お仕事ください
マスター名:KINUTA
シナリオ形態: ショート
相棒
難易度: 普通
参加人数: 6人
サポート: 0人
リプレイ完成日時: 2013/04/08 00:53



■オープニング本文


 レオポールは忍犬。主人のエリカ・マーチン(iz0290)がお留守なので、自由を謳歌している。
 彼はすぐちびるヘタレだが、小癪にも嫁犬がおり、この度子犬まで生まれた始末。で、有頂天。
 ここのところ子犬たちが大きくなった時のためにと、あちこち歩き回り、おもちゃを集めてやっている。空気の抜けたボールとかロープの切れ端とか靴の片方とか骨とか。
 今日もそのため匂いを嗅ぎ回りながら散策していたところ、とある空き地の草むらで目新しいおもちゃを発見した。
 大きさ重さ持ち運べるほど。堅さ噛んでほどよし。よし持って帰ろう。
 即決した彼はぱくんとそれを咥え家路に向かって歩きだす。
 と、おもちゃがなにやら唸り始めた。

「ガガギグゲゴガガガゴ」

 動いてもいる。
 どうやらこれは虫で、まだ死に切ってないらしい。
 そう判断したレオポールは、えいえいと止めをさすため振り回してみた。
 直後鼻に焼けるような痛みが。

「ピャー!!」



 犬小屋の前で腫れた鼻に濡れタオルを乗せ、しくしくやっているレオポール。
 その傍らで寝そべっているスーちゃんに、15センチ程の大きさの物が話しかけている。
 頭も胴体もカクカクして箱みたい。不定形な車輪状のものが足のあるべき部分につき、手はやっとこみたいな形。
 目の部分は真ん丸で、ものを言うたびちかちか光る。

「ガガギグガガガ」

「ははあ、自分は土偶ゴーレムだということでちな」

「ギギギギ。ギ」

「レオポールたんから休んでいるところいきなり咥えられ振り回され、身の危険を覚えたのでちな」

「ガチンガチン」

「だから鼻を挟んでやったと。なるほどそれはレオポールたんがよくなかったでちな。しかしどうして空き地などにいたのでち?」

「ガ…ガガ」

 土偶と名乗るものは急にうなだれてしまった。両手も前側にぐんなり下げる。

「グゴゴギギギギガゲゲゲ…」



 開拓者ギルドの受付係員は困っていた。窓口のところに来ている忍犬1匹ともふら1匹と土偶1匹に。

「ワンワン」

「この土偶たん、働きたいのに雇ってくれる人がいないのだそうでち。というわけでここで雇い口を探してあげてほしいのでち」

 雇ってもらえない理由は分かる。小さすぎるのだ。昔話の妖精なみの小ささである。踏まれたらそれで終わりになりそうだ。
 おまけに足が妙な形で、飛んだり跳ねたり出来そうもない――つまりもし戦いに従事しても絶対動きについていけない。
 加えて。

「ガガギグゲゲゲゲゲゲゴ」

 ここが一番致命的だが、何を言ってるのやら分からない。

「いや…そう言われてもねえ。うちは相棒の求人受付はしてないというか…」

「無論知っているでち。でちから、この土偶たんの働く所を探すという依頼を出すのでち」

「えっ…いやしかし、キミそれにはお金がいるんだよ?」

「無問題でち。土偶たん、お金持ってるでち」

 もふらがそう言うと土偶は、四角い口からざらざらお金を吐き出した。
 どれもなんとなく薄汚れた小銭だ。

「怪しいお金ではないのでち。土偶たんが道に落ちてるの拾って集めてたものでち。この依頼のために」

 この土偶、もしかして貯金箱として作られたのでは。
 疑いつつ係員は数えてみた。
 ……やはりというか、端金にしかならない。
 とはいえ依頼主がいてその人物がお金を出してきたからには、無視もならず。

「…分かりました。誰も集まらないかも知れませんけど、まあ、出すだけは出してみますよ」




■参加者一覧
喪越(ia1670
33歳・男・陰
海月弥生(ia5351
27歳・女・弓
鈴木 透子(ia5664
13歳・女・陰
霧雁(ib6739
30歳・男・シ
クロウ・カルガギラ(ib6817
19歳・男・砂
スチール(ic0202
16歳・女・騎


