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■オープニング本文 ジェレゾ城北学園には、いつの程からか伝わっている1つの怪談がある。 それは『下校時間を過ぎて校舎に残り遊んでいる生徒は、必ず正門以外から帰らなければならない。でないと、あそぼをおじさんに連れて行かれる』というもの。 『あそぼをおじさん』とは、頭に目玉を描いた麻袋を被り、子供に『あそぼをあそぼを』と誘いかけてくるおじさんだ。 聞くだに犯罪者めいているが、とりあえずアヤカシと考えていいだろう。怪談話に登場してくるからには。 校舎の中には入ってこられないので、出現した際は屋内に逃げ込めば大丈夫という対処法も伝えられているが、本当かどうかは分からない。 仮に本当だったとして外に出られなくなるわけだから、当然家に帰れないこととなる。 誰もいない校舎で一晩過ごす――それ自体子供にとっては、いや大人にとっても、結構な恐怖体験だろう。 ● 「あかんあかんこれ絶対あかん奴や」 ブルブル震えながら縮こまり耳を塞いでいる口だけ番長アリスは、努めて正面玄関を見ないようにしている。 『あーそーぼーおおおおおお あーそーぼおおおおおお』 麻袋を頭に被ったおっさんが、激しくガラス張りの扉を叩いている。 アリスの仲間であり友であり手下である女学生たちの顔色も真っ青だ。 「ちょっと、どうするのよあれ!」 「アリス組ピンチです、トラウマ級ピンチです!」 「あれ小等部の怪談話でしょう!? なんで中等部に出るのよ!」 「追い払うのよアリス、追い払うの! じゃなきゃ説得して帰ってもらって!」 「いやや! 絶対いやや! あれ話通じる相手やないやんアヤカシやん!」 「いや、案外人間かも…」 「人間でもいややわ! 見るからに埒外やんけ!」 少女たちが遊んでくれないので焦れたのだろうか。おじさんの身の毛もよだつような嘆願が熱を帯びてきた。 『あぞぼおおおおお あぞぼおおおおおおよおおおおおおお』 おじさん、見かけによらず意外と力が強いらしい。ガラスが割れる。扉の蝶番からネジが吹き飛ぶ。 「ぎゃああああいやあああ! あかんこれあかーん!」 耐え切れなくなったアリスが走って逃げ出した。 似た者同士である仲間たちもこぞって逃げ出す。 「あっ、待ってえアリスー!」 「ちょっとお、あそぼをおじさん校舎に入ってこれないんじゃなかったの!?」 「のはずですが、そういえば一階部分だけは自由に動き回れるという異説をどこかで聞いたような気もするですう!」 「なんやそれふざけんなや!!」 少女たちはかつてないほどの自己タイムを弾き出し、一気に屋上まで駆け登った。 怪談通りの仕様なのか、あそぼをおじさんは追いかけてこなかった。 まず一安心、と言いたいところだがさにあらず。下を見ればおじさんが校舎の周囲を、動物園の猿のようにウロウロ。 「くっ…降りられへん…」 時刻は夕方。季節は冬。日もすぐ落ちてきそうな気配。こんな場所で夜明かしなど冗談ではない。 助けを呼ぼうか。 しかしどんなに声を張り上げても、校舎の上からだと、離れた通りまで届くかどうか。 万事休すな気分のやんきい組。 しかし不幸中の幸い。この校舎に住み着いている精霊が、騒ぎを聞き付けてくれていた。 子供たちの守り神的存在であるそれは彼女らの窮地を救うため、通りへ人を呼びに行く。 ちなみにこの精霊、人間ぽい姿をしているが、目と口が傾き90度というあってはならない角度でついているため、目にした人間すべてが一度はアヤカシと見間違える。 なので子供たちから味方として、いまいち認識されていない。 |
■参加者一覧
