご丁寧に、今度はゆっくり答えてくる。 「…B―A…B―A…AーA…」 「…殺す…!」 剣の柄をきしませ切っ先を震わせた彼女は、ラシュディアに向かって吼えた。 「変態には変態で対抗だ、さあ行くがよいラシュ! 目覚めるのだ! クロスアウッ!」 「出来ないよそんな技! 大体やったら捕まるだろ!」 無茶な注文を拒否したラシュディアは、『風華』を変態の手目がけ投げ付けた。 少女2人を抱え込んでいる変態は払いのけることが出来ず、往生したらしい。強大な筋力を駆使し、建物の屋根目がけて飛び上がる。 ラシュディアが追う。 「お前は絶対に逃がさない、多くの男達の名誉のために、ここで消えろッ!」 相手より素早く駆け上がり、両手を組んで頭頂部を強打。再度下に降ろさせる。 そこでリィムナが飛びかかり、変態の頭をがっちりホールド。耳たぶをぺろり。 「もう放さないよ…お兄ちゃん…逝かせてあげるからねっ」 汗と老廃物が発酵したミラクルな腋が相手の鼻に押し付けられた。 愛らしい声に乗せろくでもない歌詞が響き渡る。 「お兄ちゃああん! くんかくんか! リィムナをもっとくんかくんかして♪ とっても素敵な幼女臭♪」 アガサたちのもとから戻ってきたクリストフは、ひとまず近くにいた菫に聞く。 「状況はどないや」 「魔界ね」 真顔で言った彼女は変態が2人を即取り落としたのを見届け、『ノルン』を掲げた。 炎が顎の形をとり、変態の広い背中に噛み付いた。 「おほっうう」 変態が頬赤らめているが、見たくもないので見なかったことにする。間髪入れず精霊力によって形作られた弾を放ちまくる。 「うわぁぁぁぁんっ! 馬ぁぁぁ鹿ぁぁぁ!」 相手を脇差で刺しえぐえぐしながら離れた佐保は、吟遊詩人の勤めとして『古近江』をかき鳴らし、鼓舞の歌を歌いたおす。 「負けるなやっちゃえ女の敵だ〜♪ 変態さんを退治しろ〜♪」 そのせいかあらぬか、女性陣が一層ヒートアップする。 斬ったり突いたりまた斬ったり。 「ふふふふ、やはり此奴に遠慮は無用! 全力全壊で倒してやるのじゃー!」 「へんたいしね! へんたいしんじゃえ! へんたいしね!」 「滅びろ変態!」 「全く、ラシュといい貴様といい。そんなに幼い娘が好みか、この変態が!」 「あんお兄ちゃあん、もっと感じてぇ♪」 といっても男性陣だって負けてない。特にラシュディアが、私怨も交えて燃えている。 そこまでの私怨はないが世の女性方の敵は取り除くべきという騎士道精神の元、クリストフも全力で潰しにかかる。 「あはぁあああああんんんん」 耳障りな断末魔を残し、変態は雲散霧消した。 残ったのは彼が身につけていたストッキングとブラジャーとパンティ、股間に保管していた類似下着の山。 そこからリィムナは己の汚れぱんつを捜しだし、履き直し、ハエをお供に帰って行く。 「じゃあね、皆ー」 そこまでの漢気を持てないエルレーンは、菫の次の提案に全面賛成した。 「…これ、焼却処分しましょうか。本来の持ち主も取り返したいと思わないだろうし」 桜は背を伸ばし、きびすを返す。 「これでまた変態が減り平和になったの。…さて、また湯に入り直すかのぉ」 「ぐすっ、もうやだ…帰りたい…お風呂入りたい…」 佐保の涙声にふと立ち止まり、気さくに肩を叩く。 「ついでじゃから、一緒にひとっ風呂浴びに行かんか? 銭湯はここから近いで。すっきりして帰った方がよかろ」 「…そうします…」 ● 「だから最初から言ったですアガサ。やめとこうって」 「人の話を聞かないからこうなるんでしょう」 「なんすか皆、被害を受けたのはあたしっすよ! 少しは同情してくれたっていいじゃないすかあ!」 ぐすぐすしながら皆と一緒にパンケーキをほお張る口だけ番長を、菫が慰める。 「まあまあ、大事がなくてよかったわアガサさん」 厄落としのためのお茶会に同行だからデートと言うには微妙だが、それでもクリストフは女の子たちといられてうれしい。顔も緩む。 「しかし全く、美学のないヤツやったな。フェティシズムは結構やけど、やっぱ美学がないと」 「…美学? 変態に美学などあるわけないだろう…」 「あ、いや、気に障ったならすんまへんエメラルドちゃん堪忍してください」 エメラルドの怒りへ下手に触れると大火傷するのを心得ているラシュディアは、彼女に当たらず触らず。アガサたちの方を向く。 「あ〜、全部の男がああいう事を考えてるわけじゃないからな。こんな風に助けに来る奴も居るって事を忘れないでくれ……」 エルレーンはスーちゃんに、持ってきたクッキーを試食させている。 「…これ、なに入れてるでちかエルレーンたん」 「さいきんはやりの塩こうじだよ」 「どうして普通のが焼けないのに大冒険するでちか…」 討伐二次会の夜は、長そうだ。 |