■リプレイ本文

 開拓者ギルド掲示板にある張り紙に、相棒霊騎ユィルディルンに跨がったクロウ・カルガギラ(ib6817)は、少なからず興味を示す。

『名無しの土偶、お仕事探しております。よろしければ相談に乗ってください。寸志ですがお礼を差し上げます』

「…また妙な依頼だなあ」

 アヤアシを倒して欲しいとか護衛をして欲しいとか、そういう依頼は数多くあるが、相棒からの就職相談とは。あまり聞いた試しがない。

「まあ土偶からの依頼を受ける機会なんて滅多に有るもんじゃなし‥‥て言うか最初で最後かも。一つ手を貸してみるか」

 乗り気となった彼はユィルディルンの背から降り、ギルドに入って行く。ひとまず土偶本人に会ってみなければ、と。
 その後すぐ、今度は相棒土偶ゴーレム縁を連れた海月弥生(ia5351)が通りがかる。

「…あら、面白い依頼ねえ」

 土偶と言えば自分の相棒もそう。これは共感できるかも知れない。そんな思いで彼女もギルドの中へ。
 広々した屋内には今日も大勢の人達が集っている。それぞれ適当な依頼を探したり、また出したりしている最中だ。
 空いている受付に向かい掲示板の件について尋ねると、待合室に案内される。
 するとそこには、ぶちもふらスーちゃんが待ち構えていた。

「おお、また新たな就職相談員志願者でちな。世の奇特な方が多くいるものでちよ」

 言葉通りすでに5人が集まっている。
 先程のクロウを皮切りに、相棒羽妖精、癒羅を肩に乗せた喪越(ia1670)、相棒忍犬の遮那王を連れた鈴木 透子(ia5664)、相棒忍犬ブラッディマーチに品よく待機の姿勢を取らせているスチール(ic0202)、よく肥えた相棒猫又ジミーに足の上に乗られている霧雁(ib6739)。
 だが、どこを見ても土偶の姿がない。

「ああ、レオポールたんがおトイレなので一緒に運ばれて行ってしまってるでち。もうすぐ帰ってきまちよ」

 スーちゃんの言葉が終わらないうちに、コリー犬がひょいひょい戻ってきた。
 土偶は首輪の部分をやっとこ型の手で挟み込み、犬の背に乗っている。すぐ近くに羽妖精がいるが、それと比べて半分ほどしかない大きさ。
 スチールが思わず呟いた。