マルカ・アルフォレスタ(ib4596)
15歳・女・騎
リィムナ・ピサレット(ib5201)
10歳・女・魔
ユウキ=アルセイフ(ib6332)
18歳・男・魔
クロウ・カルガギラ(ib6817)
19歳・男・砂 |
■リプレイ本文 冬の夕暮れ。ジェレゾの通り。 リィムナ・ピサレット(ib5201)がぶつぶつ独り言を呟いている。 「ウホッ、ウホッ! グオオオーッ!」 彼女は今、買ったばかりな絵草紙を読んでいる所。 背表紙に『うんうんゴリラ丸』というタイトルがついている。 その内容はというと、うんゴリラなる四本腕のゴリラが、毎回糞と暴力であらゆるものを粉砕していくというお下劣ギャグである。 「あはは最高♪」 読みながら歩いていたので、ついうっかり対向者とぶつかった。 「きゃっ」 「あ、ご、ごめんなさい――」 あわてて本を閉じ目線を上げれば、そこにはマルカ・アルフォレスタ(ib4596)の顔。 「あら、リィムナ様。奇遇ですわね。ごきげんよう」 「なーんだ、マルカだったんだ。こっちこそごきげんよう」 マルカは学校で貸したノートを返してもらおうと訪れた友人宅で、まだ娘が帰っていないと聞かされ、帰宅していくところである。 (もう夜になりますのに、ねえ…) 帰る道々彼女らのたまり場であるカフェなど見て回っているのだが、どこにも姿はなかった。 どうも気掛かりだ。 「ところでリィムナ様、道中アリス様たちの姿を――」 「この新刊面白いの。ムカデ人間との死闘回が収録されてるんだ。すごいんだよムカデ人間。一体一体は弱いけど、連ケツするとフン出力が百倍になるんだ。時速百キロの速度でぶりぶり弾が飛んでくるんだ。でもうんゴリラはそれを鉄壁の尻皮ではじき返してー」 「――そうなんですの。それはすごいですわね」 振られた話題を流そうとするマルカ。 折よくクロウ・カルガギラ(ib6817)とユウキ=アルセイフ(ib6332)が通りがかってきてくれたので、そそくさそちらに顔を向ける。 「クロウ様、ユウキ様、ごきげんよう」 双方特に急ぐ用事もなかったので、立ち話をしようと近づいてくる。 「おお、マルカさんにリィムナさん。こんばんは」 「こんなところで2人とも、何をしてるんですか?」 そのとき全員、纏い付くような視線を感じた。 肌に覚えるざわつきに従い、気配の出所に首を向ければ、目と口が垂直についた顔が建物の陰から覗いている。 マルカは一瞬身構えた。 (まさかアヤカシ!?) だが相手は動きを見せない。ひたすら開拓者たちを凝視している。 いきなり暴れだす危険性は無さそうだ。 クロウは短銃に手をかけたまま、声を潜めた。 「……何だありゃ? アヤカシか何かか?」 「…人間ではないよね…」 「ええ。あの神様に悪戯されたようなお顔から察するに…」 当惑交じりに囁きあう仲間たちを背にリィムナは、慌てず騒がず『斥候改』をかける。 瘴気は全く計測出来ない。 つい出る舌打ち。 「瘴気力ゼロ…ゴミめ…」 と呟いてみた途端、相手の眼力が倍加する。 リィムナは急いで訂正を入れた。 「じゃなかった、精霊力を検出、貴方精霊さんだね♪ ごめんごめん今のは冗談だよ、冗談♪」 精霊なら外見はアレでもとにかく害はしなかろう。 街中でいきなり銃をぶっ放す様なことにならないでよかったと思いつつクロウは、相手に質問してみる。 「何の用だ?」 マルカも聞く。 「何か御用ですか?」 精霊が姿を見せるのは何か用があっての事に違いない。 そう推測するリィムナの前で精霊は手招きし、後ろに下がった。体を一切動かさず移動するという離れ業で。 行き交う通行人――全員ではなく感度のいい人間だけだろうが――は強ばらせた顔を伏せ、足早に通り過ぎる。 「無理もないよね。夕暮れにこんなものと行き当たっちゃあ…」 「トラウマにならないといいがな…」 ユウキとクロウはそんなことを言い合いつつ足を進める。 混乱を避けるためマルカは、周囲へアナウンスをした。 「皆様ご心配なさらずー、この方は精霊ですのでー」 あまり信じてもらえていない様子だったが。 「ねえねえ、ところで精霊さんは何の精霊さんなの?」 とにもかくにも精霊は無口なたちらしく、リィムナからいくら話しかけられても、何にも言わなかった。 といってリィムナはさっぱり気にしてない。布教まで始める始末。 「うんうんゴリラ丸、すっごく面白いんだよー! 精霊さんもいっぺん読んでみるべきだよ!」 一同誘われる通り歩いて行けば、いつのまにやらジェレゾ城北学園にたどり着いた。 声が聞こえてくる。 「おーい! おーい! 誰か来たってえー!」 「ヘルプですわ、助けてですわー! 誰かー!」 マルカは屋上を見上げ、そこにいる人々に目をこらす。 日が落ちかけているのではっきり細部まで見づらいが、あれは。 「あら、アリス様では?」 下を指さしているようだが何だろう。 不思議に思う所に、けたたましい奇声が聞こえてきた。 『あそぼおおおおおおおお! あぞぼおよおおおおおおお!』 夕日に照らされた1階廊下。 ガラス窓の内側で麻袋を被り喚いている男。 (…あ、これ放っといたらいかん奴だ) 悟ったクロウは精霊に尋ねる。 「もしかして、アレを何とかしてくれって事か?」 精霊は頷く。 「良く分からんが、分かった」 見かけによらずいい精霊らしい。 確信を持ったユウキは、面を被りつつ礼を言う。 「どうもありがとう。君はアヤカ――いや。外見から判別してはいけないよね……。と、僕が言っても、説得力が無いかな。攻撃したりはしないから、安心してね」 微笑で締めくくった後、念のためリィムナに確認を取る。 「ところであれは万が一にも人間ということはないかな?」 リィムナは『斥候改』をくいと持ち上げ光らせる。 「大丈夫、100%の確率でアヤカシだよ」 「でしょうねえ…」 「ん? マルカ、あいつについて何か知ってるの?」 「いえ、前からうちの学園で噂になっていたのですわ。下校時間を過ぎて居残った子供の前に『あそぼを』と誘いかけてくる男、通称『あそぼをおじさん』が出現すると…単なる怪談かと思っていましたが、実在したのですね」 「…いいね。遊んでやろうじゃない。夜になる前に片づけるよっ」 ● ユウキは壁伝いに屋上まで上った。 募る寒さにガタガタやっていたアリスたちは、やれ助かったとばかり、駆け寄る。 「やっと救援が来ましたわ!」 「おお、よかった。魔の森で大精霊や!」 その喜びもつかの間、次なる試練がユウキから提示される。 「あのおじさんを捕まえる為に、少しだけ付き合って貰っても大丈夫かな? …未だ、怖い思いをさせる事になるけど、ゴメンね……。でも、大丈夫。君達を守るから」 「…え? つまりどうゆうことやの?」 「端的に言うと、強行突破ってとこかなあ…ここから1人1人降ろして行くと、かえって危険そうなんで」 残光だけが残る校舎内部を徘徊するのは、あそぼうおじさん。 『あそぼおおおお あぞぼおおおおお』 麻袋を頭からすっぽり被り、前かがみ気味に歩くその姿。 ふうふう荒い息やらくぐもる声やら不気味の一言に尽きるが、開拓者にそんな虚仮威しは通用しない。『邪眼除けのお守り』を身につけているクロウには特に。 誰かの気配を嗅ぎ付け、おじさんの足が速くなる。急いで角を曲がる。 …誰もいない。 次の瞬間、おじさんの背後に白い影が立つ。 おじさんが振り向く刹那その影は、曲刀で切りつけた。 