「小さい土偶だな…」

 土偶はお座りしたレオポールの背中からカタカタ降り、開拓者たちに向きなおる。

「ガガギギグゲゲゴガ」

 口からざーっと小銭を吐く。山のように。

「ゲゴゲゲギガギゴゲ」

 弥生は相棒に耳打ちする。

「とりあえず相手してやってくれない? あたしたちじゃちょっと何を言ってるのか分からないわ」

「ええですだよ。えーと、まずは意思疎通からだんべな。おらぁが通訳して、おめぇさん方に気持ちが通じる様にすんべな」

 大きな土偶が屈み気味となって小さな土偶に話しかける。
 さすが土偶同士というのか、縁は相手の独自言語を何の苦もなく読み解いた。

「ひとまず報酬を先払いしますのでお取りください。拾って集めたお金ですだで、ちょっと汚れているけど、そこは容赦してもらえますとありがてえと言ってるべ」

 喪越はぐっと親指を立て土偶にウインクし、白い歯を光らせた。

「街ん中で小銭拾いか。俺も仕事が無い時はよくやるぜ」

 癒羅から反論が来るのは言うまでもない。

「いや。なに懐かしそうに、情けない事言ってるのよ。しかも現役じゃないの。バリバリの」

 一方霧雁は、うんうん頷き感心していた。

「立派な土偶さんでござるな。拙者は働くのは嫌でござる」

 後半部分で本音をぶちまけすぎ、ジミーから重量級の飛び蹴りをもらう。

「久々に仕事受けたと思ったら小銭しかもらえねぇ様な依頼かよ! てめぇの方こそまともな職探してこい!」

「ぐあっ! 働きたくないでござる! 働いたら負けだと思うのでござる!」

 駄目な大人の叫びはさておき、クロラは依頼主に挨拶した。しゃがんで、小さな手にまずは握手を。

「面白い格好だな。名前は、まだ無いんだっけか。まあ宜しくな」

「ギ」

 透子も座り、挨拶。

「こんにちは、鈴木透子です」

「ギ」

 一応挨拶は分かるらしい――でも細かい部分とか、本当に理解出来ているのだろうか。
 気になる彼女は続けてこう言ってみた。

「右向いて、左向かないで、回れ右。とか、出来ますか?」

 土偶は要請通りに動いた。足の形が特殊なため少し時間はかかったが方向転換は可能だし、人間の言葉を解する能力も問題なし。
 ほっとした透子は、続けて聞いてみる。

「そういえば、名前がないんでしたね。自分で決めたりはしてないんですか?」

「ギゴ。ガガガガ。ゴーガ」

 すかさず縁が通訳。

「決めてないって言ってるべ。見た限りでいうとはぐれ土偶という奴なんだべな」

 どこかで作られたはいいものの細かいカスタマイズをされる前に動き出してしまったと、そういう類いの生い立ちみたいである。製造番号も記入されてないところを見ると、試作品だったのかも知れず。
 それはさておき名前がないといまいち不便だ。
 ということで、まずは土偶仲間の縁から意見。

「そんだなあ。おらぁは『縁』だから『絆』はどうだかや?」

 続いては、ジミーから高速猫パンチを受け続けている霧雁の意見。

「雅暁というのはどうでござろう。ガ行、から取ったでござる。読みはがぎょう、まさあき、まさあきら等で…」

 お次は透子の意見。

「やっぱり「ガー介」とか「儀助」とか…わかりやすい名前ですかねえ…あとは格好よくギグリオンとかギガランドスとか」

 分かりやすいと言えば、最後のクロウのも分かりやすかった。

「そうだな、大きさが手の平サイズだから、『ハンド』、とか。安直過ぎるかな」

 土偶は目をちかちかさせて考え、ピコーンと妙な音をさせる。

「ガーグゲ!」

 縁は小さな仲間にもったり頷き、意志を述べ伝える。

「ガー介が気に入ったそうだべ」



 マーチン家の庭。
 紗那王がレオポールに連れられ小屋を覗き、母犬のお腹のところにいる子犬たちに呼びかける。

「クンクンクンクン」

 見知らぬ相手の姿に子犬たちはキュウキュウ騒ぎ始めたものの、父犬も顔を見せたので安心したか、静かになった。
 まだ歩くのもままならない段階なので一緒に遊ぶことは出来ないが、その代わり得意とする芸を見せる。
 紗那王、ピョンと宙返り。驚き珍しがって鳴く子犬たち。喝采を受け豆芝は、えっへんと胸を張る。

 そんな景色の向こうでは、スチールによるガー介の、職業適性検査が行われていた。

「脚で移動する朋友よりは不整地性能は劣りそうだけど、キャタピラでもそれなりの移動はできる気がする。戦争被害のある所とかに派遣して情報収集とかどうだ?犬や馬はもちろん、からくりだって人間にできない仕事をするためにいるのだし…」

 彼女の相棒ブラッディマーチと、邸宅の馬車道を利用し徒競走。
 無謀だと誰しもが思い――実際無謀だった。一生懸命走ってはいるのだろうが、俊足を旨とするサイトハウンドに追いつけるわけがなく、相手がゴールしたときまだスタートライン近くをカタカタ進んでいる。

「銃砲が小型のものでも撃てるなら暗殺に使えるかも?」

 赤い水を入れた小さな壺を並べ射撃能力を調べるも、銃の反動でひっくりかえりじたばたもがく始末。
 背中側に支えとしてレンガとか石とか置いてやればなんとかいけるが、実際的ではなさそうだ。

「犬にやらせるみたいに匂いで判別とかはできるんだろうか」

 これは、筆談(透子が試してみたところ、ある程度やれると判明した)「ニオイ ワカラナイ」により、やるまでもないと証明された。

「…戦闘向きではなさそうでござるな」

 霧雁の言葉にガー介はうなだれた。
 喪越が力強く呼びかける。

「元気を出せ! この喪っさんに任せておけ! 泥舟に乗ったつもりで!!」

「ダメじゃん!?」

 突っ込む癒羅に彼は指を突き付けた。

「えぇい、さっきからネチネチと。お前ぇさんにアイデアはねぇのか?」

「へ!? う〜んとー……人間の言葉を喋れないから、案内役とかは無理でしょ? 脚がそんなじゃ、広い場所や町の外での移動も危ないだろうし……」

「そう考えると前途多難だな。もういっそ、元の鞘である貯金箱としてだな――」

「いやそれ、じっとしてるだけだし。それはちょっとかわいそう」

「何もせずに養って貰えるなんてパラダイスじゃなイカ!?」

「喜ぶのはアンタくらいのも――」

「確かにそれはパライソでござるな!」

「同類いた!?」

 霧雁の参戦に愕然とする妖精。

「いいかげんにせいこのWフーテンが!」

 ジミーは2人分の後頭部に飛び蹴りをくわした。
 そこで透子が、新提案を持ちかけた。

「失せもの探し屋とかはどうでしょうか? 家の中とかで失くした物とかを、落とし主の代わりに探すというのは便利だと思いますし、それに得意分野なのではないかとも思います。先ほどエリカさんの許可をもらいましたから、試してみましょう」

「グゲ」

 というわけで急遽屋内へ場を移し、実験。

「多分この部屋のどこかにあると思うのよ、卒業記念に貰った万年筆。あんまり使った覚えがないんだけど、気が付いたらなくなっててね」

「ガギー」

 エリカの依頼にガー介は張り切った。部屋の隅々までくまなく動き回り、箪笥の裏に入って行く。
 しばらくゴソゴソ物音をさせ、また意気揚々出てくる。先がつぶれたり割れたりした万年筆を20本ほど持って。

「え…?」

 絶句するエリカ。
 スーちゃんが両前足をばたばたさせた。

「ガー介たん1本でいいのでちよ! ご主人たませっかくほかのを忘れてたんでちから!」

「…スーちゃん…ちょっとこっちにおいで?」

「なんでちか、違うでちよ、スーちゃんご主人たまの万年筆を壊したりしてまちぇん、ダーツ遊びしてたら書きにくくなったから見えないところに保存してただけでちよ!」

「いいから来なさい!」

 虐待と連呼するもふらが連れられていくのを見送る一同。
 ガー介が紙に字を書く。

『ナンダカ アマリ ヨロコバレテ ナイ ミタイ ヨロコバレル コト シタイ』

 というわけで再度仕切り直し。



 あるいはカフェなどに勤めてみてもいいのではないか、と喪越は言う。
 癒羅にもそれはいい案かと思えた。

「そうそう。カウンターの上を移動するだけなら問題なさそうだし。お品書き持って行って、注文は紙にでも書いて貰えば」

「このキュートな外見も有効活用できそう、か。いいんじゃねぇか? 花丸あげやう」

「あ、ありがと」

「くっくっく、自分は何もせずに報酬ゲットできそうだぜ」

「心の声がダダ漏れてるわよ!!」

 顎に飛び膝蹴りをかます妖精によって倒れる人間。
 その側で霧雁とジミーが言葉を交わす。

「拙者も接客方面について検討してみたがいいと思うのでござる。商店員など如何でござろう」

「店員ったって何言ってるか分からねえんだぞ? 客が困るだろ。筆談も手間だろうしよ」

「そこは例えば、ギ一回ならいらっしゃいませ、二回なら此方の品物で宜しいです、三回ならくやしいのうと言う具合に予め意味を決めておいて店内に張り出しておくのでござる」

「しかしこんな小さいんじゃ商品持ってくるのに時間かかるし、高い棚の商品は取れねえぞ?」

 髭だらけの頬をかくジミー。
 ガー介は言った。

「ギギギ」

 どうやら早速霧雁の考案言語を使ってみたらしい。
 しかしいくら悔しがってみても土偶は成長しない。大きくならない。残念である。

「確かに時間がかかるかも知れぬでござるが、例えば絡繰りの茶汲み人形が人に比べて遅いと文句を言う者はいないでござる」

 であるからここは一つただの店員ではなく、世にも珍しいミニ土偶としてプロデュースしてみてはどうか。

「代金先払いで土偶の口に文を入れ商品名を告げると、商品を探して持ってくる様子を見物できるという、見世物の要素も加えるのでござる」

 高い棚などの対策には、土偶が自力で前後左右に動かせるリフト式のからくりをつければよろしい。その動きもまたかわいらしく見えることであろう。

「個人の商店主で怪我や高齢で立ち上がって商品を持ってくるのが辛いという方に、特にお勧めでござるな」

 霧雁がまとめを終えたところで、クロワが意見を述べた。

「……人の言葉を聞いて理解する事は出来るんだよな。筆談可能で文字が読めるなら、簡単な書類整理とか出来るんじゃないか。机の上を片付けられないタイプの人とかギルドに居ないもんかね。そう言う職員さんの机を毎日整理しますとか言ったら、雇ってもいいって言う職員さんの一人くらい居るんじゃないか?」