『ぼうっ!?』 刃先の冷たさが首筋をかすめる。 おじさんは驚いて逃げ出した。影は――クロウはそれを追う。 といっても、まだ本気ではない。今のところは仲間がいる方面に追い込むのが主目的なのだ。 (さあさあ、追われる楽しさをたっぷり味わってもらうぜ!) (来ましたわね) 曲がり角に隠れ様子を窺っていたマルカは、おじさんが息を乱し走ってくる物音を耳に、満を持して登場する。 「あそぼをおじさんですわね?」 彼女の姿に、声に、おじさんは早速食いついてきた。 『あそぼをををををををををを』 両手を広げじりじり近づいてくるおじさん。 気の弱い子ならこの辺で失神しそうだが、あいにくマルカはそうでなかった。 「よろしければわたくしと遊びましょう。先ずは鬼ごっこ。貴方が鬼ですわよ」 『をををををををあそぼををををををを』 おじさんは猛烈ダッシュをかけてくる。 マルカはそれをかわし、校舎の外へ向け走りだした。 「鬼さんこちら、手のなる方へ」 『ををををををあぞぼおおおおおおおおお』 おじさんの動きは、素早いながらもぎこちない。急に曲がれない仕様なのか、角角で壁にぶつかり窓にぶつかり器物を破損しまくる。 クロウはマルカと連携し、敵が後戻りしないよう、消えては現れ切りつけを繰り返し、追い込みを続行。 ユウキは階段の踊り場から、おじさんが誘導され正面玄関へ出て行くのを確認する。 薄暗くなってきたのでマシャラエイトを発動させ、ついてきているアリスたちに、移動を促す。 「さあ、今です。マルカさんたちに気をとられている隙に、あそこの窓から出ましょう。あのアヤカシは音で周囲を識別しているらしいですから、静かに静かに」 「大丈夫かいな、ほんまにい…」 少女たちはびくびくもので1階に降り窓から抜け出した。 声を立てないように校舎から離れよう――としたところで、目の前の暗がりから、謎精霊がぬっと出てくる。 本人に悪気はないのだろうが、タイミングは悪すぎた。 「ぎぃいいやあああああああああああ!!」 アリスのけたまましい悲鳴に、正面玄関のおじさんが反応する。 「アリスのばかあ何で声出すですかー!」 「変質者こっち来るじゃないのよっ!」 おじさんはクルリと方向を変えた。 「やばっ」 クロウは地を蹴り肉薄し、真空の刃で首後ろを切りつけた。 だが、おじさん倒れない。 駆けつけたユウキがアイヴィーバインドで足を拘束する。アイシスケイラルを放つ。 「こんにちは♪ いや、今の時間帯だったら、こんばんはかな〜? 遊びたくてうずうずしてるんだよね。何して遊ぶ?」 おじさん凍りつつまだ起きる。 マルカは『闇照の剣』を抜き放ち、体当たりをかける。 「次はおしくら饅頭ですわよ。押されて泣くな!」 渾身の突き飛ばしで態勢を崩すおじさんだったが、少女からの接触は無にしない。 すかさずハグをかけてきた。 『あそぶぉををををををををを』 マルカの嫌悪感は頂点まで跳ね上がる。 剣が深く横腹をえぐった。 おじさんちょっと痛かったか、手を放しよろめく。 「最後はチャンバラですわ!」 頭に被った袋が真っ二つ。 これは死んだか? 誰しも思ったが、おじさんはしぶとかった。 破れた袋の下から、また新たに袋が現れる。 おぞましき雄叫び。 『あぞぼおおおおおををををををををーをををををを』 それに呼応するかのようにもう一つの叫びが上がる。 「ウホッホオオオオオオオオオ!」 いきなり校庭に4本腕のゴリラが現れた。 ユウキはアリスたちに叫ぶ。 「危ない! 皆さん物陰に隠れて、伏せてくださいっ!」 マルカとクロウも電光石火で、場から緊急退避。 ゴリラはどんどこ胸を叩き、咆哮する。 「ジャングルニ アソビ ナイ!」 手を尻に持って行き生暖かく緩めな何かを次々取り出し、息もつかせぬ速度で、おじさんに投げまくる。 アリス組は引いた。 「な、何ちゅー最悪な攻撃や…」 「日が落ちててよかったわね。明るいところで見たら目が腐るわよ」 「アヤカシだとしても悲惨です…というより、こっちに飛んでこないですか?」 「来たとしても大丈夫ですわ、あれは本物ではなくリィムナ様が、そう見せかけているだけのことですから」 「うおう、いつからそこおったんやマルカ…」 おじさんの姿が一個の塊と化していく。 『ぼぼぼぼぼをををををげほっ』 息苦しそうだ。 だがゴリラは手を緩めない。身動きが取れなくなった相手に、今度は生暖かく硬めな何かを投げ付け始める。 それは鋼鉄に劣らない硬度だった。 茶色の塊と化したあそぼうおじさんの首が飛ぶ腕が飛ぶ胴が離れる。ダルマ落としのように。 『おおおおおおおおおおぼそあああああああ』 おじさん、瘴気と共に弾け飛ぶ。 ゴリラは高らかに勝利宣言。 「見たか! ジャングルにあるのは食うか食われるかの苛烈なゼロサムゲームだけなのだ!」 そしてリィムナに戻る。 「ふう。これで一件落着♪ 精霊さん見てた?」 近くにいたはずの精霊へ語りかけようとしたリィムナは、凍りついた。 精霊の頭には――蒸発しつつあるが――彼女が投げたものが張り付いている。流れ弾を食らったものらしい。 怒っているのだろう。目と口が斜めに歪んでいる。 そのものすごさ、思わずリィムナが土下座するほど。 「ごめんなさいごめんなさいすいませんでした−っ!」 マルカはそんな精霊に歩み寄り礼を言う。 「ありがとうございます。あなた様のお蔭で、お友達を救えましたわ」 加えて頬にお礼のキスもした。 少し機嫌が直ったのだろうか、精霊の目が縦寄りに戻る。 リィムナは威勢を取り戻し、アリスたちに言う。 「この精霊さんを怖がったりしちゃダメだよ?」 「…いっこも説得力あらへんな」 「まあまあそんなこと言わずに、皆でお礼を言おう。このひとが知らせてくれなかったら大変な事になってたよ」 クロウとユウキは彼女の案に賛成する。 「そうですね、兎にも角にもこの方は恩人ですから」 「礼を尽くさないとまたおっかない顔されるぞ」 「うわあ、それはホンマにカンベンや」 というわけでアリス組たちも揃って礼を述べる。 精霊の目は完全にもとの角度へ戻った。 これで本当に一件落着。 マルカは早速、そもそもの用事を思い出す。 「皆様無事でよかったですわ。それはそうとアリス様、ノート、お返し下さいましね」 アリスは数秒間を置いて頭を抱えた。 「ああああー! しもたああ! 教室に置き忘れてもうとるー!」 痛恨の極みな失態だ。 既にとっぷり日も暮れて、明かりのない校舎はいよいよ凶々しく見える。 しかしてマルカには容赦というものがない。 「では、お早くとってきてくださいませ」 一陣の北風が吹き込み、割れた窓をカタカタ鳴らす。 アリスは仲間の方を振り向いた。 「み、皆、もちろん一緒に来てくれるやろ?」 返事は誰からもなかった。 「何やの皆冷たいやないのー!」 半泣きになるヘタレ番長。 そこでリィムナが手を挙げた。植え込みでごそごそしながら。 「心配しないで、あたしとちょちょなんさんが一緒に行ってあげるよ♪」 「…ちょちょなんさんて、誰やの」 「この精霊さん。そういう名前なんだって♪」 「…なんでパンツ履き替えてん」 「あっ、あのー…聞かないで?」 この後アリスとリィムナは名前の判明した精霊と一緒に、マルカのノートを取りに行った。 彼女らが戻ってくるまでの間、夜の校舎には、悲鳴が響き通しだったという…。 |