 このサイズなら机の隅にいてもそんなに邪魔にならないはず、と彼は指摘する。

「後は本棚の後ろとか狭い所の掃除係とか。そう言うのも需要有りそうな気がする。さっきしてたのとかぶるけどな」

 そこにスチールが同意してきた。

「そうだな。見たところ知能は高いようだし、筆談ができるなら人間の話し相手や子守など室内仕事ができるかもしれないぞ」

「ガギー…」

 ガー介はちょっと考えているようだった。
 縁が同胞として助言する。

「ちなみにおらぁは何時も滑空艇の整備をやっているんで、それを手伝ってみるのも良かんべな。慣れないのは当然だろうけどそこは土偶根性でやってみるのが良いと思うべな。難しいと感じるとこは、手取り足取りで教えるべよ」

 弥生は主人として、ほほえましくやり取りを見守るだけだ。

「ググゲ。ガゴガゴガッチンゴッチン」

「そんだ。ものを直したり作ったりするのも、面白いもんだべ」

 そのやり取りでクロワは、別の進路を思いつく。

「アーマーの整備で、人の手の届き難い所での作業を手伝うとか出来るんじゃないか、ガー介。作業内容自体は単純なんだけど、やろうとすると一度解体して該当箇所を表に出さないといけない箇所とかあってな、その中に入って作業するとか…戦闘で汚れた部分を磨いて綺麗にするとかもありだな。人の手の届かない所に潜っての作業ってのは結構需要がありそうだぞ? 組み立てる時も、細かい部品の取り付けの際には役に立てる場面があるかも知れない」

 アーマーと聞いてスチールが黙っていられるわけがない。何しろ鉄製品、鋼製品を愛すること鬼のごとし。己のみならず相棒たちにまで鎧を着せてしまうくらいなのだ。
 今現在紗那王たちと鳴き交わしているブラッディマーチも、ご多分に漏れず完全装備である。

「うむ、確かに工房勤めもいいかも知れん。車輪をつけた小さな大八車みたいなものを引っ張る形なら、背負うよりは多くのものを持てるんじゃないか?」

 改めてガー介を持ち上げた彼女は、まじまじ上下から眺める。

「…チェーンメイル作りなんかどうだろう? 金ハサミのようなペンチで金属のリングを丸めてシメるだけだ。この土偶の手でもできるんじゃないか?」

「ギゴゴ、ゲ。ガガギゲゲゴガ」

 身振り手振りで助言を求められた縁はのんびり答えた。

「おらぁのご主人は弓術師なんでな。おらぁが前衛してる間に後ろから射るのを役割分担してるんでな。おめぇさんも自分の役割を心得てから、ご主人を求めると良いべよ」

 活発化する議論をよそにユィルディルンは、植え込みをもしゃもしゃ食べている。



『バルト工房(武具・アーマー・整備・製作)』

 中小町工房の前、透子はそわそわ待っている。

(ガー介さん、面接は大丈夫でしょうか…しっかりアピールの練習はしてきましたが…)

 ガギグゲ語の簡易翻訳表と筆談用のメモ帳と鉛筆を持ち込んではいったが、心配。
 一緒に来ている紗那王は閉まった扉にレオポールと鼻をくっつけ、中の様子を伺っている。

「もうちっとでかい工房の方がよかったんじゃねえか?」

「いや、あまり大きすぎると相手にされない懸念がござってな」

 ジミーと話をしている霧雁の側では、癒羅が喪越に説教している。

「アンタも少しは見習って真面目に仕事したら?」

「よしてくんな。人生、楽しまなくちゃ損だぜぇ?」

 お行儀よく側に控えているブラッディマーチの頭をなぜ、スチールも待ち構えている。

「おっ。終わったようだぞ」

 扉が開いた。
 カタカタ小さなキャタピラ音を響かせ、ガー介が出てくる。
 クロウは早速聞いてみた。

「どうだった?」

「ギーガ!」

 両手を上に上げ大きく丸を作るガー介。
 対比表がなくても彼の言わんとするところは、すんなり周囲に伝わった。
 弥生がにっこり祝辞を述べる。

「就職おめでとう」

 彼女の土偶も、表情こそ変えないもののうれしそうだ。

「まんずよかったべ」

 ユィルディルンが尾を右に左に振り、いなないた。


 移動式貯金箱型正体不明土偶、改めガー介、就職決定である。